【完結】生意気な義妹がいじめで引きこもりになったので優しくしたら激甘ブラコン化した話   作:崖の上のジェントルメン

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12.メグと彼、彼女とメグ

……お風呂場。

 

俺は、湯船につかりながら天井を見上げていた。実は俺、風呂に入る時に、脱衣場も風呂場も全部電気を消すというちょっとした趣味……というか、癖があった。

 

普段からそうしてるわけじゃないが、何かを考え込みたいなと思う時や、落ち着きたいと思う時によくやっている。

 

真っ暗な中、窓の外から漏れる月の光だけが、風呂場の中へと差し込む。

 

この日常の中にある非日常、幻想的な感覚で風呂に入れるのは楽しい。死んだ母さんの好きな入り方だった。

 

「…………メグちゃん、か」

 

俺は今から四時間前……メグちゃんから言われた言葉が、未だに頭の中に響いていた。

 

 

 

 

『私、あなたが好きです』

 

『……え?』

 

『明さんのこと、好きなんです』

 

『え?え?ちょっと待って?え?なんで?』

 

『なんでって……そんな、言わせたいんですか?私が明さんの好きなところ……』

 

『いやいやそうじゃなくて。いや……メグちゃんは……会ってまだ間もない、よね?そんなすぐ告白っていうか……』

 

『何言ってるんですか明さん。人間って、一目惚れだってする生き物なんですよ?』

 

『じゃあ、俺……ひ、一目惚れ、された、の?』

 

『一目惚れっていうほど早くはなかったですけど……初めて会った時から、素敵だなって思ってて。そして今日……その素敵だなって気持ちが、もっと強くなって』

 

『…………………』

 

『あ、明さん顔赤くなってくれてる……嬉しい……』

 

『い、いやそりゃあ……その…………そうですよ、ええ、はい』

 

『ふふふ』

 

『……まいったなあ……。俺、今までそんな経験ホントになくて……。ここで上手いこと言えたら良いんだけど、全然何も言えないや……』

 

『上手い言葉なんていりません。明さんへ気持ちを伝えられたら……もう充分です』

 

『メ、メグちゃん……』

 

『美結も、明さんのこと好きですよね?兄としてだけじゃなく、一人の男性としても……』

 

『…………ど、どうなのかな……』

 

『きっと私は、そうだと思ってます。あの美結を変えたのも、たぶん……あなたの影響を受けたからだと思います』

 

『そうなのかな……。もしもそうだとしたら、嬉しいけどね……』

 

『そして明さん、あなたも美結のこと、好きですよね?』

 

『…………………』

 

『私にほとんど勝ち目がない喧嘩なのは、分かってるんです』

 

『……そんなこと…………』

 

『そんなことありますよ。だって、私びっくりしましたもん。喧嘩してあげてほしいなんて……普通、言わないですって。みんな誰しもが、穏便に穏便に、波風立てず仲良くしようって人ばかりなのに……。本当に美結が好きじゃないと、あんな言葉出てこないです。あれを聞いた時、ああ……二人の間には、もう大きな絆があるんだろうなって思いました』

 

『…………………』

 

『だけど……明さん言いましたよね?自分の気持ちを隠さないでほしいって』

 

『う、うん』

 

『だから今……あなたに伝えました。もちろん、美結にもそのことを伝えます。今伝えないと、私……美結に遅れちゃうし、明さんも……私のこと、少しは頭の中に入れてくれるでしょ?』

 

『…………………』

 

『きっと美結には負けてしまうでしょうけど、私……自分の気持ちに素直になって、ちゃんと美結と喧嘩します。ふふ、あの子……どんな顔するかな?』

 

『メグちゃん……』

 

『……えへへ、明さん。自分の本心をちゃんと伝えるって、すごく照れ臭いですけど……こんなにも晴れ晴れとするものなんですね』

 

好きです、明さん

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はあ」

 

俺の小さなため息が、風呂場の中に反響した。頭の中に少しでもだって……?少なくとも俺は今、君のことで頭がいっぱいだよ。

 

「……なんか、あれだなあ……。そう来たかって感じだなあ……。いや全然、好意自体は嬉しいんだけど………………俺、どうしたらいいんだろう?」

 

なんとも言えない複雑な気持ちで湯船に浸っていると、ぱちっと脱衣場の電気がついた。あれ?と思いそちらに眼をやる。風呂場の扉は磨りガラスになっており、そのガラス越しにぼんやりと人影が見えた。

 

その人影は、上着を脱いだ後、背中の方へ手を伸ばし、もぞもぞと何かしているけど……あれ?もしかしてあれってブラか?今外したってこと?

 

ていうかこの人影って美結か!?

 

「美結!ごめん!俺今入ってる!」

 

俺がそう告げると、美結が「わあ!びっくりした!」と叫んだ。そうか……電気消してたせいで誰もいないものと勘違いしちゃったんだな。申し訳ないことしたな……。

 

「お兄ちゃん、電気消して入ってたの?」

 

「そ、そうなんだよ……。電気消して入ると、リラックスできるからさ……」

 

磨りガラス越しに見える美結は、上半身が全部肌色だった。つまり……その……そういうことだ。

 

「えーと……美結、めっちゃ申し訳ないんだけど……一旦ちょっと脱衣場から出て貰ってもいいか?すぐ俺上がるからさ」

 

「…………………」

 

「脱いでる最中の時にごめんだけど、着なおしてもらってから……」

 

「あの……入っちゃダメ?」

 

「え?」

 

「お風呂…………一緒に入っちゃダメかな?」

 

「!?」

 

そんな。なにを言っているんだ君は。ダメだ、ヤバい、心臓が跳ねる。ちょっと待って、一緒に風呂?待て待て待て。

 

「い、いやいや美結!何言ってんだ!ダ、ダメだろそりゃ!み、美結だって年頃の女の子だし、お、おれ、俺と入るのなんか恥ずかしいだろ!?」

 

「恥ずかしいけど……お兄ちゃんなら、見せてもいいよ?」

 

美結は、下の方も下ろし始めた。屈んでパンツらしきものを脱ぐ時に、すーっと布が擦れる音がした。

 

「……ううん、違う。見せたい、かも」

 

そして気がつくと、全身肌色の美結の人影が、扉の取手部分に手をかけようとしていた。

 

「ちょちょちょっ!!」

 

俺は湯船から急いで出て、取手部分を内側から押さえて、開かないようにする。

 

「お兄ちゃん……私のこと嫌いなの?」

 

「ち、違うよ!!嫌いなわけないじゃんか!」

 

「じゃあ、一緒に入ろ?」

 

「で、でもな!お、俺たちは兄妹だぞ!?さすがにさ!年頃の二人が、その、ダメだろ!一緒になんて!」

 

俺が磨りガラスに自分から近づいたせいか、美結の人影が湯船に浸かっていた時より鮮明に見せる。彼女の胸の先端当たりが仄かに赤いのを判別できた。

 

(ヤバいヤバいヤバい!ダメだ!ダメだって美結!お、俺も男だ!ハンパなくドキドキしちゃうんだって!!)

 

顔どころか、全身がぽっぽぽっぽ熱くなっていくのを感じていた。

 

「でもお兄ちゃん……私たち、義理の兄妹だよ?ホントの兄妹じゃないんだよ?」

 

「そ、そういう問題ではなーい!!思春期の我々が一緒に入るのがダメだってばー!!」

 

「……私のこと、女の子として見てくれないの?」

 

「見てるよ!見てるからダメなんだって!」

 

俺は生唾をごくっと飲んだ。

 

「美結は……その、すごく魅力的だよ!俺の理性が持たないかも知れないから!!お、俺だってスケベな人食い狼なんだぞー!?」

 

「…………ふふふ、そっか」

 

そう言って、美結は取手から手を離した。そして、「びっくりした?お兄ちゃん」と、少し笑いを含んだ声で尋ねてきた。

 

「……か、からかったのか?」

 

「うん、ちょっとだけ」

 

「ちょ、ちょっとじゃないって~……!もうびっくりした……」

 

クスクスと、扉越しに彼女の笑い声が聴こえる。でも、その後に告げられた言葉は……いつになく真剣味があった。

 

「私のこと、本当に……女の子として見てくれる?」

 

「……み、美結?」

 

「いつか、こんな扉を隔てずに……私のこと、女の子として抱き締めてくれる?」

 

「…………………」

 

彼女の顔は、磨りガラス越しで表情が判別できない。一体……何を思っているのだろう?今の俺には……まだ分からない。

 

「お兄ちゃんに、私の全部をあげたい」

 

美結は、磨りガラスに小さくキスをした。

 

「大好き、お兄ちゃん」

 

一言だけそう言って、彼女は服を着なおし、脱衣場から出ていった。

 

「…………………」

 

俺はふと、自分の股間部分を見た。そこには、欲望が詰まった1本があった。俺は顔をしかめて、そいつに言った。

 

「ちぇ、この野郎……。人間てのはな、お前みたいに単純じゃないんだよ。複雑な人間関係ってもんがあるんだ。ところ構わず【成る】わけにゃいかねえんだよ」

 

この馬鹿息子め!と言って、そいつをピンっと指で弾いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あーーーー!!どうしよ!どうしよどうしよどうしよ!!すっごい恥ずかしかったーーーー!!」

 

私は枕に顔をうずめて、脚をバタバタと動かした。大分無理しちゃった……。本当はずっと、心臓が壊れるんじゃないかってくらいバクバクしてた。

 

「でも……そうしないと、メグに負けちゃう……」

 

実はさっき、メグから電話がかかってきてた。

 

それは、遡ること30分前……。

 

 

 

『もしもし?美結?』

 

「あ……メグ。どうしたの?」

 

『今日は、あの……ありがとう。水彩絵の具。これ、高かったでしょ?』

 

「えっと……まあ、うん。絵の具の良し悪しがよく分かんなかったから、一番高いの選んだの」

 

『ふふ、そっか』

 

「うん」

 

「…………………」

 

『…………………』

 

「……メグ?」

 

『美結、私ね……明さんが好き』

 

「え?」

 

『さっきの帰り際にね、告白した』

 

「ええ!?ええええええええええええ!?」

 

『びっくりした?』

 

「……え、あの……いつの間に、好きになったの?」

 

『少し前に初めて会って、その時から気になってたけど……今日、好きになっちゃった』

 

「…………………な、なんで、今日告白?好きになった日に……」

 

『だって、ライバルがいること知ってるから』

 

「…………………」

 

『美結は、明さんのこと好き?』

 

「……好きだなんて、そんなの……」

 

『…………………』

 

「……そんなのじゃ、足りないよ」

 

『足りない?』

 

「お兄ちゃんは、私に新しい人生をくれた人。生涯をかけて、大好きでいたい人」

 

『……ふふ、気持ち……おっきいね』

 

「…………………」

 

『私は……きっと、美結にはかなわない。明さんもきっと、美結を選ぶと思う』

 

「……!」

 

『それでも、私は好きな気持ちを隠したくない』

 

「わ、私だって!いっぱいお兄ちゃんにアピールするもん!」

 

『…………ふふふ』

 

「な、なに?」

 

『今日初めて……ちゃんと美結と喋った気がする』

 

「!」

 

『美結、私はこれから遠慮しない。だから、美結も遠慮しないで?一緒にたくさん喧嘩して、たくさん話して…………たくさん、仲良しになろうよ』

 

「…………メグ」

 

『それじゃあ、またね美結』

 

 

 

「…………………」

 

まさか……メグもお兄ちゃんが好きだったなんて、思いもしなかった。

 

そんな電話を受けた直後にお風呂場へ行ったら、まさかのお兄ちゃんがお風呂に入っててびっくりした。

 

その時に……私は、お兄ちゃんが私を女の子として見てくれるか、不安になっちゃった。だからあんなイタズラを……。

 

 

『美結は……その、すごく魅力的だよ!俺の理性が持たないかも知れないから!!』

 

 

「えへ、えへえへ」

 

思わず頬が緩んじゃう。なんていうか、「きゃっ♡」っていう感じになっちゃう。恥ずかしいけど嬉しいみたいな……。えへえへ。

 

「……メグ、私……負けないからね」

 

今はまだお外に出る勇気がないけど、でも……いつかお兄ちゃんとデートして、たくさん遊んで、そして……

 

 

幸せに、なりたい。

 

 

 

 

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