【完結】生意気な義妹がいじめで引きこもりになったので優しくしたら激甘ブラコン化した話   作:崖の上のジェントルメン

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15.これからを想って

 

……人は、他人の気持ちなんて一生分からない。

 

分かったような気がしてるだけだ。

 

どんなに好きな彼女でも、男の俺には生理の苦痛、子どもを産む痛みは知ることができない。だから、真に共感することはできない。

 

それは、何にでも言えること。俺は俺の気持ち以外を理解できないし、誰の気持ちも、本当の意味で理解することはできない。

 

しかし、だからと言ってそれが思いやりを忘れてよい理由には、決してならない。

 

分からないからこそ、想像する。相手はこんな気持ちかも知れない、こう思っているかも知れない。その想像ができるのが、人間なのだ。

 

いじめは、その想像が欠落した時に起こる悲劇だ。まあ、やってる側からしたら喜劇なのかも知れないが。

 

おそらくいじめというものは……世の中から無くすことは一生できない。大規模に人が死ぬ戦争が未だに無くならないんだから、いじめが無くなるわけがない。

 

だから、俺ができるのは精々、自分の大切な人を守る努力をすることだけだ。

 

世知辛い世の中だけど、自分の周りだけでも、愛を持って接していたい。

 

ここは、そういう風に生きざるをえない、そんな世界なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ちゃん」

 

「……いちゃんてば」

 

「ねえ、お兄ちゃんてば」

 

肩を揺すられながら、小さく囁くような言葉で名前を呼ばれた俺は、自分がどこにいるかハッと気がついた。

 

ここは、警察署の相談室。いじめの調査報告について警察から連絡を受けたので、ここに来ていた。

 

相談室にいるのは、今は俺と美結だけ。警察側は資料を持ってくるから待っていてほしいと言われ、しばらくここで座っていたのだ。

 

四角いテーブルを、俺と美結が並んで座り、向かい側に警察が座る側の席が二つ空いている。

 

「お兄ちゃん、どうしたの?なんだかボーッとしてたみたいだけど……」

 

「ん……いや、なんでもないさ。今日の夕飯のメニューを考えてただけだ」

 

「でもなんか……それにしては思い詰めてた感じだったけど……」

 

「ん?そうか?俺わりと眉間にしわ寄るタイプだからな~。難しい顔しながらその実、美結の髪綺麗だな~とか思ってたりするぞ?」

 

「ええ?も、もう!」

 

美結は照れ臭そうにはにかみながら、俺の肩へと軽くネコパンチしてきた。かわいい。

 

「いきなりそういうこと言うの、ダメ!」

 

「ははは、ごめんごめん。でも、本当に髪が戻って良かったな。一年くらいかかるものと思ってたけど」

 

「うん!お兄ちゃんも、いっぱい調べたり協力してくれて、ありがとうね」

 

「当然だよ、それくらい」

 

「ふふふ」

 

彼女はちらりと、相談室の入り口に眼をやった。まだ警官たちが来なさそうな気配であることを悟ると、美結は俺の頬に小さくキスをした。

 

「……美結、キスするのは……アリなのかい?」

 

「いいの!だってお兄ちゃんのせいで我慢できなくなったもん」

 

「ふふふ」

 

俺が美結の頭を撫でると、彼女は顔を赤くして、嬉しそうにはにかんだ。そして、身体を俺の方へ寄せて、頭を俺の肩へもたれかけようとした時……相談室の入り口の扉が開き、警官たちが入ってきた。

 

美結は急いで俺から離れた。さっきより顔を真っ赤にして、冷や汗をかいている。俺も若干、気まずさと恥ずかしさで、思わず口角がだらしなく上がった。

 

「こんばんは、渡辺さん」

 

そう言って話すのは、俺が前から相談させてもらっている若い女性警官の城谷巡査。

 

その彼女の隣にいるのは、30後半~40前半くらいの男性警官、三角巡査部長であった。

 

「城谷さん、三角さん、いつもお世話になってます」

 

俺がぺこりと頭を下げると、二人も「いえいえ」と言って同じように下げた。美結はみんなから若干テンポが遅れて頭を下げたので、ちょっと恥ずかしそうにしていた。

 

「事実確認の経過報告です」

 

城谷さんたちが俺たちの対面に座り、机の上に3枚の調査報告書を見せてきた。

 

「まず、学校側の総括的な対応としましては、『いじめがあったという事実についての認識はなかった』という風に言われてます」

 

「なるほど……。要するに、『自分らはなにも知りません』と」

 

「はい」

 

「ま……でしょうね、あの学校なら」

 

実は俺も何回か学校へ足を運んだことがあり、美結の担任や教頭と話をしたことがあるが、いつも曖昧な回答で濁されるばかりだったので、この結果については粗方予想していた。

 

「自分でも行ってみたことあるんですけど、『未成年の兄じゃなくて親に来てほしい』的なことを言われて帰されたりしましたし、わりとあの学校はそんなもんなんでしょうね。知らなかった、分からなかったと言えば責任逃れできると思ってるんでしょう」

 

「まあ……まさか未成年の兄が来るとは向こうも思わないと思いますよ」

 

城谷さんは少し笑っていた。彼女たちには、先日俺たちの親の境遇を詳細に伝えている。そのため、俺が親の代わりとして出てくることも了承してもらっている。

 

城谷さんはそれから続けて話を進めた。

 

「学校側の回答がそのようなところだったので、『認識していたかどうかはさておき、事実として被害者から警察へ相談があっていることについてどう思われますか?』と、こちらから学校及び教育委員会へ尋ねたところ、『生徒への聞き込みをします』という旨の回答をもらえました」

 

「あ、なるほど。ありがとうございます」

 

「教育委員会から、聞き込みをするよう学校側へ圧力がかかったみたいです」

 

「良かった、教育委員会はまだまともでしたね」

 

「下手に学校側が何もしなかったりして、裁判を起こされて教育委員会側も責任を問われたりするのを嫌がったんでしょうね」

 

「ええ、最悪の時はいっぺんに巻き込んでやろうと思ってたんで、良かったです。死なばもろとも、全員道づれの気分でした」

 

俺が笑ってそう言うと、城谷さんも三角さんも苦笑していた。

 

「そして、生徒への聞き込みについての経過報告が、こちらです」

 

城谷さんが、3枚ある報告書の内の一枚を俺と美結へ見せてきた。

 

「まず、渡辺さんが言われた加害者側……湯水 舞、他二名については、『いじめをしたつもりはない』と証言しています。特に湯水 舞に関しては、『むしろいじめられていたのは自分たちの方だ』とすら話したと言います。また、美結さんのクラスメイトも、『自分たちは分からない、知らない』と回答しました」

 

「ほう……」

 

中々図太い神経をしてやがる。ま、確かに湯水、お前のことは美結から話を聞いていたが、先生方や他の生徒の前では良い子ちゃんを演じてる。だから、自分の方が有利で、被害者面することすら可能だと考えたんだろう。事実、美結もいじめの仕返しを三人へしていたことがあった。そこだけを切り取って先生に報告したんだろう。中々やりやがる。

 

だが湯水、俺たちもこのまま下がるほど、お前のことを許してないぜ。甘くみるなよクソガキが。

 

「城谷さん、三角さん」

 

俺は二人へ声をかけた。

 

「湯水がどんな証言をしていたか、詳しく聞くことってできますか?」

 

「はい、こちらの報告書の方に、三人分まとめてあります」

 

「これは持ち帰っても?」

 

「もちろん、構いません」

 

「ありがとうございます。それから……お二人に少し訊きたいのですが」

 

「はい」

 

「美結へのいじめは……本当にあったものと思っていますか?」

 

城谷さんは、眼を大きく見開いて固まっていた。隣にいる美結も、「何を言ってるのお兄ちゃん?」と、俺に尋ねてくる。

 

しかし、その中で三角さんだけが、俺の眼を真っ直ぐに見て答えた。

 

「現状では、証拠不十分です。今のままでは、たとえ裁判にかけても、渡辺さん方が敗訴します」

 

「……ありがとうございます。そこをぼかさず言っていただける方が、かえって信頼できます」

 

俺は眼を一度閉じ……しばらく考えを整理してから、この場にいる三人へ述べ始めた。

 

「俺、探偵を雇おうと思います。できることなら、学校側に調べてほしいところですが、内容が濃いものだし、わざわざ腰の重い学校と交渉する時間を取るのも面倒なので」

 

「探偵……ですか?」

 

城谷さんがきょとんとした顔で尋ねてくる。

 

「調べてもらうのは、湯水たちの周りの人間です。同じ部活の部員、同じ委員会の人……ともかく、校内で彼女と関わりがありそうな人を洗ってもらいます。そうだ、できることなら小学生時代も調べてもらうかな」

 

「それはなぜ……?」

 

「これは俺の勘ですが……加害者側の湯水……彼女はおそらく、美結以外もいじめたことがあるはずです」

 

「と言うと?」

 

俺は美結の方へと、一瞬だけ眼を向けた。そして、もう1度目の前の警官たちへと視線を戻した。

 

「美結へのいじめ方が、手慣れているからです。自分らの信用を守りつつ、美結の信頼を落とす。その後、美結がどれだけ湯水のいじめを叫んでも、信じてもらえないように仕組む。このやり方が非常に手慣れてる」

 

「確かに、計算高い印象は受けますね」

 

「湯水の近辺には、おそらくまだ被害者がいる。その被害者を味方につけたい」

 

「なるほど」

 

「やられた子が少しでもいるのなら、少なくともその子たちは、自分がいじめられていたことを証言してくれるでしょう。そうなれば、湯水という人物はいじめをする、という疑いをかけられる。美結への『いじめをしていない』旨の発言も、信憑性に欠けてくる」

 

「つまり……美結ちゃ、美結さん本人へのいじめを立証するのではなく、まず加害者自体がいじめ常習犯である可能性を表面化し、美結さんへのいじめの可能性も高めさせると」

 

城谷さんは、一瞬だけ美結をちゃん付けしそうになり、舌を危うく噛みそうになっていた。

 

「まあ、それが一番現実的かな?と。いじめをしていた時の写真とかがない以上、やったやってないの水掛け論になる。なら、最終的にはその論じる人間の信頼度の勝負になる。そこからまず攻めます」

 

「…………………」

 

「探偵は、大げさかと思いますか?」

 

「いえ、客観的で冷静な判断だと思います。しかし、依頼料はまだ君たち学生には大変では……?」

 

「今、俺バイト始めてるんです。そのバイト代を全額当てます」

 

「…………………」

 

「お兄ちゃん、すごいよ。お兄ちゃんなら湯水たちを負けさせられそう」

 

「負けさせられそうだって?」

 

美結の方へ顔を向けて、俺は思い切り笑った。

 

「美結をいじめた時点で、あいつらは負けてるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……警察の人たちとのお話合いが終わり、私たちは家へと帰ることにした。

 

「これからもよろしくお願いいたします」とお兄ちゃんと一緒に言って、頭をさげた。

 

相談室を出て、さあ帰ろうと思ってた矢先、城谷さんから声をかけられた。

 

「美結ちゃん、ちょっと待って」

 

「はい?」

 

城谷さんは、最近は私のことを『美結ちゃん』と呼んでくれる。それがなんだか、嬉しかった。

 

「美結ちゃん、ほら、これ」

 

城谷さんはひそひそと声を潜めて、A4用紙が入る紙袋を手渡した。中を見ると、さっき見せられた報告書のコピーと、チョコの詰め合わせの箱が入っていた。

 

「これって……」

 

「あ、ここでは出しちゃダメだよ?公務員って絶対こういうことしちゃいけないんだ……バレたら賄賂って思われて、クビになるかも知れないし。でも私、美結ちゃんたちに……このチョコをあげたいなって思って」

 

「城谷さん……」

 

「おうちで、お兄ちゃんと一緒に食べて?テレビで紹介されてたくらい、すっごく美味しいところなんだから!」

 

「はい、ありがとうございます。でも、なんでこんな……優しくしてくれるんですか?」

 

城谷さんは私の言葉を聴いて、寂しそうに笑った。

 

「……ちょっとだけ辛い話になるんだけど、いい?」

 

「は、はい」

 

「……昔ね、私にも妹がいたの」

 

「『いた?』」

 

「職場のパワハラが原因で、自分から……」

 

「…………………」

 

「子どもの世界でも、大人の世界でも、いじめって無くならない。それが私、悔しくて……。だから、自分からこの相談窓口の業務に異動の希望を出したの」

 

「……そうだったんですね」

 

「美結ちゃんのこと、勝手に自分の妹と重ねちゃうとこもあってね。しかも、家庭の事情も明くんから聞いてるから、余計に気になっちゃって……。もし……お節介だったらごめんね?」

 

「いいえ、そんなわけありません」

 

「うふふ、良かった。美結ちゃん、きっと幸せになってね。立派なお兄ちゃんと一緒に、これからも支えあってね」

 

「……はい」

 

私は、本当に運が良かったと思う。相談窓口でも冷たい対応されることって、わりとあるみたいなの。もし冷たく対応されてたら、私……。

 

城谷さん、ありがとう。城谷さんが担当についてくれて、本当に良かった。

 

 

 

「ただいまー」

 

私とお兄ちゃんは、真っ暗な家の中に向かって挨拶した。今日も今日とて、ママもパパもいない。でも、全然寂しくなんかない。

 

「さーて美結、夕飯でも作ろうか!」

 

「うん!」

 

「美結は何が食べたい?」

 

「ハヤシライス!」

 

「ちょ!それ先週も食べたじゃんか!」

 

「えー?ダメー?」

 

「ダメじゃないけど、折角なら違うもの食べようぜ?」

 

「むーん……」

 

「ふふふ、そう拗ねるなって。オムライスなんかどうだ?」

 

「オムライス!食べる!」

 

「切り替え早!」

 

そんな談笑をしながら、私とお兄ちゃんはオムライスを作る。この瞬間が、すっごくすっごく幸せ。

 

お兄ちゃんと一緒に何かして、お兄ちゃんのそばにいられること。それがもう、本当にかけがえのない生活。

 

「お兄ちゃん、ケチャップライスできたよー」

 

「おっし!俺も卵できた!ライスにかけるぞ~」

 

お兄ちゃんの作るオムライスは、半熟でふわとろ。ケチャップライスの上にその卵が乗っかるところが、食欲をそそる。

 

「美味しそうー!あ、ねえねえお兄ちゃん、お互いのオムライスにさ、ケチャップかけあおうよ」

 

「お、いいよ!」

 

お兄ちゃんは、私のオムライスの上にニコニコした顔のマークを描いた。私はお兄ちゃんのオムライスに、『大好き♡』と文字で書いた。

 

「いやーははは、大好きとは照れるなあ……」

 

「なんでー?いっつも言葉にしてるのに?」

 

「止めてくれよー!言葉で言われるのも、内心照れてるんだからなー?」

 

「ふふふ、お兄ちゃん可愛い。愛してる」

 

お兄ちゃんはより一層照れて、赤面していた。

 

「「いただきまーす」」

 

食卓のテーブルで、二人並んで座って、オムライスを頬張る。

 

「お兄ちゃんが作ったふわふわの卵、美味しいね」

 

「いやいや、美結の作ったケチャップライスが美味しいから、俺の卵が映えるのさ」

 

お兄ちゃんも私も、眼を合わせてにっこり微笑んだ。

 

「そうだ!お兄ちゃん、オムライス食べ終わったら、城谷さんからもらったチョコ食べよ?」

 

「え?チョコ?城谷さんから?」

 

「うん、こっそりだけど。ホントは公務員ってこういうのダメだけど、二人にはあげたいなって」

 

「……そうか。今度、城谷さんへ礼を返さなきゃな」

 

「うん!」

 

私たちはオムライスを食べ終わり、一緒に後片付けを終わらせて、そのチョコを食べた。んー!

ホントに美味しい!確かによく聴くブランドのチョコだった!城谷さん、ありがとう。

 

「ん?」

 

その時、私のスマホが鳴った。メグからの電話だった。

 

「もしもし?メグ?」

 

『あ、美結ー。今大丈夫?』

 

「うん、どうしたの?」

 

『今度の土曜日、良かったらそっち遊びに行ってもいい?』

 

「うん、いいよ!」

 

『良かった!明さんもその日はいる?』

 

「うん、いるけど……どうして?」

 

『あ、じゃあ泊まりがけで遊びに行ってもいい?』

 

「お、お兄ちゃん襲う気なら帰って!」

 

『ふふふ、冗談だって。それじゃあ、また土曜日にね』

 

そう言って、メグは電話を切った。もう、お兄ちゃんの“初めて”は絶対私が……。

 

「美結、メグちゃんはなんて?」

 

「え?ああ……今度の土曜日に遊びに来るって」

 

「そっかそっか。なんか、襲うとかなんとか言ってたのはなんだったんだ?」

 

「…………えと、メグがその……お兄ちゃんもその日いるなら、泊まろうかな?って言い出して」

 

「は、ははは……なるほど」

 

「…………………」

 

「ん?どうした美結?」

 

「いや、あの……お兄ちゃんって、やっぱりモテるよねって思って……」

 

そう、私はメグがお兄ちゃんを好きだって聞いた辺りから、すごく不安になってた。本当は、学校やバイト先ですっごくモテてるんじゃないかって。

 

「えー?まさかまさか」

 

お兄ちゃんはああ言って笑うけど、でも……私、お兄ちゃんのモテ方って、ちょっと普通と違うと思うの。いわゆる分かりやすいモテ方(イケメンとかスポーツできるとか)じゃなくて、紳士的で……心に寄り添ってくれるタイプというか。目立ってモテはしないけど、1度好きにならせると、沼にハマらせちゃうタイプかなって……。

 

少女漫画みたいな華やかな恋愛が好きな子には、お兄ちゃんは響かないだろうけど、悩み事とか……苦しんでる子とかにすっごい寄り添ってあげて、めちゃくちゃ勘違いさせちゃいそう……。

 

しかも、お兄ちゃんは普通に、惚れさせたいとかそういう邪推な気持ちはなくて、本当に当たり前の優しさとして接するから、余計に質が悪いっていうか……。いや、それがお兄ちゃんの良いところで、大好きなとこなんだけど……。

 

 

『この世で優しい人は、お前一人だけよ』

 

『自分のことだけを信じなさい。他人のことを愛するために』

 

 

……博美ママの言葉を、ずっと健気に守ろうとしてるお兄ちゃんは、やっぱり凄いと思う。ママの大切なメッセージだから守りたいっていうのもあるんだろうけど、ちゃんと心から誰かを助けたいと思える人じゃないと、こんな難しい言葉、守ろうとする気さえ起きない。

 

本当に、優しくて凄い人だよ……私のお兄ちゃんは。

 

「俺はさ、美結」

 

「え?」

 

お兄ちゃんが、ふいに私へ話しかけてきた。お兄ちゃんは鼻の頭を指でかいて、少し気恥ずかしそうにしてたけど、私の眼をしっかり見て、こう言ってくれた。

 

「美結が俺を好きだって言ってくれるだけで、贅沢すぎるほど嬉しいよ。美結に言われるのが、一番嬉しい」

 

「…………………もう」

 

私は、お兄ちゃんに思い切り抱きついた。心の中にある『大好き!!!』って気持ちを、お兄ちゃんにたくさんぶつけた。

 

メグ!私、絶対負けないからね!

 

それから!もし他にお兄ちゃんを好きな子がいたとしても!私はお兄ちゃんの一番であり続けるもん!

 

いじめのことも、恋のことも、私はみんな頑張り続ける!

 

 


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