【完結】生意気な義妹がいじめで引きこもりになったので優しくしたら激甘ブラコン化した話 作:崖の上のジェントルメン
……教卓の前でごちゃごちゃと授業をする教師の言葉など少しも聞かずに、私は窓の外を眺めていた。
アキラとのデートから、既に二週間近くが経っていた。
6月に入り、鬱陶しい梅雨が訪れた。しとしと降る雨のせいで、教室全体が蒸れている。
「……………………」
あの日以来、私はなぜか、アキラと会うことが怖くなってしまった。今までそんな気持ちになったことなど、一度たりともなかったのに。
廊下ですれ違っても、眼を合わすことができず、そのまま無言で終わるだけ。こんなのってある?
この私が……湯水 舞が、男を前にして、いそいそと縮こまってしまうなんて。
「……それじゃあ、次のところを~湯水さん!読んでくれる?」
アキラのことが、私はもう……よく分からない。嫌いだと言っているのに、私を水族館へ誘ってくれたり、体調を気にしたり……。
あのアキラに限って、嫌いだと言う言葉が嘘だとは思えない。本心から絶対にそう言っているんだと、感覚的にそう理解できる。でも、だからこそ分からない。
「湯水さん?ちょっと?」
でも、アキラのこともだけど、自分の気持ちもよく分からない。何をどうしたいのか、意味が分からなくてぐちゃぐちゃする。自分のことすら把握できていないなんて、腹が立って仕方ない。
「湯水さん!」
「え?あ、はい」
教師から呼ばれてたことに気づいた私は、思わず席を立ってしまった。
「大丈夫湯水さん?ぼーっとしてたようだけど」
「……すみません」
「次のところ、読んでくれる?『彼の瞳は~』から先のところ」
「はい……」
私は着席の後、教科書を持って、教師から言われた箇所を読み進めた。
「……『彼の瞳は真っ直ぐに私を見つめる。その瞳から思わず逃げたくなったのは、私があんまりに臆病なせいだからです。』」
何よ、これ……前の授業の時に読んだところと、全く一緒じゃない。なんでこうも、アホな教師は非生産的なことをさせるのかしら。何回も同じことさせる授業なんて、この世から滅びてしまえ。
私は今、アキラのことで忙しいのよ。私の時間を取らないでよ。
「『私には何も愛される理由はない。愛される価値のある人間ではない。けれども、彼は私に好意を向けている。そんなことあっていいのだろうか。』」
…………。
あれ、こんな文章だったかしら?
前に読んだ時と、まるで印象が違うように思える。前は、どこにでもある三文小説だって思ってたのに。
「『私は彼に言った。なぜ私なんかを愛するの?すると彼は答えた。愛することに理由はないさ』」
……この文章を読んでいると、不思議なことに、登場人物がアキラと私で想像させられる。境遇はまるで違うはずなのに、なぜだか妙にしっくりきてしまう。
アキラは……私のこと、嫌いなはず。私だって、アキラのこと嫌いなはず。
……いや、分からない。私は本当に、アキラのこと嫌いなの?アキラは本当に、私のこと嫌いなの?
分からない。分からない。分からない。
でも、ひとつだけ言えるのは……アキラは、私が本音を話せる、ただ一人の男だってこと。
「『私は困惑した。なぜ愛されるのか分からないのに、愛をむけられることに恐怖した。止めて!私を愛さないで!』」
アキラ……私………………。
「『私を、愛で支配しないで!そう叫んでから、私は逃げ出した』」
どうしたらいいの?