【完結】生意気な義妹がいじめで引きこもりになったので優しくしたら激甘ブラコン化した話   作:崖の上のジェントルメン

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67.VS湯水(part17)

 

 

 

 

 

 

 

『……アキラさん、大丈夫ですか?』

 

放課後になって、俺はメグちゃんから電話を貰った。下校途中の通学路、小学生や中学生たちがはしゃいで道を走る隣で、俺はポケットに左手を突っ込み、空を仰いでいた。

 

『テレビのこと、クラスでもだいぶ騒ぎになってました。湯水がいないことも相まって……かなり話題が沸騰してます』

 

「はあ……そうだよなあ……。ちくしょう、鬱陶しいったらありゃしない」

 

『……………………あの、明さん』

 

「ん?」

 

『……いえ、やっぱり……なんでもありません』

 

「……?そう?」

 

『はい。今……明さん、大変ですから』

 

「大丈夫?モヤモヤしない?」

 

『…………実は最近、SNSで……私のアカウントが炎上しちゃってるんです』

 

「え?」

 

『明さんも知っての通り、私、イラストを投稿してるんですけど……そのイラストが、有名な作品のトレースだって言われて……』

 

「トレース?」

 

『簡単に言うなら、パクりっていうか……絵をそのままうつしただけだみたいなことを言われて。確かに構図は結構似てはいるんですけど、でも私……その有名な作品のこと最初から知らなかったので、全然……身に覚えがなくて』

 

「……そっか、言いがかりにも取れるし、勘違いにも取れる……微妙なラインだね」

 

『はい……。それで結構……落ち込んじゃってて……』

 

「メグちゃん……」

 

『ごめんなさい、明さんの方が辛い思いしてるのに、私の話なんかしちゃって……』

 

「良いんだよ、気にしないでくれ。困った時はお互い様!そうじゃない?」

 

『……………………』

 

「少なくとも俺は、メグちゃんの絵、好きだよ。メグちゃんらしくて、何回でも見たくなる」

 

『……ふふ、ありがとうございます、明さん』

 

「しかし、どうしたものかな……炎上ってどうすればおさまるんだろうか……」

 

『一旦、自分の意見を投稿してみます。それでダメそうなら……また、美結や明さんに相談してみます』

 

「うん、分かった。相談はいつでもいいからね」

 

メグちゃんは電話を切る最後まで、ずっと『忙しいのにごめんなさい』と言い続けていた。まあ、確かに俺もだいぶ時の人になってしまったが……それでも、身に覚えのないことで炎上だなんて、ひどい話だ。

 

「湯水と関わってから、中々落ち着かない日々が続くなあ……」

 

なんてことを、無意識に口にしていた……その時だった。

 

「……湯水?」

 

まさか、メグちゃんのアカウントを炎上させてるのは、湯水なのでは?

 

 

 

『あなたはきっと、自分が傷つけられるより、自分の大事な人を傷つけられる方が嫌なはず……!だから私は、その方法を使って嫌われることにする!!』

 

 

 

「……………………」

 

俺は歩くのを止めて、その場に立ち止まった。そして、藤田くんに電話をかけてみた。

 

『……うっす、兄貴。どうしたんすか?』

 

……彼が電話に出たその初手で、嫌な予感がした。彼の声が……どことなく沈んでいるのだ。こんな藤田くんの声を聞くのは初めてだった。

 

「いや……藤田くん、最近どうしてるかなって」

 

『へへ、あざす。今……わりと落ち込んでたんで、気にかけてもらえるの、嬉しいっす』

 

「……どうかしたのかい?」

 

『…………その、最近オレ、バイトクビになっちまったんすよ』

 

「え!?」

 

『客に出したスパゲッティに、まち針が入ってたらしくて……。そのスパゲッティ、オレが作ってたんで……』

 

「……………………」

 

『そういうことが何回かあって、クビになっちまって……。いや、オレそんな……入れた覚えねーって言うか……。うーん、でも実際入ってたんたなら、やっぱオレがバカだったから、気がつかねー内にやっちまったのかなあって……それがすんげー、すんませんっていうか……』

 

「……………………」

 

『それとなんか、俺の話じゃ全然ねーんですけど、葵の家に最近ゴミが投げ捨てられるみたいなんすよ』

 

「ゴミ……?」

 

『なんつーのかな、庭先にタバコだったり生ゴミだったりが捨てられるようになってて。陰湿な感じしますよね~』

 

「……そうか、二人とも大変だな」

 

『まあまあ、俺の方はもうやっちまったことは仕方ねえんで、諦めて次行きますわ。葵の方も警察に相談してるんで、たぶん大丈夫と思うっす』

 

「そっかそっか、それなら良かった」

 

『なんかすんません兄貴』

 

「いいよ、“細かいことは気にしない”、だろ?」

 

『……へへ、そうっすよね』

 

「何か困ったことあったら、遠慮なく言ってくれよ。もちろん、葵ちゃんのことも」

 

『うっす、あざす』

 

そうして、電話を終えた。

 

「……………………」

 

三人が三人とも、なんだか妙に嫌なことが起きている。これは……関連づけるのは難しいかも知れないが、湯水がやってる可能性が高い。

 

(柊さんに相談してみるか……。明確に湯水の嫌がらせかどうか分からないものもあるが、念のため調べてもらった方がいい……。しかし、もし湯水がやったことだとして、異様に手数が多いな。湯水一人でやるにしては、仕事量が多くて回らなそうだが……。もしかすると、共謀者がいるかもしれない。湯水と一緒になって美結をいじめてた……なんて名前だったっけ?澪と喜楽里とかいう子だったかな。その二人の動向も調べて見れば、自ずと湯水のいる場所が分かるかも知れない……)

 

そう考えた俺は、すぐさま柊さんへ電話をかけた。そして、この考察について話してみた。

 

『おお、明氏。実はそのことで報告したかったことがあったんです』

 

「報告?」

 

そう尋ねた俺に、柊さんが答えた。

 

『つい一時間前、その二人を確保しました』

 

「え!?」

 

『実は湯水が消えた辺りから、その中学時代の友人二人……澪と喜楽里には目をつけていたんです。そして先ほど、葵氏宅にゴミを投げ捨てるところを目撃しましてね。それを写真におさめ、すぐさま警察へ連絡したんです』

 

すごい……!もう柊さんは当初から目をつけてたんだ!しかも証拠を抑えて、警察に連絡まで!

 

「さすが柊さん!もうそこまでされていたんですね!」

 

『湯水は行方をくらましつつ、明氏たちへの攻撃をするわけですから、その手足となる人間がいるだろうなと、ある程度予測してました。これより、警察から二人への事情聴取が始まります。また進展があり次第、連絡しますね』

 

「ありがとうございます!お、俺は何かできることありますか!?」

 

『明氏は、当分の間は美結氏や友人たちのメンタルケアにいそしんでください。もちろん、ご自身のことも大事になさって。湯水の居場所云々は私たちに任せてください』

 

「ありがとうございます……!柊さん!」

 

『いえいえ。みんなで一緒に頑張りましょう』

 

俺は電話を終えた後、小さくガッツポーズを決めた。

 

よかった!これはかなり大きな進展だ!二人はおそらく、湯水の指示を受けて嫌がらせをしていたはず。ならば、二人から湯水の居場所を聞き出せば……あいつの元にたどり着ける!

 

美結!もう少しで君に会えるよ!全部終わったら、一緒にたくさんデートしよう!今まで湯水たちが怖くていけなかったところ、全部!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……と、息巻いていたのが2日前の金曜日。

 

現在、7月24日の日曜日。未だに柊さんから連絡はない。事情聴衆に難航しているのだろうか?

 

「今日の夜辺りにでも、現状確認で電話をかけてみようかな……」

 

そんなことを思いつつ、俺は学校から出された夏休みの宿題に手をつけていた。

 

リビングの机にて、クーラーをかけて宿題をする。同じ机の上に、未だ着信のないスマホを置いて、じっと連絡を待つ。

 

窓の外からミンミン蝉の蝉時雨が耳に届くせいか、外に出ていないはずなのに、身体がじんわりと暑くなってくる。

 

「夏休み……。はあ、早くみんなと遊びてえなあ……」

 

湯水の一件が終わらない以上、俺たちに平穏な夏休みは来ない。一刻も早く終わらせてしまいたい……。

 

 

 

『好きよ、アキラ』

 

 

 

……湯水、お前は本当に……悲しい人間だ。お前を嫌いなはずの俺に……依存するしかないお前の境遇って……一体どんななんだ。

 

俺はお前のことが嫌いだが……しかし、その悲しみは俺の胸をズキズキと突っついてくる。

 

「……いや、ダメだ。そんなこと考えるな。この辺が甘くて……ヤなやつに利用されるんじゃないか」

 

俺はシャーペンを机に置いて、右手で頬杖をついた。

 

「優しいことと甘いことは違う。甘いっていうのは八方美人ってことだ。八方美人は自分の評価が落ちるのを怖れてるだけの……ただの臆病者だ。自分でそこは理解しているんだから、きちんとした方がいい」

 

自分で自分を律するために、状況を口に出して整理する。母さんが死んで間もない頃、こうして自分の気持ちを整理整頓していたことを思い出す。

 

俺はよく、大人びてるだなんて言われるけれど、そんなことはない。母さんがいなくて、父さんもそばにいなくて、ただ一人でずっと…………こんな風に物事を考える時間があっただけだ。早く大人になろうとして、早く立派になろうとして、無理やり自分を成長させようとしてただけだ。

 

「……………………」

 

……はあ、止め止め。変に自分を卑下するな。自分を下げる意味なんてない。誰に対してやってるのか分からない無意味な謙遜なんて、しない方がいい。

 

 

ピピピピ!ピピピピ!

 

 

「!」

 

待ちに待った着信が、ついに鳴り響いた。相手はやはり、柊さんだった。

 

俺は直ぐ様スマホへ手を伸ばし、電話を取った。

 

「はい!もしもし!」

 

『ああ明氏、今……よろしかったですか?』

 

「ええもちろん!待ってました!」

 

『例の澪と喜楽里の両名についてですが……まず、彼女らは湯水の指示に従って、明氏の周りの人たちに嫌がらせをしていました』

 

「やっぱり……」

 

『ただ、指示を受けていたと言っても、湯水と会っていたわけではないようです。指示は必ず電話かメール……。本人と対面することは一度もなかったようです』

 

「ということは……彼女たちも湯水の居場所は知らない……と」

 

『そのようです』

 

徹底してるな……湯水。仲間が捕まることも考慮して、居場所を教えていないと……そういうことか。

 

『ですが……彼女ら曰く、あらかたの目星はつくという話です』

 

「目星?」

 

『湯水は、何人もの男と付き合ってきました。その元カレの場所にいるかも知れないとのことです』

 

「元カレか……!なるほど、匿ってもらうところとしては、最適かも知れないですね」

 

『ええ、私の探偵の血が騒いできますよ』

 

「探偵の血……ですか?」

 

『あの二人の話によると……湯水は相当な数の男と付き合ったようです。同年代に限らず、大学生、社会人……幅広く網羅してます』

 

「幅広くって……。一体、何人と付き合ったんですか?湯水は」

 

俺のその質問に対して……柊さんはなんだかやけに嬉しそうに、言葉が弾んだ様子で……こう言った。

 

『あの二人曰く……40人から先は数えるのを止めたとのことです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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