【完結】生意気な義妹がいじめで引きこもりになったので優しくしたら激甘ブラコン化した話   作:崖の上のジェントルメン

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前書き

皆様、いつもお読みくださりありがとうございます。

今回、この作品を、駆け足ながらも完結まで書き切りました。これから最終話まで一話ずつ、毎日投稿していきます。なお、最終話は85話になります。

この作品は、私の想像以上に反響が出てしまって、お恥ずかしい話ですが、執筆に対して相当なプレッシャーを抱えてしまうようになりました。執筆しようとスマホを取る度に、ぶるぶると手が震えるようになったり、深夜に突然目が覚めて、「面白くないって言われたらどうしよう……」と、心臓が割れんばかりにドキドキする日々が続いています。

実は少し前、アンチに粘着されてしまったことがあり、その時のトラウマから、未完のまま作品を削除し、執筆を断念したことがあります。この作品は、そんな自分の再生のためというか……「もう一度完結まで頑張れる作品を書こう」と思い、やり始めたのです。評価を過剰に気にしてしまうのも、そのトラウマが要因です。

私はきっと、明たちを描くことで、自分のことを元気付けようと思っていたのかも知れません。明たちほどではないにしろ、私の家庭環境も良くないですし、学生時代には友人からレイプされてしまったこともあります(明が湯水に犯されるシーンは、トラウマがフラッシュバックして大変でした汗)。そんな自分の暗い体験を、前向きに昇華できるようになりたくて、無意識の内にこの作品を書いたのだと思います。

なので、この作品を完結せぬまま放置……なんてことをしたら、昔の私に逆戻り……。それじゃ、私が私を許せなくなる。そこで早急に完結まで描くことにしたのです。

かなり細部をはしょっているので、駆け足感満載かも知れませんが、一旦そこで終わらせていただければと思います。その後、読み返してから「やっぱりこのエピソード追加したいな」と思ったら、後から加筆するスタンスで行こうかと思います。

ここまで頑張ってこれたのも、読んでくださったみなさんの応援があってこそです。本当に心より、お礼申し上げます。

もし良かったら、「ここの部分もっと加筆欲しい!」とか、「このキャラの行方はどうなったの!?」とかございましたら、加筆だったり後日談だったりを書きたいと思います。

彼らの行く末を、どうぞ最後まで見守ってもらえると嬉しいです。






74.真夏の風(前編)

 

 

 

 

 

……街灯の人工的な明かりが、夜の住宅地を照らしている。

 

俺、飯島 圭は、明の知り合いである藤田 公平、日髙 葵、そして平田 恵実らと共に、しんと静まり返った夜道をプラプラ歩いていた。

 

「もう……明さんがいなくなってから、五日目ですね」

 

平田がため息混じりにそう呟く。

 

俺たちは時々、こうして四人で集まり、明やその妹、そして互いのに何かできないか?と、そんなことをいつも話し合っている。

 

だが、この内容の濃さから、中々前向きに行動を移せることがない。最近唯一できたのは、明の妹へお菓子を渡せたことくらいだった。

 

(ちくしょう……くそったれが!)

 

俺は、日に日に募るムカつきを、抑えられないでいた。今こうしている間にも、明はあの湯水とかいう女になぶられている。それを分かっていながら、ただ指咥えて何もしねえなんて、できるわけねえ。

 

(かと言って、こっちから奴らの居場所をつきとめるのは、かなり難けえ。警察だのプロだのが躍起になっても、まだ見つからねえんだ。俺たちみたいなガキがどうこうできる話じゃねえ)

 

さすがにそこから暴走しない程度の脳みそは持っている。だが、今この瞬間だけは……この脳みそが邪魔っ気に感じるぜ。

 

ちくしょう……俺たちにできることが、イマイチ見つからねえ。その腹立たしさも相まって、俺たちはくそ暑い夏の夜に、行きどころのない思いを抱えて歩いていた。

 

「兄貴の居場所さえわかれば、今すぐにでも乗り込みたいんだけどな~!」

 

藤田が項垂れている中、日髙が正論をぶつけた。

 

「でも、私たちで乗り込むのは本当に危険だよ。もし居場所が分かったとしても、すぐに警察に通報したりして、大人を頼る方がいい」

 

「けどよ~!オレ、いても立ってもいられねーよー!葵だってヤキモキしてるだろー?」

 

「そりゃ、気持ちは分かるけど……」

 

……フツーに考えりゃ、日髙の言うことが正しいだろうよ。相手はキチガイ女だ、下手に俺らが触っちゃいけねえ相手かも知れねえ。

 

だが、ダチが囚われてんのに、なんにもできねえムカつきを我慢するくれーなら、殴り込みに行きてえ。藤田も俺も、そういうタイプなんだろうぜ。

 

「……………………」

 

……真夏の熱い風が、背中から吹き抜けていく。俺の焦燥感を煽るように、その風はざわざわと俺の心も揺らした。

 

「…………!」

 

そんな時、俺は……背後にある気配を感じた。

 

視線というかなんというか……俺たちのことをじっと見つめてる感じだ。

 

(……気のせい、にしてはかなりハッキリ感じる)

 

こういう時の直感は、わりと信じた方がいい。

 

ちらりと後ろを振り向くと、15メートルほど後方に三人……目出し帽を被った男たちの姿が見えた。

 

(……目出し帽なんてあからさまなもんつけてて、怪しさ満点だな。それに、こちらへの視線の強さから、明らかにつけられてるのも明白。なんなんだ?一体)

 

そう思って、前の方に向き直ると、今度は前方20メートル先くらいで、やはり同じように目出し帽を被った、似たような男たちが四人いた。彼らは横一列に並んでいて、一言も会話をしていない。しかも、手には角材を持っている。武器として使うつもりだな。

 

(……ひょっとすると、湯水の仲間か?へ、それならおもしれえ。上等だぜ)

 

俺は咳払いをひとつした後、「おいお前ら」と、声をかなり小さくして言った。

 

「気づいてるか?」

 

「え?何が……ですか?」

 

「気づいてるって、何がっすか?」

 

「……はい、分かりますよ」

 

俺の問いかけに対して、三者三様の答えが返ってきた。平田は気がついてはいないらしいが、俺の口調の雰囲気から、何か良くないことを察したらしい。藤田はノーテンキに何も気がついていないらしく、きょとんとしてやがる。一番状況を把握しているのは、日髙だった。強張った顔をしながら、ゆっくりと頷いている。

 

「私たちは今、囲まれてる。たぶん、湯水の仲間に」

 

日髙がそう告げると、平田も藤田も画面蒼白になった。

 

「マ、マジ……!?ど、どこにいんの!?」

 

「キョドキョドすんな、藤田。いいか、全員ここで止まれ」

 

俺の言葉を受けて、俺たちはみんなその場に立ち止まった。そして俺は、前方を睨みながら三人へ告げる。

 

だんだんと、前方から……そして、後方から近づいてくる男たちに、さすがの藤田や平田も気がついたようだ。忍び寄る奴らの姿を見て、ごくりと生唾を飲んでいる。

 

「役割分担をしよう。藤田、お前は俺と一緒にこいつらと殴り合え」

 

「……!」

 

「お前も乗り込む気だったろ?せっかく向こうから来てくれたんだからよ、歓迎してやろうぜ」

 

「……っす!」

 

藤田は緊張こそしているものの、腹をくくった顔つきで頷いた。そして、ゆっくりと向かってくる男たちを睨んだ。

 

「それから、日髙は警察に連絡しろ。お前が一番冷静だ、状況も警察へ伝えやすいだろ」

 

「分かりました」

 

「平田、お前は写真と動画撮影だ。証拠をきっちり押さえてやれ。写真は、撮る時にわざとシャッター音とフラッシュをたいてやりな。それが奴らへの牽制になる」

 

「は、はい」

 

「いいか、俺と藤田がお前ら女子を全力で守るが、それはそれとして、自分の身は自分で守ること、意識しとけよ」

 

「「……………………」」

 

「スマホのライトをつけて、なるべく奴らの眼に当てるようにしてみろ。多少の目眩ましにはなる。それから、困った時は股間を蹴り上げろ。ちんぽこは言わずもがな、どんな人間も急所になる。それも難しそうなら、とにかくどこでもいいから噛みつけ。人間の攻撃力が一番高いのは、顎だ。手や脚よりも力を出しやすいし、尖った歯で相手を傷つけやすい。指も肉も食いちぎるくらいのスタンスでいけ」

 

平田と日髙は、黙って頷いた。

 

「大丈夫!葵、メグっち!俺と飯島先輩がなんとかすっから!」

 

「中々熱いこと言うじゃねえか藤田。お前、喧嘩には自信あんのか?」

 

「……そーすっね、ねーちゃんと家でリモコン争いやったことあるくらいっすかね!」

 

「そうか。なら、今日がデビュー戦だ。弾けちまいな」

 

「うすっ!」

 

藤田の威勢のいい返事が、閑散とした住宅地に響く。

 

「……………………」

 

真夏の夜風が、俺たち四人に吹き抜ける。いいな、いい風だ。勝負したくなるような……熱い風だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……美結ちゃん、千秋ちゃん、ご飯できたよー」

 

私がキッチンからそう声をかけると、千秋ちゃんの「はーい」という返事が耳に届いた。

 

食卓につき、三人で食事をする。今日は美結ちゃんに代わって、私が晩御飯を作った。美結ちゃんの要望だった、ハヤシライスだ。

 

「どう?美結ちゃん。美味しくできてるかな?」

 

「……はい、とっても……美味しいです」

 

美結ちゃんはぎこちない笑いを、私へ見せた。

 

「……………………」

 

……最近、美結ちゃんは本当に元気がない。心なしか少し痩せたようにも思う。明くんが湯水に捕まっていることが、相当なストレスになっているのだろう。

 

でも、こんなのストレスに思うなという方が無理な話だ。今この瞬間にも、湯水が明くんにどんなことをしているか……想像に難くない。いやひょっとしたら、自分の想像以上に酷いことをされているんじゃないかと、そんな恐怖心がぐるぐる巡ってしまうのは……必然だと思う。

 

「……………………」

 

美結ちゃんのスプーンを持つ手が、小刻みに震えている。そわそわして落ち着かないみたい。

 

「「……………………」」

 

私は千秋ちゃんに視線を送った。彼女も私の眼を見て、黙って頷いていた。

 

(私たちが早く湯水を捕まえないと……。美結ちゃんのためにも、明くんのためにも……)

 

その焦燥感が、日に日に増していく。

 

今日の日中は、明くんのスマホのGPSが反応していた、真田宅に行っていた。

 

真田はこちらの睨んだ通り、明くんのスマホを所有していた。当初はしらばっくれていたが、三時間の家宅捜索を行った後に、ゴミ箱の中からスマホを発見することができた。

 

誘拐の容疑で、他の警察官から確保された彼に、千秋ちゃんが声をかけた。

 

「湯水 舞はどこだ?」

 

……真田は、にやりと笑うばかりだった。その顔は、してやったりと言うか……こちらのことを小馬鹿にするような、そんな笑顔だった。

 

あの男には、もちろんこれから事情聴取がされる。でも、千秋ちゃんの推理が正しければ……真田に時間を使えば使うほど、私たちは遠回りさせられているかも知れない。

 

(この堂々巡りを終わらせるには……決定的な“何か”がほしい。湯水の張り巡らす計画の穴……そのほつれを)

 

 

ピリリリ!ピリリリ!

 

 

その時、リビングで充電していた私の携帯が鳴り響いた。一旦席を立ち、リビングに行ってその携帯を手に取った。

 

(あれ?葵ちゃんから……?こんな時間にどうしたんだろう?)

 

怪訝に思いながらも、私はその電話に出ることにした。

 

「はい、もしもし」

 

私がそう受けるや否や、葵ちゃんが『城谷さん!助けてください!』とまくしたてるように叫んでいた。

 

「あ……葵ちゃん?どうしたの?一体何が起きてるの?」

 

『今、湯水の仲間に襲われてます!』

 

「!?」

 

私は思わず背筋がピンと伸びた。そして、気がつくと車の鍵を手に取っていた。

 

「ど、どこにいるの!?」

 

『伊佐多町の住宅地です!先に110番してるので、パトカーとかがすぐ集まってくると思います!』

 

「分かった!私もすぐ向かう!現場は葵ちゃん1人!?」

 

『いいえ!公平くんにメグさん、それから飯田先輩もいます!今、まさに乱闘中です!』

 

「ら、乱闘!?了解!絶対助けに行くからね!」

 

電話を一度切り、千秋ちゃんと美結ちゃんのいる食卓へ一度戻った。

 

「どうしたの?城谷ちゃん。なにやら慌ててる様子だけど」

 

私の様子を見た千秋ちゃんが、そう問いかけてきた。

 

「今、葵ちゃんたちが湯水の仲間に襲われてる!」

 

「「!」」

 

「私は今から現場に向かう!千秋ちゃん!一緒に来て!」

 

「了解!」

 

千秋ちゃんはこくりと頷き、スプーンを置いて席を立った。

 

「あ、あの!城谷さん!私も行きたいです!」

 

美結ちゃんも席を立ち、懇願する眼で私たちを見つめた。

 

「美結ちゃん、現場は乱闘騒ぎになってるの……。あまり下手に来ない方が……」

 

「美結氏、行きましょう」

 

「千秋ちゃん……」

 

「友達の安否も気になるだろうし、連れていってあげた方がいい。それに、夜に美結氏を1人で居させる方が危険かも知れない。いかなこのマンションが安全と言えど……私たちのそばにいてもらう方がより安全だと思う」

 

「……………………」

 

千秋ちゃんに説得された私は、美結ちゃんに告げた。

 

「じゃあ……急ごう!美結ちゃん!」

 

「はい!」

 

ハヤシライスをそのままに、三人で風のような素早さで、家を出ていった。

 

 

 

 

 

 

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