【完結】生意気な義妹がいじめで引きこもりになったので優しくしたら激甘ブラコン化した話   作:崖の上のジェントルメン

77 / 86
77.帰ってきた!

 

 

 

 

……湯水の隠れ家。

 

それは、湯水の仲間であった天然パーマの男の子曰く……『立花の親が持つ別荘地』であるらしい。山奥に潜むその別荘地で、湯水を匿い、お兄ちゃんを拘束していたとのこと。

 

この別荘地の駐車場には、城谷さんと柊さんが所有している軽自動車1台が停まっている。そして、葵さんが通報して呼んだパトカーも1台、そろそろここへ到着する予定だ。

 

私たちを案内した天然パーマの彼は、湯水が相当恐ろしいらしく、車の中で自分の肩を抱き、ガタガタ震えている。

 

「城谷さん……圭さん……」

 

二人が別荘地内に侵入してから、早くも30分が経過していた。みんなで中に入るべきかどうか検討したが、城谷さんと圭さんの判断により、他のメンバーは別荘の周りに誰もいないか確認しながら、待機することとなった。

 

暗く鬱蒼とした夜の森に住む木々たちが、風に煽られてざわざわと騒ぐ。そのざわめきが、私の不安を大きくしていく。

 

玄関から五メートルほど離れた場所で、城谷さんと圭さんを覗いた残りのメンバーが待機している。他に湯水の仲間が来ても大丈夫なように、背中合わせになって辺りをキョロキョロしながら、お兄ちゃんたちが帰ってくるのを今か今かと待っている。

 

「……………………」

 

胸にかけている、ママの手紙が入ったお守りを……私の手でぎゅっと握りしめる。

 

黙っていると、バクバクと心臓が揺れる音が聞こえてしまう。そのせいで、余計に緊張が高まってしまって、心が落ち着かなくなる。

 

(お兄ちゃん……)

 

ようやく……お兄ちゃんに会える。湯水からお兄ちゃんを救い出せる。

 

(でも、でも、もし……酷い目に遭わされてたら、どうしよう)

 

そんな想いが、頭から離れない。私はあの湯水という女が、どんなに異常な奴か知っている。自分の頭で嫌な想像をかき消そうとしても、決して消すことはできない。

 

「……美結」

 

隣に立つメグが、私の背中をさすってくれた。

 

「美結、大丈夫……?車の席に座っておく?」

 

「う、ううん。大丈夫……」

 

「……そっか、無理しないでね?」

 

「うん、ありがとう」

 

メグの言葉に元気をもらった私は、落ち着くために深呼吸をした。

 

「……!来ましたね」

 

柊さんの独り言を聞いて、私は玄関の方を見た。しかし、そこはまだ開けられていない。

 

柊さんが見ていたのは、パトカーだった。私たちの軽自動車の横に駐車し、中から三人の男性警察官が出てきた。

 

「柊さん、お疲れ様です」

 

一人の若手警官が、柊さんへそう挨拶した。柊さんは会釈を返すと、中に今城谷さんたちが行っている旨を話した。

 

「では、我々も中へ……」

 

「……いえ、その必要はありません」

 

「なぜ?」

 

「足音が中からしますでしょ?そろそろ出てきます。決着がついたようですね」

 

柊さんがそう言い終わった瞬間、玄関の扉が開いた。

 

まず出てきたのは、城谷さん。その後ろに、手錠をはめられた湯水がいた。

 

(湯水……)

 

私が知っているのは、黒髪ロングの時の湯水なので、今の湯水のヘアスタイルは、かなりイメチェンされた印象だった。頬には涙の跡まで見えるし……あの傍若無人な湯水 舞とは本当に思えない。

 

次に圭さんが湯水を睨むようにして立っている。あの二人の間に挟まれたら、さすがの湯水も出られないよね。

 

「……あ」

 

そして……そして、列の一番最後……最後尾に、お兄ちゃんが立っていた。

 

最後に会った時から随分やつれてしまってるけど……でも、でも、お兄ちゃんだ。お兄ちゃんだ、お兄ちゃんだ!

 

「お兄ちゃん!」

 

私がそう叫ぶと、お兄ちゃんはすぐに気がついてくれた。

 

「……美結」

 

私のことを見つめると、唇をぐっと噛み締めて、こっちに向かって走ってきた。

 

そして、ぎゅっと私を抱き締めた。それはもう……本当に強く強く、今までにないくらいに抱き締めてくれた。

 

「美結……!!美結!大丈夫だったか!?元気だったか!?」

 

「うん……!元気だよ!私は元気だよ!」

 

「そうか!そうか!良かった!良かったよ!本当に良かった……!!」

 

ずずっと、嗚咽と共に鼻をすする音が聞こえる。

 

「……………………」

 

私は目頭が熱くなって、思い切り、お兄ちゃんのことを抱き締め返した。暖かい……。ああ、この暖かさは、お兄ちゃんだ。本当にお兄ちゃんだ。

 

どれだけあなたに、会いたかったことか。どれだけあなたを想った夜を過ごしたことか。

 

「お兄ちゃん……」

 

私は思わず、お兄ちゃんのほっぺにたくさんチューをした。溢れる想いがそのまま形になっているような、そんなキスだ。

 

「明さん!」

 

「兄貴ー!」

 

「兄貴さん……!」

 

メグに藤田さん、そして葵さんがお兄ちゃんの元にやって来る。お兄ちゃんはまた目をうるうるさせて、私を含めて、みんなをことをぎゅっとまとめて抱き締めた。

 

「みんなーーーーー!」

 

歯を食い縛って、唸るような声をあげながら、お兄ちゃんは号泣している。ぶるぶると身体が震えて、眼から溢れる涙が地面にぽたぽたと水滴の跡を残す。

 

「みんな……!みんな!良かった!良かったよ!会えて本当に良かった!!」

 

メグが、うんうんと頷きながら、「私もです」と言って、頬に涙を伝らせた。

 

藤田さんは「兄貴ーーー!」と言って、お兄ちゃんと同じくらい、わんわん号泣していた。

 

葵さんは、にっこりと微笑みながら、お兄ちゃんの背中をさすっていた。

 

「明氏…………」

 

柊さんが、お兄ちゃんのそばに近寄った。

 

「ずいぶんと、やつれましたね」

 

「柊さん……」

 

「今回私は……あまり、あなたの役に立てませんでした」

 

「……………………」

 

「救出が遅くなってしまって……申し訳なく思います。やはり是が非でも、あなたを私たちのそばで見守ってあげるべきでした……」

 

「ううう……なに言ってるんですか柊さーーーん!!」

 

お兄ちゃんは柊さんへ思い切りハグをした。

 

「柊さんたちのお陰で、美結はこうして無事でいられるんじゃないですかーーー!!」

 

「ちょ、ちょっと、あ、明氏!は、はず、恥ずかしいです!」

 

「うおーーー柊さーーーん!!大好きだーーーーー!!みんな大好きだーーーーー!」

 

「あわ、あわわ……お、男の人に抱き締められることなんて、い、一度もなかったから……ど、ど、どうしていいのやら…………」

 

あの柊さんが、顔を真っ赤にして照れている。すごく珍しい……。

 

感情が昂りまくってるお兄ちゃんと、それに困惑してる柊さんを見て、私たちは朗らかに笑った。

 

ああ……本当に、本当に私たちのお兄ちゃんが帰ってきたんだなって、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。