憑依した先が絶望なんですが…… 作:びりびりザリガニ
その感覚に包まれて私はこの世界に生まれた、というか、肉体を乗っ取ったというほかに無い。
前世と言える世界で翌日も仕事があるから部屋の電気を消して眠りに着いたら、強烈な痛みや飢餓感に似たありとあらゆる人という存在が感じることができるであろう、そんな負の感覚が押し寄せたのだ。
「ヴァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」
起きたと思ったら突然、そんな感覚に襲われたのだ。
訳が分からないし痛みとかの感覚で自分の口からは獣のような叫び声が漏れ出ていくのが分かるし、体は拘束されているのか激しく暴れても四肢や胴体を固定する器具によって自由に身動きできない。
地獄と呼べる時間が体感時間で数時間以上は経過したと思った頃、漸く激痛や飢餓感と言った物が治まりだしていき私は周囲の状況を確認しようと目を向ける。
「これは……」
「今回は……」
見たことのないオッサンと、白衣を着た研究員みたいな男が何かを話している光景と、どこかの研究所というか怪しい医療機関にありそうな機材やら部屋、これらを見て余計に訳が分からない状況になりながらも、酷い倦怠感と痛みに包まれている肉体を少しだけ動かしていた。
ここでハッキリと動く方が危険だと何故か思うことができたからだ。
「スペンサー卿、いかがなさいますか?」
「フム…… 生きてはいるようだ、とりあえず生かしておけ」
「ハッ」
そうしている内に眠気にも襲われたために、ゆっくりと意識が沈んでいくのだけど、その前に聞こえた会話は絶対に聞き逃せないというか明らかにヤバいとしか言いようがない固有名詞だ。
スペンサー卿って、しかもこの研究所らしき人間の名札っぽい所のエンブレム…… まさか。
「まあ、精々役に立ってもらうとしよう、ジョージ・トレヴァーのようにな、リサ・トレヴァーよ」
「っ!?」
スペンサーにリサにトレヴァーってまさか!? そう考えた瞬間に近寄って来た研究員によって何らかの薬剤を打たれたのか、急速に意識を失っていくが本当だというのならばマジのガチでヤバいじゃん!? としか言いようがなかった。
何しろリサ・トレヴァーは……
そんな衝撃的な事があってから、目が覚めると粗末ではあるが一応はきちんとしたベッドに寝かされており、衣服は簡素な物にさせられていた。
手枷や足枷といった体を拘束したり動きを制限する物が取り付けられていないのは、スペンサーや研究員の油断なのかどうかは分からないけれど、何とか体を起こして今の自分の状況を確認するために部屋に備え付けられている洗面台と、鏡の処へとノロノロと体を動かして向かっていく。
「…… やっぱり、か……」
その鏡に映っていたのは10代前半の美少女と言える女の子の姿であり、さらに言えば前世でプレイしたゲームであるバイオハザードに於いて、リメイク版にて登場したリサ・トレヴァーが研究で悲惨な姿になる前の状態があった。
「だけど…… なんで髪に金色が混ざってるんだろう?」
ただ彼女はゲーム中に於いては黒髪であったはずなのに、なぜか今の鑑に映る姿は髪には金色のメッシュが入ったような感じになり、目も少しだけ赤みを帯びているという特徴があった。
恐らくは自分が憑依した時がリサ・トレヴァーへの薬物の実験投与が行われた初めての日で、彼女ではない自分が中に入ったことにより何らかの化学変化というか、奇妙なことが起こったのだろうということが推察は出来た。
それからストレッチをしたりして、自分の状況を確認しながらも体がどの程度動けるのかとかを確認していった。
「まさか、後のシリーズに出てきたアイツと同じように超人的な身体能力を手に入れたなんてね……」
確認した結果、分かったのは後のバイオハザードシリーズにおける主人公と言えるクリスとライバルというか仇敵と言える間柄であったアルバート・ウェスカーとほぼ同じような身体能力を得ていたということだ。
何しろ広さが20畳ほどありそうな部屋で走ったら、いきなり加速して驚いた上に、部屋の調度品と言える金属製の球? みたいのを軽く握ったらマシュマロみたいに形が変化したのだから驚くほかに無い。
ただ、他にはコードヴェロニカのラスボスと言えるアレクシアが持っていた炎を自在に出す能力も会得していたし、この時代におけるTウィルスでは不可能なこれらについての疑問が尽きない。
「まぁ、いざとなったら、この能力で脅すか交渉するしかない、か……」
備え付えられている時計を見れば、ここに監禁されてから丸2日近くは経っただろう、その間に食料や衣料品も供給はされていたけれど人と接しない様にするためか、ダストシュートっぽい設備に入れられた物が落ちるようにして部屋に届いたので、正直に言えば怒りは起こる。
お前たちが誘拐していたいけな少女に過酷な実験を施したというのに、この扱いは何だと言いたいし暴れたいが、今の自分もリサ・トレヴァーという少女の肉体を乗っ取っているために、彼らに対して強く言えないのがもどかしいが、とりあえずは食い物を食べて着替えもして英気を失わないようにしないといけない。
そう考えながら行動を開始していく、ゲームでの知識がここでも当て嵌まるのならばバイオハザードの主人公たちが登場し、ここに来るまで30年もの時間がかかるのだから何とか己の立ち位置を確立し、自分の様々なことを利用されない様に立ち回らないといけないのだから大変だ。
脱出しても、私は既に死んだことにされているだろうから。
この小説に出て来るリサは本編の彼女とは最初の実験に差異があり、リサ本人が原作で受けた実験の際のウィルス投与の10倍の量の投与を受けています。
それでリサ本人がとなってオリ主が憑依した形となりますが、この所為で原作の洋館事件もかなりの変化が出てきます。