ギターヒーローを探して。 作:二期まだ?
「ほら、遠慮せず入って入って!」
「お、お邪魔しまーす……」
ライブハウスSTARRYの上にあるマンションの3階。そこに虹夏ちゃんたちが暮らす伊知地家はある。
下手に近い分、逃げる隙もなかった。強引に引っ張られるままに、ここまで来てしまった。
「いらっしゃい。段ボールに入ってライブしてたギターの……あれ、名前なんだっけ? マンゴー仮面?」
「もー、もっちちゃんだってば! ほらもっちちゃん、こっちは私のお姉ちゃん。STARRYの店長やってるの!」
「お、お世話になっております!」
深々と頭を下げて挨拶をする。箱でライブさせて貰ったうえ、家にまで泊めてもらうわけだからな。虹夏ちゃんはもちろん、星歌お姉さんにも感謝しかない。
「あー、そういうのいいから。適当にくつろいでてよ」
「もっちちゃん、とりあえず私の部屋行こうか!」
虹夏ちゃんに案内され、部屋に入る。
おおっ、現役女子高生の部屋だ。……なんかサブカル感で溢れてるけど。
「適当にご飯作ってきちゃうから、ちょーっとゆっくりしててねー!」
そう言って、虹夏ちゃんは扉を閉めて出ていってしまった。えらいなあ、虹夏ちゃん。学生やりながらバンドもバイトも家事もしてるんだもんなあ。
「……さて、と」
なんだかんだずっとバタバタしてたけど、やっとゆっくり1人きりになることができた。いい機会だし、ここらで自分の所持品をチェックしておこう。
さすがに、いつまでも本名不詳年齢不詳住所不定推定無職のままでいるわけにもいかないしな。
□
で、まあ色々とわかったわけだが……。
「んー、やっぱり知らねー名前だ」
身分証明書らしき物は見つけ出したけど、そこに書かれてる名前に見覚えはない。この記載内容を信じるなら、年齢的には高校生くらいか。もっとも、学生証は見つからなかったけど。やったー、推定無職からほぼ確無職になったよ! HAHAHA! ……はぁ。
スマホも一応持ってたけど、実際に使っていた形跡がまるでない。ロインの友達登録は0人、トーク履歴もなし。これぼっちちゃん超えてね? さすがのぼっちちゃんでも家族くらい登録してるだろ、多分。
あと持ってる物といえば、いくらかの現金、そしてギター。以上だ!
……いやー、ひでーなこの取ってつけた感。家の鍵すらないとか、どっから湧いてきたんだよこの野生のギタリスト。生活基盤もクソもねえ。虹夏ちゃんたちには悪いけど、しばらく伊知地家に居候させてもらわないとかもな、こりゃ。
「もっちちゃーん、ご飯できたからおいでー!」
おっと、呼ばれてる。しかし会ったばかりの人間にご飯まで作ってくれるとか、虹夏ちゃん優しすぎない? 天使か?
□
「何から何までありがとうございます、虹夏ちゃん」
虹夏ちゃんの作ってくれたご飯は無茶苦茶おいしかった。味付けはオードソックスなんだけど、何というか……暖かみがあるというか? 家庭の味ってやつ? 癖のないおいしさというのか、普通の良さというのか……いいよね。
で、しっかりご飯を頂いた後にはお風呂まで貸して頂いた。汚い身体で人の家の中をウロウロするのも気がひけるし、正直助かった。ちなみに、念のため確認したところ、俺の身体はしっかり女の子だった。まあね、だと思ったよ。顔は悪くないだけ良しとしよう。目つきは若干キツい気もするけど。
「いいのいいの! なんか妹が出来たみたいで新鮮だなー」
明るくそう言ってくれる虹夏ちゃん。笑顔が眩しい。大天使か?
「えっ、妹なんてめんどくさいだけだぞ?」
「もー、お姉ちゃん! そんなこと言うと、もうご飯作ってあげないよ!?」
ははっ。やっぱ仲良いなー、この姉妹。
……こういうやり取りを見るたびに、あらためて思う。なんとしても、結束バンドは最高のバンドにしてあげたい、と。だって、結束バンドはこの2人の夢なんだから。
そして、俺にはわかっている。
結束バンドに必要なのは、俺なんかじゃない。結束バンドを最高のバンドに出来るのは――ギターヒーローだけなんだ、ってことを。
なのに……なのに、なんで出てこないんだよ、後藤ひとり!
どこいったんだよあのツチノコ!
「でねー、今日のライブはインストだったんだけど、次はボーカルも入れたいんだよねー……って、もっちちゃん聞いてる?」
「えっ、あっ、はい。そ、そうですね?」
ごめん、考えごとしてて全然聞いてなかった!
「もう話はその辺にして、2人とも寝たら? もっちちゃん疲れちゃってるだろ」
「ごめんごめん、気がきかなくて! 今日は色々あったもんね。続きは明日、学校の後に話そうっか? リョウも呼んでおくから!」
「っていうかもっちちゃん、学校行ってるの? この辺の学校?」
「いえ、実は学校もなくてー……ん、学校?」
……待てよ。
そうか、学校があるじゃないか!
「それっ! それですよ星歌さん!! 学校です!!!」
「お、おう……。え、何がだ?」
なにも、向こうから出てくるのを待ってやる必要はない。
俺は知っている。後藤ひとりが通っている学校を、俺は知っているじゃないか!
出てこないなら、こちらから探し出してやれば良いだけだ。なんでこんな簡単なことに気がつかなかったんだろう!
「待ってろよ、全身ピンクジャージ人外ツチノコー!!!」
クックック……ここが年貢の納め時じゃー!!!!
「……なあ、この子大丈夫なのか?」
「うーん、ちょっとやばい子かも……?」