ギターヒーローを探して。 作:二期まだ?
ぼざろ最高!
「あのー。おーっい。……ねえ、聞いてる?」
小首を傾げる喜多ちゃんの前で、止まっていた俺の頭が少しずつ回り始める。
……そうか、そうだよ。たしかに、ぼっちちゃんはなぜか見つからなかった。
だけどまだこの学校には――喜多ちゃんがいるじゃないか!
喜多郁代。またの名を喜多喜多。
将来ギターボーカルとして活躍する彼女もまた、結束バンドの欠かせないメンバーだ。喜多ちゃんは最初こそバンド経験もなく、ギターも未経験だ。しかもこの時点では、前回のライブを突然バックれた『逃げたギター』でしかない。しかし結束バンドに加入後は驚異的な速度で上達し、重要な役割を果たしていくことになる。彼女の力強い歌声とバッキングギターの魅力抜きに結束バンドを語ることはできない。
「よかった……本当によかった。ありがとう、ありがとう……」
「な、なに? 一体どうし……えっ、泣いてる!?」
今日彼女に会えてよかった。そうだよ、まだ終わりじゃない。ちょっと見つからないからって、なに簡単に諦めようとしてるんだ。見つからないなら、もっと探せばいい。多少時間はかかるかもしれないけど、それも喜多ちゃんがいるなら大丈夫だ。まず彼女が入れば、結束バンドはとりあえずの形になる。そしてあの魅力的なギターボーカルで、ぼっちちゃんが見つかるまでバンドを支えてくれるはずー……。
――いや、本当にそうか?
楽観方向に振り切れた思考の針を、理性が引き戻す。
思い返してみろ。喜多ちゃんをSTARRYに連れて行ったのは誰だ? 結束バンドに引き戻したのは誰だ? 彼女にいちからギターを教えたのは誰だ?
……全部、ぼっちちゃんのおかげじゃないか。
じゃあ、ぼっちちゃんがいない今、喜多ちゃんを結束バンドに引き込むのは無理じゃないか? やっぱり先にぼっちちゃんを探して……いや、それもダメだ。仮にぼっちちゃんを先に見つけたとしても、通う学校が違うなら2人に接点はない。接点すらない人間を、ぼっちちゃんが誘えるか? 絶対に無理だ。
畜生っ。なにか、何かないのか? やっと見つけた光明だ。ここで喜多ちゃんを逃すわけにはいかない。考えろ、考るんだ逆転の一手を!
「どうしたら……どうしたらいいんだぁーーっ!!!」
ジャンジャカジャカジャカジャーーーッン。
「えっ、突然のギター!?」
「えっ、ギター? ……あっ、俺のか」
喜多ちゃんの言葉ではじめて、自分がギターを弾き始めていたことに気づく。
無意識で弾き始めてたわー、かーっ! ホント無意識でなーっ!
いやぁ……なんというか、これは割とギタリストあるあるなんだよね。俺らってほら、難しいこと考えようとすると、頭パンクしてギター弾き始める習性あるじゃん? 一種の逃避行動なんだよね。慣れ親しんだ動作をすることで、脳を正常に保ってるわけ。ちょっと違うけど、授業中のペン回しみたいなものかな。
――うし、なんかノってきた。このまま一曲弾いちゃおう!
勢いのままに、アドリブのソロから明るいイントロに繋げる。
「あっ、このフレーズ……!」
とっさに弾き始めたのは、ギターヒーローが最後に上げていた青春応援ソング。よし、喜多ちゃんも知ってるみたいだな。ちょうどいい。さあ、セッションだ!
目が合う一瞬。言葉はなくとも意図は伝わる。
俺がメロディーを奏で、それに合わせて喜多ちゃんが歌う。音楽に小難しい理由はいらない。ギターにボーカル。2人揃えば即席のツーピースバンドだ。
「――♪」
いい歌声だ。やっぱり、喜多ちゃんの声には力がある。それに上手い。まだ声の出し方とか、感情の載せ方とか、改善できる部分は色々ある。けど、現時点でも相当上手い。ここからさらに実力を伸ばして、虹夏ちゃんたちも合わせれば……ああ、ワクワクする!
ジャカジャーーーーン……キュイッ。
曲を弾き終わり、名残を惜しむように音を止める。
ああ、終わってしまった……。
「すっごーい、感動! ギターうまいのね! えっーと……」
「あっ、もっちです。えっと、あなたの歌も素敵でした」
「ありがとう、もっちちゃん!」
歌ってハイになってるのもあるんだろう。喜多ちゃんが目を輝かせている。
これは……勢いでいけるか?
「……ギター、興味あるんですか?」
「実はそうなの! でも私、全く弾けないのよね……」
「俺でよければ教えられますよ? いつもライブハウスにいるので、そこでなら」
「いいの!? ぜひぜひ! こんなに上手い人が教えてくれるなら、頑張れる気がする!」
よーしっ、食いついた!
あとは……さっさと騙してSTARRYに連れて行くっきゃねえな!
「ワタシ、オシエル。アナタ、ツイテクル。ヘイ、カモン!」
「えっ、なんで急にカタコト……?」
いや、色々話すとボロ出そうだし……。
ドーモ、イクヨ=サン。ワタシハ、モッチ=チャンデス。
サッサト、イクヨ。