リコリス・リコイル・リターン   作:ガスト

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第2話

 

 銃取引現場制圧作戦後、同室であったたきなとは一度も顔を会わせなかった。

 今思い出せば、前回もそうだった気がする。

 千丁もの銃は行方不明、ありかを聞こうにも商人はみんな旅立ってしまって聞けない。

 その原因がリコリスの暴走という要因のせいで作戦終了からずっと事情聴取の連続で肩がこる。

 

「ひとまずはこんなもんか」

 

 延空木事件に関することで覚えていることをあらかた書き出したフキは書き殴られた記憶を時系列順に並べ直す作業を始めた。

 結論から言えば真島とか言うテロリストが銃を持ってるんだからその事をDAに報告してしまえば良いのだが。

 

(信じて貰えるわけないよなぁ)

 

 根拠無し、証拠無し…そんな報告を誰が信じるのか。

 実は自分は未来から来ていていつの間にか過去に戻っていたのですなんて言ったものなら精神病院にぶちこまれてしまう。

 正直なところ、主犯格が真島と言うことぐらいしかあまり覚えていないと言うのが現状なので今出来ることはほぼ無いに等しかった。

 

「フキ」

 

「どうした、エリカ?」

 

 思案を巡らしているとエリカが慌てた様子で部屋に入ってくる。

 それを認識した瞬間、慌ててノートを閉じてエリカの方に向く。

 

「たきなの事なんだけど」

 

「あぁ」

 

「どうにかならないかなって」

 

 現状、たきなは本部の者からかなり詰められている状況だ。

 たきなの中でどのような合理的な理由があったとはいえ今回、DAはラジアータのクラックを隠蔽するために彼女のスタンドプレーで作戦が失敗したと言う筋書きを通すだろう。

 

「無駄だ。私がたきなを庇っても結果は変わらない」

 

「でも結果的にたきなのおかげで私は助けられた訳だし」

 

「お前の言いたいことは分かる。だが味方がいる方向に反動のある機銃を使って掃射するのはどうかと思う」

 

 助けられなかった自分が言うのもなんだがたきなの機銃掃射は決して誉められた行動じゃない。

 確かにたきなは高い射撃センスと正確無比な命中精度を持っているがそれを根拠に機銃掃射をしたなら己を過信しすぎていると思う。

 これは何年経っても考えは変わらない。

 過去に戻るんだったらあと数分前に戻してほしかった。

 

「まぁ、今回どのような処分がくだされようとアイツの為になるんだよ」

 

「え?」

 

「……」

 

 まぁ、結果的にたきなが喫茶リコリコに転属されるのは正解だと思う。

 たきなは千束のおかげで大きく成長することになるし千束にとってもたきなの存在は大きなものになるだろう。

 

「案外、なるようになるんだよ」

 

「……」

 

 まるで未来が見えているかのように呟くフキの姿にエリカはなにも言えなかった。

 

「戻りました」

 

「戻ったか」

 

 おそらくリコリコに転属するために荷物をまとめに帰ってきたたきなを出迎えるフキ。

 

「転属が決まりました」

 

「そうか場所は?」

 

「都内にある支部です。喫茶店に偽装しているそうで」

 

「リコリコか」

 

「はい」

 

 言葉を交わす二人は同室とは思えないほど事務的であった。

 

「錦木千束さんから学べと言われました」

 

「アイツは頭にゴムが詰まっている腰抜けで控えめに言って変人だが実力はDA最強だ。いい経験になるだろう」

 

「そのつもりですが私はすぐに戻ってくる予定です。支部で功績を挙げて…」

 

「しゃあ、あの時なんで撃ったんだよ」

 

 たきなの言葉を遮るようにフキは低い声で言い放つ。

 

「あの場において最も合理的な判断をしたまでです」

 

「合理的?」

 

「はい」

 

「じゃあ、そこにどんな道理や理論があったんだよ?」

 

「……」

 

 フキの言葉にたきなは沈黙を選択する。

 

「お前は優秀だよ。射撃の腕は私より良いし常に冷静に物事を考えて行動しているように見える」

 

「……」

 

「だけどな、私から見れば違う。普段からスタンドプレーが目立つし他の奴ともろくにコミュニケーションも取ろうとしない。私たちリコリスは一人で何十人の敵を殺し回れるヒーローじゃない」

 

「そんなことは分かっています」

 

「分かってないな。お前は自分の腕を過信して傲慢になってるだけだ。京都ではそれで良かったも知れねぇがここじゃ許さねぇ。今のお前は使い物にならねぇんだよ!」

 

「っ……」

 

 かなり強めに言ったがこれで良い。

 実際に現在のたきなは人格的に問題が多々ある。連携を重視するリコリスの方針とは合わない。

  

「分かったならとっとと出てけ」

 

 そう言って自分の銃を持って出ていくフキ。

 こういった手前、一緒に居づらいのもあるため訓練場で時間を潰すことにしたのだった。

 

ーー

 

「…ふっ」

 

 この年齢が全盛期だと思っていたが出荷後に覚えた格闘術を一通りやってみたら全身筋肉痛になりかけた。

 まだまだ自分も成長出来ることに喜びを覚えながらもたきなのことを考える。

 

(言い過ぎたか…いや、あれでいい)

 

 現在のたきなは言ったように自分の実力を過信している節がある。残念ながら射撃の腕だけなら当時の自分ではたきなには一歩劣ることは事実だった。

 正直に言えばたきなはファーストになれるだけの実力を持っている。たが彼女がセカンドなのは指揮官に向いていないからだ。

 

 サード、セカンド、ファーストの差は単純に実力があるかどうかが大きな判断基準だがセカンドからファーストになるためには他の要素も判断基準に入ってくる。

 それは指揮能力だ、ファーストはその立場から現場指揮官として活動することが求められる。

 冷静な状況判断、司令部の命令を忠実に実行する規律感、部下の指揮統率するためのコミュニケーション能力等が必要とされる。

 なお、千束はずば抜けた戦闘能力を買われて最速でファーストに上がった異端なので勘定にいれないこととする。

 

「随分と熱心だな」

 

「司令」

 

 訓練を一通り終えて休憩していると施設を巡回していた楠木司令が声をかけてきた。

 それに対し直立不当で傾聴の姿勢を見せる。

 

「たきなから聞いただろうが人事異動で彼女は支部に転属が決まった」

 

「はい、上層部の決定に異論はありません」

 

「そうか」

 

「ですが今回の件、否は私にもあります」

 

 隣にいた秘書が咎めようとするが楠木はそれを制止しフキに続けるようにさせる。

 

「自身の実力を過信した、たきなのスタンドプレーは作戦前からも兆候がありました。それを事前に察知し現場指揮官として止められなかったのは私にも責があると考えます」

 

「そうだな」

 

「今回の通信障害の件含めて、自身の責任を取らせて頂ければ幸いです」

 

 そう言うと深々と頭を下げその場を去るフキ、それを静かに見送る楠木。

 

「珍しいですね、フキが司令に意見するなんて」

 

「今回の件で思うところがあったのだろう。自身の立場を理解しつつ自身の意見を挟む。どこでそんなやり方を覚えたのやら」

 

 知らないうちに人は成長していくものだ、それはフキも例外ではない。

 

「あの小生意気なくそガキもああであればDAに置いておけたのだがな」

 

 そう言うと楠木は脳裏に浮かぶ小生意気なファーストリコリスに睨みを効かせると歩を進めるのだった。

 

 

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