虹夏のドラムになるだけのお話   作:愛と孤独

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第6話

「たしか、あのライブハウス。名前が書いてあったよな」

 

僕は、喫茶店でコーヒーを飲みながらこめかみを揉む。

思い出せそうで思い出せない。

スタ……スタ……スターリンだとか、レーニンだとか、そんな名前だったんだ。

素寒貧でも、スカタンでもない。

 

「うーん」

 

とりあえず、コーヒー飲んじゃおうか。

お気に入りのこの店のビターブレンドは美味い。

飲み終えると、僕は、行きつけの古着屋に行くことにした。

そこの店員のダイスケってやつは、音楽に詳しい。

ライブハウスについて知ってるかもしれない。

 

 

 

 

「ちわっす」

 

僕は、古着屋の扉を開けた。

ぼろぼろの扉だ。

売ってる服に合わせて、扉までわざとぼろくしているんだろうか?

顎ひげを伸ばしたデブ……ダイちゃんが、俺を見て手を挙げた。

 

「よぉ。どうしたよ」

「服を見に来る以外に用事あるか?」

「俺に会いに来たのかと思ってさ」

「言ってろ……と言いたいところなんだけどさぁ」

「ん?」

「マジで、ダイちゃんに会いに来た」

「え、なに。俺、モテキ!?」

 

きゅーんって顔をすんなよ、キモい。

 

「いや、ダイちゃんさ、音楽詳しいだろ?」

「あぁ、好きだぜ」

 

今は、ちょっとレイドバックしたサーフミュージックが流れている。

店内は、中古レコードも取り扱っている。

 

「ライブハウス。探してるんだ」

「へぇ。どんなハコ?」

「うーん、地下にあってだねぇ」

「うん、うん」

「名前が、こう、スターリンみたいな」

「スターリンねぇ。ずいぶん革新的だな」

 

ダイちゃんが笑った。

 

「いや、スターリンじゃないんだ。スターリンみたいな感じなだけ」

「トロツキー?」

「いや。そういう、ソ連ネタじゃない。スタ……なんちゃらなんだよ」

「あぁ、そういうことね」

 

ダイちゃんが顎髭をなでる。

 

「スタイルⅩ、スタンダード・プレイ、スタッカート」

「違うなぁ」

「うーん」

 

僕の、妄想なのか?

やはりあれは、ただのとりとめのない夢なのだろうか?

 

「あ、そういうと」

「ん?」

「なんか若いねーちゃんが始めたライブハウス、あったな」

「何て名前」

「いや、こう、あんまロックらしくないんだわ。キラキラネームっつぅか」

 

しばらく考え込んで、ダイちゃんが、手をぽんとたたいた。

 

「思い出した! スターリーだよ! ほら、星がいっぱいキラキラ~みたいな意味の。スターリーナイトっていうじゃん!」

 

スターリー!!

 

「それだ!!!!」

 

僕は思わず叫んだ。

 

「ど、どこにある? その店!」

「お、おぉ、どうしたよ」

 

ビビるダイちゃんに、「これ買うから」とどうでもいい安Tシャツを握らせる。

店の位置を、教えてもらった。

 

「あんがと、ダイちゃん」

 

店を出ようとする僕に、ダイちゃんが言った。

 

「店長さんに惚れたか?」

「あぁ?」

「美人で有名なんだよ、そこの年若き店長さん!」

「へぇ」

 

あれ?

違ったか?

その子を探してるのかと思ってたぜ。

そんなことをぶつくさ言うダイちゃんを無視して、僕は店を出た。

 

 

 

つづく

 

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