鉄屑の赫き   作:姫神__

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雷鳴

 ハンドレッド部隊は東西南北の四方に分かれ、人類に敵対するニケ“イレギュラー"の捜索を開始した。

 

 朝焼けも薄まり、青空がはっきりし始めてきた頃。西側を捜索しているのは、METAL-01ゴルドとMETAL-02シルヴァを中心とした部隊である。

 

 中にはシルヴァにいつも叱られているソルジャーF.A.とプロダクト23のお転婆コンビもいる。

 

 今回の任務はイレギュラーの捜索の他にゴルドとシルヴァに託された新兵器「ヌァザ」と「ミダス」の試験運用も兼ねている。ミシリスの兵器開発部主任、エルヴィス・エドワーズからの依頼だ。

 

 ゴルドの右腕は金色に、シルヴァの左腕は銀白に、陽光を反射させ輝いていた。

 

「シルヴァさん、いい天気で良かったですね!」

 

 ファルコンが満面の笑みでシルヴァへ歩み寄る。その隣にはプロダクト23も一緒だ。

 

「もう、あなた達。ピクニックじゃないのよ。学校なんかで過ごしたから学生気分にでもなったのかしら?」

 

「厳しいですね、シルヴァ。まだラプチャーの気配もありませんし、出発したての今だけ、良いではありませんか」

 

 ゴルドが割って入ってくる。この2機はニケになったばかりだ。何十年と戦っているゴルドやシルヴァと比べて、地上に出ることそのものがまだ新鮮なのだ。

 

「それでもよ。今までもこういう時に油断した子達から死んでいった。たとえ穏やかな風が吹いていても、数分先には硝煙が香るのよ」

 

「まあ、それもそうですが…」

 

「あなた、前哨基地から出てくる前はあんなに怖気付いていたのに、実際戦場にでるとすぐ間が抜けるんだから……」

 

 西班のニケ達は住宅街の通りを真っ直ぐ進んでゆく。学校の西門から伸びるこの道は、両脇に建つ家々にガレージがあり、何人もの家族が一つの家に住んでいたことが伺える。

 

 どの家にも小さな自転車や芝生があり、窓からぬいぐるみが顔をのぞいている家もある。子供が多く住んでいた地域だったのだろう。通りで、後者も立派だったわけだ。

 

 ゴルドがぴたりと立ち止まった。その背中にファルコンがぶつかる。

 

「うわ!? ど、どうしたんですか?」

 

「聞こえませんか? 羽音、駆動音。飛行型のラプチャーです」

 

 慌ててプロダクト23が双眼鏡を手に周囲を警戒する。

 

「あ! 13時の方向、距離2km、ラプチャー発見! 飛行型20機。砂煙が立っています、地上型も多いと予測されます」

 

「こちらゴルド、西班の各員に告ぐ。戦闘用意、飛行型ラプチャーに上を取られないでください! エンカウンター!」

 

 久しぶりに規模の大きい戦闘が起きそうだとゴルドは思った。アサルトライフルのグリップに力が入る。

 

「指揮官、聞こえますか? こちら西班、会敵しました中規模集団です」

 

「こちらライトニング。ゴルド、君の指揮で戦って構わない。ロード級がいるかもしれない。注意しろ」

 

「ラジャー!」

 

 ゴルドは通信を切ると辺りを見渡して戦闘の方針を固める。

 

「23番、飛行型の識別は可能ですか? シルヴァは防御型と前衛を! 防御型ニケはシールドを展開!」

 

 ファルコンとI-DOLL・フラワー、RR型が前に出て大楯を構える。その後ろで何機かのニケがロケットランチャーを肩に担いだ。

 

「飛行型は後でスナイパーライフルで処理します。ロケットランチャーは飛行型直下に広範囲爆撃を。照準定め……発射!」

 

 ゴルドの的確な指示でニケ達が引き金を引く。ヒューウと音を立てた弾頭に火が付き、煙を吹き出しながら弧を描く。

 

 数秒後、激しい爆発音が響いた。立ち上った煙と共に飛び散る小型ラプチャーの姿もいくつか見て取れた。直撃だ。

 

「区画整理のされた土地は距離計測し易くていいわね」

 

 隊の誰かがそんな事を言いながら砲身を背中に担ぎ直した。

 

「ゴルドさん、飛行型はキャップヘッド、カバード……グリッターもいます!」

 

「自爆型ですか、厄介ですね……。スナイパーライフルを持っている者はグリッターを優先的に排除! このまま敵陣へ攻め込みます!」

 

 ゴルドの合図で一気に駆け出す。その最中、プロダクト08がグリッターを撃ち落としている。1機、2機、3機。敵集団との距離はあと800m。

 

「クソ、雑魚が周りをウヨウヨと。邪魔くさいッ」

 

「接敵します! 飛行型はまだ10機以上、グリッターも2機が健在です!」

 

 プロダクト08とRR型が2機撃ち漏らした。このままだと前方と上空から立体的に包囲される。ゴルドは次にすべきことを考えた。焦らず、迷わず、死なないように。次にすべきことは……。

 

「まずい、思ったより減らせませんでしたね。あれを試してみる良い機会です」

 

 ゴルドは右腕に力を込めて天に翳す。超電磁放出装置“ミダス”の出番がきた。

 

「全員、伏せて!」

 

 その瞬間、全員が見たものは閃光だった。眩い稲妻。

 

 その瞬間、全員が聞いたものは雷鳴だった。迸る電流。

 

 頭上で二つの爆発が起きた。グリッターが誘爆したのだ。半径50mに及ぶ小規模な電磁パルス攻撃がその場にいた小型ラプチャー達を次々と機能不全に追いやる。

 

「すごい……。雷が落ちたかと思ったわ」

 

 シルヴァがミダスの威力に感嘆の声を漏らす。

 

「今です! 一斉射撃!」

 

 動きの鈍くなったラプチャー達はもうただの的でしかない。一見危うかった戦場もなんとか落ち着きを見せようとしていた……はずだった。

 

「こちらメルト。ゴルド、すごい音が聞こえたけど、もしかしてミダスを使ったのね? 気をつけて。アルゴスの捜索範囲の最外端、大きなラプチャーの反応がそちら側へ向かっていくのが見えたわ!」

 

「この気配は……ロード級!?」




「デイリーアーク特集:双子の指揮官」

記者:今、アークで噂になっている指揮官がいます。それは双子の凄腕指揮官、トマス兄妹です!

フレイ:どうも、兄のフレイ・トマスです。

フレイヤ:妹のフレイヤよ。よろしく。

記者:お二人は指揮官になってから2年の間に、多くの作戦を成功させていると伺っています。ずばり、その秘訣とは?

フレイ:簡単です。我々が1部隊ずつ率い、2部隊による連携。ロード級ラプチャーなど恐るるに足りません。

記者:では、もし……タイラント級ラプチャーが現れたら?

フレイヤ:たった2部隊でタイラントを? 戦術的にあり得ないわ。よほど優秀な指揮官でも、いくつもの部隊を合わせた協同作戦を立てるはずよ。

フレイ:まあ、我々なら不可能ではない、と言いたいですがね。強敵であっても僕達が勝利を重ねられたのは、双子のコンビネーションとでも言いましょうか? とにかく連携のよく取れた動きというのは、相手からしたら厄介なんですよ。
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