鉄屑の赫き   作:姫神__

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群体の強さ

 定刻になり指揮官室にハンドレッド部隊の各分隊長が集合し始める。ハンドレッド部隊は数人から十数人のニケから構成される8つの分隊に分かれている。全てが戦闘部隊だが部隊ごとに諜報活動までできる者や情報処理に長けた者がいるなど特色が出ていた。

 

 メルトの入室により全員が揃った。

 

「これより打ち合わせを始める」

 

 今回話し合うことは次の任務についての概要である。任務は砂漠地帯に増加したラプチャーの殲滅。部隊として砂漠での戦闘経験はあるようで、作戦遂行の話は順調に進んだ。

 砂丘に陣を敷いて高所を確保しラプチャーを迎え撃つ。また、デコイを利用しそのための誘導を補う。なお作戦ポイントから離れた地点にある構造物を拠点とし数日間作戦地域に留まれるよう備えることで支援や撤退への糸口を残す。

 

 ただし重要になるのは任務の裏に隠された一抹の不安である。この可能性を考慮して作戦を進めなければならない。

 

「分隊長は各分隊に連絡をしてほしい。この作戦でもしかしたら想定外の出来事が起こるかもしれない」

 

「指揮官、それは一体…」

 

分隊長の一人、METAL01-ゴルドが尋ねる。他の分隊長たちも怪訝そうにこちらを見ている。

 

「もしかしたら、だ。どの程度の確率かは断言できない。が、この作戦ではタイラント級ラプチャーの出現、或いはそれ以上の敵と見える可能性がある」

 

「タ、タイラント級?中央政府は我々に犬死しろというのですか!?」

 

「落ち着いてちょうだい…」

 

 激昂するゴルドをもう一人の分隊長、METAL 02-シルヴァが宥める。だがその不安はやはり大きい様であった。他の分隊長たちもそうである。そしてシルヴァが続ける。

 

「しかし、指揮官。いくら我々が100機のニケから成る部隊であってもタイラント級、もしくはそれ以上の存在と交戦するとなれば甚大な被害が想定されます。数多けれど、所詮我々は……」

 

「量産型だから、とでもいいたげだなシルヴァ、ゴルド。みんなもそうだ」

 

 彼女たちは眉を顰める。

 

「我々はハンドレッド。君たちは量産型だが雑魚ではない。私が群体の持つ強さというものを君たちに教えよう」

 

「アークができる遥か昔から、戦いにおいて数というのは重要だったのだから。その本質は今も変わらない。我々がラプチャーから地上を奪えずにいるようにね。以上、作戦決行は明後日、07:30に各分隊は前哨基地正門に整列」

 

 打ち合わせを終え分隊長たちは指揮官室から出て行く。最後にシルヴァがそっと扉を閉じて退室する。引きずるような足音だけが遠ざかっていった。

 

 翌日、日が沈み始めた頃、指揮官室にゴルドが訪れた。

 

「ゴルド、よく来たね。まあ座ってくれ、今何か飲み物を準備するよ」

 

 読んでいた資料を伏せてページが閉じないようにしてからマグカップ2つと電気ケトルを持ち出す。棚の中に何か良いパーフェクトがないか探しているとゴルドは資料に目がいったようだった。

 

「指揮官、何の資料をお読みになっているのですか」

 

「兵法書だよ、それも古代のものさ」

 

 古代、アークができるよりずっと昔。今の時代がまだ絵空事だろうと思われていた時代の暮らしさえ、古代の人間からしたら想像もつかないだろう。

 

 手に握るのは剣、槍、弓、盾。馬も牛も象だって武器になる。数千年前の人類がどのように戦争をしたか、集団と集団が戦う時どんなことをセオリーとしていたか、ラプチャーとの戦闘にも活かせないものかと昔から様々な時代の兵法書を読んでいる。

 

「へぇ…隊列の組み方や地形利用が如実に戦果へ現れるのですね。私たちはラプチャーを前に銃を構えるばかりですし、縁のないものかと思っていましたが、実際読んでみると面白いのですね」

 

「明日の作戦でも利用する機会があるだろう。臆することはない。勝てない敵がいれば即刻退却を選ぶとも。昨日も言ったが、ニケが100機いるんだ。普通の分隊ではない。その強みを忘れてはならない」

 

 明朝、前哨基地正門に100機のニケが並ぶ。彼女たちが向かう戦場は尋常な砂原か、それとも深奥か……。




「会話記録:チャットログー試験前夜ー」

学生A「おい、あの映画見たか? 機械の宇宙人ってやっぱロマンあるよな!」

学生B「俺はごめんだね。大御所を使えばよかったのを人気取りの新人ばかりで演技もグ
ダグダ。脚本だって原作小説の良いところを省いてる。ああいう絵空事は実写化しちゃダメなんだよ」

学生A「えー、めっちゃリアルだったんだけどなぁ」

学生B「そんなことより明日、世界史の小テストあるだろ、もう復習は済んだのか?」

学生A「ああー。そんなのあったな。範囲どこだっけ? いつもの選択式の問題だよな。誰の名前が聞かれるんだろ……」

学生B「ったく、仕方ねぇな。おそらく答えになる選択肢はハンニバルだ。要するに、数だけじゃ勝てないってことをやってのけたのがハンニバルだって覚えときゃなんとかなる」

学生A「お、ハンニバル! 映画にも出てきたわ!」

学生B「宇宙船で戦争するような未来の設定なのに古代史の人名が残ってるんだよなww」

学生A「でもかっこいいだろ?」

学生B「まあ、そこは認める。戦闘シーンのCGだけは神ってた」
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