鉄屑の赫き   作:姫神__

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帰還

 混迷極める戦場に怒号が響く。卵から孵るが如く産まれた小型ラプチャー達は地を、壁を、柱を這い回って攻撃を仕掛ける。ハンドレッドのニケ達は量産型と言えど、訓練を積んでいる。I-DOLL・サンはいち早く反応した。

 

「12番! イーグル! 混戦だ。三面に展開するぞ! エンカウンターッ」

 

 近くに居合わせたプロダクト12とソルジャーE.G.は即座にサンの後方に付き、三方向を迎撃する形に陣形を組む。

 

「サン、12(トゥエルヴ)、背中を預けましたよ」

 

 ソルジャーE.G.の目の前には小型ラプチャーが2機、屋外から侵入した中型ラプチャーが1機。アサルトライフルによる連続射撃で中型を撃破するも、小型の動きになかなか照準を合わせられない。

 

「くっ……こいつら、速い」

 

 ドーム内の各所でこのような小陣形を組んだ戦闘が繰り広げられていた。メルトはドームの中央、小型ラプチャーが出現した辺りに居たが、指揮官のいる南側、ドームの入口付近へ向かってパニックを起こしたニケに喝を入れながらラプチャーを撃破していった。

 

「指揮官、危険です。私の後ろに!」

 

「メルト、助かる。見たところ半数は陣形を組んでいるようだな。ゴルド、戦力の足りない分隊を回って統合しろ。オズマはメルトと共に混乱しているニケを診て回るんだ。レイディは戦場の監視をしながら状況報告。2人を誘導してくれ」

 

「ラジャー。早速ですがドーム北西エリアに固まっている2分隊が壁際に押し寄せられています。逆に北側にいる分隊の周辺はラプチャーが少ないのです。それとタイラント級の近く、中央エリアで特にパニックが起こっているようです」

 

「分かった。ゴルド、ドーム北エリアを制圧した後、小隊を連れて北西エリアを挟撃だ。そこで小隊を編成して北から北西エリアを優勢にする。そこを起点に西側を制圧しながら俺のいる南エリアへ来てくれ」

 

「オズマ、中央エリアはかなり混戦している。メルトが私の元へ戻る途中に南側を少し落ち着かせた。南側を再起させろ。後の誘導はレイディの通信をよく聞け。以上」

 

 ゴルドが北エリアへ向かうとI-DOLL・サン、ソルジャーE.G.、プロダクト12の3機が分隊を組んでいた。ソルジャーE.G.が小型の処理に手間取っており、接近を許してしまっている。

 

 しかし、ゴルドにとっては、動きを予測すれば問題ない。瓦礫と射撃で動線を上手く誘導し、偏差射撃をする。見事、一撃でコアを仕留める。

 

「ゴルド、助かりました」

 

「イーグル、問題ありませんよ。サン、12(トゥエルヴ)、私と共に北西エリアへ向かいましょう。他の分隊が押されているので援護します」

 

「ラジャー」

 

 ゴルド率いる分隊は北西エリアへと向かった。2分隊と聞いていたが、向かった頃には3機しか残っていなかった。彼女達が壁を背にして戦闘不能になったニケを庇いながら戦っている。中には重症ですぐにでも脳を保存カプセルに入れなければならない個体もいた。

 

「ゴルド分隊、援護を開始します! エンカウンター!」

 

 一方、メルトとオズマは南エリアから中央エリア付近のニケを中心に場の鎮圧に努めた。

 

「メルト、錯乱状態からフレンドリー・ファイアを貰ったニケも複数いるようです。あ、前方診てください!」

 

「あ、頭が……私の頭がぁ! いやだ! 嫌だ死にたくない! ブレイン・シェルターを! あ、ぁあ!! 頭が! 頭が!」

 

 2人が中央付近に来ると先程とは別のプロダクト08が四方八方に乱射し、我を失っていた。まずは彼女を抑える必要がありそうだ。

 

「オズマ、私が注意を引くから、後ろから羽交い締めにして!」

 

 2、3発ライフルを撃ち、プロダクト08の注意をこちらに向ける。

 

「ひぃ! ラプチャー! 倒さなきゃ! 頭が! 頭がぁああ!」

 

 銃弾を避けながら接近し、オズマが後ろから彼女を抑えた隙を見て、すかさず顎へ拳を入れる。プロダクト08は脳震盪を起こして力なくうなだれ、膝を突いた。

 

 しばらくして、メルト達が南エリアを落ち着かせ終わる頃になると、ゴルドが小隊を率いてやってきた。

 

「メルト、無事でしたか。私たちの方は数機失いましたが、なんとか制圧完了しました」

 

「ええ。こちらもなんとか落ち着いたわ。東側はシルヴァ達が制圧してくれたみたい。残存ラプチャーもいないようだし、一旦指揮官の元に戻りましょう」

 

 南エリアへ戻ると指揮官とレイディが話し込んでいた。

 

「指揮官、残存ラプチャー0、状況終了です」

 

「御苦労。なんとか勝てたな……。ん、皆こちらに集まりつつある様だな。通信、状況終了。隊員は南エリア、私の元へ集合せよ」

 

 ぞろぞろとニケ達がこちらへ集まる。改めて見ると、相当な被害を受けていたことがよく分かる。肩を組んだり、動けなくなった者を負ぶったり、抱いて歩いたりしている。

 

「皆、御苦労だった。メルト、被害報告を」

 

「はい。ソルジャーシリーズはF .A.(ファルコン)V .T.(バルチャー)が1機ずつ。プロダクト時リーズは8番、29番が1機ずつ。12番が2機。I-DOLLシリーズはサン、オーシャンが1機ずつ。ルナが2機。計10機の損失です。脳をカプセルで保存した者が2機、自力で動けない者が4機。破損率が50%以上の者が24機。それ以下の者が38機、損傷が軽微な者が22機です」

 

「そうか……だいぶやられてしまったなぁ」

 

「何はともあれ、我々の勝利だ、と言いたいところだが、すまない。私の力不足だ。だが、君たちは確かにタイラント級に勝利した。その事実は変わらない。それだけは胸に留めておいて欲しい。そして、次からは、もっと良い戦いができるよう、君たちを指揮してみせる」

 

「全軍、撤収。動けなくなったニケは破損率の低い者が運搬、回収可能な装備をトラックの荷台へ。帰ろう、前哨基地へ」

 

 数時間の移動の後、前哨基地へ着いたらすぐに食事を済ませた。汚れた制服のまま外へ出ると、暗い空に薄く雲がかかっていた。切れ間はなく、残された僅かな月明かりが滲み出ている。

 

 この日の晩は、基地の裏手にある広い空き地を使って、同胞達の墓標を立てた。ボディは各企業の廃棄回収へ回され、新たな量産型に再生産されることになるだろうが、十の命が確かに失われた。欠員を補充しても、それだけは忘れないように土を盛る。

 

 黒褐色の土を押し固めて、手の平にベタついて、払い落としてを繰り返す。何度も何度も。

 

 30分くらい経っただろうか、やっとの思いで塚が一つ出来上がる。土まみれの手をぐっと握り、曇り空を見上げる。

 

 前哨基地では少し前まで小雨が降っていたらしい。やけに土が湿っているわけだ。ライトニングが握り拳を開くと、また土片がぽろぽろとこぼれ落ちた。




「作戦報告書:砂漠地帯におけるラプチャー急増地域の殲滅戦」

日 時:**年**月**日
部隊名:ハンドレッド中隊
指揮官:ライトニング・サンダース
階 級:大尉

05:30
 作戦行動開始。斥候部隊としてMETAL-05レイディ分隊計5機の行軍開始。斥候部隊は中継地点の簡易設置及び偵察を行う。

07:30
 前哨基地の正門より目的地へ向け本隊の行軍開始。内、ニケ20機を2分隊に編成。METAL-07ルーシィ部隊へ軽量ボディでの兵站輸送を指令。METAL-08オズマ分隊へ中継地点の整備、物資の補給管理を指令。

13:00
 本隊が中継地点Dまでの行軍を完了。ほぼ同時間に斥候部隊から入電、大型ラプチャーの出現を報告。タイラント級に相当すると報告有り。本隊を目標地点まで進軍開始。また、METAL-08オズマ分隊計10機へ地点Dの遺跡群を攻撃陣地として構築するよう指令。

13:20
 目標地点へ到達。該当ラプチャーを確認、タイラント級に相当すると判断。中継地点Dの攻撃陣地へ誘導し殲滅戦を開始。

時期不明
 大型ラプチャーを撃破。同時にラプチャー内に貯蔵されていたコアから小型ラプチャーが発生、コーリング・シグナルを発する。この際、コーリング・シグナルによって外部のラプチャーが中継地点Dへ侵入。残存ラプチャーの殲滅を指令。

14:00
 ラプチャーの殲滅を確認。目標地点付近のラプチャーを殲滅したと判断し、退軍開始。

20:30
 前哨基地へ帰還。本作戦行動の全行程を終了する。

被害報告
【死亡】 10機
【保存】 2機
【大破】 4機
【中破】 24機
【小破】 38機
【軽微】 22機
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