ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第10話となります。
ストライカーユニットの解析を終えたウルスラは工具を置く。
「これ、外観はストライカーユニットと同じですが、内部機器は全然違うんですね」
「当然ですよ」
隣で整備をしていた零治が返答する。
「でも、これじゃあストライカーユニットとはまったくの別物です。整備できる人もいないんじゃ」
「俺以外にこのストライカーユニットを整備すると思いますか?」
「言われてみれば零治さん以外誰もいませんね。でも私は整備してみたいと思いますよ。実に興味深いです」
眼鏡の奥で輝いた視線が、こちらを見つめる。
まあ、そう言うだろうとは思っていた、研究熱心な彼女であるから。
「正直1人で回すにはギリギリですが、何とかなっているので不要ですよ。そもそもこの基地にある機体以外にこれを作り出すことは不可能なのだから」
「相変わらずですね……整備や開発に関して、人に頼らないのは。」
「短い間だったのに、俺のことわかってますね」
そう口にして整備を再開する。
日が傾いてきたころ、軍の格納庫にソフィアとクロエが訪れていた。
「琴村さん。もうすぐ夕食ができるので、早めに切り上げてくださいってベアトさんが」
「あれ?そちらの方は?」
「もうそんな時間か。って、クロエとソフィアは会うの初めてだったか。こちらはウスルラ・ハルトマン中尉だ」
「ウルスラ・ハルトマンです。零治さんとは昔馴染みなんです。開発仲間みたいなものですね」
ウルスラはそう言って笑みを浮かべていた。
「琴村さんと同じ整備兵や兵器の開発ですかー。でも、名前呼びなんて仲がいいんですね」
「それなら、琴村博士と区別するために名前で呼んでいたんですよ。それが今も抜けてなくて」
「琴村博士?」
名前を聞いたクロエとソフィアが首を傾げる。
「俺の父親のことだ。昔軍に所属していた」
「なるほど、だから琴村さんも軍に入隊したんですね」
クロエが納得したように頷く。
「ま、そんなところだな。ウルスラさん、こっちにはいつまでいるんですか?」
「知りたいことは知れましたので長居をするつもりはありませんよ。もう少し解析したいので明後日くらいまでは滞在させてもらいます」
「そうですか。なら、部屋を用意させますね。ゆっくりしていってください。エリザベート、ラーヴァ。ウルスラさんを案内してやってくれ。俺も片付けたら行くから」
そう言うと工具を手にする。
「了解です」
「では、行きましょうか」
「はい」
3人は格納庫を出て、食堂へと向かう。
残っていた零治はため息をついていた。
「……ったく。ウルスラさんが直接来るなんて予想外だったな。気を付けないとな」
そう言って工具や道具を片付け、ストライカーユニットの扉を閉じる。
すでに整備は完了しているので、いつアルカ・ネウロイが現れても出撃できる状態にしてあるのだった。
翌日、ベッドの上で零治は目を覚ました。
まだ早い時間なのか、窓の外には薄暗い空が広がっている。
時計もまだ4時を指していた。
「まだ早いな……」
そう口にした時だった。
不意に意識が覚醒するように反応を探知する。
「アルカ・ネウロイか……直人起きろ!」
急いで軍服に着替え、机に置かれた自動拳銃「M712拳銃」とボウイナイフを懐にしまう。
「……んあ?なんだよ?まだ早いだろ」
直人は寝返りを打つように背を向ける。
「アルカ・ネウロイだ!」
「なに!?」
今度は飛び起きるように体を起こし、こちらを睨む。
「俺は先に格納庫に行く。ベアトたちを起こしてこい」
「わかった、すぐいく!」
2人は部屋を出ると、それぞれ廊下を駆け出す。
格納庫前に近づくにつれて、零治は違和感を感じていた。
「この反応、格納庫の方向から?」
自分が探知している反応は自分が向かう方向、格納庫の方から感じていたのだ。
到着した零治はその足を止める。
視線の先は確かに人影があった。
しかし、その人影には見覚えがある。
「お前、ユースティアナ?」
彼女の名を口にする。
そう、目に前に立っていたのはユースティアナ・ローゼンクロイツであった。
しかし、その雰囲気はどこか違っているようにも感じる。
「やっぱり来たわね。あなたも私を感じ取ることができるように、私にもあなたを感じ取ることができるみたいね」
「何を言って……」
「あなたがここに来たのはアルカ・ネウロイの反応を探知したからでしょ」
自分がなぜここに来たことが分かっていたのか、そんな口ぶりで鋭い視線を向ける。
「お前は誰だ?ユースティアナじゃないだろ」
M712拳銃を構える。
明らかに今目の前にいる少女は、自分の知るユースティアナではない。
それは自分がアルカ・ネウロイの反応を感じていることや口調も異なっていることから感覚的にわかった。
「私はティア……」
「ティア?」
初めて聞く名前だった。
彼女がそんな名前で呼ばれていることも聞いたことがなかったからだ。
「あなたには答えてもらうわ。このストライカーユニットについて、そして私の体についてもね」
「ストライカーユニット?」
「ネウロイのコアを使用したストライカーユニットなんでしょ。あのストライカーユニットは」
彼女は格納庫内に並ぶストライカーユニットに視線を向ける。
「……」
「答えてよ」
「……」
「答えなさいよ!琴村零治!」
「それは……っ!」
彼女の叫びと共に視線を空に向ける。
もう1つのアルカ・ネウロイの反応を感じたのだ。
薄暗い空には人型のアルカ・ネウロイの姿があった。
「——!」
悲鳴のような声を上げ、ネウロイは急降下し接近する。
両手からは機銃のように赤い閃光を放つ。
「っ!」
ティアは、前に出ると魔法陣のようなシールドを展開する。
同時に体を押された零治が尻もちをつく。
「ティア、お前……」
「下がって!今、守ってあげるわよ。あなたには答えてもらう必要がある。この子のためにも」
彼女は一緒に守るように、シールドを展開していた。
次々に放たれる攻撃に次第にティアの表情が曇っていく。
「ティア無茶だ」
「ぐっ……」
ついに、シールドが耐え切れず、崩壊する。
ティアが地面に倒れこむ。
「ティア!ぐあ!」
零距離まで接近したアルカ・ネウロイはそのまま零治を蹴り飛ばす。
「うう……」
「くっそ!」
態勢を立て直し、「M712拳銃」の引き金を3回引いた。
放たれた弾丸はすべて背中に命中する。
しかし、弾丸を受けた体はすぐに再生を始め、すぐに傷が塞がった。
やはり通常の弾丸ではネウロイを倒すことはできない。
「——!」
「っ!」
叫びと共に目標を切り替えたのか、こちらに顔を向けた。
格闘技のように放たれる拳を左右に動きで紙一重回避する。
「ユースティアナさん!」
「零治さん!」
「クロエ?それにベアトか!」
その一瞬、アルカ・ネウロイから視線を外してしまった。
隙を突くようにアルカ・ネウロイの右手は零治の首をつかみ取る
「ぐっ!は、はなせ……」
左手が赤く発光する。
それがネウロイの攻撃準備によるものであることを理解し、引き抜いたボウイナイフを突き刺す。
やはり効果がないのか、左手は発光を続けていた。
「まず……い」
「うう……ここは?」
倒れていたユースティアナも体を起こしてこちらを見つめた。
「やばい……零治!はやく逃げろ!」
「零治さん逃げて!」
次の瞬間には赤い一閃が零治の体を貫く。
「う、ぐあ」
抵抗していた腕は力が抜けたように落ちる。
ユースティアナは理解が追いついていなかった。
他のウィッチたちも同様であった。
目の前で彼が……琴村零治がアルカ・ネウロイによって殺害されたのだ。
「零治!」
「零治さん!」
真っ先に声を上げたのは直人とベアトであった。
「ぐっ!野郎!」
「よくも!」
ヨハンとアビゲイルが怒りを露にしていた。
剣を握り、雷を手に発生させていた。
攻撃を行うものの振り下ろされた刃は空を切り、放たれた雷は地面を抉る。
零治の体を地面に投げつけると逃げるように空を舞い、そのまま姿は見えなくなった。
悪態を突くヨハンとアビゲイルであったがその横を2人が通り抜ける。
「零治!」
「零治さん!」
駆け寄った直人が名を叫ぶ。
返事はなく、軍服は赤黒い血に濡れている。
その腹には、ネウロイによって貫かれた穴が開いていた。
「嘘、なんで……」
ユースティアナは放心状態のまま、そんな言葉を紡ぐ。
「駄目だ、血が止まらない」
「悪いな……ミス、しちまった」
薄れゆく意識の中で言葉を紡ぐ。
「零治さん、しゃべらないで。このままじゃ死んじゃいます」
「医務室に運ぶんだ。早く!」
その一声で零治の体は医務室へと運ばれていく。
「……嘘、こんなの」
そんな中、ユースティアナは地面に座り込んでいた。
「ユースティアナさん、大丈夫?」
「なんで、こんなことに……」
「エリザベート、ラーヴァ。お前たちはローゼンクロイツについていてやれ。こっちは私たちがついてく」
「は、はい!」
ヨハンの指示で2人が返事をしていた。
医務室へと向かう直人たちを見送り、クロエは再びユースティアナの顔を見つめる。
「ユースティアナさん、何があったんですか?」
「分からないです。私にも何がなんだか……」
「でも、ローゼンクロイツさんは琴村さんと一緒に居たんですよね?そこでアルカ・ネウロイに襲われたってことじゃないんですか?」
「……分からないんです!」
その叫びと共に彼女の頭部にウサギの長い耳が現れる。
同時に、逃走するように駆け出す。
「ユースティアナさん!」
「ローゼンクロイツさん!」
2人も制止するように叫ぶが、ユースティアナは力を緩めることもなく、地面を駆け抜けていくのだった。
心臓が苦しい。手足にも痛む。
しばらく走り続けて、体からの痛覚に力を緩める。
すでに2人の名前を呼ぶ声は聞こえない。
「はぁ、はぁ」
ふと、顔を上げてようやく気付いた。
雨が降っている。
すでに全身が濡れており、寒気を感じて身震いしていた。
「どうして……あんなことに」
「ユース……」
もう1人の人格であるティアが呟く。
近くに立っていた木に背中を預け、座り込むと再び会話を始める。
「ティア、何か知ってるんだよね?教えて」
「……それは」
「答えて、お願い。なんでこんなことになったのか私わからないよ!」
「ごめん、私のせいでこうなってしまった」
ティアは絞り出すような声を言葉を続ける。
「なら、教えてよ」
「私はただ彼の知っていることを聞き出そうとしただけ。ストライカーユニットのことを、私たちのことを」
「私もそれは聞くつもりだった。なのに、なんでティアがわざわざ……」
「確認する必要があったの、そして私はわかってしまった」
「何をわかったの?」
思わず質問してしまう。
ティアもその言葉を聞いて、さきほど口にした言葉を思い出す。
「あなたが私を感じ取ることができるように、私もあなたを感じ取ることができる」
お互いに存在を、反応を感じ取ることができていた。
「私は、私たちはアルカ・ネウロイかもしれないってことよ」
「う、嘘。そんなのありえないよ!」
思わず否定してしまう。
自分はこれまでウィッチとして、人間として生活してきた。
「かもしれないって言っているでしょ。それに琴村零治もアルカ・ネウロイの可能性がある」
「琴村さんが?ありえないって!ティア、なんか変だよ!」
「あなたが信じたくないのもわかる。でも」
「やめて!もうやめてよ……目の前で琴村さんが殺されて、私がアルカ・ネウロイなんて、信じたくないよ」
弱々しい声で彼女の言葉を否定する。
気が付けば涙が頬を伝っていた。
「……」
「うう……」
そのまま顔を伏せたまま、彼女は涙を流し続けているのだった。
ちょこっと設定紹介
・魔導ダイナモ
琴村零治が設計を行い、軍が主導となって開発、完成させた機体。
ウォーロックの1号機を基に開発された大型のコアコントロールエンジンであり、零,2号機よりも出力が高く、搭載した大型戦艦『大和』をネウロイ化させることも可能。
2号機と同様に周囲のコアをコントロールするのではなく、搭載された1つのコアのみをコントロールすることで暴走のリスクを抑えていた。
ネウロイ化することによって大和の攻撃力に加えて、ネウロイの再生能力を獲得したことで継戦能力が向上し一時は活躍したものの、遠隔操作による動作不良、エンジンが暴走を起こすなどウォーロック零号機と同様に敵に回ったことで501統合戦闘航空団と交戦し、コアもろとも破壊されている。
※ウォーロック、魔導ダイナモについては作者の自己解釈等が含まれているため、ストライクウィッチーズ本編とは多少異なっている可能性があります。