ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第11話となります。
医務室では直人が零治の容態を見ていた。
しかし、その表情は酷く曇っている。
「くそ!駄目だ。零治は、もう……」
手は尽くしたもののすでに目の前で眠る零治の意識は徐々に薄れている。
今の医療技術では腹部に空いた大穴を塞ぐことはできない。
回復魔法を使用できるウィッチがいたなら助かったのかもしれないが、この部隊にはそんなウィッチはいない。
「直人さん!近くの基地に回復魔法が使用できるウィッチを要請しました。数日で到着するそうです!」
ベアトが医務室に飛び込んでくる。
「そうか。だが、それじゃあ間に合わない。零治の命はもう」
「そ、そんな!どうにかならないんですか!?」
「鈴木さん、医者なんだろ?」
「無理だ。元々俺は薬品調合、開発の主なんだ。人を治療するのは専門じゃないんだよ!」
ベアトに続き、ヨハンが声を上げていた。
「じゃあ、琴村さんは本当に……」
「うう、こんなこと……」
3人はその場に座り込んでしまう。
直人も立ち尽くすことしかできなかった。
自分の無力さを痛感しているのか、その手は震えていた。
雨が降り続く中、ユースティアナは1人木陰で震えていた。
どれくらい泣き続けていたのかわからない。
でも、自然と涙は止まってくれていた。
「……」
それでも基地に戻る気力も体力もすでに残っていなかった。
雨に打たれ、長い間寒気にさらされていたのが原因であろう。
「あの、大丈夫ですか?」
「……っ!」
不意に声を掛けられ、肩をビクつかせる。
顔を上げると、見覚えのない少女と女性の姿があった。
「どうかしたんですか?」
「……」
少女の言葉に何も返答できず、沈黙する。
すると少女は女性と顔を見合わせ、再びこちらに視線を向けた。
「雨もひどいですし、よかったらウチにきませんか?」
「……はい」
その言葉は自分の口から自然と発せられていた。
気が付けばその少女の家にユースティアナの姿はあった。
「母さん。私、この子とお風呂入ってくるね」
「そうね。このままじゃ風邪ひいちゃうし」
少女に連れられ、お風呂に入る。
暖かいシャワーは冷え切っていた体には心地いいものだった。
「あの、よかったら名前聞いてもいいかな?私はセラって言うの」
「えっとユース、ティアナです」
「ユースティアナさんかー。軍服着ていたってことはウィッチなんですよね?ネウロイと戦う魔法少女なんて、私憧れちゃうなー」
「そうですか?」
「うん。だってカッコいいじゃん。そうだユースティアナさん、よかったらウィッチのことを色々聞かせてよ!」
「う、うん!」
セラの会話の中でユースティアナは少し元気を取り戻していた。
夕食を終えて、セラとユースティアナは布団に横になって天井を見つめる。
「ユースティアナさん、いろいろ話聞かせてくれてありがとう」
「私こそ、セラさんやご家族と話せて少し楽になったよ」
「そっか。いつまでもウチにいてくれていいからね」
「え、でも」
「いいっていって!大歓迎だから!」
「うん……」
弱々しく返答すると右腕のあざに視線を向ける。
ⅩⅦの文字を見つめ、ティアの言葉を思い出していた。
自分が、アルカ・ネウロイかもしれない。
「私は……明日は戻らなきゃな」
そう口にして眠りにつくのだった。
翌日、早朝に目を覚ます。
リビングに向かうとセラの母の姿があった。
「あ、おはよう。早いわね、昨日はよく眠れた?」
「はい!おはようございます。すみません、色々お世話になってしまって」
「いいえ、気にしないで下さい。セラも喜んでましたから……そうだこれ」
彼女の手にはブリタニア空軍の軍服があった。
「洗濯して乾燥しておきましたので」
「ありがとうございます。私、軍に戻ります」
「ユースティアナさん、もう行くんですか?」
起きてきたセラがリビングに入室する。
「ごめんね。でも、私もウィッチだから!セラさん、昨日はありがとう。話せてよかったよ」
「うん、がんばってね!」
「はい!セラさんも元気で!」
ユースティアナとセラは笑みを浮かべるのだった。
お互いのこれからを激励するように。
軍服に着替え、ユースティアナは道を歩いていた。
空にはすでに日が昇っている。
「ティア、起きてるんでしょ?」
小さく彼女の名前を口にした。
すると、脳内に直接語り掛けるように声が響く。
「気づいてたんだ」
「昨日のこと。私も少し落ち着いたから、もう一度教えてくれる?」
「……うん」
ティアは説明を始める。
昨日の出来事を、そして自分たちのことを。
「そっか。私たちはやっぱり……」
「ユース、本当に戻って大丈夫?」
「戻るのは怖いよ。私のせいで琴村さんが……でも、逃げてはいられないよ」
「うん。そうね」
そう口にしてウサギの耳と尾が体に出現する。
力いっぱい地面を蹴り、道を駆け出していく。
1時間ほどで軍の門をくぐり、軍の格納庫前へと戻った。
「あ、ベアトさん」
格納庫内には1人でストライカーユニットを見つめていたベアトリスの姿がある。
零治や他のウィッチたちの姿はない。
やはり昨日のことは夢ではないということを実感する。
「ローゼンクロイツさん。戻ったんですね」
「どうしてここに?琴村さんは?」
「零治さんは……今も医務室です。意識が戻らず、今の医療では目を覚ます可能性は絶望的だそうです」
「……っ!そんな……」
その言葉を聞いて、膝から崩れ落ちるように地面に手をついた。
わかっていた。いや、わかっていながら現実を受け入れられていなかったのだ。
目の前で零治の体を紅の閃光が貫いた。
それでも治療すれば、彼が目の前でまた自分を見てくれると思っていた。
「大丈夫ですか?」
「私の、せいで……」
「ユースティアナさん!」
「ローゼンクロイツさん、戻っていたんですね!」
名前を呼ぶ声とともにクロエとソフィアが駆け寄る。
心配していたのか、彼女たちはどこか安心したような表情を浮かべていた。
「琴村さんが、私のせいで」
「ユースティアナさんのせいじゃないよ!あれはアルカ・ネウロイの!」
「そうです。あれは事故だったはずです!」
「ローゼンクロイツ。あの時の状況を教えてくれないか」
ヨハンが肩に手を乗せると顔を覗き込むように視線を向ける。
「ちょっと、ヨハン!やめなって、ローゼンクロイツだって目の前であんなことあったんだよ?すぐに聞くなんて酷だって」
「これ以上、犠牲を出すわけにはいかないだろ!私たちは琴村零治を守れなかった、そうだろ?」
ヨハンの言葉に誰も反論することができなかった。
彼女の言う通り、自分たちは零治を守ることができなかった。
「……あれは私のせいです。私はアルカ・ネウロイなんですよ」
「え?」
「なん、だと?」
ユースティアナの言葉にウィッチたちの表情が固まる。
「なに言ってるんですか!?」
「冗談にしても笑えないよローゼンクロイツ!」
「あの朝、琴村さんが感じ取ったアルカ・ネウロイの反応は私なんです」
袖を捲り上げ、腕に刻まれた「ⅩⅦ」の文字を見せる。
「嘘……」
「本当にローゼンクロイツが……」
各々が驚きを隠せなかった。
それもそうだろう。
これまで共に戦ってきたウィッチが、ネウロイの可能性があるのだから。
「私がアルカ・ネウロイであるのなら——」
「ユース!」
そう口にした時だった。
ティアの声が頭に響く。
「ティア?なに?」
「アルカ・ネウロイが接近してる」
「わかるの?」
「わかるから言ってるに決まってるでしょ!」
ティアの指示を聞いて、ユースティアナは頭を上げる。
「みなさん。アルカ・ネウロイが接近しています」
「わかるんですか?ユースティアナさん」
「はい。今は説明している時間がありません。鈴木さんに連絡を」
「わかりました」
ソフィアが格納庫の通信機を使用して医務室に連絡を送る。
数分で直人が格納庫に到着していた。
「アルカ・ネウロイが接近しているのか」
驚きを隠せず、そう口にする。
それもそのはずだ。
これまで、アルカ・ネウロイという存在を感じ取ることはできたのは零治だけだったからだ。
「零治はいない。指揮権は隊長補佐の俺にあるが、指示はベアトに任せる」
「了解です。みなさんストライカーユニットの装着を」
ベアトの指示でウィッチたちがストライカーユニットを装着していく。
そんな中、ユースティアナはストライカーユニットを装着せずに見つめていた。
「これには、コアが……」
「ユースティアナさん行くよ!」
「う、うん!」
急かされるように装着すると、空へと飛行していく。
そんな様子を直人とウルスラが見つめていた。
「みなさんはあのストライカーユニットのこと知っているんですか?」
「いや、知らないはずだ。零治も教えていなかったからな」
「教えるべきだと思いますよ」
「それを決めるのは俺じゃなかったんだけどな」
直人は格納庫の中で小さくつぶやいていた。
「見つけました。あれです」
「人型ってことは、あの時のやつか」
「行きます!」
ユースティアナが先行するように加速する。
独断専行であることはあきらかだった。
「ユースティアナさん!」
クロエが叫ぶが、ユースティアナは止まることなく加速していく。
引き金を引くと銃口が火を噴いた。
放たれる弾丸が人型のアルカ・ネウロイに命中する。
「——っ!」
アルカ・ネウロイは悲鳴を上げている。
しかし、コアには命中していないのか、傷ついた肌は白く発光し再生する。
「くっ!」
「ローゼンクロイツ!落ち着け!」
「見つけた。コアは頭。それにナンバーはⅧ、ストレングス(力)です!」
「了解。攻撃開始!」
ベアトとヨハンの指示で再び攻撃を開始する。
アビゲイルが接近して攻撃を行うがストレングスは高い機動力で攻撃を回避し、反撃するように機銃のごとくビームを放つ。
「はぁ!」
後方に回り込んだヨハンが片手直剣を振り下ろす。
体を捻るようにストレングスが回避するものの左腕を両断する。
「——っ!」
再び悲鳴を上げたアルカ・ネウロイは右手からビームを放つ。
ユースティアナが割って入るようにシールドで攻撃を防ぐ。
「ナイスガード!」
「はい!」
ソフィアの「フリーガーハマー」から放たれたミサイルがストレングスに命中。
爆発したことで爆風と白い煙が周囲を舞う。
体の大部分を損傷したことでその体がまばゆく発光する。
「っ!」
6人のウィッチたちが腕で光を遮る。
十数秒後にはストレングスの形状が人型から蛇腹状の形状に変化する。
首から顔にかけては円盤のように広く、珍しい蛇のようだった。
「形状が変わった。ベアトさん!」
「コアの場所は変わらず頭です!」
「了解です!」
アビゲイルとユースティアナが再びストレングスに接近していく。
翻弄するように射撃攻撃を行う。
装甲を弾丸が抉り取っていく。
「……」
狙いを定めていたクロエが引き金を引く。
弾丸は円盤状の肌を貫通する。
その威力にストレングの体が大きく捻じれ、撓む。
同時にコアが露出する。
「そこです!」
ソフィアの放ったミサイル弾がコアに命中し、誘爆。
ストレングスの体は光の粒子となって消滅する。
「やった!」
「アルカ・ネウロイ撃破しました!」
「はぁはぁ、零治さん。仇は取りました」
ユースティアナは光の粒子が舞う中でそう口にしていた。
「こちらベアト。アルカ・ネウロイの撃破に成功しました」
「そうか。ローゼンクロイツ、周囲に他の反応はあるか?」
「えっと、特にはありません」
「そうか。ならみんな戻ってきてくれ」
「了解です」
ウィッチたちは方向転換すると帰投するのだった。
「ユース。あなたは私が守るから」
「ん?ティア?何か言った?」
「ううん。早く戻りましょ」
「うん」
ユースティアナも後を追うように帰路につくのだった。
ちょこっと設定紹介
・ストライカーユニット「WR」
琴村零治が設計と開発を行い、完成させた機体。
特務統合強襲航空団で運用されているストライカーユニットであり、通常のストライカーユニットとは異なりコアが使用されているストライカーユニットとなっている。
そのため、ウォーロックにも近い兵器とも言われていた。
内部機構は大きく異なっているため、通常の整備士では整備や修理ができず、それらを行えるのも琴村零治だけであったとされている。