ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ   作:UNIMITES

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どうもUNIMITESです。
第12話になります。



第12話 DS計画

 空が黒い。

 周囲が夜のように暗いわけでもないのに、空は黒く染まっていた。

「……うぅ」

 琴村零治は体を起こし、周囲を見つめる。

 そこに広がっていたのは扶桑の景色。かつて自分がいた扶桑の景色が広がっていた。

「なんで扶桑に?ここは?」

「零治」

 自分の名前を呼ぶ声に振り返る。

 十数メートル先には自分のよく知る顔があった。

「父さん、母さん!?それに姉さんも!」

 死んだはずの零治の家族の姿があったのだ。

 呼びかけるが返事はない。

 こちらの声は聞こえていないのか、3人は踵を返して去っていく。

 思わず声を上げ、後を追うように手を伸ばす。

 しかし、そんな自分を制止するように肩と腕を掴まれていた。

「……っ!」

 視線を向けると直人とベアトの姿があった。

「離してくれ、直人、ベアト!あそこに父さんたちが!」

 2人は首を横に振りっている。

 丸であちらに行くなと言っているようにも感じた。

 それでも手を伸ばし続けていた。

 そこで風景が途切れた。

「はっ!」

 瞼を開いた。

 真っ先に自分の目に映ったのは医務室の白い天井あった。

 体を起こし左右に視線を向ける。

 室内に人影はない。

「そうだ。俺は、あの時」

 自分がアルカ・ネウロイによって体を撃ち抜かれた時のことを思い出したように腹部に手を当てる。

 痛みもなければ、違和感も感じない。

 血の滲んだ包帯を外してみるが体はなにもなかったのか、特にケガは見当たらなかった。

「助かったってことなのか」

 心臓に手を当てそう口にすると、視線をテーブルに向ける。

 無造作に置かれた自分の軍服を手に取った。

 穴の開いた軍服のポケットを探ると通信機を発見する。

 電源を入れて、装着すると自分と直人が使用している周波数で通信を送る。

「直人。俺だ、零治だ、今どこにいる?」

「零治!?本当に零治なのか!?」

「状況を教えろ。動けるなら医務室に戻ってこい」

「わかった。お前そこで動くなよ」

 一方的に通信を送ると、軍服へと着替える。

 大穴が開いているものの、今は気にしている余裕はなかった。

 数分ほどで扉が開け放たれた。

「零治!」

 直人とウルスラが入室する。

 2人とも急いで来たためか、肩で息をしていた。

「お前、体は大丈夫なのか?」

「生きてるようだ」

 目の前で自分が撃ち抜かれた場面を見ていた直人もやはり半信半疑でこちらを見つめていた。

「……」

「それより、状況を教えろ」

 何も言わないウルスラを横目に零治は再び状況確認を要求する。

「さっきアルカ・ネウロイと交戦になった」

「交戦?」

「ユースティアナが事前に接近を感じ取ったんだ。お前みたいにな」

「……それ、他のウィッチも知っているのか?」

「当然だろ」

 その言葉に少々、表情を歪める。

 ユースティアナがアルカ・ネウロイを感じ取ることができた。

 それは自分と同じであることを意味している。

「そうか」

 そう口にすると再び足音と共に扉が開け放たれた。

「零治さん!」

「琴村さん!」

 ベアトやユースティアナたち6人のウィッチが立っている。

 彼女たちの視線は自分に向けられていた。

「戻ったか」

 直人が事前に通信を送っていたためか。

 すぐにここに来たのだろう。

「本当に、体は大丈夫なんですか?」

「ああ」

「検査の結果的にも問題はないようだ」

 資料にペンを走らせていた直人がそう口にする。

「琴村さん。一体何者なんだ?あれほどの傷を負ったのに治るなんて普通じゃない」

「僕も今回はヨハンと同じ意見だよ。琴村さん、ちゃんと説明してよ。それにローゼンクロイツの件もね」

 2人は明らかに疑心を抱いた視線を向けていた。

 ユースティアナが顔を伏せる。

「零治さん、説明は必要です。それにあのストライカーユニットについても」

「……わかった、ここじゃ手狭だからな。場所を変えよう」

 そう口にすると零治は立ち上がる。

 食堂へと場所を変え、全員が席に着いた。

「さて、何から説明するか」

「琴村さんのことです」

 ヨハンが再び鋭い視線をこちらに向ける。

 彼女だけではない、この場にいる者すべてがそのことが気になっているはずだ。

「俺についてか……もう隠すことはできないだろうな」

 右腕に視線を落とし、袖を捲り上げた。

 そこにはアルカ・ネウロイやユースティアナの腕に刻まれていた文字とよく似た文字が刻まれている。

 刻まれた文字はⅠ…タロットカードのⅠは「魔術師(マジシャン)」を表す。

 瞬時にユースティアナたちの表情が固まる。

「それはアルカ・ネウロイと同じ……」

「どうして、琴村さんに?」

 ヨハンに続き、ユースティアナもこちらの腕を見て驚きを隠せなかったのか、そう口にしていた。

「それは、俺が琴村零央の、DS(デザインソルジャー)計画の被験者であり、その生き残りだからだ」

 思い出すように口にした。

 そう、すべては父の……零央の研究から始まったのだ。

「デザイン、ソルジャー?」

「なんですか、それ?」

 ウィッチたちは首を傾げていた。

 それもそのはずだ。この計画も、琴村零央の名も、表向きには公表されていない。

「ウィッチに変わる戦士を作り出すこと、それこそがDS計画だ。そして、DSはコアを体内に移植した人間だ」

「コアを体内にって……」

「それって、つまり人体実験ってことですか?」

 クロエやアビゲイルも思わず声を上げていた。

「そうだ」

「じゃあ、ローゼンクロイツさんの体にもコアが?」

「ああ。彼女の体にも俺と同じようにコアが移植されている」

「……」

「ふざけんな!そんなことを信じられるわけないだろ!?」

 ヨハンがテーブルに身を乗り出していた。

「なら、俺はなぜ生きている?」

「それは……」

「おそらくネウロイが体を再生できるように、俺の体もコアの力によって治癒したんだろう。」

 心臓に手を当てた。

 確証があるわけじゃない。

 これまで怪我を負うことはあったが、特別傷の治癒が早かったりしたことはなかった。

 だが、死に直面するような傷を負いながら、今の自分は生きている。

「それにウィッチじゃない俺が使い魔が視認できることやアルカ・ネウロイを感じ取ることができるのはコアのせいなんだよ」

「じゃあ、私にもコアが……」

 ユースティアナも胸に手を当てていた。

 彼女もまたアルカ・ネウロイを感じ取ることができたと言っていた。

「ちょっと待ってください!お二人は平気なんですか?体にコアを埋め込んで」

 声を上げたのはクロエであった。

「2人の体は問題ない。それは日々のメディカルチェックで俺が確認している」

「ですが!」

「エリザベートさん、落ち着いて。琴村さん、1つお聞きしていいですか?」

 ソフィアがクロエを静止するように声をかけると、こちらに視線を向ける。

「なんだ?」

「ウィッチに変わる戦士を作り出すことがそのDS計画だったんですよね?ですが、そんな話は聞いたことがありません」

「DS計画は失敗に終わったからだ。俺たちはウィッチのようにネウロイと戦えるほどの力を得ることはできなかった。その上、被験者たちの多くはコアの力に飲まれてしまった」

「それって、どういう?」 

「アルカ・ネウロイ。それはコアの力に飲み込まれたDSなんだ」

「なんだって!?」

 その声と共に室内にどよめきが走る。

 それもそうだろう。

 直人たちもこのことを知った時は同じ反応をしたものだ。

「……あいつらはもう人間じゃない、すでにネウロイなんだ。そしてアルカ・ネウロイを倒すため俺はこの部隊を作ったんだ」

「部隊を作った?どういうことですか?」

 ユースティアナがこちらに視線を向けて、質問する。

 同時に直人がアイコンタクトを取り頷く。

「アルカ・ネウロイが現れた時、ネウロイみたく感知ができないことは知っているだろう?」

 直人の言葉にウィッチたちが頷く。

「2年前までアルカ・ネウロイを見つけ出す手段は存在しなかった。零治が感知することができるようになったから先日本格的に討伐するための部隊、この特務統合強襲航空団が編成されたんだ」

「アルカ・ネウロイの存在は公表できない。ですが、零治さんがいればアルカ・ネウロイを見つけ出しウィッチたちで討伐はできる。それでもこの部隊に編制できるウィッチの数は限られている。もしかしてあのストライカーユニットを作ったのは……」

「はい。ウィッチの数が少なくても、あのストライカーユニットならば討伐できます」

 ウルスラの言葉に零治が返答する。

「ストライカーユニットって私たちの使ってる新型のことですか?」

「あのストライカーユニットにも、コアが使用されているんです」

「は!?」

 ウィッチたちが再び声を上げていた。

「ウルスラさんの言う通りだ。あのストライカーユニットはWR(ウォーロックリバイブ)は零央の残したコアコントロールエンジンを基に俺が完成させた。もちろんウィッチへの安全性、機体の安定性も十分に確保した上でな」

「納得できません」

 そう口にしたのはヨハンであった。

「琴村さん。私はこの部隊を降ります、コアを使用したストライカーユニットで戦うことはできません。それにネウロイとはいえ、元人間を撃つことはもうできません」

「僕もかな。ヨハンと同意見だよ」

「えっと、私も……」

「私も降ります」

 続くようにウィッチたちは部隊をやめることを宣言する。

「お前らな、零治は!」

「やめろ、直人」

「でもよ!」

「直人さん、落ち着いて」

 逆上した直人を制止したのは零治とベアトであった。

「降りても構わない。俺はストライカーの整備にいく。書類は各自作成して提出しろ」

 零治はそのまま食堂を後にする。

「アビー部屋戻るぞ」

「うん」

「私たちも戻りましょうか?」

「はい」

 ウィッチたちも続くように出ていく。

 室内にはユースティアナ、直人、ベアト、ウルスラの4人だけが残る。

「ユースティアナさん。悪いんですが、零治さんを見ていてくれませんか?1人にすると心配なので」

「私ですか?でも……」

「いいから行け。俺たちよりローゼンクロイツのほうがいい」

 2人の言葉にユースティアナも席を立ち退出する。

「よろしいんですか?このままではこの部隊は」

「わかってますよ。ですが、決めるのは俺じゃない」

「あんなことを知れば彼女たちが降りることはわかっていたんじゃないですか?」

「だから、あいつらが降りるとしても俺たちは引き留めることはできないって言っているんですよ」

 ウルスラの言葉に直人は少々苛立ちを見せて返答する。

「……すみません。本当にそれでいいのかと思いまして」

「俺の方こそすみません。でも決めるのは俺やベアトじゃない。隊長である零治なんです」

「そうですね。私たちには決めることできませんから」

 直人の言葉に同じ考えであったベアトもそう口にするのだった。

 

 

 軍の格納庫でストライカーユニットの整備をしていた零治を入口でユースティアナが見つめていた。

 いつものように部品を交換し、起動に問題ないことを確認する。

「琴村さん。本当にこのままでいいんですか?」

 そう口にすると隣に腰を落とした。

「あいつらがここを辞めるなら、仕方がないこととしか言えないしな」

「今から引き留めれば、皆さんだって!」

「ユースティアナはどうなんだ?」

「へ?」

「ユースティアナはここを去る気はないのか?」

「私は、」

 彼女は、そう口にして考え込む。

「他のウィッチがこの部隊を辞めるならユースティアナが残っても、結局はこの部隊そのものがなくなることは変わらないのかもしれない」

 手を止めてそう口にしていた。

「ここを辞めたくありません。アルカ・ネウロイを見つけ出せるのは琴村さんと私だけなんですよね?なら、私は最後までやります。たとえベアトさんと2人で戦うことになっても」

「ありがとう。そう言ってくれて」

 素直に感謝を述べ、頭を下げていた。

「いえ……そうだ、琴村さん。私も名前で呼んでもいいですか?私のこともユースティアナって呼んでますよね」

「名前?あー、そうだったな。構わないよ」

 昔のことを思い出していた。

 まだ自分たちが施設でDS計画に携わっていたころ、自分とユースティアナには面識があったのだ。

 だから自分は彼女を名前で呼んでいた。

 彼女はまだ9歳だったからか。その頃のことをよく覚えていなかったのだろう。

 現に名前では読んでいない。

「はい。じゃあ零治さん。よろしくお願いいたします」

 ユースティアナは笑みを浮かべ、そう口にしていた。

 

 

 翌日、零治は格納庫内に横になり天井を見つめていた。

 ユースティアナは昨日ああ言っていたものの、ヨハンたちが抜ければ4人のウィッチが抜けることになり、残るのはたった2人。

 たとえ新型ストライカーユニットWRがあったとしても2人ではアルカ・ネウロイに対応しきれるか不安が残る。

「零治さん、ここに居たんですね」

 こちらの顔を覗き込むようにユースティアナが見つめる。

「ユースティアナか。どうした?」

「どうもしてないですけど。やっぱりクロエさんたちが部隊やめるのは変わらないみたいです」

「だろうな……」

「やっぱり私とベアトさんでやるしかないですよね」

「俺はユースティアナとベアトだけで戦うのは危険だと思っている。アルカ・ネウロイの行動パターンは他のネウロイと全く違う。2人では対抗しきれない可能性がある」

 そう。アルカ・ネウロイはネウロイであるものの、その行動パターンは特異性がある。

 人型から大型に変化することもその1つだ。

「そう思うなら彼女たちに残るように説得するべきじゃないの?」

 その声に反応するように零治は目を見開いた。

「……ティアか」

 コアの反応を感知したことで、彼女がユースティアナではなくティアと呼ばれる少女であることを理解する。

 やはりユースティアナからコアの反応は感じないが、ティアからは感じることができる。

 先日、コアの反応を感じたのも彼女からだった。

「なんで、説得しないの?」

「強制はしないからだ。それにアルカ・ネウロイが元人間であることを知った以上、戦場で戦うことを躊躇えばウィッチ自身が危険になる」

「本気で言ってんの?」

「そうだ」

「ふざけないで。アルカ・ネウロイがDSのなれの果てであるのなら、私やあなたもいずれはアルカ・ネウロイになってしまう可能性があるんじゃないの!?」

 ティアは声を上げていた。

 彼女の言う通りである。

 自分やユースティアナは他のDSと違い、今は人間として生活できている。

 しかし、いつアルカ・ネウロイに変貌するかはわからない。

「その可能性はゼロじゃない」

「なら、急いでアルカ・ネウロイをすべて倒す必要があるんじゃない!」

「そんなことはわかってる!だが、彼女たちがアルカ・ネウロイを撃つことができないなら、もう戦えないだろ!」

 思わず声を上げた。

 そんなことは彼女もわかっているはずだ。

「あなたね!」

「ティア、やめて!零治さんの言ってることも分かるよ!私も戦うって言ったけど、本当に撃てるのかってちょっと不安あるし」

「ユースには私がいる!私は誰とも知らないネウロイでも撃てるわ!」

 ユースティアナの言葉にティアが反発する。

 そんな時だった。

 お互いにコアの反応を感知して同じ方向へと視線を向ける。

「こんな時に……ユースティアナ出られるか?」

「はい!」

「すぐにベアトも呼ぶ。頼んだ」

「行くよ、ティア!」

 ユースティアナはストライカーユニットを装着して、空へと羽ばたくのであった。




ちょこっと設定紹介
・DS(デザインソルジャー)計画
コアを使用した研究の中でも最も最初期に行われた研究であり、琴村零央が主導に行われた計画。
人体にコアを埋め込むことでウィッチに変わる戦士を作り出すこと、を目的にされていたもののその多くはコアの力が暴走しアルカ・ネウロイと化したことで計画は失敗に終わった。
被験者たちは幼い子供たちで構成されており、被験者は全22人。
現在、アルカ・ネウロイ化していない者は琴村零治、ユースティアナ・ローゼンクロイツが存在している。
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