ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第13話になります。
零治は軍の格納庫内の通信機に手を伸ばす。
通信先を決定するとコールを始める。
「はい。こちら鈴木」
「直人!アルカ・ネウロイだ、ベアトをこっちに回してくれ」
「こんな時にかよ、了解だ。すぐに向かわせる」
直人はこちらの通信を聞いて、思わず悪態をついた。
それもそうだろう。
現在、ヨハンたち4人のウィッチの出撃は期待できない。
つまり戦闘が可能なウィッチはユースティアナとベアトだけなのである。
「頼んだぞ。直人」
短く通信を終えると、零治は再び外に出て空を見つめる。
上空ではストライカーユニットWRを装着したユースティアナが人型アルカ・ネウロイと戦闘を開始していた。
右脚部にⅩⅤの文字が刻まれていたことで、「デビル(悪魔)」である。
「あれが、今回の敵……」
「ユース。無理しないでよね、危なくなったらすぐ私に変わりなさい」
「う、うん。でも私戦うよ。自分で決めたことだから」
シールドを展開し、引き金を引いた。
銃口から次々に銃弾が放たれる。
しかし、人型ネウロイは攻撃を回避し、反撃するようにビーム攻撃を行う。
ユースティアナも攻撃を回避していた。
「人型相手でコアが分からないのって結構大変だな」
戦闘を回避して数分が経過する。
お互いに有効打を与えることができないまま時間だけが過ぎていた。
「零治さん!ユースティアナさんは!?」
「悪い、遅くなった」
その声と共にベアトと直人が駆けてくる。
「ベアトか。ユースティアナはあそこ戦ってる。連日での戦闘だが大丈夫か?」
「任せてください!」
ベアトは深く頷くと、注射器を首元に当てる。
赤い薬品である「ウィッチ用同調率上昇薬」を投与し、ストライカーユニットWRを装着した。
「ベアトリス行きます!」
掛け声とともに彼女も空に飛びだっていく。
「コアは……」
「ユースティアナさん。援護します!」
「ベアトさん!よかった。1人じゃなかなかコアを見つけ出せなくて……」
空で合流した2人は共にアルカ・ネウロイ、デビルを見つめる。
「コアは私が見つけ出します」
「はい、お願いします」
ユースティアナが先行し、ベアトが後方から固有魔法「魔眼」を発動させる。
2対1なっていたことで戦況はこちらが有利になり始めていた。
「コアは左肩にある。ユースティアナさん、少しの間アルカ・ネウロイを引き受けてください、私がコアを破壊します」
「了解です!」
再びデビルに接近したユースティアナが攻撃を行う。
お互いに激しい攻防を続ける中、回り込んだベアトが銃を構える。
デビルはユースティアナとの攻防に集中しているため、ベアトには気づいていなかった。
「よし、これで……」
「ベアト、直上だ!」
「え?」
ベアトが上を見つめる。
上空から落下するようにアルカ・ネウロイが現れていた。
「2体目のアルカ・ネウロイ!?」
シールドを展開して放たれたビームを防御する。
「っ!」
「ベアトさん!ぐっ!」
2体目のアルカ・ネウロイの出現によって状況は一変する。
1体に対してならば対応しきれていたものの、これではかなり厳しい。
零治は格納庫に向かうと、直人も後を追う。
「どうする気だ」
「状況が状況だからな。俺も戦う」
MG42機関銃を持ち上げる。
「よせ。俺たちはウィッチじゃないだぞ。シールドがないから自分を守ることもできない」
「わかってる。だけど、ウィッチの数が減った上にアルカ・ネウロイが2体だ。仕方ないだろ、それに援護することくらいはできる」
格納庫を出て空に視線を向ける。
「零治!お前の体が治ったのは奇跡みたいな偶然なんだぞ、次は助かる保証はどこにもないんだ!」
「それでも!それでも俺はユースティアナとベアトを助けたいんだ……俺自身が人間で居られるうちは」
自分が人間で居られる時間がどれだけ残っているのかはわからない。
だが、彼女たちの助けになるというのならそれを実行する。
「……」
直人はそれ以上何も言わなかった。
いや、言えなかったという方が正しいだろう。
DSでもなければウィッチでもない、それに軍に所属した期間も他の者に比べれば圧倒的に短い。
そんな彼には、戦ってきた者を否定することはできなかったのだ。
「馬鹿が……」
直人は背を向けてその場を後にする。
ユースティアナとベアトはそれぞれアルカ・ネウロイを相手にしていることで苦戦していた。
「ユースティアナさん、大丈夫ですか?」
「は、はい。なんとか……でも結構厳しいですね」
2人とも表情が曇り始めていた。
それでもアルカ・ネウロイは攻撃を続ける。
しかし、それを邪魔するように弾丸の雨が降り注ぐ。
「え?」
ユースティアナが視線を向ける。
地上で銃を構える零治を発見した。
「零治さん!」
「何してるんですか、零治さん!危険です!」
2人が声を上げる。
零治は移動して、攻撃を続けていた。
「こっちから援護するから、早くアルカ・ネウロイを倒せ」
「で、でも……」
「わかりました。無理はしないでください」
ベアトは再びアルカ・ネウロイを見つめる。
デビルともう1体の人型のアルカ・ネウロイはまだまだ戦闘可能と言わんばかりに空を舞っていた。
「ユースティアナさん私が囮になってひきつけますので、デビルのほうを狙ってください。左肩の付け根のあたりにコアがあります」
「わかりました」
ベアトが接近すると2体のアルカ・ネウロイも攻撃を開始する。
放たれたビームを回避して、引き金を引いた。
弾丸が数発体に命中するものの、体は発光しながら再生する。
今度は引き付けられたアルカ・ネウロイの後方に回ったユースティアナが銃を構えた。
「左肩を狙って……」
銃を顔の近くで構えて狙いをつける。
数秒後を引く。
放たれた弾丸はデビルの左肩に命中。
次々に弾丸が命中したことで、デビルは光の粒子となって消滅した。
コアを破壊することに成功したのだ。
「よし」
「あとは1体!」
2人とも撃破に成功したことで、少しだけ表情が緩む。
「まだだ、油断するなよ」
「——っ!」
アルカ・ネウロイは悲鳴のような声を上げ、顔をこちらに向ける。
急旋回するように空を舞い、地上の零治に向かって接近していく。
「しまった!」
「零治さん!」
「くそっ!」
地を駆け抜ける。
それでもアルカ・ネウロイの狙いは変わっていない。
手が赤く発光する。
ベアトとユースティアナに先日の出来事がフラッシュバックした。
零治が撃ち抜かれた瞬間を。
「ダメ―!」
声を上げ、手を伸ばす。
しかし、その手は届かない。
「……」
赤い閃光が地面めがけて、降り注いだ。
土煙が舞う。
「そんな……」
ユースティアナの表情が固まっていた。
ベアトもまたただ見つめるしかなかった。
「……あれは!」
土煙が晴れる。
そこにはウィッチのシールドである青白い魔法陣が現れていた。
「危なかったな」
「今回は間に合ったみたいだね」
振り返るとそこには見覚えのあるウィッチの姿があった。
「ハーゲン?それにウィリアスも、なんで」
「助けに来たんです」
「ユースティアナさんとフーバーさんを、そして琴村さんを」
「エリザベートにラーヴァもか」
4人のウィッチを見つめる。
彼女たちは、この部隊を降りると言っていたのになぜここに来たのかわからなかった。
「琴村さん。あなたとローゼンクロイツの体がいつアルカ・ネウロイになるかわからないこと、なんで言わなかった?」
「……すまない」
「まあ、命令より命を優先するってのは僕は嫌いじゃないよ。でも、自分の命も優先するべきなんじゃないかな。だから僕があなたの命を優先するよ、琴村さん」
「私もです」
「私たちもそのためにここに来ました。ハーゲンさんも同じですよね?」
「ああ。あなたも守るよ、今度こそ必ずな」
ウィッチたちは格納庫に向かい、ストライカーユニットWRを装着する。
「敵アルカ・ネウロイは1体。すでにベアトとユースティアナが交戦している。相手がアルカ・ネウロイだからって躊躇うなよ」
「はい」
「わかってますって」
「了解です」
「了解しました」
4人の出撃を見届ける。
だが、わからなかった。
なぜ彼女たちが助けに来たのか。
「間に合いはしたようだな」
「直人……そうか。お前が彼女たちを」
彼の姿を確認し、頷く。
「ったく。これっきりにしとけよ」
「お前には助けられてばかりだな」
2人は再び空を見つめる。
「皆さん。どうして?」
「もう一度だけこの部隊で戦うことしました。琴村さんとローゼンクロイツのために」
「話はあとに。今は戦闘に集中しましょう」
「はい!」
ウィッチたちはアルカ・ネウロイを見つめる。
「腹部にⅩⅢの文字がありますね」
「ⅩⅢってことは……デス(死神)ですね」
ソフィアがタロットカードの名称を口にした。
すると「ですです?」とアビゲイルが首を傾げる。
「忘れてください……」
恥じらいを隠しているのか目を瞑り、強めな口調でつぶやく。
「死神という意味のデスということだ」
「あ、そういうこと」
ヨハンがツッコミを入れ、先行する。
「——っ!」
アルカ・ネウロイは声を上げ、その姿を変化させた。
形状が人型から大型の戦闘機のような形状に変化する。
「ベアトさん。コアの位置は?」
「コアは……機首にあります」
「了解!」
ヨハンが接近して片手直剣でデスの装甲を切り裂く。
アビゲイルも機動力を活かして、翻弄して攻撃を行う。
2人の攻撃を受け、デスは逃げるように主翼のプロペラを回転させ飛行速度を上げる。
「エリザベート、あのプロペラを狙え」
「ラーヴァ、主翼狙って!」
「「了解!」」
エリザベートは狙いを右主翼のプロペラに向ける。
ソフィアも目標を左の主翼に着けた。
放たれた弾丸とミサイル弾は着弾し、それぞれの部位の破壊に成功した。
「今なら!」
ユースティアナも固有魔法「魔力放出」を使用する。
即座に魔力を体に循環させ、魔法力を3倍にまで引き上げる。
そのまま加速させ、デスの前方にまで飛び出した。
「そこだ!」
声を上げ、銃口から弾丸が吐き出される。
弾丸はデスの機首に命中し、コアが露呈した。
しかし、そこでマガジン内の弾丸が切れたのか、銃の連射が止まる。
「嘘?弾切れ?!」
ユースティアナも思わず声を上げた。
「アビー!あれやるぞ!」
「OK!」
ヨハンは持っていた片手直剣を消滅させると、再び「構築」を使用する。
右手に生成された剣はこれまでの片手直剣と異なり大型の長剣であった。
長剣を投擲すると、露呈していたコアの近くに突き刺さる。
「いくぞ!」
アビゲイルも固有魔法「雷」を使用すると手に雷が発生していく。
それを突き刺さった長剣目掛けて放つ。
長剣を避雷針にするように雷が引き寄せられる。
「——っ!」
雷を浴びたデスは悲鳴を上げる。
コアも魔法を受けたことで破壊され、光の粒子となって消滅した。
「よっし!」
「うし!」
消滅を確認した2人はハイタッチする。
「すごーい!今のなんですか!?」
「私とアビーにしかできない技だ」
「僕たち専用の合体技ってやつだよね!」
自慢するようにヨハンとアビゲイルは笑みを浮かべていた。
「ユースティアナさん怪我無いですか?」
「うん。大丈夫です」
「フーバーさんも大丈夫ですか?」
「はい。私も大丈夫です。戻りましょう」
ウィッチたちはお互いの身の安全を確認し、こちらへと振り返り帰投する。
「ほう。なかなか面白い戦闘をするものだな」
「ハーゲンの剣を避雷針とすることでウィリアスが高威力の雷撃を放っても的確な位置に当てることができるってことか」
零治や直人も素直に驚いていた。
格納庫内にウィッチたちが戻ったことを確認する。
「みなさん。どうして助けに来てくれたのですか?」
「鈴木さんにああ言われたらね」
「直人さん。何を言ったんですか?」
「お前らを助けろって言っただけだ」
直人はそう言い残し、その場を後にする。
「鈴木さんって意外と仲間思いの人なんですね。てっきり、もっとドライな人だと思ってました」
「あいつが?」
クロエの言葉に再び彼の背中を見つめた。
「はい。直人さんが私たちを説得していました」
ソフィアはさきほどのことを思いだし説明を始める。
1時間程前。
宿舎に戻った直人は基地内を駆けまわっていた。
食堂でお茶をしていた4人をようやく発見する。
「ハーゲン、ウィリアス、エリザベート、ラーヴァ。ここにいたのか、4人そろっているのは都合がいい」
「鈴木さん?」
「どうしたの?」
ヨハンとアビゲイルが首を傾げるようにこちらを見つめていた。
「頼む。もう一度零治に、力を貸してくれ!」
そう口にして深々と頭を下げた。
「鈴木さん、どうしてそこまで……」
「今、ローゼンクロイツとベアトがアルカ・ネウロイと戦っている。零治も戦闘に参加しているんだ」
「琴村さんが?彼がいくらDSであるとはいえ、ネウロイに対抗できないんですよね?」
「あいつとローゼンクロイツはいつアルカ・ネウロイに変異するかわからない。だから自分が人間で居られるうちにすべてのアルカ・ネウロイを殲滅したいと考えているんだ。そのためならあいつがどんなことをするか……」
「そんな……」
「無茶です!そんなことをしたら先日の二の舞じゃないですか!」
クロエが声を上げる。
「こんなこと頼むのは虫がいいってことはわかっている。でもあいつらを助けてやってくれ、零治とローゼンクロイツの命を……命令より命を優先するために」
「それ本当なんですか?」
ヨハンの質問に直人は無言で頷いた。
「私、助けます。ユースティアナさんと琴村さんを」
「私も行きます」
クロエとソフィアは立ち上がり返答する。
「どうするヨハン?」
「……」
「はぁ、僕も手伝うことにするよ。彼の命を優先するってのは悪くなさそうだしね」
「私も行ってやる。だがな、私はあくまでアルカ・ネウロイの殲滅という任務のために戦う」
アビゲイルに続き、ヨハンも返答する。
「本当に助けてくれるのか?」
「ああ、助けるよ。みんなを」
ヨハンはそう口にすると、戦場に向けて駆け出すのだった。
説明を聞いた零治は少し驚いていた。
直人との付き合いは長かったものの、軍への所属も自分やベアトが強引に頼み込んだためだったからだ。
「そうか。あいつがな」
「じゃあみなさんはこれからも一緒に戦ってくれるんですか?」
「うん、そうだよ!ユースティアナさん」
「私たちも一緒に戦います」
「ありがとうございます!」
ユースティアナも素直に喜んでいるのかクロエたちと会話に花を咲かせていた。
「そうだ、琴村さん。1ついいですか?」
「なんだ?」
アビゲイルが手を上げる。
「この部隊ってウィッチーズって名前とかないんですか?501のストライクウィッチーズみたいな」
「そもそもこの部隊の名称って特務でしたっけ?」
「ああ。正式名称は特務統合強襲航空団だな。言われてみればウィッチーズって名前はないな」
501統合戦闘航空団は「ストライクウィッチーズ」とも呼ばれている。
だが、この部隊はそんな名称がない。
「なら、なんか考えようよ」
「必要でしょうか?」
「うーん、どうなんでしょうか?」
クロエやソフィアも少し考え込むように首を傾げていた。
「あったほうがカッコいいじゃん!うーん特務統合強襲航空団ねぇ」
「アサルトウィッチーズ……なんてどうでしょうか?」
ベアトが名称を口にする。
「アサルトウィッチーズですか、いいですね」
「はい、かっこいいです!」
「じゃあ決まり!僕たちは今日からアサルトウィッチーズだ!」
アビゲイルが声を上げる。
「アサルトウィッチーズ。ま、悪くないかもしれないな」
零治も彼女たちを見つめ、そう思っていた。
「これからもみんなと一緒でよかったですね、零治さん」
「そうだな。ユースティアナ」
特務統合強襲航空団がアサルトウィッチーズとなったということは、自分やユースティアナ、他のウィッチたちが真の意味で仲間となれた証明なのかもしれないな。
ユースティアナも笑みを浮かべていたのだった。
ちょこっと設定紹介
・特務統合強襲航空団(アサルトウィッチーズ)
琴村零治によって結成された航空団。
特務の所属であり、特殊な技術の試験や公にできない任務の達成を目的としている。
この部隊の任務はアルカ・ネウロイの殲滅であり、そのためストライカーユニットWRを使用して戦闘を行ってきた。
所属メンバー(8名)
ユースティアナ・ローゼンクロイツ軍曹
ベアトリス・フーバー中尉
ヨハン・ゲオルーグ・ハーゲン中尉
クロエ・エリザベート少尉
アビゲイル・ウィリアス中尉
ソフィア・レオニード・ラーヴァ少尉
隊長 琴村零治中尉
隊長補佐 鈴木直人二等兵
今回で第一章 アサルトウィッチーズ結成編は完結となります。
なお第二章の作成を予定していますので、物語は継続いたします。