ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第16話になります。
今回はいつもの2倍くらいの量があります。
リベリオンに到着した翌日、宿舎で零治は目を覚ました。
見覚えのない天井が目に入る。
「そうか。昨日からリベリオンに来てたんだったな」
そこで自分がリベリオンにいることを再認識する。
軍服に着替え予定していた時間よりも少々早いがロビーへと出る。
すでにユースティアナ、ヨハン、ソフィアの姿があった。
「おはよう、早いな3人とも」
「おはようございます!」
「おはようございます、琴村さん」
「おはようございます。早く目が覚めたので3人で朝の自主訓練してきました」
3人もこちらを確認して挨拶する。
「他のメンバーはまだみたいだな」
「軍人ならば早めに行動するべきです」
「ハーゲンは真面目だな。流石カールスラント出身だ」
乾いた笑いを浮かべる。
カールスラントは真面目な人間が多く、時間や規則に厳しいと聞く。
ヨハンはそんなカールスラント人と同様の性格なのだろう。
ウルスラさんの姉であるエーリカ・ハルトマンさんはそこまで厳しくないらしいが。
「当然です。といってもローゼンクロイツやソフィアも日々自主訓練しているんですよ、軍人はこうあるべきです」
ヨハンの言葉に2人は照れるような表情を見せていた。
「なんだもう来てたのか」
「みんな早いねー。僕まだ眠いよ」
アビゲイルは大きな欠伸を見せる。
直人や他のウィッチたちも到着したことでアサルトウィッチーズの全員が揃った。
食堂に向かい食事を始める。
「零治。時間通りね」
「ナナリーか。おはよう」
「おはようございます。ロアノークさん」
隣に座ったナナリーを確認し、直人やベアトも挨拶する。
「情報は事前に伝えた通りだけど、昨日戦闘はあった?」
「なかった。俺もユースティアナも目標を発見、探知できていない」
「そう……わすれるところだった、あなたに仕事よ」
「仕事?」
ナナリーは小さなメモ用紙をテーブルに置いた。
メモ用紙にはこことは別の宿舎の住所と連絡先情報が記載されている。
「ストライカーの修理よ、それも急ぎのね」
「俺たちは目標を撃破するためにリベリオンに来たんだぞ」
「わかってるわよ。でもこっちも緊急事態らしいから頼まれてくれない?必要物資はこっちが用意するから」
「わかったよ。だが、戦闘になれば俺はそっちを優先するからな。直人、お前トラック運転できたよな」
仕方なく了承し、受け取ったメモ用紙をポケットに押し込む。
「また、俺が運転すんのかよ」
「直人しか運転できる人員いないだろ」
隣で食事していた直人も思わずため息をついていた。
食事後、軍の格納庫でトラックに物資の積み込みを行う。
「ん?なんだこいつ?」
視線の先には黒い動物のような生物が寝息を立てて、横になっていた。
くちばしや羽毛のうようなものが生えているということは鳥類なのだろうか。
しゃがみ込みその生物を見つめる。
「モフィ?」
「あ、起きたか」
「モフィー」
「どうかしました零治さん?」
「ユースティアナか」
振り返るとユースティアナが立っていた。
彼女も腰を落とし、見つめる。
「これ動物ですか?」
「さあな」
自分にもその鳥類の種類などはわからない。
そもそも動物にはそこまで詳しくなかった。
再び準備に戻るためと立ち上がろうとすると
「うお!」
「あ……」
その鳥類は隙を突くように状態を落としていたこちらの頭に乗っかる。
「零治さんの頭に……」
「おい、降りろ」
頭を数回振るが、黒い鳥類はへばり付くように乗ったまま降りようとしない。
「もう」
そう口にしてユースティアナが手を伸ばした時、
「モフィー!」
「うお!」
「うわ!」
威嚇するように鳴き声を上げた。
思わず一歩後退りする。
触られることを嫌っているのだろうか。
「こいつ、なんなんだ?……しょうがない、時間が経てば勝手に離れるかもしれないからこのままでいよう」
「でもこの鳥なんなんでしょうか?」
ため息をついて作業に戻る。
「とりあえず必要最低限の部品などは乗せた」
「一応、ウィッチ1人は連れて行ったら?」
積み込みを終えた頃、ナナリーが提案すると、
「なら、私行ってもいいですか?」
真っ先に手を上げたのはユースティアナであった。
「よし、じゃあユースティアナを連れて行こう」
「はい!」
3人を乗せたトラックは移動を開始する。
「零治さん、その鳥まだ居たんですか?」
「ん?ああ、離れなくってな」
「鳥?そんなのどこにいるんだ?」
こちらの会話に直人は首を傾げていた。
「え?零治さんの頭に乗ってる黒いのです」
「いや、俺には何も見えんのだが?」
「もしかして、この子使い魔、なんでしょうか?」
ユースティアナの言葉に、零治も再びその鳥に視線を向ける。
今まで気づかなかった。
自分もユースティアナも使い魔を視認することができる。
しかし、直人はウィッチではないしDS(デザインソルジャー)でもないため使い魔を視認することができない。
彼が「見えない」と口にするまでまったくその動物が使い魔であることなど考えもしなかったのだ。
「使い魔か……でも、リベリオンでこんな鳥類は見たことないぞ」
「私も見たことないです」
「リベリオンにも数人はウィッチがいるんだし、そいつらの使い魔なんじゃないのか?」
「あー、確かにそれはあるかもしれませんね」
納得したように彼女は頷く。
そんな会話に花を咲かせているうちに、目的の場所へと到着した。
到着した宿舎は自分たちの泊っている宿舎とよく似た建物であった。
「ここだな」
「さっさと終わらせろよ。アルカ・ネウロイはいつ来るかわからないからな」
「わかってるって」
3人はトラックを降りるとロビーへと進む。
「いらっしゃいませ。お泊りでしょうか?」
「いえ、こちらにグレイス・メイトランド・スチュワードっという方が宿泊しているって聞いたんです。ナナリー・ロアノークの部下である整備兵の琴村って連絡すればわかると思うんですが」
「承知しました。少々お待ちください」
ロビーの店員は頭を下げて奥へと駆けていく。
「あー!モフィ、いた!」
「ん?」
ロビーに響き渡る声と共に3人の少女がこちらに駆けてくる。
それぞれブリタニア、扶桑、オラーシャの軍服に身を包んでいた。
「モフィ?あ、もしかして零治さんの頭に乗っている子ですかね?」
「ああ、これ君の使い魔か?」
頭に手を伸ばす。
眠っているからか、先ほどのように鳴き声を上げることもなく離れてくれた。
「「え?」」
「はい!よかった。見つからなくって心配してたんだよ!」
驚いていた2人とは異なり、ブリタニアの軍服に身を包む少女はモフィと呼ばれる黒い鳥類を受け取り、笑みを浮かべる。
「あの、ジニーちゃんのモフィが見えるんですか?」
「やべっ!」
そこで自分の行動に後悔する。
ウィッチではない自分が使い魔を見えているのは、機密情報だったのだ。
今の行動はどう見ても使い魔が見えている者の行動であった。
「ねえ。あなた見えているの?」
「見えるわけないだろ。俺もこいつも一般人なんだぞ」
「み、見えてないですよ!ねえ零治さん!」
「あ、ああ……」
直人とユースティアナにフォローされ、ぎこちなく返答する。
「いや、でも今」
「あ、そうだ。そろそろ私たち行かなきゃ!モフィを連れてきてくれてありがとうございます!お兄さん!」
ジニーと呼ばれる少女の言葉に続くように2人も頭を下げて出口へと向かって行く。
「馬鹿、なにやってんだ」
「使い魔見えるし、触れるんだから仕方ないだろ」
「まあまあ、そう怒らずに」
怖い顔をしている直人をなだめる。
「にしても、ここにもウィッチがいたんだな」
「すごい人たちと会えましたね!私、彼女たちを生で見たの初めてです!」
「どこの部隊だ、彼女たち?」
「「……」」
その言葉に2人は何かを訴えるような視線をこちらに向ける。
自分も思わず首を傾げた。
「零治さん、本気で言っているんですか?レコードで歌聴いてるのに」
「なんだよ」
「あいつら連盟空軍魔法音楽隊のメンバーだろ」
呆れたように直人が彼女たちの正体を明かす。
「まじで?」
再び彼女たちの背中を見つめる。
確かに前に映像で見たことがある顔と同じであることを思い出す。
「そうですよ!ファンだったんじゃないんですか!?」
「いや、こんなところにいるわけないって考えるのが自然だろ?それにライブ衣装姿でしか俺は見たことない」
「ここはリベリオンですよ?ルミナスウィッチーズがワールドツアーでライブしたことがある地でもあるんですから本物と考えるべきです!」
ユースティアナは本物のルミナスウィッチーズに会えたことによっぽど感激しているのか、いつも以上に興奮した声を上げている。
「……」
圧倒されたように何も言わず後ずさる。
「お待たせしました!」
「あ、あなたは」
「ドーナッツのお兄さん!」
「あ……」
目の前に再び見覚えのある顔が現れた。
昨日見たからこちらも忘れるわけがない。
そして彼女たちもルミナスウィッチーズのメンバーであることを理解する。
「ドーナッツの」
「お兄さん?」
直人とユースティアナはその呼び名に首を傾げていた。
「エリーやアイラの知り合い?」
「昨日たまたま会ったんです」
「ドーナッツを分けてくれた人」
「そうだったんだ。連盟空軍魔法音楽隊ルミナスウィッチーズの隊長グレイスです」
「アサルト……じゃなくてナナリー・ロアノークの部下で整備兵の琴村零治です。ストライカーの修理依頼を受けました」
「待っていました。結構ひどく破壊されちゃってて」
グレイスは言いずらそうに言葉を紡ぐ。
「まあ、やるだけやります」
格納庫に案内され、室内のストライカーユニットを見つめる。
「嘘だろ……」
「うわーひどいですね」
思わずそんな言葉がでる。
目の前に置かれた赤と黒に塗装されたストライカーユニットは想定以上にひどい状態で鎮座していた。
「どんな扱い方したらこんな壊れ方するんですか!?」
「私たちにもわからなくて、気が付いたらこんな状態に……」
口調が荒くなった直人が問い詰めている中、大破したストライカーユニットに触れる。
「……魔導エンジンは無事のようだが、その他の内部部品は数か所交換、外装は丸ごと交換したほうが早いか」
外装のつなぎ目を睨む。
明らかに削り取られたように空間が存在することに気づく。
これは、ネウロイの攻撃による損傷だった。
「明日まで直せそうですか?」
「まあなんとか……って明日?!」
「はい。可能であれば明日の朝までに」
「ギリギリだが寝ないでやればなんとか……わかりました」
そう口にして物資を積んだトラックへと向かう。
「零治。俺たちの目的忘れてないだろうな」
「大丈夫だ、わすれてない。目標の反応を感知すればそっちを優先する。それにユースティアナを同行させ、ストライカーを積んできたのだって有事に対応するためだ」
「なら、いいけどよ」
それ以上何も言わず物資を下ろし、修理作業へと移る。
いつものWRとは異なるがストライカーの整備、修理も行っていた経験のあるため苦戦することなく作業を進めていた。
日が傾きはじめ修理作業を進めている中、
「あの、琴村さん」
今朝ジニーと呼ばれていた少女の姿があった。
「ああ、朝の。えっと、ヴァージニア・ロバートソンさん」
「私の名前知ってるんですか?」
彼女は隣に腰を下ろして、こちらを見つめる。
「まあ連盟空軍魔法音楽隊ルミナスウィッチーズのことは知ってますから。朝一緒に居たのは渋谷いのりさんとリュドミラ・アンドレエヴナ・ルスラノヴァさんですよね」
「そうです!詳しいですね。あの、モフィ見えてます?」
ヴァージニアの手には先ほどの鳥類の姿があった。
一瞬、モフィを見つめてしまう。
視線を戻し再び修理作業を続ける。
「見えませんよ。俺はウィッチじゃないですから」
「そうなんですか。そうだ、琴村さんたちはどうしてリベリオンに?」
「まあ仕事ですよ。軍人なので」
「もしかしてネウロイがリベリオン近くに現れたりしているんですか?」
「……」
その言葉に、一瞬鼓動が早くなる。
平静を保ちながらも手を動かす。
「急にどうしたんですか?ネウロイがリベリオンに現れるわけがないじゃないですか」
「だって琴村さんたちって戦闘用の部隊なんですよね。それがリベリオンにいるってことは」
「仮にリベリオンの周辺にネウロイが現れたとしても警報が鳴ります。今こうして静かだということはネウロイはこの国の近くにいないってことです」
そう、通常のネウロイはリベリオンの周辺にはいない。
今この国の近辺に隠れているのは自分たちアサルトウィッチーズが追っている特殊な個体アルカ・ネウロイなのだ。
「そうですよね」
「ジニーちゃーん、琴村さーん。そろそろご飯食べに行こー」
格納庫の入り口で声を上げていたのはいのりである。
直人やユースティアナ、リュドミラの姿も確認できる。
「いのりちゃん、ミラーシャちゃん」
「ストライカーはちゃんと直しますし、心配はしないでください」
工具を置いて立ち上がる。
そして手を伸ばす。
「ありがとうございます」
ヴァージニアも感謝を述べ、手を取って立ち上がる。
しばらく歩き、適当な店に入った。
「琴村さんたちはリベリオンに来たことはあるんですか?」
「いえ」
「俺は数回ほど」
「私は今回が2回目です」
「へーそうなんだ。ミラーシャちゃんはなんか聞きたいことないの?」
「私は別に質問することはないけど……じー」
「ん?」
リュドミラは疑いの視線をこちらに向ける。
どうやら今朝の使い魔が見えているか否かを気にしているようだ。
長いようで短かった食事を終えて、店を出た。
「おいしかったですね!」
「そうだな」
帰路についている間も零治は夕暮れの空を見つめていた。
「琴村さん」
「はい?」
「私たちのストライカーユニットは明日まで直せそうですか?」
リュドミラが心配そうな表情で質問する。
「まあ、ギリギリですが。新しい外装の塗装もジョアンナさんたちがやってくれましたし、やりきります」
「すみません。無茶なお願いしちゃって」
いのりが謝罪するように頭を下げる。
「気にしないでください。はっ!」
そんな時、コアの反応を感知する。
ティアも感知して伝えたのかユースティアナも空を見つめた。
確かに夕暮れの空に人影が視認できる。
それは人型ネウロイの姿ある。
「伏せろ!」
零治が声を上げ、ユースティアナとヴァージニアの体を隠すようにしゃがみ込む。
直人も同様にいのりとリュドミラの体を隠す。
ネウロイは紅の閃光を放つ。
ビームが後方の地面に直撃し、土煙が舞う。
「なに?なんなの?」
「あれはネウロイ?でも、なんで!警報はなっていないはず!」
「直人。ヴァージニアさんたちつれて逃げろ。ここは俺とユースティアナで時間稼ぐ」
懐から自動拳銃「M712拳銃」を引き抜き、通信機でベアトへと救援要請を送る。
「琴村さん、何言っているんですか!」
「そうだよ、逃げなきゃ危ないって」
ヴァージニアがこちらの腕を掴み、制止するように声を上げた。
「いいから、いくぞ。ここはあいつらに任せろ」
「でも!」
「皆さん逃げてください。私たちは大丈夫ですから」
ユースティアナも逃げるよう口にする。
「防御は任せる、攻撃は俺が担当する。ベアトたちがくるまでの辛抱だ」
「はい!」
同時にアルカ・ネウロイへ向けて駆け出す。
「いくぞ。ここはあいつらに任せろ」
「でも!」
「ジニーちゃん、行こ」
3人もその場を離れるように逃走する。
放たれた閃光をユースティアナのシールドが防御した。
反撃するように零治が引き金を引く。
しかし弾丸は命中することなく彼方へと消える。
「距離が遠すぎて、当たらない……」
「でもこれ以上近づけません」
ユースティアナも肩で息をして、表情を歪ませる。
彼女のシールドは一般的なウィッチに比べて、防御力が低い。
長時間の防御や攻撃を受け続けることには向いていない上に、今はストライカーユニットをつけていない。
守ることに集中させているものの、やはり長くは持たないのだろう。
「零治さん、ユースティアナさん。お待たせしました!」
「ここからは私たちに任せろ」
通信機から声が響く。
同時に空を舞う2人のウィッチ、ベアトとヨハンであった。
「ベアトさん、ハーゲンさん!」
「なるべく街からネウロイを引き離すんだ。ここで戦闘を続けたら街に被害が出る!」
「了解です!」
ベアトとヨハンが戦闘を開始する。
指示通りベアトたちは人型ネウロイを連れて街上空を離れ、港周辺にまで移動していた。
戦闘の中アルカ・ネウロイの頬にⅩの文字が刻まれていることを確認する。
「ナンバーはⅩ。コードネームはホイールオブフェイト(運命の輪)。
コアは……腹部にあります」
「速攻で仕留めます」
魔眼でホイールオブフェイトのコアを見つけ出したことを確認し、ヨハンが固有魔法「構築」で西洋風の片手直剣を生成し、接近する。
「——っ!」
その時、ホイールオブフェイトからの不協和音ような音声が響き渡る。
「ぐっ!」
「なんなんですか!?これは、歌?」
その歌のような不協和音にベアトもヨハンも頭を押さえ、空で停滞した。
「頭が割れそうだ」
「うう、もしかして、アルカ・ネウロイがこの歌を?」
苦しみに悶えながらも視線をホイールオブフェイトに向ける。
同時刻、零治とユースティアナも港に向けて足取りを進めていた。
「零治さん、何か聞こえませんか?」
「これは、歌?」
思わず周囲を見渡す。
街内では人々が頭を押さえて、苦しんでいることに気づく。
「大丈夫ですか?」
「頭が、痛い」
苦しむ市民に駆け寄り、背中を摩る。
「何がどうなっている?」
同時に自分にも頭痛が走る。
「うっ!これが」
「零治さん!っ!頭が割れるように痛い」
ユースティアナも膝から崩れ落ちるように蹲る。
「ベアト、ハーゲン、状況は?」
「うう、零治さん……歌が」
「くそ、そっちもか?」
通信機から苦しむ声に、思わず声を上げる。
「琴村さん。悪いアルカ・ネウロイに逃げられた」
「ハーゲン、お前らは無事なのか?」
「なんとか、でもこの歌が、一体何なのか……」
「やはりこの歌が?」
ヨハンの言葉に思わず考えこむ。
やはり歌が頭痛に苦しむ原因なのだろうか。だが、なぜアルカ・ネウロイがこんな歌を?
それがわからなかった。
時間が過ぎ歌は聞こえなくなり、人々も先ほどの頭痛が嘘だったかのようにいつもの生活へと戻る。
「ベアト、ハーゲン。格納庫に戻る前にこっちにきてくれるか?状況を整理したい」
「了解です」
「ユースティアナ、とりあえずルミナスウィッチーズの宿舎に戻ろう」
「はい!」
ルミナスウィッチーズの宿泊している宿舎に到着する。
格納庫に向かうと直人の姿があった。
「無事だったか零治、ローゼンクロイツ」
「それよりさっきの歌聞いたか?」
「あれか。すげー頭痛がしたけどあれはなんだ?」
「俺にもわからない。こんな現象初めてだ」
お互いに状況を理解できていない中、
「零治さん、直人さん」
ストライカーユニットを装着したベアトとヨハンが着陸する。
説明を聞いて再び難しい表情を浮かべた。
「あの歌の原因はネウロイだったのか」
「はい」
「あの歌を聞いた途端、すごい頭痛がして……くそ!あんなのどう対処すれば」
ヨハンは悔しそうに悪態を突く。
4人も方法を模索するものの、いい方法は浮かばずにいた。
「あの、琴村さん」
「ヴァージニアさん。それにいのりさんやリュドミラさんも」
声の方を振り返ると彼女たちの姿があった。
「あのネウロイは一体何なんですか?」
「警報、鳴ってなかったわよね。街の上空にネウロイ居たのに」
その言葉に、直人やヨハンがそれぞれの顔を見つめる。
「現在、リベリオンの警報は故障しています。俺たちの別動隊が修理に当たっていますがまだ直っていない状態でネウロイが現れてしまったんです」
「そうなの?」
「混乱を避けるため秘密裏に修理活動が行われていますから、知らないのは当然かと」
「そうなんですか」
納得したのか彼女たちはそれ以上質問をしなかった。
「直人、みんなを連れて宿舎に戻れ」
「お前はどうするんだ?」
「彼女たちのストライカーユニットを修理しなくちゃならない。終わったら俺もそっちに戻る」
「そうか。あんま無理すんなよ」
「うん」
直人たちと別れた後、再び格納庫内に入り修理作業を再開するのだった。
トラックが帰路を進んでいると、ユースティアナが口を開いた。
「あの零治さんが言っていた警報の故障って嘘、ですよね」
「当たり前だろ。警報が壊れてるとか住んでる人間からしたら大問題だからな」
「でも、あんな嘘よく思いつきますね」
ヨハンも少し感心している。
「アルカ・ネウロイのことは外部に情報を公開できませんからね。隠ぺいするためには多少の嘘も仕方ないです」
「そっか。だから零治さんも呼び方を変えていたんですね」
ユースティアナも頷いていた。
リベリオンに来てから、「アルカ・ネウロイ」の名称を出すことを避けていた。
アルカ・ネウロイの情報は機密情報であったため、名称を口にすることを避けていたのだろう。
「お前らもここではあまり口にするなよ。広まってしまうと面倒だからな」
「了解です」
トラックはそのまま帰路を進んでいくのであった。
翌朝、まだ空が薄暗い中、ヴァージニアはストライカーユニットの保管されている格納庫を訪れていた。
「琴村さん。修理の状況は」
室内に入り、真っ先に目に入ったのは9台のストライカーユニットである。
まるで新品のようなストライカーユニットは修理が完了しているのか、固定装置に綺麗に設置されていた。
片付け中に眠ってしまったのか工具を持ったまま眠りについている零治と隣で眠っているモフィや三毛猫のおこげ、ボルゾイのオリヴィエたち3匹の使い魔の姿がある。
「本当に一晩で9台のストライカーユニットを直したんだ……すごいなー」
視線を眠っている零治に落とす。
「はっ!やべ、寝てしまっていたか」
目を覚まし、体を起こす。
視線の先に広がっているのは格納庫内の光景であった。
周囲にはモフィの他に三毛猫とポルゾイの姿がある。
体に掛けられていたタオルケットに視線を落とす。
「これ、誰が?」
「あ、おはようございます」
「ヴァージニアさん……おはようございます。寝過ごしてしまいました」
声のほうには彼女が立っていた。
コンクリートの地面で眠っていたからか、節々の痛みに耐えて立ち上がる。
「いえ、まだ9時過ぎですよ」
「修理は終わったので、これで」
「待ってください。もう行くんですか?もっとゆっくりしても」
彼女はこちらの袖をつかみ、制止する。
「依頼された修理は終わりました。これ以上長居する必要はないです」
「やっぱり昨日のネウロイが関係しているんですか?」
「それは」
「……実は私、見たんです。一昨日人型の、あのネウロイがこの格納庫から出ていくところ」
「なに!?見たのか、ネウロイを」
その言葉に零治は彼女を見つめる。
確かにストライカーユニットの損傷からネウロイのビームによって削り取られたような跡はあった。
だが、なぜ?
なぜ、ストライカーユニットを破壊するんなんて行動を?
その行動の理由がわからない。
「なんのためにこんなことを?」
「えっと、もしかして歌、ですかね」
「歌?」
思わず首を傾げた。
歌とアルカ・ネウロイに一体どんな関係があるのか理解できなかった。
昨日、リベリオンに響いていた歌がネウロイによるものであることは説明したが。
「あのネウロイが歌っていたと言ってましたよね。私たちもリベリオンでここ数日歌いました。もしも私たちの歌がネウロイにとって邪魔な存在であったなら……」
アルカ・ネウロイは特殊個体だ。
行動原理が他のネウロイと違うことくらいあってもおかしくないが。
「ストライカーユニットを破壊し、歌うことを妨害したってことですか。
っ!来たか」
そう口にして、格納庫の出口に向かう。
「琴村さん?」
「ユースティアナたちのところに戻ります」
「待って琴村さん!今、ロアノークさんから連絡あって鈴木さんが向かってるから待機しててって」
グレイスが肩で息をして報告する。
「よし。それなら歩かずに済みさそうだ」
10分程で直人の運転するジープが到着する。
「行くぞ」
「ああ。銃まで積んでくるとは気が利くな」
席に立てかけられた「MG42機関銃」を見つめる。
「琴村さん。もしかして」
「俺たちはこれで」
ジープは速度を上げて港へと向かう。
「あの銃。もしかしてネウロイが?」
「グレイス隊長。琴村さんたちってどこの部隊なんですか?」
「えっとブリタニアで活動している、なんて言ったっけ?あ、ロアノークさんがアサルトウィッチーズって言ってたと思う」
「アサルトウィッチーズですか。ちょっとカッコいいですね」
2人は遠ざかるその背中を見つめているのだった。
ちょこっと設定紹介
・なし
現在公開可能情報はありません。