ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第24話になります。
揺れるトラックの荷台で零治はペテルブルグの街を見つめていた。
先日、撃破目標となるアルカ・ネウロイ、コードネーム エンペラー(皇帝)の撃破に成功したことで、アサルトウィッチーズは帰投するために港へと向かっているのだ。
「アルカ・ネウロイを倒したから、少し気温が上がった気がしますね」
「はい。寒いというよりも少し暖かくも感じますね」
隣ではユースティアナとベアトのそんな会話が聞こえてくる。
「過ごしやすい気候にはなったな」
「ああ……そうだな」
ふと、視線を手のタロットカードに落とす。
右手にはマジシャン(魔術師)とスター(星)の名称が刻まれた2枚のカード、左手にはその他のタロットカードの束があった。
これまで自分たちアサルトウィッチーズは12体のアルカ・ネウロイと交戦し、撃破してきた。
マジシャンである自分と、スターであるユースティアナを除けば、残るアルカ・ネウロイは8体。
すでに半分以上のアルカ・ネウロイの撃破に成功している。
この戦いも折り返し地点を迎えていることになるのだ。
「必ず俺たちが終わらせる……」
しばらくしてトラックが港に到着した。
「琴村さん、荷物の搬入完了していますよ」
「ランカスターの飛行準備もできています」
クロエとソフィアが出迎えるように報告する。
「ありがとう。直人、ここからまた長いが操縦頼む」
「あいよ。俺も長時間の操縦に慣れてきちまったよ」
「基地に戻ったらうんと甘いコーヒー淹れますよ」
「頼むわベアト」
全員が機体に乗り込むとランカスターは飛びだっていくのだった。
ブリタニア基地に戻った零治たちアサルトウィッチーズは日常に戻りつつあった。
アルカ・ネウロイの出現もなく、日々哨戒任務と訓練、稀に出現するネウロイとの交戦をして1日が終わる。
そんな日々を送っていた。
軍の格納庫内で零治はストライカーユニットWR(ウォーロックリバイブ)の整備をしている。
「やっぱ、ここにいたのか」
「哨戒任務と訓練ばかりなんですから休んでもいいじゃないですか?」
格納庫内に直人とベアトがやってきた。
「いつアルカ・ネウロイが出てくるのかもわからないだろ……」
そう口にして手を動かす。
「なんかこうしていると、ユースティアナさんたちが来る前を思い出しますね」
「そうか?」
「はい。私たちって零治さんと会ってからずっと一緒だったじゃないですか」
「言われてみれば、そうだな」
「でも、直人さんは実家の診療所に残ることもできたんじゃないですか?」
ベアトがそう口にする。
ストライカーの扉を閉じ、ウェスで手を拭くと自分も視線を向けた。
「言ってなかったか?俺は元々診療所を継ぐ気なんてなかった……まあせっかく学んだ医学だしな、活かさないのももったいないから衛生兵になっただけだ」
直人は一度ベアトを見つめるが、再びいつもの表情へと戻る。
「それに俺がいなきゃこの部隊の怪我や病気の治療は誰がやる?まあ、どこかの隊長は移動手段の足としても使用してくれているがな」
「お前、根に持ってんのか?仕方ないだろ、俺は直人みたいにいろんなことができるほど物覚えがよくないんだし」
「ふふ。本当に私たちって変わらないですね」
ベアトが笑うのにつられ、2人とも笑って見せていた。
同時刻、1隻の巡洋艦がブリタニアへと向かって航行していた。
「もう少しでブリタニアか。元気にしているかな、琴村少年たちは」
扶桑皇国海軍の軍服に身を包む少女の手には扶桑の軍人とブリタニアのウィッチの写真が握られていた。
翌日、朝の訓練を終えたユースティアナは廊下を進んでいた。
「あーおなかすいたなー」
「ん?ユースティアナか、おはよう」
「おはようございます!」
廊下の角で合流した2人は挨拶をして再び歩き出す。
「あの、零治さん。ちょっと気になることがあるんですが……」
「気になること?」
「はい」
ユースティアナはこちらの質問に頷く。
食堂の扉をくぐると
「おー、琴村少年!」
「え?」
聞き覚えのある甲高い声に思わず視線を食堂内へと向ける。
「ふふふ」
「おはようございます。琴村さん、ユースティアナさん」
目の前にはソフィアの他に、見覚えのある顔があった。
彼女は笑みを浮かべ手を振っている。
「す、鈴木少佐、なんでここに?」
「おう、零治。おはよう。入り口で立ってると邪魔だぞ」
「おはようございます、零治さん、ユースティアナさん」
直人とベアトもちょうど起きてきたのか食堂内に入る。
「げっ!」
「直葉(すぐは)さん!」
「ベアトもいたのか、久しぶりじゃないか」
直葉は2人をみて再び声を上げていた。
「おい、零治。なんで、この女がここにいるんだよ!?」
「俺が聞きたいよ!上からは何も聞いてないぞ!」
直人が胸倉に掴みかかり声を上げる。
しかし、自分も彼女がこのブリタニア基地にいる理由はわからなかった。
そもそもナナリーからも彼女についての連絡は来ていない。
「まあ落ち着きたまえ、弟よ」
コーヒーを飲んで一息ついているマイペースな直葉の言葉に
「「お、弟!?」」
ユースティアナとソフィアが驚きながら2人の顔を交互に見る
「姉貴がいるせいだろ……で、何しに来たんだよ?」
直人はにらみつけて、質問する。
「率直に言えば君たちの戦力増強目的だ」
「戦力増強?」
「私がこの部隊に入るってこと」
「でも……」
「大丈夫だ。話は上につけているから」
直葉は適当にあしらうと胸を張る。
「そういう問題じゃない!」
「直人さん。落ち着いて」
「ウィッチ増援はこちらとしてもありがたいです……こちらも6人のウィッチ対応するのは少々無理がでてきていたので」
「っ!まあ、しゃーねーか……」
直人もあきらめたのかため息をつき、席に着く。
「食事の準備しますね」
「ベアト、私も手伝うよ」
ベアトと直葉は台所の奥へと入っていく。
1時間ほどして、朝食を終えた頃、
「ユースティアナ。さっき何か質問しようとしてたけど、なんだったんだ?」
「あ、忘れるところでした。ベアトさんの魔法のことなんです」
「私ですか?」
ユースティアナの言葉にベアトは首を傾げている。
「はい。前から少し気になっていたんですが、ベアトさんは固有魔法を2つ持っていますよね?」
「鷹ノ眼と魔眼、でしたっけ?」
クロエが固有魔法の名称を口にすると肯定するように頷く。
「確かに、言われて見れば珍しいですね。というか、そんなウィッチ他にはいないですよね?」
「えっと、2つの魔法は私の特異体質なんです」
ベアトは説明を始める。
「昔、大きな怪我をしたことがあるんですが、その時の出血がひどくて生死をさまよったんです」
「その時に弟がベアトを助けたんだよな!」
「俺は治療をしたに過ぎない。それに輸血用の血を提供したのは姉貴だろ」
鈴木姉弟が続くようにそう口にした。
「でも、それが固有魔法とどう関係あるの?」
「前例がないからな。これは俺たちの憶測でしかないが、ウィッチにウィッチの血を輸血すると稀に、よく似たもう一つの固有魔法を獲得する可能性があるってことだ」
直人の言う通り、ベアトは輸血してから数日後に2つ目の固有魔法「魔眼」を獲得しているのだ。
「本当なんですか?」
「はい。私以外に前例がないので、確信があるわけじゃないですが。理由がそれ以外に見つからなくて」
「すごいじゃん、それ!生死を彷徨い、復活して新しい力を得るとかフーバーさん、カッコいい!」
「アビー……からかうなよ」
「いや、素直にすごいと思ってるんだよ!」
興奮気味のアビゲイルを横目にヨハンはため息をついていた。
「あくまでも奇跡的な偶然で助かったんだぞ、下手したら命を落とすところだった。それに怪我の後遺症で普段は目が見えなくなったのもあるだろ」
「確かに、目は見えなくなりましたけど。直人さんには感謝してもしきれません」
「俺は助けたいと思ったから助けただけだ。じゃあ、俺は仕事がある」
直人はそう口にすると立ち上がる。
「俺も朝からやることがある」
続くように自分も立ち上がった。直葉のことでナナリーに連絡を取る必要があるからだ。
「そうだ、琴村少年。君に土産があるんだ」
「土産?」
「後で格納庫に来てくれたまえ。それと弟よ、基地を案内してくれ」
「なんで俺が……やることあるっつたろ!」
「いいから、ベアトもお願いするよ。ほら行こう」
「は、はい……」
直葉を案内するために二人は食堂を後にする。
「変わった人、ですね」
「あれでもあの人、もう二十歳なんだぞ」
「え?」
「嘘……」
「二十歳?魔法力が衰えたりしてないんですか?」
「ああ、本当にな。不思議な人だよ」
零治も食堂を出て隊長室へと向かう。
隊長室に入り、受話器を手にするといつも利用する連絡先へ電話を掛けた。
「あなたから私に連絡するなんて珍しいわね」
「鈴木少佐が俺たちのところに来たぞ。どういうことだ?」
「あー、あの子本当にブリタニアに行ったのね」
電話越しでも彼女が頭を抱えているのがわかった。
「ごめん。一応止めたんだけど、上を納得させたのね」
「別にナナリーを責めるつもりはないよ。俺たちも6人のウィッチじゃ限界が来ていたし」
「そう……でもあの子なりにあなたや直人たちが心配なんじゃないかしら。あなたのように力を持たない直人を直葉が大事に思うのは当然のことなのよ」
彼女の言い分もまったくわからないわけじゃない。
直人は衛生兵とはいえ、一般人だ。
魔法も使えないし、自分のようなコアを体内に持つDSではないのだから。
「ああ、だから俺は彼女の増援を受け入れるよ」
「ありがとう。……あなたとローゼンクロイツさんの体は大丈夫?」
「今は特に問題ない。五感もしっかりしている」
「……そう。なら、これまで通り任務を続けなさい」
「うん」
受話器を置いて、天井を見つめる。
いつも見ている天井だけが広がっていた。
「今まで通りか……やるしかないよな」
書類を手に取り、ペンを走らせる。
一時間ほど経ってデスクワークを片付ける。
「よし、これで終わりだな。そういえば直葉さんが土産を持ってきたとか言ってたな、行くか」
隊長室を出て、格納庫を訪れる。
格納庫内には ユースティアナやクロエ、直葉の姿があった。
「お、きたか。琴村少年」
「あのー、鈴木少佐。その少年って呼び方いつまでやるんですか?」
彼女の呼び方が気に入らないわけではない。
だが、19歳の自分を少年という呼び方のはいかがなものかと思ってしまう。
どちらかと言えば、青年という年だろう。
「少年は少年さ。いつまで経ってもね」
「その呼び方は確定なんですね……」
「ははは。ほら」
彼女は笑って見せるとコンテナから取り出したものを投げ渡す。
それを受け取り、ようやくその正体を確認する。
扶桑で作られた刀剣武器、「扶桑刀」だった。
「これ、扶桑刀?でも、なんでこれを?」
思わず質問した。
昔、DS(デザインソルジャー)の戦闘訓練として少しだけ剣術を習ったことがある。
だが、DSでは前線で戦うことができず軍の整備兵になってから戦闘訓練は最低限の射撃訓練くらいしかしていなかったのだ。
「その刀なら君の力を引き出せる可能性があるかと思ってね」
「何か特殊な刀なんですか?」
鞘から少し抜刀して刀身を見つめる。
刀身には自分の顔と後方の空が反射しているが特に変わったところは見られない。
「ん?」
そこで刃の付け根に文字が刻まれていたことに気づいた。
「烈風丸」という小さな文字が読み取れる。
「烈風、丸……?」
「かつて坂本少佐、そして宮藤曹長が使用した扶桑刀だ」
「その二人って第501統合戦闘航空団の方ですよね?」
ユースティアナたちも聞き覚えのある名前に駆け寄る。
「そう。2人はその扶桑刀でネウロイを倒し、そして魔法力を枯らした。そんな曰くつきの刀がそれだ」
直葉は説明するようにそんな言葉を口にした。
ユースティアナやクロエも訝し気に自分の手の扶桑刀を見つめている。
「なんでそんなものを?」
「その刀には魔法力が込められている。だが使用者の魔力を吸い上げるらしいよ」
不敵に笑う彼女を横目に再び烈風丸を見つめた。
この刀をもし体内のコアが生み出すエネルギーで扱うことができれば……自分でもネウロイを、倒せるかもしれない。
「烈風丸はしばらく俺がお借りします。色々と試したいこともあるので……」
「いいとも。大いに頑張りたまえ、琴村少年。だが、くれぐれもその刀はウィッチに握らせないことだ。その刀はそれだけ危険な品でもある」
「はい」
釘を刺すように注意をする直葉の言葉に零治は深く頷いていた。
人物紹介(詳細)
・ベアトリス・フーバー中尉→大尉(オリジナル)
二つ名 : 双眼の魔法少女
性別 : 女性
年齢 : 17歳
身長 : 160cm
体重 : 47kg
生年月日 : 6月24日
魔法力 : 中の上
使い魔 : 鷹(ウィンディ)
固有魔法 : ①鷹ノ眼(ベアトの固有魔法。広い視野と動体視力を確保することができるため彼女を司令塔とするアサルトウィッチーズ内では非常に有用な魔法である。なお、副次的な効果として使用中は通常の視力も回復することができる)
②魔眼(ベアトが後天的に得た固有魔法。広く知られている魔眼という魔法と同様にネウロイのコアを外側から視認することができる。なお、零治やユースティアナの体内にあるコアも視認はできている)
容姿 : 茶髪のロングヘアに真珠色の瞳を持ち、ブリタニア空軍の軍服にカーキと橙のニーソックスを身に着けている。
性格 : 冷静で優しい性格(ただし甘いものには目がない)
得意分野 : 対局を見る、射撃戦、家事全般
使用ストライカーユニット : ストライカーユニットWR 6号機(調整版汎用機)
パーソナルマーク : 飛翔するように羽を広げる鷹
概要 : 第一章では中尉だったが第二章にて大尉に昇格している。
10歳で魔法力を得ており、戦闘経験はアサルトウィッチーズ内でも最も長く司令塔に向いたウィッチ。
魔法力は一般的なウィッチとそう変わらないが、戦闘経験や戦闘技術、センスによって手堅い立ち回りで確実な撃破を行う。
ウィッチの中でも珍しい2つの固有魔法を使用可能であり、どちらも眼として機能することから彼女は「双眼の魔法少女」とも呼ばれている。
また、対局を見ることにも長けており将棋やチェスなどにはめっぽう強い。