ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第25話になります。
直葉から受け取った扶桑刀「烈風丸」を手に軍の格納庫のストライカーを見つめる。
これまでストライカーユニットは6台だったが、7台目のストライカーユニットがあった。
扶桑製のストライカー、紫電改である。
「これが鈴木少佐のストライカーですか?」
「そう。琴村少年は整備兵だったね。私のストライカーも整備を頼むよ」
「はぁ……それはいいんですが、よくこの部隊に来ることが許可されましたね」
思わずそんな感想をつぶやく。
戦力増強として鈴木直葉に来てもらったのはこちらとしても願ったり叶ったりではある。
当初は6人のウィッチすら集めるのが大変だった特務統合強襲航空団「アサルトウィッチーズ」はそれだけ戦力を割くことが困難であったのだ。
「確かに、上層部はあまりいい顔はしなかったね。でも君たちがこれまでアルカ・ネウロイを討伐し続けたからこそ、私もここに来ることができた。琴村少年、君たちの活躍は確かに上にも影響を与えているということさ」
「そういってもらえるとありがたいです」
「そうだ、少年。私はここに配属された時点で君の部下になっている。階級は少佐である私が上だが、気にしないでくれ」
「そういえば鈴木さんって少佐なんですね!結構偉いんじゃないですか?」
隣にいたユースティアナが彼女の階級を聞いて、思わず声を上げていた。
「それなりにね。ウィッチ歴も結構長いね」
直葉が説明しているのをきいて、零治も頷いていた。
彼女はウィッチになったのは13歳頃と聞いている。
実に7年もの間ウィッチとして戦い続けていることになるのだ。
「むしろ魔法力も持たずまだまだ若いのに軍人やっている琴村少年や弟の方が珍しいと思うがね」
「俺も直人もこの部隊には必要だから軍人やっているんですよ。それにあいつがいなきゃ、色々と困ります」
「役に立っているのならいいさ。では、私は部屋に戻らせてもらうよ」
彼女はそう口にすると格納庫を後にする。
「私たちもそろそろ哨戒任務にでましょうか」
「ですね!」
ソフィアとユースティアナがストライカーユニットを見つめる。
「今日の哨戒任務は2人だったな。よろしく頼む」
「「はい!」」
2人が哨戒任務に出るのを見送り、零治も格納庫を後にした。
翌朝、まだ薄暗い空の中で零治は歩みを進めていた。
「おう。早いな、ハーゲン」
片手直剣を振る後姿を発見して、声をかける。
「はっ!……琴村さん」
ヨハンは剣を下ろし、こちらを振り返った。
「悪いな。急に声をかけて」
「いえ、でも珍しいですね、こんな朝早く会うなんて。ストライカーユニットの整備ですか?」
「いや、今は少し訓練をと思ってな」
そう口して手の扶桑刀を見せる。
「それ扶桑刀ですか?琴村さん、前線には出ないはずじゃ」
「出る気はないさ。でも、軍人である以上戦闘に参加する可能性はゼロじゃないからな。そうだ、ハーゲン、俺に剣術を教えてくれないか?」
「それは構いませんけど、私の剣術も我流ではありますよ。それに扶桑刀とは少し剣の特性も違うでしょうし」
軽く剣を振るって見せる。
確かに、自分が昔習った剣術とは違うようにも見える。
「そうなのか?ハーゲンみたいなカールスラント人なら流派とかもしっかり決まっていると思ったけど」
「そもそも剣を使い始めたのだって3年前くらいなんですよ。私の固有魔法を見たアビーが剣でも作ってみればなんて言い出したのが始まりでしたね」
「ほう……」
まさか彼女に剣を作り出すことを勧めたのがアビゲイルだったとは少し驚きだ。
ヨハンの固有魔法は「構築」という、魔力で道具などを作り出す魔法である。
その性質上、武器を作り出すことも可能ではあったはず。
しかし、銃や火薬はあまりにも複雑な上、魔力消費が大きすぎるため制作することを断念したという話は聞いたことがあった。
そんな彼女に剣を作り出して使用することを勧めるとは、普段は不真面目そうに見えるが案外切れ者なのかもしれないな。
「今となっては剣と銃で結構バランスがいいとも思ってますよ。おっとあまり長話していると時間がなくなっちゃいますね。じゃあ始めましょうか」
「ああ、よろしく頼むよ」
お互いに剣を握ると再び訓練を始める。
「ユース。あそこにいるのって……」
「あれってハーゲンさんと零治さん?」
「珍しいですね」
「はい。あの2人が一緒に訓練しているなんて」
ティアの言葉で早朝のロードワークをしていたユースティアナが訓練する二人を発見する。
一緒にいたクロエとソフィアも同じように見つめていた。
「おそらく昨日、私が扶桑刀を与えたから今日から訓練でもしているのだろう」
一緒にロードワークに出ていた直葉もそうつぶやく。
「扶桑刀ですか?でも、琴村さんは前線には出ませんよね?」
「あくまで護身用さ。むしろ少年や弟が戦う状況というのは、この部隊が壊滅的状況になった時いうことだよ」
「そんなことさせません。私が絶対零治さんもみんなも守ります」
「ふっ。いい眼をしているな君は」
直葉はユースティアナの顔を見て思わず笑いをこぼす。
「鈴木少佐。私に戦い方を教えてください!私、もっと強くなりたいんです!」
「私も!」
「私にもお願いします」
「いいとも。では今日は私が訓練に付き合おうじゃないか。でも、その前に戻って朝食の準備をしなくてはね」
4人は基地に向けて駆けていくのだった。
日が完全に上り、零治とヨハンは早朝の訓練を終えていた。
「琴村さん、なかなか筋いいですね。やっぱ元から軍人で戦闘訓練していた分、飲み込みが早いのかも」
「そりゃどうも……」
彼女はああ言っているが、あまり手ごたえはない。
初日だから仕方ないのかもしれないが。
視線を腰に下げた扶桑刀に向けた。
それに、この扶桑刀……烈風丸は魔法力を帯びているという話だが、そちらも特に力を発揮できているという感覚もなかった。
コアの力があれば少しはその魔法力を扱えるのかもしれないと思ったのだがな。
「まあ、ゆっくりいきましょう」
「ああ。焦っても何も変わらないからな」
食堂の扉をくぐるとすでにアサルトウィッチーズのメンバーの顔が揃っていた。
「お、珍しい組み合わせだね!ヨハンと琴村さんなんて」
「一緒に訓練していたんだ」
「訓練?ヨハンは剣なのに?」
「俺も剣を使ってみようと思ってな」
質問しているアビゲイルに返答すると席につく。
「あまり無理はしないで下さいね、零治さんは隊長であっても戦闘要員ではないんですから。それに次にあんなことがあったら助かるかもわかりません」
「わかっている。ほどほどにはしておくよ」
ベアトも心配そうな視線を向けられ、零治も思わず視線を逸らした。
右手を腹部に当てる。
一度アルカ・ネウロイの攻撃を受けて、死にかけたことがある。
あの時はネウロイ特有の治癒能力によって傷が塞がり、一命を取り留めた。
だが、次にあの程の傷を負っても治癒できる保証はないのだ。
「心配性だな、ベアトは」
「姉貴は見てないからだろ……」
「何か言ったか?弟よ」
「なんでもねーよ」
コーヒーを飲んでいる直人はそっぽを向いていた。
その時だった。
甲高いサイレンが基地内に響き渡る。
「ネウロイか……!」
「零治。出撃メンバーはどうする?」
「私も出よう」
直葉が真っ先に進言する。
「鈴木少佐……わかりました。ユースティアナ、ベアト」
「了解!」
「行ってきます!」
ベアトとユースティアナも敬礼すると食堂を後にする。
「俺たちもいくぞ」
「おう」
後を追うように直人と零治も出ていく。
格納庫に到着するとユースティアナと直葉はそれぞれストライカーユニットを装着する。
続くように同調率上昇薬「Grow」を投与したベアトもストライカーユニットを装着した。
「無理するなよ姉貴」
「分かっているとも。ベアト、ローゼンクロイツさん、よろしく頼むよ」
「「はい!」」
3人は魔法力を高め、エーテルのプロペラが音を立てて回転すると飛翔していく。
そんな様子を直人も静かに見つめる。
「心配か?」
「姉貴ももう二十歳だ。魔法力が衰えてないって言ってもいつ弱っても不思議じゃないからな」
「ベアトも一緒だから大丈夫だとは思うがな」
零治も3人の背中を静かに見つめていた。
「さーて、さくっとネウロイを倒して、戻らないとね」
「油断しないでくださいね、直葉さん」
「分かっているとも。お、あれが目標か」
前方で飛行する大型のネウロイを発見する。
「指揮は君に任せるよベアト」
「了解です。2人はネウロイの注意を引いてください。その間に魔眼でコアを見つけ出します」
「OK。いこうか、ローゼンクロイツさん」
「任せてください!」
ベアトの指示で2人は大型ネウロイへと接近していく。
ユースティアナを「ブレン軽機関銃Mk1」、直葉を「九九式二号二型機関銃」をそれぞれ構える。
引き金を引いた。
放たれた弾丸はネウロイに命中する。
「コアは……」
ベアトは魔眼を使用して、ネウロイを見つめていた。
「あった!コアは体の中央にありました!」
「了解した!」
直葉は急加速しネウロイへと接近すると、再び銃の引き金を引いた。
次々に放たれる銃弾が装甲を抉っていく。
「……ん?ユース、戦闘しているの?」
「ティア、起きたんだ。今は戦闘中だよ!」
「そう。でも、アルカ・ネウロイじゃないのね」
「うん。だからティアは休んでていいからね」
ティアは周囲を警戒するがユースティアナやベアトもネウロイに接近して追撃する。
3人の集中攻撃を受け、ネウロイも反撃するようにビームを斉射する。
「よっと!」
ユースティアナが体を捻るように旋回し攻撃を回避すると発砲した。
攻撃が命中し、装甲内からコアが露出する。
「コア発見!」
同時にネウロイは逃げるように急加速した。
高速移動する大型ネウロイに翻弄される。
「これじゃあ狙いが!」
「2人には厳しいか……だが、私なら!」
一度深呼吸すると、銃を構える。
銃口を目標の移動先へと少しだけずらして引き金を引いた。
「——っ!」
放たれた弾丸は的確にコアを撃ち抜くと、ネウロイは断末魔の悲鳴と共に光の粒子となり消滅する。
「まあ。こんなものかな」
「やりましたね、直葉さん!」
「高機動型とは何度も戦闘しているからね」
「長年の経験ってやつですかね?」
ユースティアナが思わず諮問してしまう。
「そんなところだね。琴村少年、こちら鈴木だ。敵ネウロイを撃墜した」
「了解しました。帰投してください」
格納庫内にいた零治が通信を受けとる。
「了解した。戻ろうか」
「「はい!」」
ネウロイを撃破したユースティアナたちは基地へと帰投する。
零治と直人もネウロイの撃破を確認して、少し安心していた。
「なんとかなったみたいだぞ。流石、直人のお姉さんだな」
「実力だけは本物だからな、姉貴も……前線は危険だからささっと退いてほしいけどな」
思わず本音を漏らすと
「ん?なんか言ったか?」
振り返り零治が質問する。
「なんでもねーよ。朝飯食いそびれたから腹減っただけだ」
「みんなが戻ったら朝飯食わないとだな……これでアサルトウィッチーズは7人目のウィッチが増えた」
2人も少しだけ笑って見せていた。
同じ頃、スオムスの地で1人の青年は空を見つめていた。
「……」
「ここに居たのか。あまり外に出るなと言ったはずだぞ」
ブリタニアの軍服に身を包む男は睨むように見つめる。
「マロニーか」
男の名を口にする。
元ブリタリア空軍大将、トレヴァー・マロニー。それが、彼の名前だ。
「お前も自分のことをもっと考えるべきだと思うがね」
「ここ数か月で12人のアルカ・ネウロイが消滅した。これまでアルカ・ネウロイが撃破されることはなかったのになぜだと思う?」
「……」
マロニーは何も言わずに彼の見ていた空を見上げる。
「おそらく見つけ出せる奴が倒したんだろうな。たとえばデザインソルジャーと呼ばれた者とかがな。俺たちも行こう、この世界を変えるためにな」
青年は不敵に笑って見せると振り返り、歩きはじめるのだった。
そんな彼の手には1枚のタロットカードだけが握られていた。
ちょこっと設定紹介
ウィッチ隊
・鈴木直葉(すずき すぐは)少佐(オリジナル)
性別 : 女性
年齢 : 20歳
身長 : 169cm
体重 : 50kg
生年月日 : 8月16日
魔法力 : 中
使い魔 : 狐(ブラッキー)
固有魔法 : 偏差射撃
今回で第二章 アサルトウィッチーズ飛翔編は完結となります。
なお第三章の作成を予定していますので、物語は継続いたします。