ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第3話になります。
人型のアルカ・ネウロイ「チャリオット」を討伐に成功したウィッチたちは再び軍の格納庫内に集まっていた。
「まずはよくやってくれた。君たちのおかげで被害を出すことなくアルカ・ネウロイを倒すことができた」
「えっと、1ついいですか?そのアルカ・ネウロイって一体なんなんでしょうか」
そんな質問を投げたのはガリア出身のウィッチであるクロエであった。
気になるのも無理はない。
彼女だけではなく、ここにいるウィッチのほぼ全員が「アルカ・ネウロイ」という名前を聞くのは初めてであろう。
「それについても説明する。1時間の昼休憩後、作戦会議室に集まってくれ」
そう言い残し、その場を後にする。
1時間後、作戦会議室に全員が集まっていた。
各自が席に着く中、零治が正面の壇に立つ。
「よし。これから、アルカ・ネウロイについて説明する。直人、映してくれ」
直人が機器を操作する。
続いて正面に表示されたディスプレイには先ほど交戦した人型ネウロイとよく似た個体が映し出される。
「まず君たちが午前に交戦したネウロイは普通とは異なっている。それがアルカ・ネウロイと呼ばれる特殊個体だ」
説明を始める。
アルカ・ネウロイ。
この個体の特徴は大きく分けて2つ。
1つ目は人型と大型という形状の変化を自在に行える点。
普段は人型という極めて小さな形状をしているが、戦闘時の状況に合わせて航空機のような大型の形状へと変化することができる。
さらにコアの大きさは人型時の時同様に小さいため、破壊が困難であるのだ。
戦闘したチャリオットは形状変化を行う前にコアの破壊に成功したため、比較的短時間で討伐に成功したわけだが。
2つ目は接近時にレーダーで探知ができない点。
通常のネウロイであれば接近を確認次第サイレンが響くため、戦闘態勢をスムーズに取ることができる。
しかしアルカ・ネウロイは接近してもそれらのレーダーで探知ができない。
「ちょ、ちょっと待ってください!レーダーで探知できないって、それじゃどうやって探し出すんですか?!」
こちらの説明を聞いて、ブリタニア出身のウィッチであるユースティアナが思わず立ち上がる。
「そのために、ウチの隊長がいるんだよ」
そう口にしたのは、直人であった。
視線がこちらに集まる。
「どういうことですか?」
「零治は特異体質でな。アルカ・ネウロイの接近を探知できる唯一の人間なんだ」
「だから、あの時真っ先に格納庫の外に出たんですね」
先ほどの状況を思い出したソフィアが頷く。
「他に質問はあるか?」
「……あの、質問いいでしょうか?」
「エリザベートさんか、発言どうぞ」
「戦闘したアルカ・ネウロイの腕に文字のようなものを確認したのですが……」
「……っ!」
ユースティアナも思わず顔を上げた。
腕に確認できた文字というのは、おそらく「Ⅶ」のことだろう。
「それについても説明しておこう」
再び説明を始める。
アルカ・ネウロイはそれぞれ異なる文字をその体に刻んでいる。
体に刻まれた文字は数字を表しており、その番号と同じタロットカードの大アルカナをコードネームとする。
Ⅶが刻まれたアルカ・ネウロイならば「チャリオット(戦車)」と呼称しているというわけだ。
「そうなんですか……」
「アルカ・ネウロイについては、これくらいでいいだろう」
スクリーンが切り替り、室内の照明が点灯する。
「出撃や移動で疲れているだろうから、訓練や連携の話は明日にしよう。
各自、今日はゆっくり休んでくれ」
そう言い残し、零治たちは部屋を後にする。
「……あの琴村さん。少しいいですか?」
「ユースティアナ?」
引き留めたのはユースティアナであった。
「できれば2人で話をさせていただきたいです」
「わかった。直人、みんなのメディカルチェックはやっておいてくれ」
「了解だ」
2人だけがその場に残る。
「歩きながら聞こう」
「あ、はい」
廊下を歩きだすとユースティアナが話を切り出す。
「えっと、どうして私だけみんなみたいにGrowを使用しなくてもあのストライカーを動かせるんでしょうか?」
「ユースティアナはあのストライカーと相性が良かったんだろう。同調率の数値も高いから、Growをわざわざ使用する必要がない」
「そうなんですか……」
「質問というのはそれか?」
「いえ……これ!」
回り込み前に立つと彼女は袖を捲る。
右腕には「ⅩⅦ」の文字が刻まれていた。
「っ!」
意標を突かれたのもあって表情が固まる。
「さっきアルカ・ネウロイの説明でいってましたよね。
文字を体に刻んでるって、私のこれも何か関係があるんでしょうか?」
「……確かにチャリオットのものとよく似ている。だが、俺も軍が知っている以上の情報はわからないからな。
正直、君の腕に刻まれた文字が何なのかは判断できない」
「そう、ですか」
求めていいた返答とは異なったためか、彼女の表情はどこか不満そうであった。
「ただ、それはあまり見せないほうがいい。仲間たちに変な疑念を与えかねない」
「え?はい、わかりました」
「不安になることはないさ。何かあれば俺がどうにかする」
「は、はい」
話を終えて別れると再び彼女の背中を見つめていた。
翌日、連携訓練を兼ねた飛行訓練を再び実施していた。
「なー琴村さん」
「どうした?」
ストライカーユニットをつけて空を舞うウィッチの1人であるヨハンが不満げな声を出す。
「なんで私と組むのがエリザベートとローゼンクロイツなんだ?」
「君たちの戦闘スタイルに合わせて組ませただけだ」
質問に返答すると再び声を上げていた。
3人を同じチームにしたのには理由がある。
ヨハンは主に刀剣による白兵戦を得意としている。
クロエは狙撃や後方支援、そしてユースティアナは中距離支援や機動戦闘を得意としていた。
それらを考慮して3人での連携を優先したのだ。
「チャリオットの戦闘ではエリザベートの狙撃によって体制を崩し、君が白兵戦でコアの破壊に成功していただろう?」
「そりゃあ、そうなんだけどさ……私が一番階級が上とは言え、そこまで視野が広くないしな。後ろまで見てる余裕ないし」
「……」
「……」
3人とも空で停滞して考え込む。
そんな様子を見つめる。
やはりすぐに合わせて、動くというのは難しかったか。
「じゃあ――」
そう思い、1度飛行訓練を止めようとした時だった。
再び直感的にアルカ・ネウロイの反応を感知する。
座標は……
「直上にアルカ・ネウロイだ!」
こちらからの通信に全員が直上を見つめた。
「あれ!」
ユースティアナが指さす先には、チャリオットと同様に人型ネウロイの姿があった。
その腕にはアルカ・ネウロイの証ともいえる「ⅩⅡ」の文字が刻まれている。
「腕にⅩⅡの文字?!」
「ⅩⅡってことは……ハングドマン(吊るされた男)か」
こちらに向かって進んでいるのか、距離が近づいている。
「こんな時に!琴村さん、アビーたちは?」
「今こっちに来るように要請している!だが、あちらも少し離れた場所を飛行しているからな、すぐは無理だ!」
こちらの返答にヨハンは苦虫を嚙み潰したように表情を歪ませた。
「エリザベートは後方から援護を、私とローゼンクロイツで接近してコアを探すぞ」
「「了解です!」」
ヨハンとユースティアナがネウロイに接近する。
ほぼ同時に人型ネウロイも攻撃を開始した。
放たれるビームを各自のシールドで防ぐ。
ウィッチたちも攻撃を試みるが、ハングドマンは攻撃を回避し反撃するように攻撃を続ける。
「ぐっ!」
シールドで攻撃を防ぐたびにユースティアナは衝撃で後退する。
先日、ベアトと戦闘した際にも同じように見えた。
メディカルチェックの問題もなかったし、おそらく彼女自身のシールドは他のウィッチに比べて、防御力が低いのかも知れない。
「大丈夫か、ローゼンクロイツ?」
「はい!」
「接近戦で!」
固有魔法「構築」を発動する。
右手が青白く発行し、片手直剣を生成した。
「この!」
ハングドマンに向かって剣を振り下ろす。
「な!?」
「そんな!?」
ウィッチたちが驚きの声を上げる。
ハングドマンは剣を……白刃取りしていたのだ。
そのまま剣の刀身をへし折り、横腹を蹴り飛ばす。
もろに攻撃を受けたヨハンが衝撃で降下していく。
「うっ!野郎……」
「ハーゲンさん!」
「ハーゲン!」
空中でユースティアナが受け止めることで、なんとか踏みとどまる。
しかし、ハングドマンの追撃するような攻撃が浴びせられていた。
シールドで防御しているものの、少しずつ高度が落ちていく。
「ローゼンクロイツ、このままじゃ共倒れだ!お前だけでも……」
「だめですよ!私たちは同じ部隊なんですから」
「で、でも……」
発砲音と共に、弾丸がハングドマンを掠める。
それが、クロエの狙撃であることを2人とも理解する。
「大丈夫ですか?」
「はい!」
「エリザベート、そっちいったぞ!」
ハングドマンは目標をクロエに切り替えたのか、そちらに向かっている。
「え?こっち?」
機銃のようなビーム攻撃が放たれるが、シールドでなんとか防御していた。
「……ローゼンクロイツいくぞ!」
「動けるんですか?」
「問題ない!」
ストライカーに魔力を流すことで速度を上げた。
銃口をハングドマンに向けると再び発射する。
放たれた銃弾がハングドマンに命中するが、コアを破壊できていないため撃破には至っていない。
「――っ!」
チャリオットの時と同様に声にならない悲鳴を上げていた。
「今度こそ!」
「待ってください!様子が変です!」
クロエが静止で2人も停止する。
胸が赤く発光していた。
それが、ネウロイの持つコアであることにはすぐに気づいた。
まばゆい光に思わず目を覆い隠す。
「まさか……形状変化か!」
輝きと共にハングドマンの形状が変化していく。
巨大化し飛行機のような形状に変化する。
機首にもⅩⅡの文字が刻まれていた。
「形状が変わった?」
「あれが琴村さんの言ってた形状変化ってことでしょうか?」
ウィッチたちも目の前で形状が変化したことに驚いていた。
自分も同じだ。
情報では形状が変化するという話やデータを共有されていたが、実際に目の前で変化したのを見たのは初めてだったのだ。
「作戦は先ほどと同じだ。私たちでコアを探すからエリザベートは援護を!」
「行きます!」
ユースティアナとヨハンが再び、ハングドマンに接近して攻撃を開始する。
左右に分かれてそれぞれが銃を構え、引き金を引く。
放たれた銃弾が次々に装甲を抉っていくが、やはり人型の時と同様にコアが小型のため破壊には至っていなかった。
「コアを見つけ出せるベアトなしで大型のアルカ・ネウロイ相手か……このままじゃ、じり貧だ」
思わずそんな言葉が出た。
「……やっぱ接近して大きくダメージを与えなければだめか」
ヨハンも同じことを考えていたのか、再び「構築」で片手直剣を生成する。
「はぁぁ!」
MG42機関銃を捨て、剣を両手で握る。
魔力を剣に回し、刀身が発光していく。
「くらえぇぇ!」
魔力が爆発するように弾け、ハングドマンの装甲を大きく削り取る。
体を大きく損傷したことで赤いコアが露になる。
「くっ!届かなかったか……」
「そこだぁぁ!」
ユースティアナもコアの発見に気づき、「ブレン軽機関銃Mk1」の引き金を引いた。
十数発の弾丸がコアを撃ち抜く。
同時にコアが弾け、アルカ・ネウロイ「ハングドマン」も光の粒子となって消滅する。
「はぁはぁ……なんとか、なった」
「やりました!」
「私たち3人で倒せました!」
ユースティアナとクロエが喜びを分かち合う。
ヨハンも肩で息をしているものの安心したのか笑みを浮かべていた。
「……まだまだ粗削りだな」
ヨハンは大胆不敵だが、それ故に道を切り開く力を持っている。
これからの戦いで彼女は攻めの要になるかもしれないな。
それでも今は全員が無事であることを喜ぼう。
敵を倒すことも大事だが、誰も失わないことが第一なのだから……。
零治は再び空を舞うウィッチたちを見つめていた。
ちょこっと設定紹介
ウィッチ隊
・ヨハン・ゲオルーグ・ハーゲン中尉(オリジナル)
性別 : 女性
年齢 : 17歳
身長 : 167cm
体重 : 48kg
生年月日 : 2月19日
魔法力 : 上
使い魔 : 狼(ヴァルガ)
固有魔法 : 構築