ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第28話となります。
目の前に立つ青年、グルーシャを見つめ零治もただただその場に立ち尽くしていた。
だが、反射的に警戒していたのか、手だけは腰に下げていた扶桑刀「烈風丸」を握りしめている。
「……」
なぜ彼が今この場に現れたのか。
そもそも、目の前に立つ青年は本当にグルーシャなのか。
そんな考えだけが頭の中をめぐっていた。
同時刻、空には3機の機体がウィッチたちの目の前に現れる。
「な、なに?」
「なんだ、こいつら?」
クロエとヨハンは周囲を飛行する機体を見て思わず声を上げた。
機体は明らかに無人であり、どこか自分たちの使用するストライカーユニットにも似ている部分が存在している。
「あれは!でも、どうして?」
ベアトだけはその機体の存在に気づいていたのか、言葉を漏らす。
「ベアト?」
表情が硬直する彼女を横目に直葉は首を傾げる。
「ユース。ガリア本土にコアの反応よ……琴村零治の他にもう一つある」
同時にティアもコアの反応を感知したことで、ユースティアナに会話を試みる。
「本土に?」
視線をガリア本土へと向けた。
本当にアルカ・ネウロイが本土に現れたのであれば、それが危険であることはすぐに理解する。
「ソフィアさん、ウィリアスさんをお願いします。もしかしたら、本土にアルカ・ネウロイがいるかもしれません!」
「え?本土に!?」
「行きなよ、ローゼンクロイツ。こっちは僕たちでなんとかしとくから」
「お任せします」
方向転換するとユースティアナは急いで本土へと向かう。
「で、こいつらは一体何なんだろうねぇ?」
周囲を飛行する3機の無人機体を見つめ直葉が口にすると
「おそらくですが、あれは……コアを動力した無人機動兵器、ウォーロックです」
ベアトは深刻な表情のままそう口にした。
「ウォーロック!?」
「で、でもウォーロックは破壊されたんじゃないんですか?それに琴村さんが私たちの使用するWR以外には使用できるコアはないって!」
信じられない言葉にヨハンとクロエが思わず声を上げた。
それもそうだろう。
事前に共有されていた情報からウォーロックはすべて破壊、解体されたはずだった。
しかし、目の前には無人機動兵器が確かに飛行していたのだ。
「魔眼を使用できるベアトが言うなら、間違いないんだろう……問題はなぜ、今この場に現れたのかってことさ」
再び目の前のウォーロックに視線を戻す。
同時にウォーロックも動き出し、攻撃を開始した。
「ぐっ!」
各自シールドを展開して放たれるビームを防御する。
「ビームによる攻撃……やはりコアを使用しているようだね、皆さん、応戦を!」
直葉の指示で各々も再び戦闘態勢に入る。
「ウィリアスさんは魔力が限界です!」
「でも、やるしかないじゃん!」
ソフィアから離れ、アビゲイルも再び銃の引き金を引いた。
数分ほどでガリア本土の上空に到着したユースティアナは視線を落とす。
「え?」
思わずそんな言葉を漏らす。
見つめる先には零治と1人の青年の姿だけがあったからだ。
「ティア。アルカ・ネウロイは?」
「あの男よ、琴村零治の目の前に立っている」
「どうやらもう1人が来たようだな。だが、随分と反応が弱いな」
「ユースティアナか」
一瞬、彼女の姿を確認し再びグルーシャを睨むように見つめる。
「零治さん、あの人……」
零治の隣に降り立ったユースティアナもグルーシャの姿を見つめていた。
どこか懐かしくも感じる顔であった。
自分とよく似たブロンドヘアにティアのような紅い瞳をしている。
「なんだ、忘れたのか自分の兄の顔を。なあ、ユースティアナ」
「っ!」
「私の兄、さん?」
その言葉に彼女の表情が強ばらせる。
零治も言葉にできない悪寒を感じていた。
やはり、あいつは本当にグルーシャなのか?
だが見覚えのある顔、そしてDSとアルカ・ネウロイ特有のコアの反応を考えれば、目の前の男は確かにグルーシャ・ローゼンクロイツその人なのかもしれない。
「零治さん、あの人が私の兄ってどういうことですか?!」
「説明している時間はない。ユースティアナ下がっていろ……あいつの相手は俺がやる」
抜刀した扶桑刀「烈風丸」を両手で構える。
一呼吸おいて、覚悟を決めた。
駆け出すと同時に烈風丸を振り下ろす。
グルーシャも刀身を防御するように右腕で受け止める。
甲高い音が周囲に響き渡った。
「お前、その腕?!」
「っ!」
思わずそんな声が漏れた。
彼の腕がネウロイの体表のように黒い装甲肌に変わっていたからだ。
ユースティアナも驚きを隠せず息をのむ。
「ぐっ!」
腹部に鋭い痛みが走る。
反撃するように彼が零治の腹部に蹴りを放ったのだ。
コンクリート製の地面に烈風丸が突き刺さる。
「零治さん!」
「やめておけ、零治。今のお前では俺を殺すことはできない。俺とお前たち2人とでは、すでに立っているステージが違う」
零治だけでなくユースティアナの顔を見つめ、そう口にする。
「どういう、意味だ!?」
立ち上がり、絞り出すように言葉を口にする。
「言葉通りの意味だ。人間性を保つために必死になっている内は、他のデザインソルジャーと同じ末路を辿るだけということだ」
「ふざけるな。お前はもう人間じゃないってのか!?」
「そうだ。言っただろ、すでに俺はお前たちとは違うステージに立っていると」
「うっ!」
一瞬で移動したグルーシャの右手が零治の首を絞める。
「っ!やめて、兄さん!」
ユースティアナも声を上げていた。
彼女の頭にはかつての記憶がフラッシュバックしていたのだ。
「邪魔をするな!」
ストライカーユニットを装着したまま、超スピードで突撃したユースティアナを左足であしらう。
「ユース、ティアナ……」
「うう。やめて、兄さん……」
「なりふり構ってられないわね。ユース、体借りるわよ!」
人格がユースティアナからティアへと移る。
同時に体が蒼白く発光し魔力とコアの反応が跳ね上がった。
「よくもユース傷つけたわね。あんただけは許さない!」
「コアの反応が強くなった?それにその口調、人格も変わったのか?」
「ティアか……」
零治も人格の入れ替わりを理解する。
現在、彼女の体を動かしている人格はティア・ローゼンクロイツ。ユースティアナの中に眠るもう一つの人格だ。
そして、固有魔法「魔力放出」によって体が蒼白く発光して見えるのだろう。
グルーシャは零治の首から手を放すと彼女の方へと向き直る。
「はあぁぁ!」
2人はインファイトを開始する。
やはり戦闘面ではティアのほうがユースティアナよりも優れていた。
これなら。
「確かに、多少はできるようになったな。だが、それでも遅い!」
「なっ!」
グルーシャの拳はシールドを薄氷のように砕いたのだ。
「そん、な……噓でしょ?」
気絶するようにその場に倒れこんだ。
その場にいた零治も絶句する。
ティアなら、この絶望的な状況でもどうにかできるかもしれないと思っていた。
そんな彼女でもグルーシャには勝てなかった。
「こんなものか。だが、ユースティアナ。お前の存在は実に興味深い」
「やめろ、グルーシャ!」
こちらの一声に足を止める。が再び踏み出し彼女との距離を縮めていく。
そんな静寂を一発の発砲音がかき消した。
「……」
グルーシャの足元には一発の弾丸が放たれ、白い煙が舞っている。
「動くな!次は当てる!」
「零治、ローゼンクロイツ!」
「グラハム、それに直人か!」
自動拳銃「ベレッタm1934」を構えていたのはユリウスであった。
隣には直人の姿がある。
「ウィッチどころかDSですらないお前に何ができる?」
「今、ここでお前の眉間を撃つくらいはできるぞ」
狙いをつけるように指をトリガーに掛ける。
「だからお前たち人間は甘いんだよ……さっさと引き金を引けないようなやつが戦場に出てくるな」
「グラハム、あれ!」
その言葉と共に一機の無人機体が降りてくる。
「あれは、ウォーロック?」
「なに!?」
引き金を引くが、攻撃が効いていなかった。
接近したウォーロックは2人に体当たりし、海上へと突き落とす。
2人の姿が海に消え、水しぶきが舞う。
「直人、グラハム!……グルーシャ、なんでこんなことを!」
「邪魔をするならどんなやつでも、俺は殺す。お前ならわかるだろ」
「わからない。こんなやり方……こんなことを平気でやるようなお前は、もう人間じゃない!」
怒りに任せて声を上げていた。
溢れるように内側から紅い力が沸き上がる。
地面から烈風丸を引き抜くと刀身がまばゆい閃光へと包まれていた。
「うおおぉぉ!」
力任せに刀を振り抜くと刀身から紅の閃光が放たれる。
「このパワーは!?」
紙一重でグルーシャは回避した。
放たれた紅の閃光はコンクリート製の地面、そして海面を切り裂くように突き抜けていった。
「はぁ、はぁ。うっ!」
脱力感で膝をつく。
全身の力を誓い果たしたような感覚に襲われていた。
「これが零治の力?やはり、やつも回収を――」
「グルーシャ。そろそろ時間だ、これ以上長引けば、機体の燃料が足りず戻れなくなるぞ。それに他のウィッチが集まってきても面倒だ」
通信機から響く男の声に舌打ちする。
「っ!仕方あるまい」
気絶していたユースティアナの体を抱きかかえる。
「待て、グルーシャ!」
「じゃあな。零治」
そう言い残しウォーロックに搭乗して、彼方へと飛びだっていく。
「待て、待ってくれ!ユースティアナー!」
その名を叫び、手を伸ばす。
しかし、彼女は返事をすることはない。
「くそ……こんな、ところで」
薄れゆく意識の中でも頭の中はユースティアナの事だけを考えていた。
空では6人のウィッチと3機の無人機動兵器が戦闘が続いている。
しかし、その圧倒的な戦闘力にウィッチたちは追い込まれつつあった。
「こいつら、強い!」
「まずいですね……私たちももう魔力が」
ソフィアも心もとなくなっていた魔力に焦りを見せ始めていた。
このまま戦闘を続ければ、飛行するための魔力すら切れて地面に真っ逆さまだからだ。
「うああ!」
「ぐっ!」
圧倒的な攻撃に2人が悲鳴を上げる。
「ウィリアスさん、エリザベートさん!」
「くそ!」
ヨハンが片手直剣を振り抜く。が、攻撃は回避され反撃するようにビームが放たれる。
「くっ!野郎……」
「ベアト、これ以上の戦闘は無理だ。本土まで後退するよ!」
「でも!」
「ここで死人を出すつもりかい?!」
「……っ!」
凛とした声を上げた直葉にベアトも一瞬戸惑いの表情を見せる。
他のウィッチの状態を見れば、戦闘を続行するのが難しいことは明白であった。
「しまっ……!」
目の前に現れた無人機に、表情が凍り付く。
「ベアト!」
「フーバーさん!」
「……」
思わず強く目を閉じる。
その一瞬紅の閃光が本土から彼方へと走り抜けた。
ウォーロックも攻撃をやめ、空中で停滞していた。
「え?」
ウォーロックはまるで別の指示を受けたように、撤退を開始した。
「なんで?」
「撤退した?」
距離が遠ざかり、すぐに見えなくなる。
「でも、どうして?」
「理由はわかりませんが撤退してくれたみたいですね」
「深追いは駄目だよ。今の私たちは本土に戻る魔力すらギリギリなんだから」
直葉はアビゲイルとクロエの体を支えるとガリア本土へと帰投する。
「フーバーさん。私たちも戻りましょう」
「はい。もどり、ましょう……」
「フーバーさん?大丈夫ですか?フーバーさん!」
ベアトは全身から力が抜け、ソフィアに寄りかかるように意識が遠退いていく。
薄れゆく意識の中へと溶けていくのだった。
ちょこっと設定紹介
・固有魔法 「紫電」(アビゲイル使用)
アルカ・ネウロイ「テンパランス(節制)」との戦闘で、アビゲイルが覚醒、変化させた固有魔法。
従来のような威力と範囲が消費魔力で比例していくような「柔の雷撃」と異なり、
収束率に優れており一点突破の貫通力に特化した「剛の雷撃」である。
また、雷の色が蒼白い色から淡い紫色変化した。
なお、広範囲での操作性は従来通り悪いままである。