ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第30話となります。
グルーシャはテーブルの上に置かれたトレイを指さす。
「とりあえず食え。腹も減ってるだろ」
「……」
しかし、ユースティアナはただただグルーシャの顔を見つめるだけだった。
「はあ……」
ため息をついてテーブルから離れ、壁に背中を預けるとグルーシャが話を切り出した。
「ユースティアナ。お前の体は一体どうなっている?それに今のお前からはコアの反応を全く感じない」
「……っ!」
その質問に少し驚く。
言われてみれば、自分には零治やティアのようなコアの探知はできなかった。
それに、コアの反応もティアが表に出ているときだけ感じることができると零治から聞いていた。
「……もしや、お前の中のもう1人の人格に種があるのか?」
一歩踏み出したその時、
「ユース!体借りるわよ!」
その言葉と共に彼女の瞳が紅玉色に変わる。
同時に振り上げた足で蹴りを見舞うが、
「まったく。言ったはずだぞ、お前では俺は殺せないと」
グルーシャは眉一つ動かすことなく右手で防御していた。
その腕を確認したティアもすぐに距離を取る。
「はやりコアの反応が強くなっているな。そしてその紅い目、お前の存在が分かった気がするぞ」
「……」
ティアは目を見開いて、ただただ沈黙する。
「お前はユースティアナの中に眠るコア……つまりアルカ・ネウロイだな」
「ネウロイって、ティアが?」
ユースティアナも驚いたように声を上げていた。
「まさか、人格が分裂しネウロイとしての人格と人間としての人格が一つの体に同居しているとはな。DSでありながら魔法力を覚醒しても無事でいられたのはそれが理由か」
グルーシャは納得したように言葉を続ける。
「私は、ネウロイじゃない!」
「なら、なぜおまえからコアの反応がある?それこそお前がネウロイだという証明だろ?」
「違う……私は!」
「ティアは、ネウロイなんかじゃないよね?違うよね?」
「ユース……」
力なく名を口にすると同時に彼女の胸から紅の光が輝きを発した。
その光は室内をまばゆく照らす。
「ぐっ……なに、これ?」
思わず両手で胸を抑えるが、紅の光はより輝きを増していく。
「始まったか」
「ううぅぅっ!何をした!?」
「お前のコアを俺の力で制御下に置いた。さあ、闇に落ちろ。ユースティアナ」
「あああぁぁぁー!」
断末魔を上げ、事切れたようにその場に倒れる。
しかし、その首筋や頬にはネウロイの体表に見られる紅い亀裂模様が浮かび上がっていた。
「……残るDSは零治だけか」
グルーシャは彼女を再びベッドに寝かせ、部屋を後にする。
翌朝、グレイスやアイラ、エレオノールは零治たちの医務室を訪れていた。
「失礼しまーす」
「あれ?琴村さんが、いない?」
室内には誰の姿もなかった。
「アイラさーん。フーバーさんたちが医務室にいないです!」
「え?」
肩で息をしていたいのりからの報告に驚きを表情を見せる。
「ま、まさか出撃を?」
「流石にそれはないんじゃない?鈴木さんも、ああ言ってたんだし」
「うーん。とりあえず手分けして探そう。みんなにも伝えて」
グレイスの指示でウィッチたちは散開していくのだった。
一方、海岸近くでは零治が日課の剣術訓練を行っていた。
「はっ!」
何度も何度も扶桑刀を振り抜き、刃が宙を切り裂く。
「はぁ、はぁ……」
荒い息を漏らし、烈風丸に視線を落とす。
相変わらずその白い刀身に変化はない。
グルーシャと対峙したとき、烈風丸は自分の感情と反応するように紅い閃光を放った。
あれはいったい何だったのだろうか。
まさか、自分の中に眠るコアの力が烈風丸を通して外界に放出されたとでもいうのだろうか。
いくら考えても答えは出なかった。
「うーん。いないわね」
「あ、シルヴィ。あそこ」
「ん?あれは……琴村さんね」
ルミナスウィッチーズのメンバーであるシルヴィとジョアンナが零治の姿を確認して、お互いに頷く。
「琴村さーん!」
その声に反応するように振り返るとこちらに駆けてくる2人の姿があった。
「……シルヴィさんにジョアンナさんじゃないですか。どうしたんですか?」
「どうしたじゃないですよ!医務室に行ったのにみんないなくなっているから探していたんです!」
「ああ、すみません。でも、部屋でじっとしているよりもこうして訓練しているほうが気もまぎれるんです……」
上り始めた太陽に輝く海を見つめる。
それに、もう二度と負けるわけにはいかないのだ。
彼女を守るためにも。
「そうだ。さっきみんなって言ってましたけどベアトたちも部屋にいなかったんですか?」
「そうなんです」
「琴村さんと同じように訓練にでも出てんのかな?戦うウィッチとはいえ無理しないほうがいいと思うんだけどなー」
2人は相変わらず心配そうな表情を浮かべていた。
どうやらベアトたちも自分と同様に訓練に出ているようだ。
やはり彼女たちもユースティアナが心配でじっとしていられないのだろう。
それに無人機動兵器(ウィザード)との戦いも彼女たちに影響を与えたのかもしれない。
「きっとベアトたちは大丈夫ですよ。彼女たちも自分の体のことはよくわかっているでしょうから」
「は、はぁ……」
シルヴィは首を傾げる。
そのタイミングで腹の虫が鳴き声を上げた。
空腹であることを告げているのだ。
「……戻りましょうか」
「あはは。でも、他のみんなも探さなきゃじゃ?」
「時間的にベアトたちも戻っているころだと思います。ウチには時間に厳しいウィッチもいますから」
規律に厳しいカールスラント出身のウィッチであるヨハンの顔を思い浮かべてしまう。
「はい。では戻りましょう」
2人と共に自室へと戻るのだった。
「琴村君!」
医務室に戻るとグレイスの一声が響き渡る。
「……」
「心配したんだよ?医務室に来たらいなくなっているし、訓練に出るにしても事前に言ってもらわないと!」
「は、はぁ……すみません」
「まったく。何かあったら鈴木君やロアノークさんになんて顔すればいいか……」
自分だけがグレイスの説教を受ける。
ウィッチたちもそんな様子を後ろから見つめていた。
「グレイスさんって優しそうな人だけど、ちゃんと怒るんだね」
「俺たちも怒ってるところを見たの初めてかも」
アビゲイルとジョアナが思わず苦笑する。
「私たち怒られたことなかったもんね」
「まあ、元気なら問題はないんだけど……あまり無茶しないで、焦るのも分かるけど」
「はい。今度は事前に連絡しておきます」
「それじゃあみんな揃ってますし、朝食食べに行きまそうか?」
「そうですね。行きましょう」
ヴァージニアの意見で医務室を出ていく。
食堂で朝食を取っていると、
「琴村君、今日はどうするの?鈴木君やグラハム君は戻るまでもう少しかかるって聞いてるけど」
グレイスが零治に質問する。
「俺は軍に人員要請しに行きます。ナイトウィッチの支援が欲しいので」
「ナイトウィッチですか?」
アイラも復唱して、ヴァージニアの方へと視線を送る。
「どうかしましたか?」
彼女もこちらの視線に気づいたのか首を傾げていた。
「ウチにもエリザベートがいるが、さすがに1人じゃ厳しいだろうからな。もう少し人員が欲しいところですね」
「ヨハンの言う通りだね。闇雲に探すのは流石に非効率だろうし」
ヨハンやアビゲイルも表情を曇らせている。
「それでも支援が望めなければ、私たちだけで探すしかありません」
「そうですよ。ユースティアナさんを絶対助けなくちゃいけませんから」
そんな2人とは裏腹にクロエやソフィアからは強いを意志を感じる表情を浮かべていた。
「ああ、だから俺も最善を尽くすさ」
食事を終え、医務室に戻る。
扶桑刀「烈風丸」を腰に下げて、鏡越しに自分の顔を見つめた。
軽く髪形を整え、部屋を後にする。
外に出ると青空が広がっていた。
「……」
思わず太陽のまぶしさに目を細めるとガリアの軍基地を目指して歩き出す。
「軍に行くにしてもナナリーがいないからな。どうしたものか……」
ナイトウィッチを引き入れることができればベストなのだが、貴重なナイトウィッチを軍がそう簡単に用意して、引き渡すとは思えない。
再びため息をついて角を曲がろうとする。
「きゃっ!」
「……っ!」
角でぶつかり、軽くよろけながらも、相手の体を支えるように手を伸ばした。
「大丈夫ですか?」
「は、はい……」
お互いに顔を見つめるが、その顔に見覚えがある。
「……って、クロステルマン中尉?」
「琴村さん?……っ!」
ペリーヌは何かに気づいたのか、顔を真っ赤にしていた。
「ちょ、ちょっとどこ触っているんですの!」
声を上げ彼女はこちらの手を振りほどくように離れると、胸元を隠すように手で肩を支えて鋭い視線をこちらに向けている。
「え?」
零治も首を傾げるが、彼女の表情や姿を見て右手に視線を落とした。
先ほどまで手の中にあった小さな感触を思い出す。
どうやら先ほど握ったものは……
「いや、今のはわざとじゃないです!」
「当然ですわ!わざとだったら許しませんわよ!」
彼女の胸だったようだ。
「ぺ、ペリーヌさん落ち着いて。琴村さん、どうしてまたガリアに?」
隣に立っていたリネットが質問する。
「任務で今はガリアにいるんです……今は軍本部に人員要請に行くところですが」
「人員要請ってガリアは本土の防衛だけでも手一杯ですのよ。別の部隊に人員を割けるほど余裕なんてありませんわ」
「でしょうね。でも今は一人でも多くウィッチが欲しいんです。特にナイトウィッチが……」
ガリアの軍に人的余裕がないことは分かりきっていたことだ。
といってもどこの軍もウィッチは足りていないのだが。
「何か理由があるんですの?」
「1人のウィッチの……命がかかっている、としか言えません」
「……っ!」
2人は少々驚いた表情を浮かべた。
「では、これで」
零治は早々に話を切り上げ、歩き出す。
「お待ちになって。ナイトウィッチということでしたら1人は知り合いがいますわ。こちらの要請に応じることができる保証はありませんが」
「本当ですか!?」
「はい。私の方から連絡は取ってみますわ」
「助かります。こちらとしてはナイトウィッチどころかウィッチにもあまり知り合いがいないので……」
少し安心したのか、声色が明るくなる。
「そうですか?でも琴村さんって部隊の隊長なんですよね?それなら顔も多少は知られているんじゃないですか?」
リネットは疑問に思ったのか、首を傾げていた。
「隊長といっても編成されたばかりの無名部隊ですからね」
「無名ねー」
ペリーヌは訝し気な表情を見せていた。
「おっと、あまり無駄話をしている時間はないので……クロステルマン中尉、先ほどの件はお願いします」
「要請はしますが確定ではありませんのよ」
「それでも構いません。よろしくお願いします」
深々と頭を下げると零治は再び歩き出す。
「リーネさん、私たちも戻りますわよ。サーニャさんに連絡する準備もありますから」
「はい!」
2人も零治に背を向け歩き出すのだった。
日が傾き始めた頃、零治はヨハンたちと共に再び訓練に出る。
「はっ!」
「っ!」
お互いに剣を打ち合うと刃と刃が交差して低い金属音が響く。
そんな様子をアイラとエレオノールが見つめている。
「よくやりますね。お二人とも」
「もう1時間以上も打ち合いをやってるよねー。すごいスタミナ……」
「他の方もすごい集中力ですよ」
隣ではアビゲイルとソフィアがそれぞれの固有魔法訓練を行っている。
空にはストライカーを身に着けたベアトとクロエの姿もあった。
「またやっていたのか。訓練はほどほどにしろといったのに」
「鈴木少佐!すみません、止めた方がよかったでしょうか?」
アイラは申し訳なさそうに見つめるが、
「気にしないでくれたまえ。言って聞くなら琴村少年たちも訓練をしていないからね……」
彼女はいつものことだと言わんばかりに首を横に振った。
「どうやら弟とグラハム少年が戻ったようだね」
空を見上げると見覚えのあるランカスターが着陸準備に入っているのが確認できる。
軍の格納庫に戻ると2人の姿があった。
「直人、グラハム。戻ったか」
「琴村。悪い、遅くなった」
「いや、助かったよ」
「で、ローゼンクロイツの探索はいつ決行するんだ?」
「今、ナイトウィッチの人員要請をしているところだ」
「ナイトウィッチ?どういうことかね?」
ユリウスが首を傾げる。
「ナイトウィッチの探知なら広範囲で探索が可能ですので」
「そういうことか……そうだ、琴村。俺もしばらくお前の元で整備兵やらせてもらうぞ」
そんな発言に思わず「は?」という言葉が出た。
急に彼が自分たちの部隊で整備兵をするなどと口にしたからだ。
「安心しろ。お前の上官であるロアノークさんにはちゃんと話をつけている」
「すまん。そういうことになった」
直人も頭を抱えていた。
どうやら、直葉と同様に結構無理を言って今に至っているようだ。
といっても先の戦闘で彼もウォーロックを見ている。
どちらにしても情報漏洩を防ぐ意味でも自分たちといるほうがいいと判断されたのだろう。
「おー、グラハム少年も同じ特務隊か!出世したじゃないか」
「いえ、そんなことないですよ!直葉少佐!」
直葉の顔を見て、顔を赤くしたユリウスは照れるように返答していた。
2人の少女はストライカーユニットを装着する。
「ペリーヌさんから支援要請は珍しいね」
「にしても、急ぎでガリアに来いなんて。そんなに緊急事態なのか?」
エイラ・イルマタル・ユーティライネンが訝し気な表情浮かべていた。
「多分、そうなんだと思う。一緒に来てくれる、エイラ?」
「今回だけダカンナ!」
「うん!」
サーニャ・V・リトヴャクとエイラは共に空へと飛翔していくのであった。
ちょこっと設定紹介
・ユリウス・グラハム 軍曹(オリジナル)
ストライカーユニット整備兵
性別 : 男性
年齢 : 19歳
身長 : 172cm
体重 : 62kg
生年月日 : 9月10日
魔法力 : -(一般人のためなし)
使い魔 : -(一般人のためなし)
特異体質 : なし
第3章より特務統合強襲航空団(アサルトウィッチーズ)に所属している。