ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
本日(3/9)はストライクウィッチーズのフィルムコンサートですね。
私も夜の部を見に行きます。
第32話となります。
ロマーニャの地でユースティアナは拳を振り上げた。
地面に倒れる零治も体の痛みに苦悶の表情を浮かべる。
「琴村少年!」
「やれ!ユースティアナ!」
直葉とグルーシャの声が響く。
彼女は拳を振り下ろす。
「……なっ!」
しかし、次の瞬間には驚きの表情を浮かべていた。
自分の放った拳を琴村零治が受け止めていたのだ。
「ここで死ぬわけにはいかない……!君を救うまでは」
「……っ!」
彼女は再び力を込めるが拮抗しているのか、その腕はまったく動くことはない。
「正気に戻ってくれ、ユースティアナ!」
「う、うああぁぁぁ!」
こちらの叫びに反応するように彼女は両手で頭を抱え、苦しみ始めた。
「ユースティアナ!」
手を伸ばし彼女の肩を掴み取る。
しかし、彼女は苦しみ続け、胸元がまばゆい光を放っていた。
真っ暗な心象世界でユースティアナは目を覚ます。
「零治さんの声?ここは……ティア」
ティアの姿を確認し、その名を呼ぶ。
「ユース!ううっ!」
「ティア!」
苦悩の表情を浮かべる彼女に駆け寄りその顔を見つめた。
首筋から頬にはネウロイのような赤い亀裂模様、そして胸元からはコアによる紅い光が漏れている。
「ごめんね。私がネウロイだから。あなたを守るはずが、アルカ・ネウロイにしてしまうなんて」
いつもと異なる弱気な口調に彼女の言葉が本当であることを理解する。
「ティア、そんなことないよ。だってあなたはずっと私と一緒に居てくれた、私を守ってくれたよ!」
これまでティアは自分が危ない時に助けてくれた。
たとえ彼女の人格がコアによって生まれたネウロイの人格だったとしても、それは変えようがない真実だから。
「ユース……怖くないの?アルカ・ネウロイになることが」
「怖いよ。怖いけど、きっと私たちならネウロイになんて負けない、2人でなら乗り越えられると思うから!」
「……私たち2人なら?」
「うん!」
深く頷くと、お互いに手を取り見つめ合う。
「あなたが優しい心の持ち主でよかった。拒絶されると思ったから……」
「ううん、そんなことしないよ。それにティアだってすごく強い心の持ち主だよ。私はずっと憧れていた、だから」
「うん……優しき心と強き心、ウィッチとネウロイ、その2つを統べるのが私たち」
「「2人一緒なら!」」
その言葉を最後に、ティアとユースティアナの体が溶け合っていく。
まるで2つの心が一心同体となるように。
DSでありながら、ウィッチである少女は次のステージへと踏み込む。
ゆっくりと瞼を開いた。
目の前に広がるのはどこかの海岸だった。
「う……」
「ユースティアナ!」
目を覚ました彼女の顔を確認した零治はその体を抱きしめる。
「零治さん。あの私……」
「よかった!ありがとう、生きていてくれて。無事でいてくれて」
「はい……」
ユースティアナも背中に手を伸ばし、抱きしめていた。
「なに!?まさか、ユースティアナの人間性を取り戻したというのか?」
その姿を確認したグルーシャは予想外の状況に驚愕しているのか、一瞬の隙が生まれる。
「そこだ!」
直葉の放った弾丸が彼の右肩を捉えた。
被弾箇所を手で押さえ、苦悶の表情を浮かべる。
「っ!ウィザードのシールドも限界か……このままでは」
空で戦闘を行っているウィザードのシールドに亀裂が走る。
周囲を見つめるが、完全に状況はグルーシャたちが劣勢となっていた。
「グルーシャ。こちらの出航準備はできているぞ。早く戻れ!」
「くそ、わかっている。だが、この状況では……」
通信機越しにこちらを急かすマロニーの声に悪態をつく。
「さあ、投降したまえ。グルーシャ君」
直葉は再び銃口を彼へと向ける。
そんな時だった。
ロマーニャ近海に大型のネウロイが2体出現する。
「こんな時にネウロイ!?」
ウィザードとウィッチたちの間に割って入ってきたネウロイに思わずヨハンが声を上げた。
「みなさん。まずはネウロイを!」
「了解!」
ベアトの指示でウィッチたちは攻撃目標を大型ネウロイへと切り替える。
そんな幸運にグルーシャもいち早く行動を開始していた。
「まだ天は俺を見放してはいないようだな」
ウィッチと交戦していたウィザード3機がロマーニャ本土の近海へと後退してくる。
「しまった!琴村少年、ローゼンクロイツさん、逃げるんだ!」
すでに本土に接近していたネウロイがまばゆく光る。
「まずい……」
「零治さん!」
今の2人は防ぐ手段どころか、逃げる手段もなかった。
ユースティアナの前に立ち、腰に下げていた烈風丸を引き抜く。
「ユースティアナ。君のことは絶対守る」
願うように刀を握るが、やはり烈風丸はただの刀のように変化がない。
「駄目かっ!」
「ネウロイがっ!」
彼女の声が響くと同時にグルーシャがウィザードたちのいるほうへ手を伸ばし、機体を操作する。
その操作によって3機のウィザードは接近していたネウロイへと攻撃を実行していた。
照射されたビームはネウロイを撃ち抜き、悲鳴にも似た断末魔の声が響き渡る。
「なに!?」
「どうして?」
驚く零治達を他所に攻撃を受けたネウロイが消滅した。
周囲に光の粒子が舞う中、グルーシャは跳躍しウィザードへと飛び乗ると、戦線を離脱していく。
「グルーシャ……なんで?」
「兄さん……」
「大丈夫かい?琴村少年、ローゼンクロイツさん」
「は、はい!」
ユースティアナが深く頷き、返事する。
3人はただただ本土から離れていくウィザードを見つめていた。
ほどなくしてベアトたちもネウロイを撃墜してロマーニャの本土へと降り立つ。
「ユースティアナさん!」
真っ先にクロエがユースティアナを抱きしめる。
「よかった。無事みたいですね」
「うん。クロエさん、ソフィアさんも無事でよかった」
「心配してたんですよ。攫われたって聞いて」
「助けに来てくれてありがとう」
ユースティアナも感謝を述べていた。
「やったね、僕たちの任務達成だよ!」
「ああ。本当にローゼンクロイツが無事でよかった」
アビゲイルとヨハンも安心したように深く息を吐いていた。
「みんなも戦ってくれて、ってリトヴァク中尉とユーティライネン中尉?どうしてここに?」
「お2人も一緒に戦ってくれたんです」
「そうだったんですか……ありがとうございます」
零治は深々と頭を下げる。
「感謝しろよナー」
「え、エイラ!」
「いえ、リトヴァク中尉とユーティライネン中尉がいなければ、今回の作戦も成功していなかったと思います。本当にありがとうございます」
ベアトも感謝を述べ、頭を下げる。
「流石は第501統合戦闘航空団、ストライクウィッチーズ所属のウィッチですね」
「お役に立てたならよかったです」
サーニャは少し照れているのか、視線を逸らしていた。
任務は完了した。自分たちはユースティアナを救うことができたのだ。
再度、彼女のほうへと視線を向ける。
「体は大丈夫なんですか?」
「うん。なんともないよ!」
クロエの心配する言葉に笑って見せていた。
だが、これまでと異なり彼女からDSやアルカ・ネウロイ特有のコアの反応を感じる。
これは一体どういうことなのだろうか?
「琴村少年。どうかしたのかい?」
「気になることでもあるんですか?」
直葉とベアトがこちらの顔を覗き込み、首を傾げていた。
戻ってメディカルチェックをしてみないことには判断はできない。
そう結論付けると、考えることを中断する。
「いや、なんでもない。流石に戦闘後でこのまま帰投するのは厳しいからな。直人とグラハムに連絡を取ろう」
「賛成ー!」
「私たちもこれを使用しているとはいえ、先の戦闘では思った以上に疲弊していますから」
こちらの意見にアビゲイルやヨハンも同意見のようだ。
通信設備を借りてガリアに連絡を取るため通信室へと向かう。
通信機を操作していると、
「零治さん。私もご一緒していいですか?」
ユースティアナが通信室へと入室する。
「構わないよ」
「ありがとうございます」
隣に座るのを確認し、一緒に通信機を操作すると
「こちら特務隊所属、鈴木直人軍曹だ」
「直人か。俺だ」
「お前、零治なのか?よかった、無事みたいだな」
通信が繋がり、2人とも少し安心したように頷く。
「ああ。こっちは今ロマーニャにいる」
「ロマーニャ?」
「おお、俺の故郷にいるかね!?」
割り込むようにユリウスの声が響く。
そういえば、ユリウスの出身はロマーニャと言っていたことを思い出す。
「今は俺が話してるからどいてろ……で、ユースティアナは見つかったのか?」
「うん。見つかったよ。救出することもできた」
隣に座るユースティアナに通信機を渡し、通信に答えるように促した。
「鈴木さん、グラハムさん。ユースティアナです!」
「無事だったならよかった」
直人とユリウスもガリアの地でガッツポーズを取っていた。
再び零治が通信機を受け取る。
「直人。それで、今から……」
「あー、お前の言うことはわかってる。今からロマーニャまで来いってんだろ?」
「お見通しか」
これまで何度も彼には移動の操縦や運転を頼んできた。
どうやら、こちらの意図に気づいたようだ。
「お前と特務隊になってから、似たようなことばかりだったからな。わかった、俺たちもそっちに向かう」
「悪いな。直人」
「気にすんなよ。ウィッチみたく戦えない俺たちにできるのはこんなことくらいだからな」
お互いに頷き、通信を切る。
「鈴木さんたちも元気そうでよかったです。クロエさんからあの時はみんな怪我したりしたって聞いたので」
「まあ、あいつらも傷は浅かったからな」
数日前のことを思い出す。
あの時は自分もグルーシャにまったく対抗できず、みんなウォーロックやウィザードに敗北した。
だが、奇跡的に誰も命を落とすことなく、多少の怪我程度で済んだ。
「あの……零治さんも体は大丈夫ですか?意識がなかったとはいえ、私はひどいこと……」
「俺は大丈夫だよ、ユースティアナ」
彼女の顔を見つめ、その手を握る。
「れ、零治さん!?」
少し驚きながらもユースティアナもこちらを見つめる。
「俺は君のことばかり考えていた。君を絶対アルカ・ネウロイになんてさせない。もう二度とこの手は離さないから」
「……はい。私も零治さんのこと――」
「零治さん、ローゼンクロイツさん。連絡は取れましたか?」
その声に2人の視線が扉側へと向いた。
ベアトと直葉が入室する。
「おやおや、お邪魔だったかな?」
「あ。いえ、そんなことは!」
ユースティアナは頬を赤らめ声を上げる。
「鈴木少佐……通信は取れました。直人たちもこっちに来てもらってます」
「それはよかったです。直人さんたちが到着次第、ガリアに?」
「うん。リトヴァク中尉達をガリアに送る必要もある」
「そうなるだろうね……ところで琴村少年」
4人で廊下を歩いていると直葉が話を切りだす。
「なんです?」
「逢引きするのもいいが、今はまだ気を抜けないことを忘れてはいけないよ」
「なっ!べ、別に逢引きなんてしてないですよ!」
思わず声を上げてしまう。
逢引しているつもりなんてなかったからだ。
ユースティアナの顔を見つめる。
ただ、今は彼女と、ユースティアナと一緒に居たいとは思っていたが。
「あい、びき?」
隣を歩くユースティアナは言葉の意味を知らないのか、首を傾げていた。
「逢引きっていうのはね……」
「ベアトも説明しなくていいよ!」
「ふふふ。すみません」
「どういう意味なんですか!?零治さん!」
謝罪し笑って見せるベアトを横目にユースティアナは質問を続けていた。
日も傾きはじめ、空が赤く染まった頃。
見覚えのあるランカスターがロマーニャに到着する。
「ここがロマーニャか……」
「ああ、俺の故郷なのだよ」
機体を降り、直人とユリウスが地面を踏みしめた。
「あ、鈴木さん、グラハムさんも到着したんですね」
「へー飛行艇で来たのか」
2人を出迎えるように現れたのはサーニャとエイラであった。
「リトヴァク中尉、ユーティライネン中尉じゃないか」
「零治たちはどこに?」
「格納庫に」
指さす先にある軍の格納庫が目に入る。
「リトヴァク中尉たちも一緒に連れてくのか?」
「だろうな。流石に飛んで帰らせるわけにもいかんだろ」
格納庫の扉をくぐると零治とユースティアナ、そしてベアトたちウィッチの顔を確認する。
「待たせたな」
「いえ、むしろ早かったんじゃないですか?」
「おー、ローゼンクロイツ曹長も元気そうだな」
「はい。グラハムさんたちも体の怪我は大丈夫ですか?」
「ああ。俺と鈴木は元々軽傷だったからな」
ユリウスの説明に合わせて直人が頷く。
「琴村少年、ストライカーユニットの積み込みは任せたよ。それとグラハム少年と弟を借りるよ」
「はい」
「あ?」
「え?なんすか?」
直人とユリウスは直葉の言葉に思わず彼女の顔を見つめる。
「いいからきたまえ」
案内された先には1台のジープが止まっていた。
「グラハム少年。君はロマーニャの出身なんだろ?せっかく来たんだ、ご両親に顔を出しておくといい」
「珍しく姉貴が真っ当なこと言ってるな。グラハム、家まで送るからあってきたらどうだ?」
「あー、気持ちはありがたいんですけど……いいですよ。俺は別に」
ユリウスはいつもとは少し違う面持ちで明後日の方向を見た。
「グラハム少年。おせっかいかもしれないが会える時に会っておくべきだよ。琴村少年のように失ってしまったら二度と会えなくなる」
直葉はいつもとは違う少し落ち着いた表情でそう口にした。
「……でも」
「俺は別にどっちでもいいがな」
「じゃあ、ちょっとだけあってくるわ」
「「フッ!」」
先に折れたユリウスに鈴木姉弟は笑みを浮かべる。
「案内頼むぜ」
「ああ」
「では、出発しようじゃないか」
3人はジープに搭乗し、ロマーニャの街に向けて走り出すのだった。
人物紹介(詳細)
・ユースティアナ・ローゼンクロイツ軍曹→曹長(オリジナル)
二つ名 : 現時点ではなし
性別 : 女性
年齢 : 14歳
身長 : 145cm
体重 : 40kg
生年月日 : 4月13日
魔法力 : 中の上
使い魔 : 白ウサギ(エンジュ)
固有魔法 : 魔力放出(ユースティアナの使用する固有魔法。全身に魔力を行き渡らせ、瞬間放出することで身体能力と魔法力を約3倍にまで上昇させることが可能。強力な魔法ではあるものの持続時間が短く、WRによるバックアップを受けていても7分程度しか維持することができない上、限界まで使用すれば魔力切れに陥る危険もある。そのためユースティアナは、普段は2~3分程度、最大でも4分の使用で抑えている)
容姿 : ブロンド色の髪の毛と藍色の瞳を持ち、ブリタニア空軍の軍服にカーキと橙のニーソックスを身に着けている。
性格 : 正義感が強く、優しい性格
得意分野 : ロードワーク、格闘術(蹴り技)、料理と掃除など
使用ストライカーユニット : ストライカーユニットWR 5号機(バランス型高性能機)
パーソナルマーク : 背景にウサギ座の星座とウサギを模した白い横顔
概要 : 本作品の主人公にしてヒロイン。
第一章では軍曹だったが第二章にて曹長に昇格している。
11歳で魔法力を得ており、戦闘経験や技術は他のメンバーに比べて低いものの実戦慣れはしており、他のウィッチとの連携を得意とするウィッチ。
魔法力は一般的なウィッチよりも少し高く、固有魔法による瞬間的な能力上昇による短期決戦と中近距離の射撃戦を主な戦闘スタイルとしている。
また、琴村零治と同様にDS(デザインソルジャー)計画の被験者であり、コードネームとしてスター「星」という別名を持つ他、本来Growがなければ扱えないWRを高い同調率で扱うことができる唯一のウィッチ。
彼女には別人格としてティアという人格が存在しており、普段は自由に会話ができているほか、人格交代も可能としている。
DSとして戦闘訓練、生活していた時の記憶はほぼ残っていないものの、蹴り技による格闘術を得意としていたのは今でも体に染みついているため、接近戦でのインファイトには優れている。