ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ   作:UNIMITES

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どうもUNIMITESです。
第33話となります。


第33話 帰還

 直人の運転するジープはロマーニャの街並みを駆けていた。

「どうだい、ロマーニャの街並みは?」

「俺も数年くらい帰ってないですけど、あんまり変わった感じはしないですね。いつもの光景って感じっす」

 ユリウスは過ぎ去っていく光景を見つめている。

「あ、鈴木。次の交差点を左折な、あとは道なりに進んでいけば住宅街に入るから」

「……おう。にしても飲食店が多いな」

「ああ。ピザやパスタが食える飲食店が多い場所なのだよ。いい時間だし、食っていくか?」

「いいねぇ」

 後部座席に座っている直葉が身を乗り出してそう口にする。

「長居しないんじゃなかったのか?」

「まあ、いいじゃないか。食事についてはあとで話すとしよう」

 立ち並ぶ飲食店にはロマーニャらしい赤緑白の旗が見て取れた。

「ここだ」

 数分ほどでジープが停車する。

 降りたユリウスは民家の敷地内に入るとゆっくりと見渡す。

「あまり変わっていないのだよ」

「へー結構いい場所だな。静かで住みやすそうだ」

 直人や直葉も門をくぐる。

 扉を引くと鍵は開いているようであった。

「あれ?開いてる……」

「不用心だね……」

「あのーどちらさまですか?」

 後方からの声に3人が振り返る。

 目の前に立っていたのは十代の女の子であった。

「ユリアかね?お前、少し見ない間に背伸びたな」

 少女をユリウスは彼女の頭を見つめる。

「兄さん?」

「「兄さん?!」」

 思わず鈴木姉弟が復唱して、ユリウスを見つめた。

「あー、はい。俺の妹のユリアです」

「ユリア・グラハムと言います。で、そんなことよりなんでロマーニャにいるの?軍の仕事が忙しくて帰れないって言ってたのに!」

「それは……」

「……あんた、ユリウスかい?」

「あ、おふくろ」

 ユリアの後方には女性の姿があった。

 彼の言葉から、その女性が母であることを直人も理解する。

「あんた今更、どの面下げて帰ってきたんだい!?」

「いでででで!鈴木、助けろ!」

 ユリウスは羽交い絞めされたことでたまらず声を上げた。

「いや、助けろと言われても……」

「母さん」

「あら、お客様?軍服ってことは軍の方ですよね?」

 母の視線がこちらに向けられると、

「はい。今はグラハム少年と同じ部隊に所属している鈴木直葉といいます」

「同じく鈴木直人です」

 2人も自己紹介して一礼する。

「うわぁ。結構イケメン……」

「はぁ?」

 ユリアは熱い視線を直人に向けていたが、ユリウスは思わず首を傾げていた。

「それでなんであんたがロマーニャにいるんだい?」

「別に、任務でロマーニャに来たから顔くらい出しておこうと思っただけなのだよ」

「ふーん。でも元気そうでよかった。中にどうぞ、お茶くらい出しますので」

 室内に案内され、3人も席に着く。

 世間話や近況報告を適当にした頃、

「兄さん。まき割るから手伝って!」

「なんで俺が?」

「なに?か弱い妹一人にやらせるっての?」

「いつも一人でやっているんだからか弱くないだろ」

「はー?そういうこと言います?」

 ユリウスとユリアが兄妹喧嘩を始める。

「……ユリウス。手伝ってやんな」

「えー。わかったのだよ」

「やったー」

 2人が外に出ていくのを確認すると、直葉が口を開いた。

「グラハムさんのお父様はお仕事ですか?」

「いえ。あの子たちが小さかった頃にネウロイとの戦闘で亡くなったんです」

「これは失礼しました……」

 直葉は深々と頭を下げる。

「いえ、お気になさらないでください。ただ、ユリウスには軍人なんて、やめて戻ってきてほしいんですけどね」

「それはお父様が戦場で亡くなられたからですか?」

「そうですね……ユリウスの仕送りで生活は楽になっていますが、あの子には普通の子供であってほしかったから」

 そんな話を聞いて鈴木姉弟もお互いの顔を見合わせる。

「……あいつは何を言っても軍人続けると思いますよ」

「え?どうしてですか?」

「俺も姉貴や親の反対を振り切って軍人やってますから。グラハムには似たものを感じます」

 直人は直葉の顔を一度見た後、再度視線を戻す。

 話し終えた頃、玄関からユリウスとユリアが戻ってくる。

「ふいー疲れた」

「流石兄さんだね。いつもより早く終わっちゃった!」

「感謝するのだよ」

「おっと少し長居しすぎてしまったね。グラハム少年、弟よ。そろそろ戻ろう。琴村少年たちが待っているからね」

「ああ。失礼します」

「はいっす!」

 直葉の提案で外のジープへと向かう。

「ユリウス、元気でやるんだよ」

「ああ、次はいつ戻るかわかんねーけど」

「兄さんしっかりね!」

「おう!」

「いくぞ」

 アクセルを踏み込み、ジープは走り出す。

 後方では2人が手を振り続けていた。

「どうだった?」

「来てよかったよ。2人とも元気してたし……それと妹がお前のこと気に入ってたぞ。イケメンだってよ」

「ダメダメ!弟にはベアトという大事な彼女がいるんだから!」

「姉貴!俺とベアトは別にそういう関係じゃねー!」

 直人がいつもとは異なり取り乱した表情を見せる。

「ほう。お前、フーバーさんのこと好きなのか?」

「だから違うっての!」

「はっはっは!」

 後部座席には彼女の笑い声が響いていた。

 

 

 ジープが軍の格納庫に帰還する。

「おかえりなさい」

「ただいまー」

「こっちは準備できてるぞ」

「ああ、すぐ出すぞ」

 直人は操縦席に座り、発信準備を始めていた。

「なんかあったんですか?」

「なんもねーぞ。早く戻ろうぜ、俺も疲れちまった」

「?」

 零治とベアトは首を傾げていた。

 程なくしてランカスターが空へと飛翔していく。

 ウィッチたちは相変わらず会話に花を咲かせている。

「零治。お前も休んでいていいぞ。疲れているだろ」

「そういうわけにもいかないよ。お前にはいつも苦労かけているからな」

 操縦席に座り地図を開く。

「ローゼンクロイツを助けられてよかったな」

「うん」

「にしても、グルーシャ・ローゼンクロイツの目的は一体何だったんだろうな?」

 直人が自分にだけ聞こえる声で質問する。

「……正直、わからない」

 彼はユースティアナを攫い、アルカ・ネウロイにしたうえで味方にしていた。

 それが彼の力なのだろうか?

 だが、戦闘の中でユースティアナは人間性を取り戻し再び人間としてここにいる。

「アルカ・ネウロイのことも、グルーシャのこともわからないことだらけだ……せめて父さんが生きていれば」

「言っても仕方ねーだろ。戻ったらローゼンクロイツのメディカルチェックもしなきゃな」

「そうだな。頼むよ直人」

 窓越しに薄暗い空を見つめる。

 ランカスターはそんな空を進んでいくのであった。

 

 

 ガリア本土に到着したころにはすでに日も沈み、空には月が蒼白く輝いていた。

「では、私たちはこれで」

「支援要請に応じていただきありがとうございました。クロステルマン中尉やビショップ曹長にも助かりましたと、お伝えください」

「はい。行こエイラ」

「じゃーなー」

 サーニャとエイラは格納庫を後にする。

「俺たちも宿舎に戻ろう」

「はい!」

 2人と別れると零治たちも宿舎へと歩き出す。

「ブリタニアには明日戻るのか?」

「そうだな。明日はグラハムの荷物もまとめに行かないと」

「わりーな」

「気にすることないよ、グラハム少年。私たちはもう同じ部隊の仲間なんだから」

 直葉がそう口にしていた。

 彼女の言う通りだ。

 ユリウスも自分たち特務統合強襲航空団アサルトウィッチーズの仲間となった。

 始まりは自分と直人、ベアトの3人だった部隊も今は10人の大所帯となっている。

 随分、増えたものだ。

「琴村さん!帰ってきてたんですか!?」

「ヴァージニアさん」

 こちらに声をかけたのはルミナスウィッチーズのヴァージニア・ロバートソンであった。

「おかえりー。あ、ローゼンクロイツさん!」

「エレオノールさん!」

「よかったー、心配してたんだよ!」

 ユースティアナは憧れのエレオノールの顔を確認すると目を輝かせて、駆け寄る。

「無事に戻ってきてよかったです」

 アイラも安心した様子を見せていた。

「俺たちだけじゃ、ユースティアナを助け出すことはできなかったと思います。ルミナスウィッチーズの皆さんも色々助けられました」

「いえ、私たちは何も」

「そんなことありません。傷ついた私たちを治療してくれたのは皆さんです。エレオノールさんやアイラさんたちがいなければ私たちの作戦決行も遅れていたと思います」

 ベアトも先日の状況を思い出すと深々と頭を下げる。

「私たち、役に立ってたんだね」

「みたいだな」

 ルミナスウィッチーズの3人と別れると、宿舎のベッドに倒れこむ。

「うぅ……流石に無理をしすぎたな」

 腹部に手を当てる。

 痛みはないものの、先の戦闘で彼女の攻撃を受けた。

 幸い格闘術による攻撃を受けただけだったため、先日のように大事には至らなかった。

 にしても、彼女がDSの頃に身に着けた格闘術を今でも覚えていたのは驚きである。

 グルーシャも戦闘術は同じように昔身に着けた格闘術がベースになっていた。

「まあユースティアナは助けられたんだ。今はそれでいいじゃないか」

 考えれば考えるほど様々な憶測が頭の中で生まれてくる。

 だが、体は披露しているようで、それも長く続くことはなく睡魔に襲われた零治は深い眠りにつくのだった。

 

 

 

 翌日、数時間のフライトを終えてブリタニア基地へと到着する。

「うー……ようやくブリタニア基地に戻ったな」

「お疲れ様です。直人さん」

「ああ、ローゼンクロイツ。少し休んだら医務室へ来てくれ。メディカルチェックをするからな」

「はい!了解しました」

 直人の指示にユースティアナが敬礼する。

「で、俺の部屋はどこになるのかね?」

「グラハムの部屋か……」

 少し考え込む。

 人員が増えるとは思っていなかっため、この基地では使用できる部屋も限られている。

 空き部屋はあっただろうか。

「それなら私の隣の部屋が空いていると前にベアトから聞いているよ」

「そうなんですか?」

「うん。グラハム少年、私が荷物の運び込みは手伝おう」

「ありがとうございます!直葉少佐」

 ユリウスが感謝の言葉を述べる。

「みんなも休んでもらって構わない。俺は隊長室にいるから」

「了解です」

 各々が別れ、部屋へと向かう。

 格納庫にストライカーユニットWRと銃を戻し、零治も隊長室へと歩き出す。

 隊長室に到着し、椅子に座り見慣れた天井へと視線を向けた。

「……」

 そんな静寂に電話のコール音が響き渡る。

「はい。こちら特務統合強襲航空団アサルトウィッチーズ」

「零治!あなたは無事なの!?それにローゼンクロイツさんも!」

 聞き覚えのある声に思わず受話器から耳を離す。

 油断して聞いたことで表情を歪めてしまう。

「いきなり大きな声を出さないでくれよ。ナナリー」

 電話の主はナナリー・ロアノークである。

 どうやら先日のユースティアナが攫われた件と奪還のためにロマーニャに赴いた件は彼女の耳に入っているようだ。

 自分が報告するよりも前にガリアやロマーニャにいる偵察部隊が報告を入れたのだろう。

「あなたがすぐに報告しないからでしょ!それにウォーロックやグラハムの件だって色々聞かなきゃならないこともあるのよ!」

「仕方ないだろ……こっちも色々バタバタしていたんだ。報告書も提出はするが、まずは口頭で伝えておくよ」

 そう口にすると零治はここ数日の事を思い出し、話始める。

 ガリアの地でアルカ・ネウロイ、コードネーム「テンパランス(節制)」と戦闘になった。

 テンパランスとの戦闘には問題はなく、撃破に成功する。

 だが、予想外のことが起きたのはその後である。

 ベアトたちの前に現れた3機の無人機動兵器「ウィザード」、そして自分とユースティアナの前に現れたのはウォーロックとDSのグルーシャ……いや、アルカ・ネウロイと呼ぶべきかもしれない。

 彼らの登場によって戦況は一変した。

 ウィザードとグルーシャはその戦闘能力によってアサルトウィッチーズのウィッチを瞬く間に戦闘不能に追い込み、自分とユースティアナも殺される一歩手前まで劣勢となっていた。

 そして、グルーシャによってユースティアナが攫われてしまう。

 攫われた先のロマーニャで彼女は一度アルカ・ネウロイになってしまうものの、サーニャやエイラの協力を得て、なんとか彼女の心を取り戻し、救い出すことができたのだ。

「ウィザードにウォーロック、そしてグルーシャ……」

「どうかしたのか?」

「あなたはどう思う?そのウォーロックとウィザードが新造されたものだと思う?」

「俺はそれはないと思っている。零央はコアの入手方法だけは誰にも明かさずブラックボックスにしていた。それに設計図だって俺たちが所持しているもの以外はすべて軍のデータから処分している。どうあっても新造するのは不可能のはずだ」

 そう、どうあっても新造するのは不可能であった。

 ならば考えられる可能性は1つしかない。

「やつらが運用しているウォーロックとウィザードは数年前に襲撃を受けた研究所で試験されていた機体。おそらく敵にはグルーシャの他にウォーロック研究に携わった人間がいるということだ」

「……そう」

「どうかしたのか?」

「ウィザードとウォーロックの撃墜命令が出されたわ。これは別部隊に――」

「ウォーロックたちの撃墜も俺たちが引き受ける」

 彼女の言葉を遮るように言葉を口にしていた。

「元々、零央が世界に残した歪みだからな。それには俺が決着をつけなくちゃならない」

「零治、あなたはDS計画の被験者だけど、そこまでしなくても……」

「俺にはあとどれだけ時間が残されているかわからない。だから俺は、せめて零央が残した世界の歪みだけは取り除かなくちゃならないと思っているんだ」

 それが去っていた者たちやアルカ・ネウロイとなってしまい犠牲となっていった者たちへの贖罪となると思うから。

「零治……わかった。アルカ・ネウロイとウォーロックおよびウィザードの撃墜はあなたに任せるわ」

 ナナリーは咥えていた煙草を灰皿に押し付ける。

「ああ。そっちも引き続き情報収集を頼むよ」

 受話器を戻して、再び天井を見つめた。

「ウォーロックたちを追えば、零央を殺した人間を見つけ出すことができるかもしれないからな……」

 その瞳には信念と共に怒りの炎が燃えているのだった。




人物紹介(詳細)
・ティア・ローゼンクロイツ(オリジナル)
 二つ名 : 宵闇の星
 性別 : 女性
 固有魔法 : 魔力放出(ユースティアナの使用する固有魔法と同じ。だが、彼女の場合にはユースティアナよりも高い出力と持続時間を獲得できていたようである)
 容姿 : ユースティアナと同じだが、瞳は紅色に変わっている
 性格 : 強気で疑い深い
 概要 : ユースティアナの中に眠るもう一人の人格。
 普段は眠っていることが多く、戦闘時にのみユースティアナの体を借りて表に出ることがある。
 その実態はユースティアナの中にあるコアから生まれたネウロイの人格であり、2人で一人の体を共有しているという唯一無二のDSであり、ウィッチでもあるため零治やグルーシャよりも貴重な被験者とされていた。なお、彼女の人格が生まれたのはユースティアナが魔法力を覚醒した時期と同じであった。
 直感力と動体視力に優れており、戦闘時にはユースティアナよりも高いパフォーマンスを披露できるものの、長時間表に出ることができないため、緊急時にしか戦闘には参加していなかった。
 グルーシャのコア制御能力によって力を暴走させ、一度は体の7割をアルカ・ネウロイ化させ、コードネーム「スター(星)」になってしまうものの、琴村零治の叫びによってユースティアナの人格が再び目を覚ましたことで人間性を取り戻し、一心同体を果たしている。
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