ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第35話となります。
アルカ・ネウロイの出現によってベアトたちアサルトウィッチーズのウィッチ6人が出撃する。
「ネウロイを確認!」
クロエが固有魔法「高感度センサー」によって敵ネウロイを捕捉していた。
数百メートル先に人型のアルカ・ネウロイ2体が空を舞う。
「いくよ、ヨハン」
「おう!」
程なくして、ヨハンとアビゲイルがアルカ・ネウロイと交戦を開始する。
銃口を人型のアルカ・ネウロイに向けて発砲した。
しかし、2体のアルカ・ネウロイはこれまでの個体とは異なり、ウィッチのような俊敏な機動力によって攻撃を回避する。
「なに!?」
「思ったより早いね。それなら!」
機動力には自信のあるアビゲイルも右手に魔法力を込めると雷が出現し、バチバチと音を立てる。
「くらえー!」
高速で飛行し、紫電を纏う掌打を放つ。
攻撃が命中すると思われたが、
「ぐっ!」
アルカ・ネウロイの蹴りによってあしらわれる。
「アビー!」
「ウィリアスさん……っ!」
もう一体のアルカ・ネウロイが割って入るようにクロエたちの援護を遮った。
「思ったより行動が読めないね」
「アルカ・ネウロイがここまで連携しているなんて……」
直葉とベアトもシールドで防御して戦況を見定める。
「……体にⅩⅧとⅩⅣを確認、アルカ・ネウロイのコードネームはサン(太陽)とムーン(月)です」
「太陽と月か……にしても連携が取れているのは、面倒だな」
名前を聞いたヨハンも苦虫を嚙み潰したように表情を歪ませると、固有魔法「構築」を使用して片手直剣を作り出す。
「いったいな!あいつ、絶対倒す!」
態勢を立て直したアビゲイルも鋭い視線でアルカ・ネウロイを睨む。
「もう戦闘が始まっているのか……」
「みんな……」
格納庫まで到着した2人は肩で息をして空を見つめる。
ユースティアナの頬を一筋の汗が伝う。
「戻ったのか、零治、ローゼンクロイツ」
「状況は?」
「さきほど交戦を開始したところだな」
直人も再び空に視線を向け、双眼鏡を覗く。
2体のアルカ・ネウロイと交戦するウィッチたちはどうやら苦戦しているようだ。
「思ったより手こずっているようだ」
「あのアルカ・ネウロイ、これまでのような個体とは違って、しっかりお互いの連携を取っているようだ」
「おいおい、ネウロイにそんなことされたらこっちがやばいじゃないか!」
隣で自分の分析を聞いていたユリウスも心配しているためが声を上げていた。
「ぐっ!」
「うっ!」
「クロエさん!ソフィアさん!」
サンとムーンの攻撃に2人は苦悶の表情を浮かべる。
そんな様子をユースティアナが心配そうな表情で見つめていた。
「言ってもアルカ・ネウロイは戦闘を辞めてくれるわけじゃない」
「零治の言う通りだぞグラハム」
「行かなきゃ……私も行きます!」
ユースティアナは覚悟を決めたように格納庫に駆けていく。
「おい、ユースティアナ!」
零治の声を背中に浴びるが、振り返らず大地を蹴った。
格納庫に安置されていたストライカーユニットWRを装着すると、瞼を閉じる。
「お願い……動いて」
魔法力を込めるがやはりWRの魔導エンジンtype-Cの回転率が上がらず、エーテルのプロペラがゆっくりとだけ回っていた。
「ローゼンクロイツ。今の状態では飛行するのは無理だ」
「そうだぜ。ローゼンクロイツさん」
「……うぅ、でも!」
思いだけが先走り、思わず彼女は声を上げる。
「……」
零治もただただ彼女を見つめる。
ブリタニアに戻って、すでに数日以上経過しているのに、ユースティアナの魔法力が安定しないのはなぜなんだ?
魔力だってすでに十分に回復しているはず……。
ウィッチではない自分たちにはわからないが、まだ何か問題があるのか?
一方、サンとムーンの攻撃を受けたクロエがたまらず体制を崩してしまう。
「きゃっ!」
「「エリザベート!」」
ヨハンとアビゲイルが救援に向かおうとするが、2体のアルカ・ネウロイの方が速度が上のため、徐々に引き離されていく。
「ユース……」
「ティア?」
小さく聞こえた声に思わず周囲を見渡す。
格納庫には自分と零治たち以外には誰もいない。
「ティア。お願い、力を貸して!私、魔法力が……」
「それは、あなたが無意識のうちに自分の力を抑制していただけ。力を使うことを恐れないで、ユース」
ティアはその言葉を残し、再び静寂だけが残る。
胸に手を当て、閉じていた瞼を見開く。
その瞳は藍玉色の右目と紅玉色の左目のオッドアイに変化していた。
「ユースティアナ、お前……その目」
「……っ!」
再び魔法力を込めると魔導エンジンtype-Cの回転率が一気に上昇する。
「そうだね。ここには私とティアがいる!」
固有魔法「魔力放出」を使用すると、これまでとは比べ物にならない出力の魔法力によって空気が震えた。
「これが、ローゼンクロイツの魔法力なのか?」
「すげー、パワーだ……」
直人やユリウスも全身に走る衝撃に思わず顔を腕で覆う。
「これが、本来のユースティアナの力……」
「いきます!」
彼女は天空へと飛翔する。
一方、サンとムーンは攻撃目標をクロエに決めたのか、その手が紅の閃光を放つ。
「エリザベートさん!」
「クロエさん!」
「っ!」
彼女も思わず目を固く閉じてしまう。
「うおぉぉ!」
紅の閃光は巨大なシールドに阻まれる。
そして、落下していたクロエの体をユースティアナが抱きかかえていた。
「お待たせ、クロエさん」
「ユースティアナさん!」
「ユースティアナさん、クロエさん大丈夫ですか?」
ソフィアも近寄ると心配そうに見つめる。
「ソフィアさん、クロエさんをお願いします」
「でも!」
「私は大丈夫だから」
ユースティアナは優しく微笑み、空を駆ける。
サン、ムーンも機銃のごとく紅の閃光を放つ。
だが、ユースティアナの展開したシールドが攻撃を防ぐ。
「あれは本当にローゼンクロイツなのか?」
「すご!なにあの大きいシールド……」
ヨハンとアビゲイルも思わず彼女を見入っていた。
そのシールドの防御力はこれまでのものよりも明らかに上昇している。
「はっ!」
シールドで2人のアルカ・ネウロイを突き飛ばし、ブレン軽機関銃Mk1の銃口をムーンへと向けた。
引き金を引くと次々に銃弾が発射される。
放たれた銃弾を体中に浴びたことでコアが破壊され、ムーンが消滅する。
光の粒子が舞う中、ユースティアナは速度を緩めることなく、急旋回した。
「まさか、あのままサンの相手をするつもりかい?」
「無茶です!あの出力じゃユースティアナさんの魔力が切れちゃいます!」
直葉とベアトの言う通りであった。
これまでのユースティアナなら固有魔法である「魔力放出」を全力で使用できるのはおよそ3,4分が限界だった。
だが、すでに3分以上魔力放出を使用している。
本来なら彼女の魔力はいつ切れてもおかしくないが、今も全力で魔法力を使用している。
DSである自分には……いや、自分だからこそわかる。
彼女があれだけ魔法力を使用しても平気なのか。
「ユースティアナは体内のコアの力を自分の魔法力にしているんだ」
「コアの力を?」
「そんなこと可能なのかね?!」
「だからこそ、あれだけの魔法力を使用してもなお、飛行していられるんだ」
これまでは魔法力で体内のコアを無意識に制御していたのだろう。その結果、本来の彼女が持つ魔法力を十分に使用できなかった。
だが、今のユースティアナは体内のコアの力とウィッチとしての魔法力を自在に操れる存在……「DSウィッチ」となったのだ。
ふと、グルーシャの口にした「立っているステージが違う」という言葉を思い出す。
「本来、零央のDS計画では存在しなかったであろうDSを超えたその先のステージ、呼称するのならば『オラクル』。それこそが今のグルーシャやユースティアナなのかもしれない……」
「「オラクル……」」
直人とユリウスも再び空を見つめた。
サンは逃げるように背を向けるが追撃するユースティアナとの距離は徐々に迫る。
「逃がさない!ここで仕留めます!」
「――!」
悲鳴のような甲高い声を上げると体を捻り、バレルロールするようにサンが銃弾を回避した。
彼女の上を取ったことで、両手が攻撃態勢を取り紅に発光する。
「ユースティアナさん!」
「ローゼンクロイツさん!」
「ローゼンクロイツ!」
ウィッチたちが声を上げた。
紅の閃光が一閃放たれるが、ユースティアナも急加速して攻撃を回避して見せる。
そのまま上昇し、太陽を背に急降下を始めた。
「――!」
サンも太陽を背にしている彼女に一瞬怯んでいた。
そんな隙をついて、放たれた弾丸が体を撃ち抜く。
腹部にあったコアが弾丸によって砕けると、さきほどのムーンと同様に光の粒子となって消滅する。
「はぁはぁ、やった……」
肩で息をしていた彼女は魔力放出を解除したことで魔力の流れが落ち着き、体の光も霧散するように消えた。
「ユースティアナさん!」
「クロエさん、ソフィアさんも怪我はないですか?」
「うん!でも、ユースティアナさんはあれだけ魔法力を使用して大丈夫なんですか?」
「あ……うん。問題ないみたいです」
「すごいですね。まるでジェットストライカーのような加速力でしたよ。一体どうやって?」
クロエとソフィアはさきほどの彼女の戦闘がよほど気になったのか質問する。
「えっと、私も無我夢中で……よくはわからなくて」
ユースティアナもただただ視線を泳がせて、言葉を濁す。
「こちらベアトリス。アルカ・ネウロイ、サン(太陽)とムーン(月)の撃墜を確認しました」
「ああ、こちらも確認した。みんな基地まで戻ってきてくれ」
通信を送り、零治は空のウィッチを見つめた。
「ユースティアナさん、助けてくれてありがとう」
「うん!私もみんなを守れてよかったです!」
青い空で彼女は笑みを浮かべる。
さながらその姿は星のように白く光り輝いているようにも見えた。
そう、名付けるのなら「星光の魔法少女」、コードネームはアルカ・ネウロイとは異なる存在としての意味を込めて「スター・プリズムホワイト(星の白光)」といったところか。
格納庫に戻ってきたウィッチたちの顔を順番に確認する。
「ウィリアス、大丈夫か?」
「うー……おなか痛い」
「な?あいつらの攻撃をもろに受けると痛いだろう?」
腹部を押さえていたアビゲイルに共感するようにつぶやく。
かつて、彼女もアルカ・ネウロイとの戦闘で腹部に攻撃をもらったことがある。
その時のことを思い出しているのだろう。
「診てやるから、医務室こいよ」
「はーい……」
「ユースティアナも大丈夫か?」
「え?……はい。私は全然大丈夫です!」
いつものように笑みを浮かべて敬礼する。
「でも、その目って?」
「目、ですか?」
ベアトの質問にユースティアナは首を傾げていた。
「うわ!なにこれ?!」
室内に彼女の声が響く。
鏡で確認した顔はいつも見ている顔だが、瞳は左右で異なる虹彩のオッドアイだったからだ。
「俺にも理由はわからないが、ティアの目は確か紅かったぞ」
「ティアの、ですか?」
再び鏡に映る紅い左目を見つめる。
「そっか。ティアは一緒にいるんだね……」
「あのティアというのは?」
「ユースティアナさんのことじゃないんですか?」
自分たちの会話を聞いていた2人が思わず首を傾げる。
そこでティアの存在を彼女たちが知らないことを思い出す。
「ティアは私の、コアが生み出したもう一人の人格です。今はもう話せなくなったけど、確かにここにいるんです」
ユースティアナは胸に手を当て、そう口にしていた。
「多重人格のようなものなんでしょうか?」
「うーん。近いかもしれないが、違う気もするな。正直、DSの体はわからないことが多くてな」
結局のところ、今の自分たちには判断できないというのが現状だ。
前に自分が使用した治癒能力のことだって、何がトリガーで発動したのかもわかっていない。
ティアという人格についてもグルーシャが言ったというコアが生み出した人格以上の情報がないのだ。
「なら琴村さんにはコアの生み出した人格はいないんですか?ユースティアナさんのティアみたいな」
ソフィアの言葉で彼女たちの視線がこちらに向けられる。
「いない、と思うぞ。俺は今まで自分以外の人格と会話をしたことなんてないし、仮に別人格が体を動かしていたとしても直人やベアトが気づくだろうしな」
「そうですか……」
「もし俺がアルカ・ネウロイになったら、その時は……」
「そんな事させません!零治さんをアルカ・ネウロイになんて絶対させません!」
そう口にしたのはユースティアナであった。
「っ!ユースティアナ」
「だから、アルカ・ネウロイになったら、なんて言わないでください……」
「「ユースティアナさん……」」
「すまない。俺も少し弱気になっていた。ありがとうユースティアナ」
「必ず私がみんなも、零治さんも守りますから!」
彼女に励まされ、零治も深く頷くのだった。
人物紹介(詳細)
・DSウィッチ ユースティアナ・ローゼンクロイツ曹長(天空のユースティアナより)
二つ名 : 星光の魔法少女
オラクルコードネーム : スター・プリズムホワイト(星の白光)
性別 : 女性
年齢 : 14歳
身長 : 145cm
体重 : 40kg
生年月日 : 4月13日
魔法力 : 上
使い魔 : 白ウサギ(エンジュ)
固有魔法 : 魔力放出(ユースティアナの使用する固有魔法。全身に魔力を行き渡らせ、瞬間放出することで身体能力と魔法力を約3倍にまで上昇させることが可能。
持続時間が短い欠点があったものの「DSウィッチ」となったことで持続時間が伸びており最大約15分まで使用可能になっている。
限界まで使用すれば魔力切れに陥る危険は残っているものの、コアの力によって魔力のリチャージ時間は短縮されている)
容姿 : ブロンド色の髪の毛に藍玉色の瞳、紅玉色の瞳を持ったオッドアイになっており、ブリタニア空軍の軍服にカーキと橙のニーソックスを身に着けている。
腕には従来どおりⅩⅦの文字が刻まれている。
性格 : 正義感が強く、優しい性格
得意分野 : ロードワーク、格闘術(蹴り技)、料理と掃除など
使用ストライカーユニット : ストライカーユニットWR 5号機(バランス型高性能機)
パーソナルマーク : 背景にウサギ座の星座とウサギを模した白い横顔
概要 : 本作品の主人公にしてヒロイン。
アルカ・ネウロイ、サン(太陽)とムーン(月)との戦闘でDSのその先「オラクル」として覚醒したDSウィッチ。なお、コードネームはアルカ・ネウロイとは異なる存在としての意味を込めて、スター・プリズムホワイト(星の白光)に改められている。
これまでは体内のコアを魔法力で制御していたため、6割程度の魔法力しか発揮できていなかったものの、ティアとの一心同体を経て完全にコアの力と魔法力を扱えるようになったことで最大120%の力を発揮できるようになっている。
戦闘スタイルは引き続き、固有魔法による瞬間的な能力上昇による短期決戦と中近距離の射撃戦であるが、シールドは本来の強固な防御力を取り戻したことの他、宮藤芳佳のような広範囲のシールド展開も可能になっている。
WRを扱う同調率は100%に上昇しており、完全同調(フルシンクロ)で扱うようになったことですでに他のウィッチとは一線を画す力を持つ。