ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ   作:UNIMITES

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どうもUNIMITESです。
第37話となります。


第37話 零の名を持つ少女

 日も傾きはじめ、空が赤く染まった頃、ラバーズ(恋人)との戦闘を終えたウィッチたちが帰投する。

「お疲れ様です。ハイデマリー少佐」

「はい。でも、鈴木少佐が……」

 ハイデマリーは視線を後方の直葉の方へと向けた。

 零治とユリウス、ウルスラも続くように後方を見つめる。

 そこにはベアトに支えられ帰還した直葉の姿があった。

「直葉少佐……!」

「……」

「グラハム少年。なーに、問題ないさ。少し張り切り過ぎただけだよ」

 彼女はそう口にしていつものように笑って見せる。

 その様子に、ユリウスも安心したように胸をなでおろしていた。

 一見すれば多少の傷はあるものの、体のどこにも問題はなさそうだ。

「ベアトと鈴木少佐は休んでくれて構いません。ユースティアナ、報告頼めるか?」

「は、はい。交戦したアルカ・ネウロイのコードネームはラバーズ(恋人)、霧を操る力を持っていました。霧による視界不良で少し苦戦しましたが、なんとか撃墜しました」

「霧を操る……か」

 報告を受けて、零治は少し考え込む。

 霧を操るネウロイというのは初めてな気がする。

 もしかしたら、他の部隊では交戦のデータはあるのかもしれないが。

 自分が知る限り、過去の出現データでも聞いたことがない。

「わかった。ありがとう」

「琴村、俺は少し直葉少佐についててやりたい。整備は任せていいか?」

「ああ、構わない。鈴木少佐の事は任せるぞ」

「わりーな」

 ユリウスは軽く頭を下げると、ベアトたちと共に格納庫を後にする。

「大丈夫でしょうか……」

 ウルスラも心配そうなまなざしを向けていた。

「ユースティアナ。戦闘中に何か気づいたことあるか?」

「えっと、特に変わった点はなかったと思うのですが……」

「そうか。なら、いいんだ」

 その返答に、それ以上詮索することはせず視線を戻す。

「では、ストライカーの整備始めましょうか」

「はい」

「私もお手伝いします!」

「ありがとうございます。ローゼンクロイツさん」

 3人でストライカーユニットの整備を始めるのだった。

 一方、医務室で治療を終えた直葉は席を立つ。

「よし、では私は部屋で少し休ませてもらうよ」

「……グラハム。部屋まで送ってやってくれ」

「おう。わかった」

 2人が部屋を後にするのを確認するとベアトが口を開いた。

「あの、直人さん」

「どうした?」

「直葉さん、もしかしたら魔法力が減衰し始めているかもしれません」

「なに!?」

 直人は思わず声を上げた。

 彼女の言葉が予想外のものだったからだ。

「さっきの戦闘でシールドが弱っているように、見えたんです。今はまだ飛ぶことと戦闘することを両立できていますが、いつ影響が出るか……」

「それ、本当か?」

「あくまで私から見た感想にすぎませんが」

 ベアトの言葉に直人も少し表情を歪ませる。

「わかった。俺の方から探りを入れてみる。教えてくれてありがとうな、ベアト」

 そう口にしてベアトの頭を優しくなでる。

「は、はい……」

 彼女も少し顔を赤らめているのだった。

 

 

 翌朝、ユースティアナはクロエやソフィアと共に日課のロードワークを行っていた。

 うす暗い空の下、少女たちは肩で息をして、それぞれ息を整える。

「はぁ、はぁ……っ!」

 ユースティアナは何かを感じ取ったように顔を上げた。

 周囲を見回すが特に変わった点はない。

「ユースティアナさん?」

「どうかしたんですか?」

 2人もそんな様子を確認して思わず質問を投げかける。

「いえ、気のせいみたいです……」

 一瞬だが、コアの反応に似たものを感じた気がした。

 だが、アルカ・ネウロイが現れたのなら、コアの反応は継続して感じ取ることができるはずだ。

 今は、特に何も感じることがない。

 やはり気のせいだったのだろうか。

「それじゃあ、次の訓練に移りましょうか」

「そうですね」

「は、はい……」

 3人は基地に向けて歩き出すのだった。

 一方、零治は日課である剣術の訓練を終えて、サン・トロン基地の格納庫へと戻ってくる。

「あ、零治さん、ハーゲンさん。おはようございます」

「ウルスラさんも早いですね」

「おはようございます。ハルトマンさん」

「もしかして、訓練ですか?」

 自分たちの手にある扶桑刀や片手直剣を見てウスルラが質問する。

「前線には出ませんが、俺も少しは戦闘訓練しているんです」

「琴村さん。呑み込みが早くて今じゃ私と大差ないくらい剣術は上達してますからね」

「いや、それでもネウロイには対抗できないからな」

 ヨハンの言葉に思わずつぶやく。

 どれだけ剣術を上達したところで、通常の武器ではネウロイを倒すことはできない。

 せめてウォーロックやウィザードのようにコアのエネルギーを自分も扱えるようになれば……。

 そんなことを考えていると

「あれ?あそこ見てください」

「「ん?」」

 ウルスラの指が示す先を2人も見つめる。

 その先にはサン・トロン基地の格納庫が立っていた。

「人が、倒れる?」

 確かに言葉通り、格納庫の前に倒れる人影を確認する。

 零治達は駆け寄り、たおれた人物の姿が鮮明になったことで表情を凍り付いた。

「なっ!」

 その顔に自分は見覚えがあったからだ。

「この辺では見ない顔ですね」

「そうなんですか?じゃあこの人は一体……」

「とりあえず医務室に運びましょうか」

 ウルスラの提案にヨハンが頷き、倒れていた少女を背負う。

「琴村さん。医務室まで運びますね」

「あ……ああ。頼む」

 こちらの受け答えにウルスラは少し気になるのか視線を向けていた。

 医務室の扉を開けると、すでに白衣に身を包む直人の姿がある。

「ハーゲン。それに零治やハルトマンさんも、どうかしたのか?」

「この人、格納庫前で倒れていたんです。少し診てもらっていいですか?」

「ん?わかった」

 少女をベッドに寝かせると

「ハーゲンとウルスラさんは戻ってもらって構いません。俺たちでこの子のことは見ておくので」

「了解です」

「いえ、私も一緒に診ますよ。この辺では見ない顔なので」

「そうですか。じゃあ私は先に戻ってます」

 ヨハンが医務室を後にするのを確認する。

 すると零治は再び彼女の顔を見つめた。

「で、誰なんだ、この子……」

「零治さんは何か知っているんじゃないですか?」

 そう口にしたのは、ウルスラだった。

 直人も視線をこちらに向ける。

「おい、零治。知り合いなのか?」

 再び質問が投げかけられるが、返答しないまま眠っている少女の袖を捲り上げた。

「……っ!やはり、か」

「おい、これって!」

「……」

 2人は思わず驚きの表情を浮かべる。

 目の前に眠る少女の腕には零治やユースティアナとよく似た文字が刻まれていたからだ。

 その文字は〇……零を表す文字であり、そのコードネームはザ・フール(愚者)。

「この人、デザインソルジャーですか?」

「ああ、彼女の名前は『琴村零菜』」

「琴村?それって零治さんと同じ」

「俺の姉だ……」

 直人もウルスラも再び少女に視線を戻す。

 零治も頭を抱えて、椅子に腰を下ろした。

 なぜ、彼女がここに?

 そもそも零菜はアルカ・ネウロイになったはずだ。

 いや、正確には3年前のDS一斉暴走事件で行方不明になったため、「アルカ・ネウロイに変異した」と聞かされたというのが正しい。

 だが、零菜は今こうして人間の姿で自分の前にいる。

 気になる点があるとすれば、その容姿だ。

 まるで時が止まっているかのように、彼女の姿は昔のままだった。

「でも、よかったじゃないか。零治、お前の姉貴はアルカ・ネウロイになってなかったってことだろ」

「……」

「鈴木さん。これはそう簡単な話ではないかもしれませんよ」

「なんでですか!零治にとって姉貴が生きていたのは喜ぶべきことじゃないですか!」

 直人は思わず声を上げるが、「よせ」と口にしてそれを制止する。

 彼なりに家族を亡くした自分に配慮しているのだろう。

「そもそも、彼女は本当にDSなんですか?」

「どういう意味ですか?零治たちと同じように体には文字が刻まれているじゃないですか」

「実は俺も少し気になっていた」

「?」

 ウルスラに続き、零治の言葉を聞いた直人は思わず首を傾げる。

 こちらの意図が理解できていないことは明白だった。

「仮に、零菜が本当にDSであるのなら、コアの反応を感じることができるはずだ」

「あ……そうか」

「はい。零治さんたちはDSやアルカ・ネウロイを感じ取ることができるはずですが、零菜さんからはコアの反応を感じないってことですよね」

 その説明を肯定するように頷く。

 前にユースティアナのようにコアの反応を感じないということはあった。

 だが、それは彼女は人間の人格とアルカ・ネウロイの人格が同居していたためである。

 もしかしたら、彼女も同じ状態なのか?

 仮にそうだとしても、これまで発見情報のなかった彼女は一体どうやって生きてきたのだろうか。

 DSは体内にコアを持つとはいえ、体の大部分は人間と同じなのだ。

 当然、食事や睡眠を必要とするはず……。

 そんな憶測が頭の中でいくつも浮かび上がる中、

「う……」

 ベッドで眠る少女、琴村零菜が目を覚ました。

「お、目を覚ましたか」

「姉さん……」

「こ、こは?あ、なたは、誰?」

 零菜はただただ、弱々しくつぶやく。

 開かれた瞼から覗く瞳は自分と同じ琥珀色であった。

 ティアやユースティアナが紅い瞳であったことを考えれば、やはり彼女は人間の人格、零菜かもしれない。

「……俺は零治、琴村零治だ。自分の名前わかるか?」

「なま、え……私の、なまえ……?」

 考え込むように視線を逸らす姿に、零治やウルスラもアイコンタクトを取る。

 なんとなく状況を理解していた。

 おそらく記憶障害を起こしているかもしれない。

「君の名前は零菜、だ。わかるか?」

「レイ、ナ?レイナ……私の、名前?」

 零菜は復唱して首を傾げていた。

「そう。よし、直人。軽く検査して問題なければ、このまま経過観察にしよう」

「了解だ……」

 そう口にして直人は慣れた手つきで検査を開始していく。

「零治さん。彼女の服ボロボロみたいですけど、新しい服を用意した方が」

「あー、でも。服の予備なんてないしな」

 彼女の言う通り、零菜の服はところどころボロボロであった。

 思わず頭を掻いて、考え込む。

 あいにく女性ものの軍服の予備は所持していない。

「そうですか……」

「とりあえず、それは後で考えましょう」

 数十分後、検査を終えた4人は医務室を後にする。

 廊下を歩いていると、

「あの、ここはどこなんですか?」

 零菜が質問を投げかけてくる。

「ここは、ベルギカ王国の軍用基地、サン・トロン基地です」

「軍用、ですか……」

「零菜さんはここに来る前、何をしていたのか覚えていないんですか?」

「えっと、すみません。私、全然覚えてないんです。自分のことも、わからなくて」

「そうですか。気にしなくて大丈夫です。ゆっくり思い出していきましょう」

 ウルスラは優しい笑みを浮かべると視線を零治に戻す。

「これからどうするんですか?」

「ブリタニアに戻るつもりでしたけど……姉さんの経過観察しないといけないので、もう少しだけ滞在させてもらいます」

「そうなんですか……では、零治さんには私の手伝いもお願いしましょうか」

「なんでそうなるんですか……」

「ふふ」

 こちらの顔を確認したウルスラは嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 食堂に到着するとすでにベアトたちウィッチたちは席についていた。

「零治さん。遅いですよー……ってこちらの方は?」

「この子は、零菜さんです」

「レイナといいます……」

 零菜は自己紹介をして頭を下げる。

「んー」

 朝食を終えた頃、ヨハンは注意深く零菜を見つめていた。

「どしたの、ヨハン?」

「別になんでもないぞ」

「んー?」

 アビゲイルはただただ首を傾げていたのだった。

 

 

 零菜と出会い4日ほど過ぎていた。

 現在もサン・トロン基地に滞在していた零治たちも訓練の日々を送っている。

 今日までアルカ・ネウロイ「ラバーズ(恋人)」以外のネウロイの出現もなかった。

「零治さん。今日はどうするんですか?」

 そう声をかけたのはユースティアナである。

 隣にはクロエとソフィアの姿があった。

「そうだな。ウルスラさんに開発中の兵器調整とか頼まれているし、その辺をやることになるかな」

「私たちもついて行っていいですか?」

「構わないぞ」

 格納庫の扉をくぐると、目に入った光景は衝撃的なものだった。

「は?」

 ウルスラと零菜の服が、溶けていたのだ。

 2人ともこちらの姿を確認して顔を赤らめている。

「あ……」

「れ、零治さん!」

「な、なにやってるんですか!?」

 生まれたままの姿で立つ姿に顔を伏せ思わず声を上げる。

「いや、これは、その……」

「零治さん見ちゃダメです!」

「わかってるよ!」

 ユースティアナの声に零治も目を閉じたまま返答する。

 それから時間が過ぎ、ウルスラは白衣を、零菜は零治のジャケットを羽織って少し落ち着いていた。

「それで、これはどういう状況なんですか?」

「これはですね……」

 彼女は思い出すように返答を始めていく。

 いつものようにストライカーユニットの整備をしていたウルスラと付き添いの零菜。

 ウルスラの作業を横目に格納庫を内を見て回っていた零菜は足を止めた。

「ウルスラさん。これってなんですか?」

「あ、それは!」

「へ?」

 ウルスラが気づいた頃には遅く、彼女の触れた機器が揺れる。

 程なくして重油のような液体がホースから周囲へとまき散らされた。

 その液体が付着した2人の服が溶けてしまったのだ。

「なんで、ストライカーユニットの燃料で服が溶けるんですか……」

「そんなことってあるんですか?」

 思わず頭を抱える零治の隣でソフィアも質問する。

「実はこのジェットストライカー、コメートの燃料は少し特殊で魔法力と高密度エーテルの混合燃料なんです」

「混合燃料?」

「それが服を溶かすことと関係あるんですか?」

 話を聞いていたクロエやユースティアナも再び質問を投げかける。

「服というよりも布なんかを溶かす性質があるってことは聞いてましたけど……」

「うう、ごめんなさい。私のせいで……」

「大丈夫ですよ、零菜さん。気にしないでください」

 必死に頭を下げる零菜にウルスラは優しく笑いかける。

「まあ、次に気をつけてくれればいいよ零菜」

「う、うん。ありがとう琴村くん」

「……」

 彼女の呼び方に頭を掻いた。

 双子であったとはいえ姉である零菜は昔から自分を名前で呼ぶのだ。

 今のような呼び名は慣れないというか、どこかむずがゆさを感じている。

 そんな時、

「「……!」」

 何かを感じ取ったように顔を上げた。

「零治さん?」

「ユースティアナさん?もしかして」

「アルカ・ネウロイです!」

「3人とも出撃を!」

「はい!」

 ユースティアナたちは声を上げ、ストライカーユニットWRに視線を向けるのだった。




ちょこっと設定紹介
DS(デザインソルジャー)計画の被験者
・琴村零菜 軍曹(オリジナル)
 性別 : 女性
 年齢 : 19歳(生年月日は双子である零治と同じ)
 身長 : 145cm
 体重 : 41kg
 生年月日 : 2月18日
 魔法力 : -(一般人のためなし)
 使い魔 : -(一般人のためなし)
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