ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
アサルトウィッチーズの話数のナンバリング表示を修正しました。
第13話となります。
ユースティアナたち3人はストライカーユニットWRを装着すると空へと発進していく。
「零治さん、零菜さんをお願いします。私も出撃しますので」
新しい軍服へと着替えを終えて、再び格納庫内に戻ってきたウルスラ・ハルトマンの声に2人も振り返る。
「零菜さん、私の軍服の予備ですが、よかったらどうぞ」
「あ、ありがとうございます……」
軍服を受け取った零菜は感謝の述べていた。
彼女もストライカーユニット「ハインツェル He162」を装着して出撃準備を終えると、魔導エンジンを回転率を上げる。
エーテルのプロペラが回転し、周囲に風が吹き抜けていった。
「ウルスラさんも気を付けてくださいね」
「心配してくれるんですか?」
「当たり前です。俺にとって数少ない友人でなんですから。ユースティアナたちを頼みます」
「はい」
優しい笑みを浮かべると、ユースティアナたちを追うように発進していくのだった。
「クロエさん、ユースティアナさん。敵の位置はわかりますか?」
「……はい、敵の位置を捕捉できました」
ソフィアの質問に固有魔法で周囲を探知していたクロエが返答する。
「いました!アルカ・ネウロイです!」
ユースティアナも接近するコアの反応に声を上げた。
同時に飛行艇のような形状のネウロイを目視する。
4人とも各々の武器を構えるが、
「……っ!」
「なっ!?これは小型ネウロイ?」
アルカ・ネウロイの機尾から小型のネウロイが射出されていたことで、思わず銃口を小型へと向ける。
周囲を高速で舞う小型ネウロイと交戦していると、アルカ・ネウロイは4人の間を抜けていくように加速していく。
「しまった!本体が!」
「でも、小型多すぎます!」
「これでは追うことができません!」
「……零治さん!」
ユースティアナたちはただただ先行するアルカ・ネウロイを見つめていた。
一方、零治たちも戦況の把握のため海岸近くを訪れる。
「琴村さん。着替え終わりました。サイズもぴったりでした」
「そうか」
ウルスラから受け取ったカールスラントの軍服に身を包んだ零菜も合流していた。
2人の背丈は近いと思っていたが、どうやら服のサイズも同じようだ。
すると、
「零治さん!アルカ・ネウロイが本土に向かっています!」
「なに!?」
通信機からユースティアナの声が響く。
「琴村さん、あれ!」
「っ!アルカ・ネウロイか。あれは体に〇の文字?」
零菜の見つめる先には飛行艇の形状をしたアルカ・ネウロイの姿があった。
その装甲肌に刻まれた〇の文字に視線を再び彼女に戻す。
「なぜだ?」
先日確認したとき、彼女の腕にも同じものがあった。
ザ・フール(愚者)というDSが2体存在したというのか?
だが、そんな話は聞いたこともない。
「琴村さん?」
再び視線を戻すとこちらを捕捉したのか、ザ・フールはまばゆく輝く。
直感的にそれが攻撃準備であることに気づいた。
「零菜!」
「……っ!」
彼女を抱きかかえ地面へと伏せる。
同時に紅のビームが走り抜けた。
ビームを紙一重回避するものの、コンクリート製の地面は焼き焦げたように黒く染まっていた。
「大丈夫か?」
「う、うん」
こちらの言葉に零菜はただただ頷く。
すると再びザ・フールが紅く輝き始める。
「次の攻撃が……零菜走るぞ」
「はい……」
彼女を立ち上がらせ、その場から逃走するため駆け出す。
しかし、そんな2人へと容赦なくビームが放たれた。
数回に分けて放たれた攻撃が地面を抉っていく中、
「うっ!」
腹部へと走る鋭い痛みに思わず彼女は表情を歪ませる。
同時に軍服に赤黒いシミが広がっていることに気づいた。
飛来した地面の破片か何かが刺さっていたのだ。
堪らず膝をついてしまう。
「零菜!」
「琴村くん……君だけでも逃げて」
「駄目だ!置いていけない!」
彼女の負傷箇所に手を当てる。
直人ほど医療には詳しくないが、こういった傷は物が出血を塞き、そのままなら大量出血はせず、適切に処置すれば十分に助かる傷だと聞いたことがある。
だが、今すぐに彼女を動かすのは危険だと判断できた。
「……」
腰の鞘から扶桑刀を抜刀して構えた。
空を舞うザ・フールから再び紅の閃光が放たれる。
「……っ!」
その瞬間、体に走る衝撃に思わず目を疑った。
自分を押しのけた零菜の手からは紅の閃光が放たれたのだ。
お互いのビームが空中でぶつかり合い、膨大な熱と衝撃が走り抜けていく。
「零菜。お前のその手」
彼女の手はかつてのスター(星)に変貌していたユースティアナのように紅い亀裂模様が刻まれていた。
そして、頬にも亀裂模様が伸びていく。
「零治。あなたはいつから私を呼び捨てするようになったのかしら?」
「なっ!」
零菜からの発言に驚きを隠せなかった。
今、自分のことを「零治」と呼んだこと、そして聞き覚えのある懐かしい口調は、昔の彼女そのものだったからだ。
「姉さん、なのか?」
「うん。お姉ちゃんだよ!」
振り向いた彼女は優しい声でつぶやくと空を見つめる。
彼女の目は琥珀色から紅玉色に変化するのと同時に手足がネウロイのような黒い装甲肌を纏う。
グルーシャのような黒い腕に、ストライカーユニットのような機械脚を思わせるその姿はさながら人型ネウロイのようにも見える。
「姉さん何をする気だ?」
「弟を守るのが姉の役目だからね」
「待て、姉さん!」
伸ばした手は飛び立つ姉に届かず、ただただ虚空を掴む。
空ではザ・フールと零菜が戦闘を開始する。
「零治!」
「琴村さん!」
名前を呼ばれ振り返ると、直人やベアトたちの姿があった。
「これはいったいどういう状況ですか?」
「今、姉さんが戦っているんだ」
「零菜さんが?」
ヨハンやアビゲイルも空で戦闘する様子に驚いているようだ。
それもそうだろう。
空で戦う零菜の姿はネウロイにも見えるからだ。
紅いビームが交差する戦場にユースティアナたちもようやく到着していた。
「戦っているのは、零菜さんですか?」
「でも、あの姿って、まるでネウロイじゃないですか」
「どうして……」
戦闘しているのは零菜とアルカ・ネウロイただただ見つめる。
「……アルカ・ネウロイの体の文字、〇ってことはコードネームはザ・フール(愚者)。ですが、零菜さんの腕にも同じ文字がありますね」
「どういうことなんでしょうか?」
「わかりませんが、今は零菜さんを援護します!」
ユースティアナ先行するように加速すると3人もまた続くように速度を上げてザ・フールへと接近していく。
「やはり私とあなたは同じ一人から生まれた存在。その力もまた優劣はないようね」
零菜はつぶやくと再び攻撃態勢を取るが、明後日の方向から放たれた数発のミサイル弾がザ・フールに命中、次々に誘爆していく。
「――っ!」
体を大きく損傷したことで悲鳴のような声が響く。
「なに?」
「零菜さん。大丈夫ですか?」
「ウルスラさん、それにローゼンクロイツさんたちも来てくれたんだね!ありがとう!」
ウスルラに抱き着くと彼女は感謝の言葉を口にしていた。
「れ、零菜さんですよね?」
「うん。そうだよ?」
ここ数日の様子とは異なるその行動や性格に少々戸惑いを見せる。
「ユースティアナ、ウルスラさん。今の姉さんは記憶を取り戻しました、それが本来の零菜なんです」
「そうだったんですか」
「みなさん。ネウロイが」
ソフィアの言葉でウィッチたちは再びアルカ・ネウロイ「ザ・フール」を見据える。
先ほど受けた損傷は修復し終えて、接近を開始していた。
「行くよ、ウルスラさん」
「はい」
「クロエさんとソフィアさんは支援お願いします」
零菜とウルスラ、ユースティアナも散開してそれぞれが攻撃を行う。
弾丸とミサイル、零菜のビームが次々にザ・フールの体を損傷させる。
反撃するようにビーム放つもののウィッチたちはシールドで防御し、さらに波状攻撃していく。
そんな攻撃に損傷した巨体から赤いコアが露出した。
「見つけた!」
「クロエさん!」
「はい!」
返事をしたクロエはボーイズ対戦車ライフルを構える。
コアを捕捉するとトリガーを引いた。
13.9mmの弾丸が長銃身の銃口より放たれ、ザ・フールのコアを撃ち抜いた。
コアが破壊され、光の粒子だけが周囲を舞う。
「やった!」
「ネウロイを撃破しました!」
ユースティアナたちも撃墜を確認して頬が緩む。
「やりましたね」
「うん。そうだね――っ!」
零菜は体に走る違和感に表情を歪める。
同時に体から力が抜け、落下していく。
「零菜さん!」
「姉さん!」
その姿を確認して零治も駆け出す。
いち早く落下地点に到着し、その体を受け止める。
「姉さん!」
「零菜さん!」
飛行していた4人も地上に降り立ち零治と零菜を見つめる。
「……ご、ごめんね。力が抜けちゃって」
彼女は弱々しく言葉を紡ぐ。
先ほどの傷は治癒能力が発揮されたのか塞がっているが、手足の黒い装甲肌は消え、普通の手足に戻っていた。
「どうやら、与えられた時間もここまでみたい」
「な、なに言ってんだ!姉さんは」
「わかるんだ。あのネウロイと私は元々一人のDSだから」
「そんな……」
続けてつぶやく零菜の言葉に、ユースティアナたちも思わず声にならない声を上げる。
「でも、零治やウルスラさんたちと最後に過ごせてよかった」
「やめろ、そんなことを言うな。これからも生きていろよ!」
無意識に口調が少々乱暴になってしまう。
そして、彼女の肩を握る手にも力が入っていた。
「そんな顔しないで。零治、自分の光を見失ってはダメだよ、私たちみたいにならない、ためにも……」
途切れ途切れになりながら、そう言い残し彼女の体は消滅するネウロイのように光の中に溶けていった。
零治の右手に紅い欠片だけを残して。
「零菜さん……!」
「くっそ……!」
「零治」
一人地面に伏せる零治を直人たちもかける言葉が見つからなかった。
琴村零菜の存在は、彼にとって唯一の血縁者であり家族とも呼べる存在であったからだ。
その存在を零治は再び失うことになってしまった。
「……」
顔を伏せることしかできなかった。
わかっていたことだ。
彼女がアルカ・ネウロイになっていたのなら遅かれ早かれこうなる運命であったと。
それでも……
「あ……」
気が付けば涙があふれていた。
流れ出た涙が地面を濡らしていく。
「なんで、俺……」
「琴村さん」
「琴村少年。今は涙を流したまえ。君にはその権利がある」
直葉の言葉を皮切りにさらに涙が流れていく。
その場で伏せてただただ泣きじゃくっていたのだった。
翌日、アサルトウィッチーズはブリタニア基地に戻る準備を進めていた。
格納庫の外に座り込んでいた零治は視線を落とす。
「……」
手の中には零菜が消滅するときに残した紅い欠片があった。
これが一体何なのかは調べてみなければわからない。
それでも自分にとっては彼女が残した唯一の繋がりなのだ。
「零治さん」
「大丈夫、ですか?」
顔を上げるとウルスラとユースティアナの姿があった。
心配そうな表情でこちらの顔を覗き込むように見つめている。
「うん。ちゃんと心の整理はしたから、もう大丈夫です」
「そうですか。強いですね、零治さんは」
「そんなことないですよ。これでも結構堪えてます」
思わず視線を逸らしてしまう。
「零治さんのことは私が支えます!何かあったらなんでも言ってください!」
「ユースティアナ……ありがとうな」
「はい!」
作り笑いとはいえ笑みを浮かべるとユースティアナは頬を赤らめていた。
「ウルスラさんも心配してくれてありがとうございます」
「いえいえ」
2人の顔を見て少しだけ気がまぎれていた。
ふと空を見上げる。
「……青い空か」
雲一つない青空がどこまでも広がっている。
太陽の光に思わず目を細めてしまう。
「今日は天気がいいですからね」
零菜が昔、ウィッチのように空を飛んでみたいと言っていたことを思い出す。
彼女は最後にそんな夢を叶えられたのかもしれないな。
手の中にある紅いかけらを握る手に力を込める。
「姉さんのことは絶対忘れない。だから、見ていてくれよ……俺たちもそろそろ戻ろうか」
「はい」
「了解です」
2人は敬礼すると、飛行準備中のランカスターの元へと歩き出すのだった。
人物紹介(詳細)
・オラクル 琴村零菜 軍曹(オリジナル)
オラクルコードネーム : ザ・フール・スカイブルー(愚者の青空)
性別 : 女性
年齢 : 19歳(身体的には14~15歳時点で成長が止まっている)
身長 : 145cm
体重 : 41kg
生年月日 : 2月18日
保有能力 : 1.自己治癒能力(一般的なネウロイの持つ治癒能力)
2.黒化(グルーシャが使用していたものと同じ能力。手足をネウロイのような装甲肌で覆うことで強度や耐久性を向上させている)
3.形状変化(アルカ・ネウロイの人型から飛行艇などに変化する形状変化の縮小版能力。零菜はかつての人型ネウロイに近い見た目になっていた)
容姿 : 明るい茶色の髪の毛に琥珀色の瞳を持つ、登場時には扶桑の紺色のセーラー服を身に着けていた。セーラー服が溶けた後はウルスラの軍服の予備を身に着けている。
腕には〇の文字が刻まれていた。
性格 : 内気な性格(記憶喪失時)→強気な性格(本来の性格)
得意分野 : ナイフ格闘、拳銃射撃
概要 : 零治やユースティアナと同じデザインソルジャー計画の被験者。
3年前のDS一斉暴走事故でアルカ・ネウロイ化されたと思われていたため、ずっと行方不明になっていたがサン・トロン基地にてアサルトウィッチーズや零治と再開する。
当初は記憶喪失になっていたもののザ・フール(愚者)との戦闘にて力と記憶を取り戻しており、ユースティアナたちとは経緯が異なるがオラクルに至っている。
なお、彼女の特殊性はネウロイ体と人間体がどういうわけが分裂していた点であった。
オラクルとして戦闘後はザ・フールのコア消滅によって、彼女自身の寿命も尽きてしまったため消滅している。そのため不明な点は数多く残ったままである。
DSとしての彼女は魔法力こそ持たなかったものの、最強のDSと呼ばれるほど戦闘能力、センスを有しており、同時に並外れた直感力と地頭の良さも持っていた。
近接戦闘から射撃戦闘まですべての成績上位であり、零治がそんな姉に少なからずコンプレックスを感じていた。
今回で第三章 アサルトウィッチーズ陰謀編は完結となります。
なお第四章の作成を予定していますので、物語は継続いたします。