ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ   作:UNIMITES

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どうもUNIMITESです。
今回から最終章 アサルトウィッチーズ終局編です。
第39話となります。


最終章 アサルトウィッチーズ終局編
第39話 紅の楔


 サン・トロン基地から特務統合強襲航空団(アサルトウィッチーズ)がブリタニア基地に帰投して数日の時間が過ぎた。

 近海の哨戒任務に出ていたユースティアナ・ローゼンクロイツとクロエ・エリザベートも基地へと帰投する。

「今日もネウロイはなしですね」

「はい」

「あ、おかえり。2人とも」

 格納庫に入ると整備兵であるユリウス・グラハムの姿があった。

 その手には工具が握られており、今も整備を行っていたようだ。

「グラハムさんもお疲れ様です」

「あの、零治さんは?」

 周囲を見渡しても同じく整備兵であり本部隊の隊長でもある琴村零治の姿がなく、思わず質問する。

「ん?あー琴村たちなら研究室だろうな。最近ずっと籠っているからな」

「そうですか……」

 ユースティアナは少し残念そうに視線を落とす。

 そんな様子を見ていたユリウスも少し考え込む。

「そういえば、あいつら飯も食わずにやってるってハーゲンさんたちが言ってたな。ローゼンクロイツさん悪いんだが、なんか食いもんでも持っていってやってくれないかね?」

「え?……は、はい!了解です!」

「ま、待って、ユースティアナさん。私も行きます!」

 そう言い残し2人は格納庫を後にする。

「琴村のやつは、彼女の気持ちに気づいているのかねー?」

 ユリウスも再び修理へと戻るのだった。

 

 

 一方、ブリタニア基地の研究室には零治たちの姿があった。

「どうだ?」

「うーん。分かったことは2つだな」

 直人は手に持っていたシリンダから紅い欠片を取り出し、こちらに手渡す。

 紅い欠片は相変わらず淡く光を放っている。

「まず、それはネウロイのコアってことだ」

「コア?これが?」

 その言葉に思わず聞き返してしまう。

 ネウロイのコアは紅く水晶のような球体をしているものしか見たことがなかったからだ。

 今手元にあるコアは球体ではない。

 強いて言えば楔のような形状をしている。

「確かに、私の魔眼にも反応するので、コアではあるみたいです」

 後ろに立っていたベアトがそう口にしていた。

 彼女の固有魔法のは「魔眼」である。

 その魔眼に反応しているということは、ネウロイや自分たちDSの持つコアと同じ物なのだろう。

「だが、こんな形状をしたコアなんて初めて見たぞ」

「そんなの俺だって初めてに決まっているだろ……軍人歴は零治やベアトより短いんだから。それともう一つはコアではあるが、それには人間の血液のような成分が含まれているということだ」

「どういうことだ?」

 再び聞き慣れない情報に、首を傾げてしまう。

「簡単に言えば、純粋なコアではなく血液の性質を併せ持っているということです。そういう点ではネウロイの性質を持つ零治くんの血液にも近いかもしれませんね」

 直人の隣にいた元ウォーロック、DS研究員の男が説明する。

「にしても、まさか零治君が新しいコアを手に入れてくるとはね、一体どうやって新たなコアを?コアの入手方法はブラックボックスだと聞いていたのに、やはり琴村博士の息子だねー」

「……」

「っ!てめぇ……」

 思わず直人が彼の胸倉を掴む。

「ふざけないでください!零治さんがどんな気持ちかも知らないで!」

 直人だけでなく、ベアトもまた珍しく怒りを顕にしていた。

「やめろ、2人共。別に、俺は気にしてないよ」

「……お前がそういうならな。だが、覚えておけ、俺たちの前でそんな軽はずみなことを言えば、次はこんなものじゃ済まないぞ」

「な、なんだよ……」

 男はそう言い残していそいそと研究室を出ていくのであった。

 彼にはこのコアの入手方法までは伝えてはいない。

 コアの入手方法は零央のみが知るブラックボックスの情報だ。

 入手方法が分からない現状では研究者として、気になるのは当然なのかもしれない。

「はぁ……」

 ため息をついて手の中にあるコアに視線を落とす。

 このコアは自分の姉である琴村零菜が死に際に残したコアである。

 それを知る2人には当然、癇に障ったのだろう。

「直人、ベアト。気持ちは分かるけど、あんなことしちゃ駄目よ」

「ロアノークさん。でも!」

「彼だって貴重な研究者なんだから」

 一緒にブリタニア基地を訪れていたナナリーもため息をつきながらも念押しするように注意する。

 すると扉がノックされた。

「誰だ?」

 零治が研究室内の扉を開く。

 廊下にはユースティアナとクロエ、ソフィアの姿があった。

「零治さん!」

「ユースティアナ。それにエリザベート、ラーヴァ。どうかしたのか?」

「グラハムさんが研究室に籠ってるって聞いたので」

「食事も取っていないと聞いたのでサンドイッチ作ってきました」

 そう口にしてバスケットを見せる。

「そういえばそうだったな」

「ですね。私もお腹すいちゃいました」

 直人とベアトも思い出しように自分の空腹感を認識したのか、お互いに顔を見合わせていた。

「零治。食事が済んだら少し付き合ってもらえるかしら。ローゼンクロイツさんも」

「ん?わかった」

「はい」

 2人とも頷くとナナリーも研究室を出ていくのであった。

「話ってなんでしょうか?」

「さあな。でも、俺たちってことは体のことかもな」

「そういえば、私もオラクルになって少し経ちましたし」

 ユースティアナも腕のⅩⅦの文字に視線を落とし、納得したのか頷いていた。

「まあ行ってみればわかるだろ」

「そうですね。零治さんもどうぞ」

「サンキュー、ベアト」

 受け取ったサンドイッチを頬張る。

 ハムとレタスを挟んだシンプルなものだ。

 シンプルイズベストという言葉があるように、凝ったものよりも自分はこういったもののほうが食べやすく好きだった。

「直人。鈴木少佐のメディカルチェックのほうを頼むぞ。昨日は検査受けてないって言ってたろ」

「ああ、そうだった。ったく、ちゃんと受けるように言ってるのによ」

「ははは……」

 呆れたような表情を浮かべる直人を見て、ベアトは乾いた笑いを漏らしていた。

 直葉は直人と同様に医者の親を持つが、検査などが苦手らしいと前に聞いたことがある。

 30分程して食事を終えた零治もユースティアナと共に隊長室へと赴く。

 扉を開けるとソファに座るナナリーの姿があった。

「来たわね」

 彼女も2人の姿を確認すると立ち上がる。

「それで、話ってのはなんだ?」

「まずはあなたたちの体についてよ」

 予想通りの言葉に零治はデスクの引き出しから書類を取り出す。

 それはつい最近の自分とユースティアナのメディカルチェック結果である。

「メディカルチェックでの問題ないことは直人と確認している」

「そう……ローゼンクロイツさんの同調率、随分上がっているわね」

 書類に目を通したナナリーは数値の上り幅に訝し気な表情を見せていた。

「ああ、それはアルカ・ネウロイになりかけてしまったからだろうな」

「前にガリアでグルーシャたちと戦った時の事ね」

 2人とも肯定するように頷く。

「私とティア、一度は本当に危なかったらしいので」

 ユースティアナはかつてグルーシャのもとに居た時のことを思い出す。

 一度は彼の元で力を暴走させ、アルカ・ネウロイ「スター(星)」に変貌してしまった。

「でも、零治さんやティア、みんなのおかげでなんとか戻ることができました」

「それが、あなたの言っていたDSのその先、オラクル」

「ああ。今のユースティアナ、そして姉さんもまたオラクルに到達していたと思う」

 先日の戦闘で零菜はDSでありながらビームを放ったり、空を飛行していたが人間としての人格や理性を保っていた。

 それらの情報から、彼女もまたオラクルの領域に到達していたのだろう。

 オラクルとしてのコードネームを名づけるのなら「ザ・フール・スカイブルー(愚者の青空)」といったところか。

「零菜か。あの子もアルカ・ネウロイになっていたと思ったけど、やっぱり救えなかったわね」

「零菜さんを助けることはできなかったですけど、アルカ・ネウロイという呪いから解放することはできたと思います!」

「ユースティアナ……」

「それは、どういう意味かしら?」

 そんな言葉に、ナナリーはただただ質問を投げかける。

「アルカ・ネウロイに変貌した人たちは、コアの力が暴走しているとはいえ、私と同じように心は残っていると思うんです。零菜さんもそう見えました」

 彼女の言葉に零治も自然と頷いていた。

 零菜とユースティアナはケースが違うとはいえ、少し似ている部分はある。

 ユースティアナにのように人間とネウロイの人格が1つの体に同居しているパターン、零菜のように人間体とネウロイ体がそれぞれ自立した個体のパターン。

 どちらも人間とネウロイの人格が形成されていた。

「だから、心だけでも救うことができていると思ったんです」

「随分と主観的なことを言うのね。仮にそうだとしても、そんな証明は誰にもできないわ」

 呆れたようにナナリーは鋭い視線を向ける。

「うう……ごめんなさい」

「でも、そうであったならどんなにいいか」

「たとえ証明することができないとしても、俺はそうあることを信じたい」

 思わずつぶやいていた。

 これまで多くのアルカ・ネウロイを倒してきた。

 彼らを救うことができなかったが、もしその魂がアルカ・ネウロイという呪いから解放されたのなら、戦う選択をした自分も少しは救われるというものだ。

「だから、最後まで戦わなきゃな」

「はい!」

「そうね。こちらも引き続きアルカ・ネウロイの情報収集は続けておくわ」

「それとナナリー。これからはウォーロックの研究者たちにも探りを入れてほしいんだ」

「研究者たちに?どういうこと?」

 彼女は質問に対して首を傾げていた。

「ガリアでグルーシャと戦闘になった時からずっと考えていたんだ。なぜ、あいつらは俺たちがガリアにいたことを知っていたのか、どうしてウォーロックを運用できていたのか……」

「まさか軍や研究者に内通者いるっていうの?」

「かもしれないってだけだ。それにやつらがウォーロックを運用しているなら自然と関わっている人間も限られてくるだろう。俺が調べればいいんだろうが、今はアルカ・ネウロイのほうで手一杯だからな」

「わかった。私の方でそっちも探りは入れておくわ」

 ナナリーも深く頷き、お互いの今後の活動を決定する。

「うん。ただ探りを入れるだけで危ないと思ったらそれ以上は動かないでほしい」

「探れって言ったり、動くなって言ったり、どっちなのよ」

「グルーシャの存在を感じ取れるのは俺とユースティアナだけだからな。こちらの探りをあちらに悟られたら、ナナリーたちも危険になる。俺はナナリーには死んでほしくない」

 柄にもなく、そんな本音を口にしていた。

 おそらく零菜の件で少なからず影響を受けていたのかもしれない。

 もう自分の周りでは誰も死んでほしくはなかったのだ。

「ありがとう零治。でも、私は大丈夫よ。あなたやローゼンクロイツさんたちに比べれば、最前線に出ていないからね」

 ナナリーはそう口にすると零治の頭を優しく撫でる。

「子供扱いはするなよ……それでも警戒していてほしいんだ」

「うん」

「あの、零治さんとロアノークさんってどういったご関係なんですか?血縁者では……ないですよね」

 2人の様子を見ていたユースティアナは首を傾げていた。

 ナナリーの表情はいつもの厳しいものと異なりまるで我が子を見る母親のようだったからだ。

「ええ。血のつながりどころか、ほぼ他人だったわね」

「他人は言い過ぎだろ……まあ簡単に言えば先生だな」

「先生?」

「私、昔はDSの指揮を任されてたのよ。それで零治たちの教育も担ってたから。琴村博士が亡くなってからは零治の身元引受人なったけどね」

 ナナリーの説明通りだ。

 零央が亡くなり、唯一生き残ったのが自分だった。

 だが、DSである自分の身元引受人になるような人間は周囲にはおらず、そんな中で手を伸ばしたのがナナリーだったのだ。

「そうだったんですか……」

「それじゃあ、私も行くわね」

「ああ、情報収集の件頼むよ」

「あなたたちも気を付けてね。ローゼンクロイツさん、零治を頼むわね」

「はい!」

 ユースティアナは声を上げ、敬礼していた。

 ナナリーも隊長室をあとにするのだった。




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