ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ   作:UNIMITES

44 / 66
どうもUNIMITESです。
第40話となります。


第40話 消えゆく魔法力

 ある日の昼下がり、ブリタニア基地内に甲高いサイレンが響き渡っていた。

 その音を聞いて、部屋から飛び出したヨハンとアビゲイル基地内の廊下を駆ける。

「サイレンが響いているってことは通常のネウロイってことだな」

「だろうね!今回は僕が撃墜して、ヨハンに撃墜数追いつてやる!」

「私が先に倒しても文句言うなよ!アビー」

 お互いに撃墜数を競い合うような会話をしていると、

「おやおや、ハーゲンさんにウィリアスさん。随分燃えているね」

「「鈴木少佐!」」

 同じようにサイレンを聞いて軍の格納庫に向かう直葉と合流する。

「若いウィッチが元気なのはいいことだよ」

「鈴木少佐。今日は出撃担当じゃなかったんじゃ」

「必要なら出撃するさ。最近は弟たちがうるさくてねぇ」

 やれやれとため息交じりにそんなことを口にしていた。

 程なくして格納庫に到着すると、零治とユリウス、そして直人がすでに集まっている。

「よし、出撃しますね」

「行ってきまーす!」

 2人は注射器でGrowを投与するとストライカーユニットWRを装着して出撃の準備を進めていく。

「おい、姉貴。今日は出撃の担当じゃないだろ」

「いいじゃないか、別に。検査でも健康体であることは確認していたじゃないか」

「そういう問題じゃない!」

「おい、鈴木。直葉少佐も落ち着いてくださいって」

 言い争っている鈴木姉弟をユリウスが必死になだめていた。

「あのー、琴村さん。あの2人何かあったんですか?」

「最近、よくケンカしてるよねー」

「いろいろあるんだよ。ハーゲン、ウィリアス先に出撃頼む」

「「はい」」

 それ以上、何も聞くことはせず格納庫から出ていく。

「ほら、どきたまえ。私も出撃する」

「……わかった。でも、やばいと思ったら撤退しろよな」

「はいはい。心配しなくても自分のキャパシティはわかっているつもりさ」

 直葉はいつものように軽口を叩いてストライカーユニット「紫電」を装着して出撃した。

「心配だよな」

 ユリウスも思わず深くため息をついた。

「別に俺は姉貴のことなんて……あ、悪い零治」

「?ああ、気にするな」

 どうやら零菜の件を思い出したようだ。

 それで直人は謝罪したのだろう。

「でも、もう少し直葉少佐とはうまくやらないとな」

「あーもうどうすりゃいいんだよ!」

「おめーも大変だな……」

 頭を抱える直人の様子にユリウスも苦笑いする。

 一方、出撃に出たヨハンたちもネウロイとの交戦を開始していた。

「見た感じ普通のネウロイだな」

「うん。これなら楽勝かな」

 そんなことを口にしていると

「油断しては駄目だよ。基地に戻るまでが戦闘さ」

「はい」

「いっくぞー!」

 アビゲイルは機動力を活かして一気に距離を詰め、攻撃を開始する。

 放たれた弾丸が次々にネウロイの装甲肌を抉っていく。

「はあぁぁ!」

 ヨハンも固有魔法「構築」で生成した片手直剣でネウロイを切りつける。

 堪らずネウロイは悲鳴なような声を上げ。周囲にビームを放つ。

 2人がシールドを展開して防御する中、

「鈴木少佐?」

「……は!」

 直葉は機動力で攻撃を回避して、ネウロイに肉薄する。

 銃のトリガーを引くと轟音と共に一気に銃弾が放たれた。 

 次々に装甲を削り、ついに紅いコアが露出する。

「コア発見!」

 発見に成功し、思わず頬が緩む。

 そんな一瞬油断してしまった状況でネウロイの攻撃がより激しくなる。

「ぐっ!」

 シールドで防御するものの、連続した攻撃に表情を歪ませた。

 徐々に後退していくが、シールドを貫通した攻撃が頬を掠める。

「鈴木少佐。大丈夫ですか?」

 攻撃の中を搔い潜ってきたアビゲイルが直葉に語り掛けながら、シールドを展開する。

 ほぼ同時にネウロイの体で何かが誘爆した。

 周囲を見つめるとヨハンが弓を構えているのが確認できた。

 おそらく彼女が固有魔法作り出した矢を放ったのだろう。

「これで終わりだ!」

 再び矢を生成したヨハンが弓につがえ、放つ。

 矢が露出していたコアの付近で誘爆していく。

 悲鳴のような声と共にネウロイは光の粒子となって消滅する。

「よし。鈴木少佐、大丈夫ですか?」

「ああ。すまないね」

 撃墜を確認した直葉が謝罪の言葉を口にする。

「大丈夫ですって、じゃあ帰ろっか」

「だな」

 基地への帰投する道中、直葉の表情は終始険しいものになっているのだった。

 

 

 ブリタニア基地にヨハンたちが帰投するとベアトが声をかける。

「お疲れ様です。けがはないですか?」

「はい。大丈夫です」

「うん!全然OKだよ!」

 ヨハンもアビゲイルも笑みを浮かべていた。

「鈴木少佐も大丈夫ですか?」

 零治も後方の直葉の名を呼ぶが、返事がない。

「鈴木少佐?どうかしました?」

「ん?ああ、大丈夫さ……ストライカーの整備よろしく頼むよ」

 遅れてこちらの問いかけに気づいた直葉はそう言い残して格納庫を後する。

 そんな様子をベアトとユースティアナもただただ見つめていた。

「グラハム。紫電のほうは整備任せるぞ。WRは俺のほうでやっとくから」

「OKだぜ。銃は順次対応ってことで」

 零治とユリウスも3人のストライカーユニットの整備への対応へと移っていくのだった。

 格納庫から少し離れた海岸に直葉は座り込んでいた。

「直葉さん」

「珍しいですね。こんなところにいるなんて」

「ベアト、それにローゼンクロイツさんか」

 ユースティアナとベアトも隣に腰を下ろす。

「どうかされたんですか?今日はいつもと雰囲気が違ったので」

「……フッ。やはりベアトには隠し事はできないねぇ」

 彼女は笑って見せると、言葉を続ける。

「どうやら私のへなちょこな魔法力は思った以上に減衰が早いみたいでね」

「っ!それって!」

「もしかして、もう魔法力が?」

 ユースティアナとは異なり、つい先日から彼女の魔法力の減衰を感じ取っていたベアトはそれほど驚いてはいなかった。

 戦闘でシールドが攻撃を防御しきれていないことが何度かあったからだ。

「他のウィッチは減衰が始まってから数か月、はやくても数週間から1か月程度は魔法力を維持していたからね。私もそれくらいは見積もっていたんだが、まさか数日間でここまで減衰してしまうのは予想外だったよ……」

 直葉が自身の手に視線を落とす。

 力を込めるが、言葉通り弱々しい魔法力を放出するに留まっていた。

「そんな……じゃあ、もう鈴木少佐は戦えないってことなんですか?」

「ここまで減衰してしまったからねぇ。あと数回。いや、もしかしたら次の出撃が最後になるかもしれないね」

「出撃はもう避けるべきです。このまま戦ったら、危険ですよ直葉さん!」

 ベアトが声を上げていた。

 ユースティアナは少々驚いていたが、直葉は眉一つ動かしてはいない。

「わかっているさ。でも、残るアルカ・ネウロイも少ない。だから、私は……」

「直葉さん!」

 気が付けば肩を掴み、声を荒げる。

「ベアト……」

「直人さんの気持ちも考えてください!直葉さんを失ったら、直人さんやグラハムさんだって……」

「ベアトさん……」

「ありがとうベアト、怒ってくれて。それでも、私は戦う道を選択するよ。かつての君が戦う選択をしたようにね」

 直葉はそう口にして立ち上がる。

「それなら、私が直葉さんを死なせません。絶対にです!」

「……好きにするといいさ。君もね」

 そう言い残し歩き出す。

 その背中を2人が何も言わずに見つめる。

「あの、ベアトさん。鈴木少佐は大丈夫でしょうか?」

「多分、危ないかもしれない。だから、もしものときは私が守るしか……」

「私も手伝います!零菜さんの時、私は何もできなかったから。今度は絶対守りたいんです!」

「うん。ありがとうユースティアナさん」

 ユースティアナの様子にベアトは笑みを浮かべて感謝の言葉を述べる。

「あと、さっきの鈴木少佐の選択をしたってどういう意味なんですか?」

「あー、あれは昔の私のことかもしれないです」

「ベアトさんの?」

 ユースティアナは首を傾げていた。

「うん。昔、私が怪我をして視力を失ったって話をしたよね」

「……」

 彼女は視力を失っており、普段は固有魔法「鷹ノ眼」を使用することで視力を回復しているのだ。

 何も言わず頷くと、ベアトは説明を続ける。

「その時、真っ先にウィッチを引退するように勧めたのが直葉さんだったんだ」

「そうなんですか?」

「うん。直人さんも当然、同じように戦うことは避けるように言ったけど、私は魔法力の減衰はなかったし、ウィンディのおかげで視力も回復で来たから」

「そうだったんですね」

 納得したように首を縦に振る。

 直葉が真っ先にウィッチを引退することを勧めたは少し意外でもあったのだが。

「でも戦い続けてよかったよ。ユースティアナさんたちや零治さんにも会えたからね」

「はい。私もベアトさんと仲良くなれてよかったです」

 2人はそんな会話を続けて笑い合うのだった。

 

 

 翌日、早朝の剣術訓練を終えた零治は隊長室へと戻る。

 デスクの椅子に座り書類へと目を通していく。

「これで全部だな」

 1時間ほどでデスクワークを処理し終える。

 引き出しからタロットカードの入ったケースを引っ張り出して、デスクに広げた。

 これまで倒したアルカ・ネウロイは17体。

 自分とユースティアナのマジシャン(魔術師)とスター(星)を除けば、残るアルカ・ネウロイは3体。

 コードネーム、Ⅱ.ハイプリエステス(女教皇)、Ⅲ.エンプレス(女帝)、そしてⅩⅩⅠ.ザ・ワールド(世界)である。

「残るアルカ・ネウロイは3体、か」

 魔術師と星のカードを手に取る。

「グルーシャのタロットはどれなんだろうな」

 ふと、そんな疑問を抱いた。

 先日の戦闘では彼の番号を確認することはできなかった。

 自分のⅠ、ユースティアナのⅩⅦのように、DSであるのなら必ず体には対応する文字が刻まれているはずなのだ。

 といっても、残りのアルカ・ネウロイを倒せば、彼のコードネームは分かるだろう。

「あとはこれだな」

 軍服のポケットから楔型のコアを取り出す。

 これはつい先日の戦闘で、零菜が消滅するときに残したものだ。

 解析の結果、これがコアであることは確定している。

 だが、WRに使用されているコアに比べて、その力はあまりにも弱いため、これを使って魔導エンジンtype-Cを新たに作り出すことはできなかった。

 零菜はどうして、コアを残したんだろうか。

 そもそも、ザ・フールが消滅したのに、このコアはなぜ消滅しなかったんだ?

 そんな疑問が頭の中をめぐっていたが、考えても誰も答えを教えてはくれない。

 深くため息をついて天井を見つめた。

「……っ!来たか」

 アルカ・ネウロイの接近を感知したことで、反射的に体を起こす。

 インカムを装着し、烈風丸を手に扉を開け放つ。

「零治?」

「どうかしたのかね?」

 声の方を振り返ると直人とユリウスの姿があった。

「アルカ・ネウロイの反応を感知した」

「なに?」

「行くぞ」

 零治に続くように2人も駆け出す。

 格納庫には7人のウィッチの姿がすでに揃っていた。

「珍しいな。全員がすでに揃っているなんて」

「ちょうど、みんなが合流したタイミングだったので」

「そうだったのか。ベアト、ユースティアナ、ラーヴァは出撃準備を」

「はい!」

 返事をするとGrowを受け取り、ストライカーユニットWRを身に着ける。

「ハーゲンたちも一応いつでも出撃できるように準備しておいてくれ」

「了解です!」

「はーい」

 ヨハンとアビゲイルは敬礼して返事をしていた。

 ほどなくしてユースティアナたちが出撃していく。

「そういえばアルカ・ネウロイってあとどれくらい残っているのかね?」

「確か、零治とローゼンクロイツ以外なら残るは3体だな。そのうちの一体はローゼンクロイツの兄貴なわけだが」

「うん。直人の言う通りだ」

「へー、ってことは、今回のやれば2体ってことだな。案外、数日で終わるかもな」

 残りのアルカ・ネウロイの数を聞いたユリウスの言葉に、

「油断は禁物だ。アルカ・ネウロイは通常のネウロイとは違うんだから」

 直人が注意を促す。

「きっと大丈夫さ。みんながいれば、俺たちならすべてのアルカ・ネウロイを倒すこともできるさ」

 ユースティアナの背中を見送り、零治もそう口にしているのだった。




ちょこっと設定紹介
・なし
現在公開可能情報はありません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。