ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ   作:UNIMITES

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どうもUNIMITESです。
第42話となります。


第42話 魔術師よ、星光を目指して

 ブリタニアの地で、ユースティアナたちアサルトウィッチーズはアルカ・ネウロイ「マジシャン(魔術師)」と対峙していた。

「……琴村さんを救うにしても、方法はあるんですか?」

「現状、方法は確立できていないね。ローゼンクロイツさんの時も琴村少年が必死に説得を続けてなんとか心を取り戻していたとしか言えないからね」

 ヨハンの質問に直葉が返答する。

 彼女はユースティアナをアルカ・ネウロイから元に戻す時の光景を唯一近くで見ていた。

 その方法は必至の呼びかけを続け、奇跡的にユースティアナの心を呼び覚ましたことで救い出すことができたのだ。

「なら、今回も説得すれば」

「やってみるしかないですね」

 クロエとソフィアも改めてマジシャンを見つめる。

「みなさん。でも、あれは零治さんなんですよ!?攻撃は……」

「わかっている、だから攻撃は極力避けるつもりです。フーバーさん、ローゼンクロイツ、説得は任せます」

「は、はい!零治さん……絶対、助けます」

「わかりました」

 自分を振り立たせるように2人も立ち上がった。

「あ、うう……」

 うめき声にもよく似た声を上げるとマジシャンがこちらを目指して加速する。

「いくぞ!」

 ヨハンの指示で6人のウィッチは散開する。

「零治……」

「2人は下がっていたまえ。今の私の魔法力では2人を守り切れるかわからないからね」

「姉貴は戦うなよ」

「わかっている。でも、状況が変わった。今は琴村少年の命が優先だ」

 直葉は戦場を見据える。

 マジシャンは高速で空を舞い、ウィッチたちを翻弄していた。

 一瞬、反応が遅れたウィッチに攻撃を見舞う。

「きゃっ!」

「エリザベートさん!あっ!」

 クロエとソフィアを大地に叩き落とす。

 2人共シールドで衝撃を減衰させるものの、連戦によって魔法力の限界が近いのか、立ち上がることができなかった。

「「うぅ……」」

「エリザベート!」

「ラーヴァ!」

 ヨハンとアビゲイルも心配そうに声を上げる。

「零治さん!目を覚ましてください!お願いです!」

「そうですよ、零治さん!もうやめてください!」

 ユースティアナがマジシャンの肩を掴み、ベアトと共に説得を試みるが、

「――っ!」

 甲高い悲鳴のような声を上げ、右手からビームを照射する。

「ぐうう!」

 大型シールドを展開して防御していた。

「零治さん!……っ!」

 向けられた左手が紅く発光する。

「やばい!」

 いち早く何かに気づいたアビゲイルが急加速していく。

 ベアトのほうへビームが放たれるが、

「しまっ!」

「はぁはぁ。大丈夫、フーバーさん?」

 高速で飛行していたアビゲイルが彼女を連れ出したことでなんとか攻撃を回避して見せる。

「は、はい。ウィリアスさんは?」

「うん。大丈夫だけど僕も魔法力が……限界みたい」

 低空飛行して地面に降りたアビゲイルは息を切らしながら空を見つめる。

「はあぁぁ!」

「ハーゲンさん!」

 ヨハンが片手直剣を振り下ろす。

 マジシャンはまるで剣筋が見えているかのように、その攻撃を白刃取りして見せる。

「なっ!」

「――っ!」

 かつて対峙したアルカ・ネウロイのようにヨハンの腹部に回し蹴りを見舞う。

「ヨハン!」

 アビゲイルが声を上げていた。

「そんな、こんな……」

 ユースティアナはその状況に表情が凍り付いていた。

 どうにかなると思っていた。

 だが、現実はそんなに甘くはなかったのだ。

 仲間たちは弱った魔法力で大地に倒れている。

「ローゼンクロイツ、避けろ!」

「え?……ぐっ!きゃああ!」

 放心状態だった彼女にマジシャンは容赦なく攻撃を見舞った。

 反射的にシールドを展開していたものの、ユースティアナも大地に倒れ込んでいた。

「うう……」

 体に走る痛みに苦悶の表情を浮かべる。

「くそ!やっぱり零治を助けることはできないのか……」

「ここらが限界だな。弟よ、ここで戦う私を許しておくれ」

「姉貴……」

「私は仲間のために、この残った魔法力を使うよ」

 その言葉と共に彼女は、駆け出す。

 再び大地に降り立ったマジシャン。

「どうやら、私も出なきゃやばそうだね」

「鈴木少佐……」

「駄目です直葉さん!」

「そんな状態でよく言うね。2人共」

 ユースティアナとベアトに優しく笑みを見せると、落ちていた扶桑刀「烈風丸」を拾い上げる。

「ブラッキーいくよ」

 使い魔の名前を口にすると、狐の耳や尾が現れる。

「どうせ残り少ない出涸らしの魔法力だ。この際、完全に枯らしてくれても構わない……だから今は力を貸してもらうよ、烈風丸」

 直葉の魔法力で烈風丸の刀身が蒼白く発光する。

「――っ!」

 声を上げてマジシャンが加速していた。

 直葉も魔法力で身体を強化して、大地を駆けだす。

 数秒後には激しい攻防が繰り返されていた。

「……っ!」

 お互いに一歩も引くことはない。

 烈風丸の刃は確かに黒い装甲肌を傷つける。

 しかし、マジシャンも冷静に致命傷を避けるか、攻撃をギリギリで逸らしていた。

 つけられた傷も通常のネウロイ同様にものの数秒で自己再生して見せる。

「まずいな……鈴木少佐は私や琴村さんみたく剣術の訓練をしていたわけじゃないからな。剣筋が単純すぎる」

「なんで鈴木少佐はストライカーユニットをつけていないの?あんなのじゃ、ちゃんと戦えないんじゃ……」

「直葉さんの魔法力は、もうほとんど残っていないんです」

 アビゲイルの質問にベアトが返答する。

「そうなんですか!?」

「どうしてそんな状態で?」

 インカム越しに状況を聞いていたクロエやソフィアも声を上げていた。

「やっぱり、か。先日、戦闘したときからシールドがあまり機能していないようにみえたのは見間違いじゃないかったようだな」

「ヨハン気づいてたの?」

「別に確証があったわけじゃない。でも、二十歳って聞いた時からいつ魔法力が消えてもおかしくないと思っていただけだ」

 ヨハンの言葉に各々のウィッチは再び彼女たちを見つめる。

「でも、このままじゃジリ貧です。直葉さんの魔法力だってそう長くは……」

「そんな……何か、何か方法は……」

 ユースティアナも拳を強く握り込む。

 必死に考えるが、考えれば考えるほど頭は真っ白になっていくだけであった。

「ここに、来て……」

「へ?」

 不意に頭に響いた声に頭を上げる。

 視線の先では直葉とマジシャンの攻防が続ている。

「ここに、来て……!」

 再び響いた声に周囲を見渡す。

 そこで砕けたコンクリート片に紛れて、小さな何かが紅く発光していることに気づいた。

「あれは……?」

 何かに引き寄せられるように、ストライカーユニットWRを脱ぎ捨て、光の元へと駆け出す。

 地面に落ちていた発光する物体を拾い上げる。

 それは楔のような形状をした紅い欠片。

「これって零菜さんの、紅の楔?」

 どうやら、何かの拍子に零治の軍服から転がり落ちたのだろう。

 コアが淡く光を放ち、彼女も何かを感じ取っていた。

「ローゼンクロイツ……さん」

「この声、零菜さん、なんですか?」

 聞き覚えのある声に、ようやくその正体に気づく。

「うん。もう時間がないの……このままではネウロイの力が零治の心を壊してしまう。だから、私のコアを零治に!」

「で、でも!これはコアなんですよ?それで零治さんを助けられるんですか?」

「私が彼の心を救い出す。だからお願い!」

「はい。わかりました!」

 ユースティアナは手の中の紅の楔を力強く握り、再びマジシャンを見つめた。

「くっ!」

 振り下ろした烈風丸の刃が弾かれる。

 刀身はもうほとんど魔法力を帯びていいないのか、その輝きもかなり弱っていた。

 マジシャンが手からビームを放つ。

「直葉さん!」

「ぐうう……!」

 紙一重でシールドを展開する。

 残り少ない魔法力を力任せに絞り出り、なんとか身を守っていたのだ。

「急がなきゃ!」

 ユースティアナも彼女が長く持たないことを理解すると駆け出す。

「ローゼンクロイツ?あいつ一体何を?」

 ユリウスが一直線に駆け出していた彼女の姿を確認して首を傾げる。

「何か方法があるのか……」

 直人も彼女の表情を確認して、何かあることを察していた。

「はぁはぁ……もう限界か」

 肩で息を息をして目の前のマジシャンを見つめる。

 疲弊しているこちらとは異なりまるで無傷のネウロイのようなマジシャンがこちらへと向かってくる。

「姉貴!もう少しだけ時間稼げるか?」

「なかなかきついこと言うね……いいだろう」

 烈風丸を握り直し、再び力を込める。

 その刀身がこれまで以上の輝きを放つ。

「――っ!」

 その輝きを確認してマジシャンも右手から光を放った。

「直葉さん!」

「「鈴木少佐!」」

 ベアトやヨハンたちが声を上げる。

「琴村少年、死ぬなよ……」

 烈風丸を振り下ろす。

 放たれた白い斬撃が紅いビームが激突して、衝撃破が駆け抜ける。

 お互いの力は拮抗しているのか、直葉も苦悶の表情を浮かべていた。

「うう……」

「姉貴!」

「直葉少佐!」

 意識が遠退く中、直人とユリウスの声が響く。

 奥歯を噛み締め、再び対峙するマジシャンを見据えた。

 魔法力を使い果たすように全力で放出する。

 同時に攻撃のぶつかり合いが弾けた。

「ぐうう」

 後方に吹き飛ばされた直葉は大地に倒れ込む。

 手を離れた烈風丸も宙を舞い地面に突き刺さっていた。

「――っ!」

 一方、マジシャンは特にダメージがないのか、土煙が舞う中でも声を上げていた。

「あれでも倒せないんですか?」

「……あれ?ユースティアナさんは?」

 ソフィアの言葉にクロエも周囲を見渡す。

 そんな中、土煙をかき分けユースティアナがマジシャンの前に立つ。

「零治さん!目を覚まして下さい!」

 紅の楔を心臓に突き立てる。

「う、あ……」

 胸元の楔を見つめ、マジシャンは数歩後退していた。

「ぐああぁぁ!」

 悲痛の声を上げ、その体から紅い光が放たれる。

「零治!目を覚まして!」

「姉さん、なのか?」

 聞き覚えのある声に零治は瞼を開いた。

 暗い闇の中で彼女の、零菜の姿を視認する。

「あなたはまだ生きている、生きているの!自分の光を見失っては駄目!」

「俺にとっての光……」

 少しずつ覚醒する意識の中で、一人の少女の顔が浮かんでいた。

 大切な存在である彼女の名は、

「それは星の光(ユースティアナ)だ」

「そうよ!だから目を覚ますのよ!」

 再び目を見開く。

 同時に体を覆っていた黒い装甲肌が白い粒子となって消滅する。

 零治の姿を確認したユースティアナがその体を支えていた。

「零治さん!よかった……戻れたんですね」

「ユースティアナ、ありがとう……」

 力の入らない右手で彼女の体を抱きしめる。

「はい!よかった、です……」

 彼女は抱きしめる手により力を込めていた。

「琴村さんは助けられたみたいだな」

「だね!」

「よかったです」

「まさに奇跡、ですね」

 彼女たちたちも安心したように2人の様子を見つめる。

「奇跡、か」

 そう口にしていたのはヨハンであった。

 これは奇跡や偶然なんかじゃない。

 ユースティアナたちが起こした必然なのかもしれない。

「姉貴!」

「直葉さん!」

「直葉少佐!」

 一方、倒れていた直葉の元に直人たちも駆け寄っていた。

「う……」

 彼女も弱々しく目を覚ます。

「直葉さん……」

「琴村少年はどうなった?」

「無事です!みんなも!」

「零治もみんな生きている。姉貴のおかげでな」

「そうか。それならよかった」

 直葉も安心したのか、その頬は少し緩んでいた。

「ベアト、グラハム、姉貴を医務室に運ぶぞ。みんなの手当ても必要だ」

「はい!」

「フーバーさんも戦闘で疲れてんだろ。直葉さんは俺が運ぶからそっちは任せるぞ」

 直人の指示で各々が動き始める。

 そんな中で、零治もユースティアナとソフィアの肩を借りて立ち上がった。

 ふと周囲を見渡す。

 視界にはボロボロになった地面とブリタニア基地にもいくつか損傷個所が見受けられる。

 それだけではない。

 ユースティアナや他のウィッチたちも明らかにボロボロであった。

「……これ、俺がやったのか?」

「「……」」

 2人共何も口にはしなかった。

 だが、この基地の状況を作り出したのは自分であることはすぐに察することができた。

 やはり自分はアルカ・ネウロイに変貌してしまっていたのだ。

「そうか。俺が……」

「零治さんのせいじゃないです!私たちが、弱かったから……零治さんの力に頼るしかなかったんです」

「ユースティアナさんの言う通りです。もしあのとき、零治さんが力を使わなければ、私たちの誰かが死んでいてかもしれません」

「俺は」

 それ以上、何も言わぬまま零治たちは基地へと足取りを進めるのであった。

 今は何も考えたくはなかった。

 考えれば、きっと後悔や自責の念に押しつぶされてしまう、そんな気がしていたからだ。




ちょこっと設定紹介
・憤怒の紅(レッドレイジ)
 琴村零治が所持する固有の能力であり、コアの力そのものでもある。
 コアが生み出す紅い力にはDSやアルカ・ネウロイ、オラクルごとに個人差があるが、零治は力は最も出力に優れたものであった。
 瞬間放出するだけでも膨大なエネルギーであるため、ウィッチのような身体強化の他、烈風丸のような特殊な武器を用いればエネルギーそのものを紅い斬撃(ネウロイのビーム)のように発射することも可能である。
 強力な反面、燃費が悪く使用後には倦怠感や疲労感で動けなくなったり、最悪暴走の可能性すら孕む危険な力でもあるのだ。
 零治はこれまで2回だけ、この力を使用しており一度目はグルーシャとの対決時、2度目はハイプリエステス(女教皇)との対峙時に使用しており、2度目の使用で暴走してしまう結果となった。
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