ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第43話となります。
ハイプリエステス(女教皇)、そしてマジシャン(魔術師)との交戦を終えた夜、医務室で零治は治療と検査を受けていた。
いつものように直人はペンを書類に走らせていく。
「うん。やはりユースティアナと同じでお前も同調率が上がっているな。これもアルカ・ネウロイ化の影響か……他の数値には異常はなさそうだぞ」
「……」
彼の説明に何も答えぬまま、上の空で窓の外を見つめていた。
すでに空には月が昇っており、蒼白い光を放っている。
「おい。聞いてんのか?」
「あ、すまない。ちょっと考え事してた」
「大丈夫か、お前……まあ、お前も疲れているんだろ。色々質問したいが、今は寝とけ」
そう口にして書類を片付けて、棚へとしまう。
「……」
零治もそれ以上は何も言わず、天井を見つめてる。
「零治、お前がちゃんと戻ってきてくれてよかったよ」
「ん?何か言ったか?」
こちらの言葉を聞かぬまま、消灯して医務室を後にしていった。
闇に包まれた室内で瞼を閉じると、そのまま眠りに落ちていく。
医務室を出て、直葉の部屋の扉をノックする。
「入っていいぜ」
「ああ」
聞き覚えのある返答に扉を開く。
室内には椅子に座って看病するユリウスとベッドで横になっている直葉の姿があった。
「こなくていいと言ったのに……」
こちらの姿を確認すると彼女はそっぽをむく。
「零治やみんなの治療と検査は終わったからな。姉貴は大丈夫か?」
「飯も食ってたし、今も元気そうだぞ」
「そう、元気なのが私の取り柄だからね!」
直葉はいつものように頬を緩ませていた。
ところどころ怪我はしていたものの、見受けられる限りは軽傷であり問題はなさそうであった。
「そうか……それならいいんだ。流石に俺も今日は疲れちまったからシャワー浴びて、もう休むわ」
「……」
「おう。お疲れさん。ちゃんと休めよー」
彼の背中を見送ると
「随分、あっさり引き下がったね」
「流石に、鈴木も疲れたんじゃないすかね?今日は色々あり過ぎましたから」
2人も今日の出来事を思い出して、ため息をつく。
「でも、みんな無事でよかったよ」
「はい。直葉少佐も生きてくれてよかったです」
「うん。ありがとうね、グラハム少年」
「は、はい!」
直葉は手を握り優しく微笑みを見せるとユリウスは顔を赤くして、声を上げているのだった。
翌朝。最終検査を受け終えた零治は扶桑の軍服に着替える。
すると、医務室の扉がノックされた。
「ユースティアナです」
「ユースティアナか。入っていいぞ」
こちらの返答で扉が開け放たれる。
そこにはユースティアナとヨハンの姿があった。
「ハーゲンもいたのか」
「はい。あの琴村さんの体は大丈夫なんですか?」
「ああ。検査結果から問題はないようだ」
ヨハンの質問に返答すると
「零治さん、ちょっといいですか」
「ユースティアナ?」
ユースティアナが顔を近づけじっとこちらの顔を見つめる。
「……」
少し近すぎる距離に思わず鼓動が早くなる。
「……うん。瞳の色に変化はないみたいですね」
「え?瞳?」
「はい。私と同じように片目が紅くなったりしてるのかなと思ったんですが大丈夫みたいです」
その言葉に、さきほど鏡を見た時のことを思い出す。
確かに顔を洗って、鏡を確認したとき自分の瞳は左右どちらも琥珀色の瞳をしていた。
ユースティアナも元々は左右が同じ藍玉色をしていたがオラクル化に伴い左右で色彩が異なるオッドアイになったのだ。
彼女だけではない。
零菜も力を使っていた時はその瞳が紅く変化していた。
その点ではグルーシャも同じなのだ。
「でも、なんで俺の瞳に変化はないんだ?」
「俺は知らん。DSのことは俺よりもお前やロアノークさんのほうが詳しいだろ」
「……私もよくはわからくて。ティアとも話せなくなっちゃったから」
「ま、考えても仕方ないですし、とりあえず朝食にしましょう」
「そうだった。朝食の準備ができたので呼びに来たんでしたね!」
ヨハンの言葉に目的を思い出したのかユースティアナが頷く。
医務室を後にして、食堂の扉を開ける。
「おはようございます。琴村さん、鈴木さん」
クロエが出迎え、
「遅いぞ2人とも」
「零治は検査が必要だからしゃーねーだろ」
直葉と直人はいつものように他愛もない会話をしている。
そんな様子を見て少し安心していた。
「零治さん?どうかしました?」
「いや、なんでもないよ」
席に着き、数分もしないうちにテーブルに料理が並ぶ。
「いただきまーす」
食堂内に声が響き渡り食事を始める。
1時間ほど時が過ぎ、食事を終えた頃零治がウィッチたちへと視線を向けた。
「みんな、少しいいか?」
「どうかしたんですか、零治さん?」
「その……昨日はすまなかった」
深々と頭を下げ、謝罪する。
「自分でも力を抑えられなくってしまったとはいえ、俺はみんなを……」
「気にしないでいいですよ琴村さん」
「そうです。こうなる可能性があることは私たちも分かっていたつもりですから」
ソフィア、クロエが優しく声をかける。
「だが、俺は!」
「琴村さん。あんまり自分を責めないでいいんじゃない?僕たちは琴村さんがどんな人なのかわかってるしね」
「そうだな。あの時、琴村さんが戦わなければ、ここに全員がそろっていなかったかもしれない。あなたはここにいるみんなの命を守ったんですよ」
アビゲイルとヨハンも自分を責めることはなく称賛するように頷いていた。
「……」
そんな言葉がうれしくて、何も言えなくってしまう。
「零治。お前はここにいていい人間だ。それに俺はお前の補佐はするが隊長の代わりはごめんだからな」
「そうですよ。私たちの隊長は零治さんだけですから」
「はっはっは。いい仲間と巡り会えたね。琴村少年」
「まあ、いいんじゃねーの。琴村は認められてるってことなんだろ」
「零治さん。みんな、零治さんを信頼しているんです。これからも私の隊長でいてください」
ユースティアナも笑みを浮かべていた。
その言葉で少し安心した。
もし、みんなが自分を敵としてみていたなら、隊長を降りるつもりであった。
だが、彼女たちは自分をもう一度隊長として、この特務統合強襲航空団(アサルトウィッチーズ)にいることを許してくれている。
「ありがとう、みんな。俺は特務隊の隊長としてここにいるよ」
「はい!」
再度ユースティアナの顔を確認して、再び信念を固める。
残るアルカ・ネウロイは2体である。
食事を終えて、零治はヨハンと共に日課である剣術訓練に取り組んでいた。
「休んでなくていいんですか?」
「ま、大丈夫だろう。体も動くし、それに今までだって暴走のリスクがあるってことは分かっていたんだ」
そう返答して零治は再び烈風丸を振るう。
検査の結果に問題はなかった。
だが、今の自分の体には2つのコアの反応があるらしい。
一つが自分が魔術師となった時から所持しているコア。
そして、もう一つは先日の暴走時にユースティアナが自分に使用した零菜のコア、紅の楔である。
どうやら紅の楔は自分のコアと強く結びつき、力の暴走を防いでいるようだ。
それでも、自分の力を律するだけの精神力を自分自身が身に着ける必要がある。
身の丈以上の力は身を亡ぼす……もう二度と暴走なんてしないためにも。
「でも、次に暴走したら私たちでももう止められる自信ないですよ。最悪の場合には……」
「それでいいんだよ。ベアトやユースティアナは多分、俺を殺すって決断はできない。ハーゲンみたく、時には割り切れる奴が必要なんだ」
「……私だって割り切れないですよ!」
ヨハンはうつむいて声を上げてた。
「ごめんな、ハーゲン。でもあと少しだけ俺たちに付き合ってほしい」
「わかってます。少なくともアルカ・ネウロイをすべて倒すまでは一緒に戦うって約束しましたから」
「ありがとう」
感謝の言葉を述べると2人は再び剣術の訓練を続けていく。
数時間ほどの訓練を終えて、零治は再び基地内へと戻り足取りを進めていた。
「零治さん、ちょっといいですか?」
「ベアト?それにユースティアナもどうしたんだ?」
後方からの声に振り返るとベアトとユースティアナの姿があった。
「直葉少佐が……」
「?」
2人の様子に首を傾げる。
話を聞いて、零治は直葉の部屋の扉を開いた。
室内には直人の姿がすでにある。
「来たのか琴村少年」
「2人から聞きました。鈴木少佐、魔法力が完全に消えたって本当なんですか?」
「……ああ。本当だとも。昨日の戦闘で出涸らしだった魔法力は完全に枯れてしまったようだ」
「俺のせいですか?俺が、暴走したから」
思わずそんな言葉を口にしていた。
昨日の戦闘でのことを思い出す。
「君のせいじゃない、琴村少年。元々長くはもたないってことは分かっていたんだ。その刀が魔法力を枯らす曰く付きだってこともね」
彼女の言葉に腰に下げていた烈風丸の鞘に手を当てる。
確かに、この刀はかつて扶桑のウィッチである坂本美緒と宮藤芳佳の魔法力を枯らしたと聞く。
まさか……彼女は
「使ったんですか?この刀を?」
「あの時、魔法力の弱っていた私にはそれしかみんなを守る手段が思いつかなかったんだよ」
「分かっていたはずです!この刀には!」
「零治さん!落ち着いてください」
声を上げていた自分をユースティアナが制止する。
「大丈夫さ。私の信念を引き継いでくれるウィッチがいる」
直葉はベアトとユースティアナを見つめる。
「ベアト、ローゼンクロイツさん。私はここで脱落のようだからね、あとのことは君たちに任せるとしよう」
「……はい!直葉さんに託された信念は私たちが引き継ぎます!」
「私もみんなを守れるように頑張ります!」
2人は敬礼して、返事をしていた。
「まあ、そうは言ってもまだ扶桑に帰るつもりはないけどね」
「え?」
「は?どういうことだ?」
「見ていたまえ弟よ。ベアト、あまり時間がないからね。みんなを集めてくれ」
「はい……」
彼女の言葉に直人だけでなく零治も何をするのかを予想できていなかった。
ベアトもそうなのか、首を傾げて返事をしている。
すぐにアサルトウィッチーズのウィッチたち6名が集めれ、軍の格納庫前に集合した。
「みんな集まってくれてありがとうね。グラハム少年、ストライカーユニットの整備は終わっているかい?」
「はい。言われた通り全部動かせるようにしときました」
ユリウスも親指を立てて問題なしと言わんばかりに頷く。
姿が見えないと思っていたが、ストライカーユニットの整備を進めていたようだ。
「先日の戦闘で、かなり危ない状況になってしまったからね。みんなには隊列連携(フォーメーション)を見直したうえで戦闘をしてもらいたくてね」
「フォーメーション、ですか?」
ユースティアナが首を傾げていた。
「うん。まったく連携ができていないわけじゃないのは分かっているけど、やはり個々での戦闘スタイルで独自に戦っているからね。ハーゲンさんやウィリアスさんは同じ部隊で活動していたそうだから、その点は他のメンバーより悪くはないけど全員でとなるとやはり粗が見えるからね」
「確かに、俺も最初は連携を考えて出撃メンバーを調整していたけど、結局、みんなが伸び伸びと飛べるほうがいいと思ったので途中からはあまり重視していなかったですね」
話を聞いていた零治も頷く。
元々、特務隊は魔導エンジンtype-Cの同調率が高いウィッチを選んで、配属された人材で構成されている。
そのため、代わりを人材をすぐに見つけ出すことが難しい上に、ウィッチの選択肢も少ない。
しかも、急造な部隊ではすぐにウィッチ同士が連携するのはそう簡単なことではなかった。
そもそも軍が貴重なウィッチを小規模な特務隊に割くことに否定的であったというのもあるが。
「だから、再び連携を見直そうと思う」
「でも、短期間で身に着けられるんですか?」
「私は扶桑では教官をやっていたからね。大船に乗った気でいたまえ!それに君たちはすでに多くのネウロイと交戦して各々のスタイルを分かっているから、ちょっと意識すれば、そう難しくはないと思うよ」
直葉は胸を張って高らかに笑い声を上げる。
「とりあえずやってみよう。みんな準備を」
「はい!」
零治の指示でウィッチたちは空へと飛翔していくのだった。
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