ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
今回44話になります。
アサルトウィッチーズのウィッチたちが隊列連携の訓練を始めて数日の時が過ぎていた。
直葉の言う通り、まだ数日しか経っていないというのに彼女たちはすでに連携が取れ始めている。
「ここ数日でだいぶ変わったな」
「だな。動きもかなり良くなってるぜ」
「当然さ。彼女たちは優秀なウィッチだからね!はっはっは!」
彼女たちを誇っているように直葉は笑い声を上げていた。
すでに魔法力を失った直葉は扶桑に帰ることはなく、ここで教官としてアサルトウィッチーズの訓練を見ておるのだ。
今日も空を舞う6人のウィッチは連携を取る訓練を行っている。
「まあ、鈴木少佐のおかげだな。直人、前に頼んでたあれはできたか?」
「一応作った……だが調整済みのベアトたちと違ってお前の体に合うかは未知数だ。ちょっとずつで体を慣らさないと過剰摂取(オーバードーズ)でどうなっちまうかわかんねーぞ」
彼はそう口にして、一本の注射器と紅い薬品の入ったシリンダを取り出す。
それはベアトたちが使用するものと同じ規格の注射器、そして同調率上昇薬「Grow」によく似た薬品が入っている。
「サンキュ……」
受け取ったそれらをポケットに押し込む。
「こっちは鈴木少佐もいるし、俺は自分の訓練に行くよ」
「なんだよ琴村。お前が戦闘訓練する必要はないんじゃね?みんなも連携が上達しているし」
「俺が戦闘しなくていいのが一番なんだろう。でもユースティアナたちが単独でウォーロックやウィザードに渡り合うのはおそらく厳しいだろう」
「どういうことだ?」
こちらの言葉を聞いてユリウスが首を傾げていた。
「私もできることなら聞いておきたいな琴村少年」
「……2人なら話してもいいか」
零治は少し迷ったものの、再び2人の方へと視線を向ける。
「そもそもユースティアナたちが使用しているストライカーユニット、WR(ウォーロックリバイブ)にコアが使用されているが、ウォーロックやウィザードと違って暴走しないように色々改良を加えてある。1つのコアを2つに分割して使用しているとかな」
「あー、そういえば、そうだったな。ハーフ何とかってやつだろ?」
「ハーフデュアルコントロールだ」
「そうだ。それそれ」
思い出したように彼が頷く。
「でも、なんでそんな方法を?」
次は直葉が首を傾げて質問する。
「コアは一つでも膨大なエネルギーを放出する上に、それを機械であっても制御するのは容易じゃなかった。だから、特殊な方法で分割してコアの力そのものを抑えたんです」
ハーフデュアルコントロール。
自分自身が零央の研究を基に、コアを制御する上でたどり着いた一つの結論。
魔導エンジンtype-Cにはこのコアコントロール方法が用いられており、コアの最高出力はウォーロックたちのシングルコアコントロールよりも落ちるが、安定性と安全性、そしてウィッチの魔法力で容易に制御できるようになっている。
だからこそ、ウォーロックやウィザードに対しては、WRをもってしても複数でなければ対抗するのは難しいのだ。
かつて501統合戦闘航空団(ストライクウィッチーズ)のように。
「そうだったのか……それじゃあ、ますます連携は重要だね」
「ですね。ウォーロックやウィザードが運用されていたのはそもそも予想外だったんですがね」
「だろうな。ロアノークさんたちも驚いていたし。まったくアルカ・ネウロイだけでも面倒だってのによ」
説明をする終えた零治と直人はため息をつく。
そんな会話をしていると、
「あ、零治さんたちいつ来たんですか?」
訓練を終えたユースティアナたちが降りてくる。
すでに日も傾きはじめ、空は赤く染まり始めていた。
「少し前からな。1日訓練で疲れただろ、格納庫にストライカーを戻したら休んでくれていいぞ」
「了解でーす。あー疲れたー」
アビゲイルが気の抜けたような声を上げて格納庫へと入っていく。
後を追うようにウィッチたちも格納庫へと戻っていった。
零治とユリウスだけが格納庫に残り、整備の準備を進める。
「ウィリアスさん」
「どうしたの?」
「明日も朝一で固有魔法の訓練を見てもらってもいいですか?」
「あー、OKOK!いいよラーヴァ」
「珍しいな、アビーが訓練だなんて」
2人の会話を聞いていたヨハンが思わずつぶやく。
「あー!今、僕が訓練を?とか思っただろ!」
「いや、だって……」
アビゲイルが怒りを顕にするように頬を膨らませる。
「私だって訓練してるんだぞ!ねー、琴村さん?」
「ああ、何度か俺が見たりしていた」
「ねー、ラーヴァ?」
「はい。私も一緒に訓練させてもらってました。この前は固有魔法の攻撃方法を教えていただいたりもしました」
話を振られた零治とソフィアも肯定するように返答した。
手に小さな竜巻のような風を作り出して見せる。
「ほーら見たことか!ほーら見たことか!」
「……すまないって、怒るなよ」
ヨハンが謝罪するが、アビゲイルは不服なのか文句を垂れていた。
「ウィリアス。ハーゲンもこう言ってるし機嫌直せって」
なだめるように零治も声をかけるが、
「まあ別にいいけどさー……琴村さんもヨハンとばっか訓練してないで僕の訓練にも付き合ってよ。最近ずっと剣術ばかりやってるじゃん!」
「……あれ?もしかして矛先こっち向いてる?」
「修羅場だな琴村」
ユリウスが冷静に返答する。
「わかったわかった。明日は俺も訓練見るから」
「OK!じゃ、僕は休むねー」
「琴村さん私も一緒で大丈夫ですか?」
「ああ。ラーヴァのほうも一応見ておきたいからな」
「はい。ではお願いします」
ソフィアは深々と頭を下げると、クロエと共に基地へと戻っていく。
角野港に残った零治とユリウスは手分けしてストライカーユニットの整備を開始する。
「なあ、琴村」
「なんだ?」
「お前って今、ネウロイとしての力は使えんのか?」
「……自由に使えるのかはよくはわからないけど、治癒能力は俺の意志で使えるようだ」
治癒能力。
いわゆるネウロイが体を自己再生する能力の事だ。
ここ数日、直人との検証で分かったのは治癒能力は、『生きたいという意志』によって発揮されるようだ。
ネウロイに意志という概念が存在するのかは不明だが、少なくともDSとしては意志によって治癒は発揮できる。
だが、この能力もコアのエネルギーを糧にしているようだ。
「今のお前は不死身ってことかよ。すげーな」
「……不死身なわけないだろ。あくまで傷の治りが早いってだけで痛みはあるし。なによりウィッチの攻撃だと治癒能力は一時的に発揮できなくなるみたいだしな」
ため息交じりに返答する。
ネウロイと同様に魔法力を帯びた攻撃は治癒能力を阻害する効果がある上に、自分やユースティアナにとっても有毒なようだ。
といってもコアを傷つけられない限り、死ぬことはないが逆に言えば、コアを傷つけられれば一撃で必殺になるということ。
「まさにネウロイ人間だな」
「その呼び方、みんなの前でやるなよ。直人とか特にそういう呼び方嫌うからな」
「わかってるって」
ユリウスは相変わらず明るい笑みを浮かべると整備へと励むのだった。
翌朝。零治はアビゲイル、ソフィアと共に海岸に集合していた。
「遅いよ琴村さーん」
「俺が最後だったか……」
「へへ。僕だってやるときはやるんだから!」
アビゲイルはいつものように調子に乗って胸を張っている。
「じゃあ固有魔法の訓練始めるよ!」
「はい!」
ソフィアが頷く。
2人とも右手に魔法力を集中させる。
バチバチという雷の走り抜ける音と吹き抜ける風の音が静かに音を立て始めた。
「はああ!」
声と共に空気中に紫電が走り抜けた。
相変わらず雷は拡散し、広範囲に散っている。
「は!」
続けてソフィアが手を振ると圧縮された風が空を切り裂いていた。
「……」
「どう?琴村さん」
「相変わらずウィリアスの魔法は範囲を広げると散ってしまって威力が弱まってるな。ラーヴァのほうもあまり遠くまでの攻撃には向いていないように見える」
「そうなんだよねー」
「はい……」
2人とも固有魔法を広範囲で使用するとやはり威力に難が出てくるのだろう。
「でも、ウィリアスはよく近距離で固有魔法を使用していたよな?」
「うん。迅雷一閃って技でね!掌上でだけ雷を収束させてるから魔法力の消費も少ないし、貫通力に優れてるから便利なんだよ!」
再び雷を掌上に展開する。
雷は幾重にも重なり、まばゆく輝いていた。
なぜ、リベリオン出身のはずの彼女が扶桑語である迅雷や一閃といった文言を利用しているのかはわからないが、今は気にしないでおこう。
「私にも教えてください!いいですよね?」
「流石に危険じゃないか?これは接近しての技だろうし」
「……いや、ラーヴァなら案外問題なくいけるかも」
アビゲイルは少し考えた後に再び視線を戻す。
その言葉に零治は首を傾げる。
「ラーヴァはジェットストライカーじゃん?ジェットの加速と合わせれば貫通力も確保できると思うんだよね」
「そうかもしれないがジェットはウィリアスのストライカーほど小回りが利かないから回避とか難しいんじゃないか?」
「そこは私のシールドでカバーします。ユースティアナさんほどではないですが、私もシールドには自信あるので」
ソフィアも自信ありげにこちらを見つめていた。
確かに、彼女のシールドは一般的なウィッチに比べて強固である。
501統合戦闘航空団の宮藤芳佳には劣るがそれでも十分高い防御力を誇っているのだ。
「とりあえず次の戦闘で経過観察だな」
「はい。ウィリアスさん、もっと魔法の使い方教えてください」
「任せて!まずはねー」
アビゲイルとソフィアは再び固有魔法の訓練へと勤しんでいた。
零治もそんな2人の訓練を観察するのだった。
訓練を終えて、零治は隊長室へと戻る。
室内には直人やベアトがデスクワークを行っていた。
「来てたのか」
席について机の書類に目を通す。
「お前も忙しそうだったからな。先日の報告書はまとめたから目を通しておけよ」
その言葉に先日の暴走の報告書もまだ纏められずにいたことを思い出す。
「暴走した本人が報告書作ってるのってどうなんだ?」
思わず零治がつぶやく。
「言われてみれば、零治さんに作成してもらうのは変かもしれませんね」
「そこは隊長なんだから仕方ないだろ。俺の見解も載せてはいるから……」
「ああ、感謝しているよ」
次々に書類に目を通し、サインが必要なものにペンを走らせていく。
「零治さん。見た感じ大丈夫そうですね」
「まあ、検査でも問題はなさそうだったからな」
ベアトが耳打ちすると直人も軽く頷いていた。
そんな時だった。
「っ!きた、アルカ・ネウロイだ!」
アルカ・ネウロイが放つ固有のコアの反応を感知した零治が顔を上げた。
「本当ですか!?」
「いくぞ!」
3人は踵を返して、格納庫へと向かう。
屋外に出ると熱波を全身に感じる。
「あつっ!」
「随分熱いな……今日ってそんなに気温が上がる予定だったか?」
「異常に暑いですね」
直人やベアトも同じように熱波を感じているようだ。
今朝、訓練をしているときはそんなに暑さを感じなかったが……。
頬を伝う汗をぬぐい、再び駆け出す。
格納庫に到着すると一歩遅れてユースティアナ、ソフィアが現れる。
「ハーゲンたちはまだか……3人ともいけるか?」
「「はい!」」
「私も行けます!」
ベアトたちは敬礼して声を上げた。
Growを投与し、ストライカーユニットWRを装着する。
3人が格納庫から飛びだっていく。
「直人、俺たちも後方から状況把握にいくぞ」
「お前も無理すんなよ」
「うん」
彼の言葉に軽く頷くと双眼鏡を手に外に出る。
ユースティアナの感知を頼りに飛行している中、
「今日はやけに暑いですね」
「ですね」
ユースティアナとソフィアも熱気によって全身に汗を感じていた。
ベアトは周囲に視線を向ける。
「ベアトさん?どうかしました?」
「いえ、さっきより気温が上昇していると思って」
「もしかして……」
ソフィアの言葉を遮るように直上からビームが放たれる。
反射的に3人もシールドを展開して、攻撃を防御した。
空を見上げると、人型のアルカ・ネウロイが九落下していることに確認する。
「避けて下さい!」
ベアトの声で3人が散開する。
アルカ・ネウロイは高速で飛行して、再びこちらを見据えた。
「アルカ・ネウロイです!」
「あれが……」
ウィッチたちも目の前のアルカ・ネウロイを見つめた。
これまでと同様に人型の形状をしており、胸元には紅いⅢの文字が刻まれている。
「敵アルカ・ネウロイのコードネーム、エンプレス(女帝)です!」
「――っ!」
エンプレスは悲鳴ような叫び声を上げるのだった。
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