ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
今回45話になります。
コードネーム、Ⅲ.エンプレス(女帝)とユースティアナたちは対峙していた。
「あれが、アルカ・ネウロイですか」
エンプレスは悲鳴のような声と共に攻撃を開始する。
同時に周囲の気温が再び上昇していた。
「あつっ!」
ユースティアナが思わず声を上げると
「どうやらこの熱気はあのアルカ・ネウロイの影響のようですね」
ソフィアが分析結果を述べる。
「そうか。だから」
ユースティアナも納得したように頷く。
前に霧を操るアルカ・ネウロイと交戦したことがあった。
その時と同様に大気の状態を操ったりすることができる個体もいるのだろう。
「……」
そんな中、ベアトは固有魔法の一つである「魔眼」でエンプレスを見つめる。
これまでと同様に高速で飛行する個体であるためか、コアを見つけ出すことに難航していた。
「ベアトさん。作戦はどうしますか?」
「ユースティアナさんとラーヴァさんは接近して敵を攪乱してください。コアを見つけ次第3人で攻撃します」
「「了解!」」
その指示で2人が先行する。
「ユースティアナたちが動いた」
「あのアルカ・ネウロイも機動力に優れた個体みたいだな」
「そのようだな」
ブリタニア本土から空を確認する零治と直人も静かに戦闘見守っていた。
ユースティアナは固有魔法「魔力放出」を使用する。
体は蒼白く発光し、向上させた能力を駆使して、高速飛行してエンプレスへと追従していた。
ソフィアもジェットの高出力と固有魔法「風」を利用した超加速によって同様に後を追う。
「――っ!」
「そこだ!」
トリガーを引くと銃口から弾丸が発射される。
エンプレスも高速移動して攻撃を回避していた。
続けてソフィアのフリーガーハマーから放たれたミサイルを機銃のようなビームの連射によって迎撃するが、撃ち漏らした一発が脚部に命中し体制を崩す。
「よし!このまま!」
再びフリーガーハマーを構える。
「――っ!」
悲鳴のような叫び声と共にエンプレスの体が眩い光を放つ。
「これは、形状変化……」
ベアトの言葉通り、エンプレスの容姿が人型のものから飛行艇のような大型に変化していた。
大型となったことで攻撃が激しくなり3人も反射的にシールドを展開する。
そんな中、汗が頬を伝い、肩で息をしていたことにソフィアが気づく。
彼女だけではない。
ユースティアナやベアトもまたかなり疲弊しているように見えた。
戦闘を開始してからまだそれほど時間が経っているわけではない。
だが、明らかに疲労しているように見える。
「はぁはぁ……」
「大丈夫ですか?」
「は、はい。暑さのせいで予想以上に体力持っていかれますね……」
ユースティアナも笑みを浮かべているが、その様子はどこか作り笑顔のようにも思えた。
「コアを発見しました。この暑さで長期戦は厳しいですから一気に撃墜します」
「はい!」
「了解です!」
3人は再び、エンプレスへ向けて飛行していく。
次々にビームが放たれるがユースティアナとベアトは機動力を活かして攻撃を回避する。
反撃するように銃のトリガーを引く。
放たれた弾丸は次々に装甲を抉っていた。
しかし、コアはまだ露になってはおらず、放たれたビームを2人は紙一重で回避すると、
「――っ!」
上空に回り込んでいたソフィアの放ったミサイル弾が命中して誘爆する。
エンプレスは体制を大きく崩し、悲鳴のような声を上げていた。
被弾箇所に一瞬、紅いコアを発見する。
「……あった!みんなも長期戦は厳しい、なら!」
ソフィアは右手に魔法力を集中させた。
風が吹き抜け、掌上で竜巻のように集まっていく。
「ラーヴァさん、一体何を?」
ベアトも上空で停滞していた彼女の姿を視認する。
そんな中、ユースティアナの攻撃を受け、エンプレスは逃走を開始していた。
「アルカ・ネウロイが!」
「よし……!」
十分に固有魔法の圧縮できたことで、ジェットストライカーで加速する。
これまでは固有魔法の力で全身にかかる衝撃を緩和していたが、今はそれはない。
本来のジェットストライカーの衝撃を彼女自身の体で感じていた。
超スピードによって距離を縮める彼女の存在にエンプレスもビームを放つ。
ソフィアはフリーガーハマーを捨て、左手でシールドを展開する。
「すごい……」
ユースティアナは驚きを隠せなかった。
攻撃を受けてもソフィアの速度は落ちることはなかったからだ。
「はあぁぁぁ!」
シールドでビームを薙ぎ払い、掌打を叩きこむ。
圧縮された竜巻が装甲を削り取り、ネウロイのコアをも打ち砕いた。
「――っ!」
エンプレスは断末魔のごとき声を上げ、光の粒子となって消滅する。
「はぁ、はぁ……」
「ソフィアさん!けがはないですか?ってその袖大丈夫なんですか?」
「はい……だい、じょうぶみたいです」
肩で息をして、途切れ途切れながら返答して、袖に視線を落とす。
風を圧縮した影響か、右手首から少し上の袖がずたずたになっていた。
「そうですか。ならよかった」
ベアトも安心したように胸を撫でおろす。
「すごいですね!さっきのまるでウィリアスさんみたいでしたよ、こうネウロイをバビューンって倒す感じとか!」
「さっきの技もしかしてウィリアスさんと訓練していた?」
「はい。さっきは力任せに固有魔法を使用したのでちょっと練習は必要かもです……」
ソフィアは乾いた笑いを漏らして、そう口にしていた。
「こちら琴村だ。アルカ・ネウロイ、エンプレスの消滅を確認した。3人ともけがはないか?」
「はい。みんな問題ありません。帰投します」
零治の通信を受けて3人はブリタニア基地へと帰投するのだった。
格納庫に戻り、ウィッチたち帰投したのを確認する。
「お疲れ様、みんな」
「はい」
ベアトは敬礼して返事をした。
少し、遅れてユースティアナとソフィアも敬礼していた。
「って、ラーヴァ。その右腕大丈夫なのか?」
ずたずたになっていた袖をみた直人が思わず質問する。
「は、はい。けがはしていないので大丈夫です」
「うわーラーヴァ!もしかして実戦で固有魔法使ったの?」
いつの間にか格納庫にやってきていたアビゲイルが駆け寄っていく。
「ウィリアスさん。はい、なんとか実戦でも問題はなさそうでした」
「そっかそっか。なら、よかった。でも軍服がそうなっちゃうのは昔の僕と同じだねー」
彼女の軍服の状態を見て笑い声を上げる。
「ウィリアスも昔はこうなっていたのか?」
「うん。ま、僕の場合、袖が雷で焼けちゃってね……結構、軍服駄目にしちゃったし」
「うー。何度もこうなるのは困りますね」
「大丈夫大丈夫。ここに経験者がいるからね、少し調整すれば全然大丈夫だよー」
アビゲイルは再び笑みを浮かべて、胸を張っていた。
「まあ、それは追々な。ラーヴァも疲れているだろうし」
「そうだね」
「俺たちは用事があるから、みんなは休んでいいぞ。ベアト、悪いが一緒にきてくれるか?」
「はい。あ、その前にシャワー浴びてからでいいですか?」
「……?ああ、いいぞ。俺たちは先に隊長室に行ってる」
直人が背を向け歩き出す。
「ストライカーはあとで整備しておくからいつもどおり置いておいてくれ」
「はい……」
零治も後を追うように格納庫を後にする。
ソフィアとアビゲイルはその場に立ち尽くしていた。
1時間ほど時間が経ち、隊長室にベアトとユースティアナが赴く。
「遅くなりました」
「失礼します」
2人が敬礼する。
「おう、ってユースティアナも来たのか」
「一緒のほうがいいと思ったので」
「それもそうだな」
ソファに着席したのを確認して、零治は話を切り出す。
「ベアトやユースティアナたちのおかげで、ついに19体のアルカ・ネウロイ討伐に成功した」
「あ、言われてみればそうですね!」
「ということは、残るアルカ・ネウロイは……」
「ああ、グルーシャ・ローゼンクロイツだけだ」
その名前にユースティアナは、思わず息を飲んだ。
それが、自分の兄の名前であったからだ。
ベアトも思わず視線を彼女に向ける。
「兄さん、ですね」
「だが、現状グルーシャ・ローゼンクロイツたちの足取りは俺たちも把握できていない、だろ零治?」
「うん。ロマーニャで逃げられてからあいつらは行方を眩ませたままだ」
2人ともため息をついた。
これまでのアルカ・ネウロイは活動が活発であり、各地の情報収集によって存在を確認できていた。
それに自分やユースティアナの感知によって接近を感知することもできていたのだ。
だが、グルーシャたちはそれがわかっているのか、こちらの捜索範囲網を避けているのかもしれない。
「ロアノークさんからまだ連絡はないんですか?」
「これまで一度も奴の存在を探ることはできていなかったからな。まだ捜索には時間がかかっているのかもな」
「あの……本当に兄さんを、殺すしかないんですか?」
ユースティアナはこちらを見つめて、そう口にしていた。
その表情はどこか不安を抱いているようにも見える。
「「……」」
「あいつは直人とグラハムを殺そうとした」
「零治、それは」
「なら、こっちだって情けをかけていられるほど余裕はない」
淡々と口にしていた。
「でも……!もしかしたら!」
彼女は思わず声を上げてる。
それもそうだろう。
彼女にとってグルーシャはたった一人の兄だからだ。
「俺たちは軍人だ。なら軍の命令には従わなければならない」
「そんな……」
「ユースティアナ。もしエリザベートやラーヴァをグルーシャが殺そうとしたならお前はどうする?俺とグルーシャ、どちらの味方をする?」
「……っ!」
「零治さん!そんな選択は酷すぎますよ!」
ベアトが身を乗り出しこちらを注意する。
「だが、やつらと戦うということはそういうことだ。時間はすこしだけ残されている、じっくり考えてみることだ」
「……はい」
ユースティアナは小さく返事をするのだった。
その日の夜。
ユースティアナは自室のベッドで天井を見つめていた。
「零治さんか兄さんか、私はどうすればいいのかな?ねえティア?」
思わずその名を口にする。
しかし、室内には静寂だけが広がっていた。
わかっている。
彼女はもういない。
それでも答えてほしかったのだ。
自分にはどうすればいいのかがわからなかったから。
そんな時、扉がノックされた。
「っ?はい!」
立ち上がり扉を開く。
「ベアトさん?それに直葉少佐も」
廊下にはベアトと直葉の姿があった。
「ごめんね。こんな時間に」
「少し話がしたいと思ってね。今からお茶でもどうかな?」
「はぁ……」
2人に連れられたどり着いたのは零治と直人の部屋であった。
室内からは聞き覚えのある歌と話し声が聞こえていた。
「戻りました」
「おう、来たか」
「悪いな、来てもらって」
室内には直人とユリウスの姿があった。
零治の姿はない。
「あの、零治さんは?」
「あいつなら今、ストライカーの整備してるぜ」
「そうなんですか……」
「まあ、座りたまえ」
直葉の言葉で座布団に座るとベアトが慣れた手付きで紅茶を入れる。
その紅茶がベアトの好きなアールグレイであることはすぐに分かった。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
紅茶を口にして再びティーカップを戻す。
「昼間は悪かったな」
「え?」
話を切り出したのは直人であった。
「零治はああ言っていたが、あれはあいつの本心じゃないんだ。隊長である建前で少しきつく言っていたがあまり気にしなくていいぞ」
「零治さんはああいうしかなかったんだと思います」
ベアトも肯定するように頷く。
それなりに付き合いのある2人は彼の本心に気づいているのだろう。
零治も姉である零菜を戦場で失っている。
自分も分かっていたつもりだ。
それでも戦闘を避けたいと思っていたのだ。
「琴村のやつ、そんなにきついいい方したのか?まったくよ」
「仕方ないさ。それにグルーシャくんと対峙することは彼にとっても苦痛なはずだ」
「どういうことすか?」
「どういういみだ姉貴?」
ユリウスと直人が首を傾げていた。
「みんなは知らないのかい?琴村少年とグルーシャくん、零菜さん、そしてローゼンクロイツさんはロアノークさんの下でDSとして訓練や教育を受けていたらしいからね。苦楽を共にしていた仲間と対峙というのはそれだけで精神的にくるものさ」
「私も、ですか?」
「ローゼンクロイツさんはまだ幼かったからね。多分、昔のことをよく覚えていないのだろう。それに魔法力を得たから途中から別の訓練に切り替わったとも聞いているよ」
「そんなことが……」
全然知らなかった。
言われてみればDSであったということは、昔に零治やグルーシャと共に訓練を受けていたことになる。
だが、自分はその頃の記憶がほとんどなかった。
直葉の言う通り、昔のことをよく覚えていないのだろう。
「どうであれ、俺たちはグルーシャやウォーロックたちと戦うことになるだろう。ローゼンクロイツ、お前には零治の味方でいてほしい」
「はい……まだ少し、迷ってますけど、私も零治さんを支えていたいですから」
ユースティアナは戸惑いながらも、顔を上げて返答するのだった。
ちょこっと設定紹介
・なし
現在公開可能情報はありません。