ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
今回46話になります。
アルカ・ネウロイ、エンプレスとの戦闘を終えた翌朝、まだ薄暗い空の下にユースティアナの姿があった。
日課であるロードワークを終えてちょうど基地内に戻ってきていたのだ。
「……ぷはぁ」
水分補給をして、汗をぬぐう。
そんな時だった。
轟音と共に海岸で紅の光が走り抜けるのを確認する。
「あれって……零治さんの?」
DSやアルカ・ネウロイ特有のコアの反応に、ユースティアナは海岸の方へと走り出す。
海岸に到着すると、
「ローゼンクロイツ?」
「ハーゲンさん!おはようございます」
「おはよう。もしかしてローゼンクロイツもさっきの音を聞いたのか?」
ヨハンが質問する。
どうやら彼女も自分と同じようにさきほどの轟音、紅い光を確認してここに来たようだ。
「はい……多分、零治さんだと思うんですけど」
「だろうな」
予想通りだと言わんばかりに彼女は頷く。
2人とも海岸を見渡しながら歩き出すと数分もせずに彼の姿を確認する。
零治は海岸に倒れ込んでいた。
「いってー」
大の字に倒れたまま、体の痛みを感じる。
背中を強く打ったことが原因だろう。
「零治さん大丈夫ですか?」
「ん?ユースティアナ、それにハーゲンか」
「さっきの音はなんですか?また危ないことでもしていたんですか?」
しゃがみ込んでこちらを見つめるユースティアナ、そんな彼女と打って変わってヨハンは訝し気にこちらの顔を覗き込む。
「別に、少しコアの力を使ってみただけだ」
「え?力、使えるようになったんですか?」
「これを使ってだけどな」
ポケットから赤い薬品の入ったシリンダを取り出す。
「それってGrow、ですか?」
「うん。といっても、ベアトやハーゲンたちの使うものとはべつものだけどな」
「そうなんですか……」
返答するとユースティアナは心配そうにこちらを見つめ、ヨハンは再び訝し気にこちらを睨む。
「そんな薬品使用して本当に大丈夫なんですか?」
「容量は守っているし、自分の体のことはわかっているつもりだ」
立ち上がり烈風丸を鞘に納めると、ユースティアナがこちらの袖を掴む。
「零治さん、絶対アルカ・ネウロイになったりしないでくださいね。私も絶対、暴走しませんから」
力強くもどこか震えるような彼女の声、感情を隠しきれていない表情を確認する。
「わかってる。俺ももう絶対アルカ・ネウロイになったりしないよ。必ず君を守るから」
「はい!」
お互いに笑みを浮かべていた。
「……じゃ、私も訓練に戻ります」
「ハーゲン」
「なんです?」
こちらの声にヨハンが振り返る。
「ありがとうな、剣術訓練とか色々」
「感謝するにはまだ早いですよ。アルカ・ネウロイとの戦いはまだ終わってないんですから」
「そうだったな」
「はい。必ずやり遂げましょう」
ユースティアナの声が響き渡っていた。
昼下がり、デスクワークを終えた零治は格納庫で横になっていた。
いつもと変わらない天井を見つめる。
「零治」
「ナナリー?いつブリタニアに来たんだ?」
彼女の顔を確認して体を起こす。
ナナリーが来るという情報はいつも事前にもらっていたが今回はそんな報告はもらっていなかったため、少々驚いていた。
「今到着したの」
「そうか……で、何かわかったのか?」
「こっちも調べて、色々と情報が揃ったのよ。みんなを集めて」
「わかった」
ただただ頷く。
どうやら先日依頼していたグルーシャたちについて何か分かったのだろう。
程なくして隊長室にアサルトウィッチーズのメンバー10人が揃う。
「みんな集まってくれてありがとう」
「ロアノークさんがいるってことはもしかして」
「ええ。情報が揃ったから」
ベアトの説明に首を縦に振る。
「こっちもつい先日、グルーシャ・ローゼンクロイツ以外のアルカ・ネウロイの撃墜が完了したから、いいタイミングだったな」
「はい。19体のアルカ・ネウロイを撃墜できましたからね」
「そうだったの?あなたまだ報告してなかったのね」
「報告書はまだ作成中だったんだよ……」
ナナリーの鋭い視線に思わず顔を背けていた。
「それなのに昼寝なんてしてたんだ」
「あー、もう悪かったよ。今日中には作って提出するっての!」
「はっはっは、琴村少年はあまりデスクワークが好きじゃないからね」
「そうだったんだ。まあ僕もデスクワークとか書類作成好きじゃないから同じだね琴村さん」
いつものように笑って見せる直葉。
なんとなくそんな気がしていたが、アビゲイルも自分と同じように書類作成は苦手なようだ。
「それで、ロアノークさん情報というのは?」
ヨハンが話を戻すように舵を切る。
やはり彼女がいると話が早くてこちらも助かる。
零治も再び彼女へと視線を戻した。
「そうね。まずは内通者の件だけど、内部にはそれらしい人間はいなかったわ」
「なぬ?まじですかね?」
思わずユリウスが声を上げる。
「そうか。少し安心したよ」
「どうしてですか?」
そう口にしていたのはクロエであった。
「仲間に裏切者がいるのは気持ちよくはないだろ?」
「でも、内通者がいないならどうして私たちの情報が?」
直人の返答にベアトが再び質問を投げかける。
「それは、彼らがウィザードやウォーロックを使って各地で情報収集をしていたからだと思うわ」
ナナリーはそう口にして数枚の写真をテーブルに置いた。
零治と直人は手に取り、写真を見つめる。
確かに写真には少しピントはあっていないが見覚えのあるウォーロックやウィザードの姿が映っていた。
「確かにウォーロックたちを使えば、情報収集することも可能か……」
「だがよ、やつらは機密情報の塊だろ?それにこれだっていつの写真なんですか?」
「それ1週間ほど前の写真よガリアとリベリオン周辺で撮られたものよ」
彼女の言葉に、直人の表情が固まる。
「……やはりやつらはウォーロックたちで情報収集をしていたようだな」
「……なんで私たちの情報を?」
ユースティアナの質問に、零治は顎に手を当てて考え込む。
「特務隊の情報は出回っているものが少ないからな……探っていたのかもな」
「こっちも探りを入れて、少しわかったこともあるわ。グルーシャ・ローゼンクロイツは今トレヴァー・マロニーと一緒に活動しているみたい」
「マロニーだと?!なんであいつが!」
「マロニーさん?」
「どなたですか?」
身を乗り出していた零治とは異なりユースティアナやクロエは首を傾げていた。
2人だけではない。
ベアトや直人を含めて全員がその名を聞くのは初めてであったのだ。
「ロアノークさん、琴村少年。トレヴァー・マロニーというのは誰なんだい?」
「……ウォーロックを表立って運用しようとした男だ」
「でも、ウォーロックを作成したのは琴村さんのお父さんなんですよね?」
「零央さんはあくまで研究者でね。ウォーロックの運用自体はマロニーに一任するつもりだったの。まあ、テスト中の機体を持ち出したせいで問題もあったんだけどね」
返答したナナリーはやれやれと頭を抱えていた。
テスト段階だったウォーロックにはまだまだ改善するべき問題が残っていた。
だが、それを無視してロマニーが戦場にウォーロックを使用してしまったのだ。
「あいつはウォーロック事件の後、追放されたんじゃなかったか?」
「私もそう思ってたんだけど、密かに活動していたみたい。たぶんそれでグルーシャとも合流したんじゃないかしら」
「だからウォーロックとウィザードの整備や修理はどうにかなっていたわけか」
納得したように頷く。
ウォーロックとウィザードは性能は異なるが、内部の機器やフレームはほぼ同じだ。
元々ウォーロック運用したことがあったマロニーたちなら、その時のノウハウで問題なく動作させることができていたのだろう。
「ここからが本題だけど。グルーシャたちは今ガリアで補給を受けているそうよ」
「ガリアですか?」
「ええ。あなたたちがブリタニアで活動しいているってことももう知ってるだろうから。すぐに基地に攻めてくるかもしれないわ」
「その情報、信じられるものか?」
零治の質問で、視線が集まる。
「確かな情報よ。現地でもマロニーの姿を確認している」
ナナリーは手にしていた封筒から数枚の書類を手渡す。
書類の内容は彼女が調べたであろう情報が書かれているようだ。
「……そうか、なら信じるよ」
「それで、到着の日時はいつなんだ?」
直人が続けて質問していた。
「それほど時間はかからないだろうな」
「どうしてですか?」
「うわ、空母まで用意しているのかよ……」
「随分、贅沢な連中だね」
零治の後ろから書類を覗き込んでいたヨハンとアビゲイルが思わずつぶやく。
「こっちにも船はあるわよ」
彼女は窓の外を見るように促す。
ユースティアナたちが窓の外を見ると声を上げた。
「あれって空母ですか?!」
「あの形状は、扶桑の赤城ですね」
「私も見たことあります」
驚いていた3人を横目に零治は再び彼女を見つめた。
「赤城?ちょっと待てよ!あの船は沈んだんじゃなかったのか!?」
「ウォーロック事件の時に、一度轟沈したらしいわね」
「だったらなんで!?」
「大和と一緒に密かに修理してたみたいよ。どっかの整備兵が特殊なストライカーを極秘で作ってたみたくね」
コーヒーをゆっくりと口にて不敵に笑っていた。
「それ零治さんのことですね」
「だろうな。こいつしかいねーな」
「大和も修理されてたのかよ。俺が知らないことばっかじゃないか」
「だって聞かれなかったし。赤城に関しては無理言ってこっちで使用できるようにしたんだけどね。頼むから壊さないでよ……」
「それは状況次第だな。空母があるならこちらから仕掛けることもできる。このまま作戦会議をするぞ」
白紙とペンを手にすると作戦会議を開始するのだった。
作戦会議を終えて、ユースティアナは赤城を見つめていた。
船内にはストライカーユニットWRや武器弾薬の積み込み作業が進められている。
「ここにいたのか」
「零治さん!」
声の方を振り返るとこちらに歩いてくる零治の姿があった。
彼の肩には使い魔である白ウサギ「エンジュ」と黒狐「ブラッキー」が乗っているが見えた。
エンジュは自分の使い魔だが、直葉の使い魔であるブラッキーまでいるのは少し驚きである。
直葉が魔法力を失ったことでブラッキーには対応するウィッチがいないからだ。
「積み込み作業はやってくれるようだから、休んでいていいんだぞ」
「そうなんですけど、部屋にいても落ち着かなくて」
「そうか……俺も同じだよ」
同じように赤城を見つめる。
グルーシャたちとの決戦まで時間はもう残されていない。
だが、どんな状況になっても自分たちは戦わなくてはならないのだ。
「グルーシャの件だが――」
「戦います!」
こちらの言葉を遮るように彼女は言葉を口にしていた。
「ユースティアナ……」
「たとえ、兄さんと戦うことになっても私はみんなを守りたいから」
その表情を見ればすぐに理解できた。
どうやらユースティアナは覚悟を決めたようだ。
実の兄妹と戦うことを。
ならば自分も迷っている場合ではないのだろう。
「そうか。無理はするなよ」
「零治さんも無理しちゃだめですよ」
「うん。俺たちDSにとってもこれが最後の戦いになるだろうからな」
零治は右腕に視線を落とす。
「あ、一つ気になっていたんですけど」
「なんだ?」
「私や零菜さんのこと、オラクルって呼んでましたけど。零治さんは違うんですか?」
その質問に考え込むように腕を組む。
ユースティアナや零菜はDSのその先「オラクル」に至ったことでコアの力をある程度自由に扱えるようになっていた。
一度アルカ・ネウロイ化してしまったとはいえ、治癒能力や紅の斬撃を放つことができる今の自分も彼女たちと同じ領域に至っていると言えなくもないのかもしれない。
「確かに、少しは力を扱えるようになった俺も、オラクルになったのかもしれないな」
「そうですよ、きっと!」
ユースティアナの言葉で少し自信が持てた気がした。
「私のコードネームが星の白光(スター・プリズムホワイト)なので零治さんは魔術師の赫翼なんてどうでしょう?」
「かく、よく?」
「赤い翼と書いてエールマゼンタと読むんです。零菜さんがスカイブルーだったので少し参考にしてみました」
コードネームは普段の呼び名というわけではなく、資料上や研究者たちからの呼称でしかない。
だが、せっかく彼女が名付けてくれたのだ。
自分のコードネームもそういうことにしておこう。
「魔術師の赫翼(マジシャンズ・エールマゼンタ)か……悪くないな。ありがとうなユースティアナ」
「はい!」
ユースティアナは満面の笑みを浮かべているのだった。
人物紹介(詳細)
・DS 琴村 零治(コトムラ レイジ) 中尉→大尉
オラクルコードネーム : マジシャンズ・エールマゼンタ(魔術師の赫翼)
性別 : 男性
年齢 : 19歳
身長 : 167cm
体重 : 60kg
生年月日 : 2月18日
魔法力 : なし
使い魔 : なし
保有能力 : 1.自己治癒能力(一般的なネウロイの持つ治癒能力)
2.憤怒の紅(レッドレイジ。零治が持つ固有の能力であり、他のDSに比べて出力が高い為、より多くのエネルギーを使用可能になっている。紅の楔によって制御もできるようになっており、暴走のリスクなしで身体強化や紅の斬撃を放つことができる)
3.身体強化(ウィッチが魔法力で強化しているものと同様の能力)
容姿 : 明るい茶色の髪の毛に琥珀色の瞳を持っており、扶桑の軍服を身に着けている。腕にはⅠの文字が刻まれていた。
性格 : 普段は冷静な性格をしているが怒りに任せて感情的に行動することもある。
得意分野 : ナイフ格闘、ストライカーユニットの整備と修理
概要 : アサルトウィッチーズの隊長であり整備兵を務めている。
父である琴村零央の人体実験、DS計画の被験者であり、数少ない生き残り。
アルカ・ネウロイ、ハイプリエステス(女教皇)との戦闘でアルカ・ネウロイになってしまうもののユースティアナの活躍によってDSのその先「オラクル」として覚醒している。なお、コードネームはアルカ・ネウロイとは異なる存在のため、ユースティアナが名付けた、マジシャンズ・エールマゼンタ(魔術師の赫翼)に改められている。
これまでは体内のコアを抑え込み、力を使用することができていなかったが紅の楔を得てからはコアの力をある程度は扱えるようになった。
戦闘スタイルは、扶桑刀「烈風丸」と拳銃射撃による白兵戦を得意とするが、ウィッチのようにシールド使用することはできないため基本は戦闘には参加せずにバックアップに回っている。