ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第6話になります。
先日の夜間戦闘を終えて、ユースティアナたちは執務室に呼ばれていた。
零治の座る机の前にはユースティアナとクロエ、そして使い魔の翼が頭部に生えたベアトが立っている。
「……先日のアルカ・ネウロイはコードネームジャッジメント(審判)でした」
「そうか……報告ありがとう。戻っていいぞ」
「はい」
「行こユースティアナさん」
「うん」
そう口にして3人は踵を返して執務室を出ていく。
室内には零治と直人だけが残っていた。
ナンバーXXのコードネーム「ジャッジメント(審判)」。
「はぁ……最近出撃が多くて整備がギリギリだな」
「だったら人員の申請しろよ。お前がロアノークさんに言えば1人や2人来るだろ」
「それができないから、こうなってんだよ」
テーブルに置かれたコーヒーを飲み、伸びをする。
「それに、お前だってそれが無駄だってことはわかってるだろ」
この部隊の実態は特殊任務のために作成された戦闘用のウィッチ隊だ。
急造な上に人員や物資は最低限のため、こうして連戦が続くとしわ寄せが来るのだ。
「その割には補給物資に扶桑品も混ぜてもらってるよな。わざわざ仕入れるの大変だってのに」
「あれはナナリーが厚意でやってくれてるだけだ。それより、お前はランカスター試運転しとけよ」
「わかってる……お前も無理すんなよ」
直人も執務室を後にする。
部屋には零治だけが残っているのだった。
3日後、軍の第二格納庫にてランカスターの発進準備が進められていた。
ヨハンとアビゲイルが物資を積み込む。
「よし、すべて積み込みも終わったな」
「琴村さーん。積み込み完了しましたよ!」
「こっちも発進準備できてます零治さん」
続くように操縦席で確認を進めていたベアトが声を上げる。
「よし。いくぞ!」
ランカスターはガリアに向けて飛び立つ。
「私、ガリアに行くの初めてなんですよね」
「そうなんだ。私はガリア出身だからいろいろ詳しいんですよ!」
ユースティアナとクロエは会話に花を咲かせている。
「そうなのか。私たちは何度か行ったことあるよな、アビー」
「うんうん。501の人たちがガリア解放してくれたからそのあと遊び行ったことあるよ。ラーヴァは?」
「わ、私ですか?私も、ガリアは初めてなんです……」
話を振られソフィアは戸惑いながらも返答をする。
かつてガリア共和国はネウロイに占領されていた。
だが、2年前501統合戦闘航空団の活躍によって、ネウロイの巣の破壊に成功した。
今は復興が進められ人々が生活できるほどにまで回復している。
「そうなんですか?ガリアに行くの楽しみですよね」
「遊びに行くわけじゃないんだぞ、ローゼンクロイツ」
「いいじゃんいいじゃん楽しまなきゃ!」
注意するような言葉を口にするヨハンとは真逆にアビゲイルは観光気分と言わんばかりであった。
「ラーヴァさんは行ってみたいところとかありますか?」
「そうですねー、エッフェル塔とか見てみたいです」
「あ、そこはですね……」
クロエは言葉を濁す。
そんな様子に首をかしげていた。
「問題、ありました?」
「今のエッフェル塔はネウロイの攻撃で折れちゃってるんだよねー、復興が進んでいるとはいえ今も直ってないんだ」
「そうだったんですか。それでも、私は見てみたいな」
「なら行きましょう!みんなで!」
ソフィアの言葉にユースティアナが声を上げる。
「観光している時間はありませんよ皆さん。任務なんですから」
顔を出したベアトは釘を刺すように注意した。
彼女はどちらかといえば真面目な性格している。
これから戦闘のために行くためだからか、緊張感を持っているのだろう。
「す、すみません」
「せっかく行くんだから甘味くらい食ってきてもいいんじゃないか?」
「れ、零治さんまで何言ってるんですか!まあ、行ってもいいなら行きますけど……」
性格は昔からまじめだが、甘味には目がないのだ。
それは今も昔も変わらないようだ。
それから時間が過ぎ、ガリアの大地が視認できるほどの空まで来ていた。
「見えてきたぞ」
「あれが、ガリア……ん?外にウィッチがいますよ?」
「きっと哨戒任務に出ていたウィッチですね。解放されたといってもまだまだ油断のできない時期ですから」
その説明を聞いて納得したのかユースティアナは首を縦に振る。
運転席では零治が手続きの通信を送っていた。
「……はい。誘導をお願いします。入国も問題ないから誘導に従ってくれ」
「おう」
数十分後、ランカスターはガリアに到着する。
ユースティアナたちもガリアの大地を踏みしめていた。
「ここがガリアですか……」
「うう……疲れた」
「運転ご苦労さん。お前も体鍛えたほうがいいかもな」
「零治!直人!悪かったわねわざわざガリアまで来てもらって」
こちらに向かって歩いてきたのは大人びた見た目の女性であった。
「別に気にしてないよナナリー。これが俺たちの仕事だから」
「顔合わせるのは1か月ぶりですね、ロアノークさん」
彼女の顔を確認して2人もそれぞれ名を口にする。
「ベアトさん。琴村さんたちと話しているあの人って?」
「ああ、ナナリー・ロアノークさんだね。私や零治さんたちとは付き合い長いんだ」
「ベアトさんともですか?」
「うん。軍でも結構偉い人なんだ。零治さんの上官ってところ」
そんな説明を聞いて、再び視線を向ける。
「アルカ・ネウロイは2体と聞いていたけど他には発見されているのか?」
「いいえ、連絡通りの2体だけよ」
「なら数日で帰れそうだな。といってもそう何度も戦闘はできないぞ。ここじゃGrow作るための施設もない」
「わかってるわ。だからあなたたちはアルカ・ネウロイ対応をお願い」
2人とも頷く。
すると、今までと同様に感覚的に反応を感知する。
「どうやら現れたようだな……みんなを集めろ」
「っ!来てすぐかよ。おーい集合!」
直人はうんざりしているのか表情を歪ませる。
「アルカ・ネウロイだ。場所は街の上空。出撃メンバーはガリアの地理に詳しいクロエ、あとはユースティアナとラーヴァでいく」
「私もですか?」
こちらの指示にソフィアは質問で返す。
「ああ。街の上空での戦闘になるから短時間で撃墜する必要がある。ジェットの加速で一気に現地に行ってもらう」
「……了解しました」
「行こうクロエさん、ラーヴァさん!」
「うん!」
「は、はい!」
ウィッチたちはGrowを投与し、各自ストライカーユニットを装着する。
3人が飛翔していく姿を見つめていた。
サイレンが鳴っていないということはやはりブリタニアと同様にレーダーで感知できていないようだ。
「お2人とも全速力で向かいますので離さないでくださいね」
「了解です」
「ウィンド!」
手を握るとジェットストライカーユニットに魔力を流し込む。
同時に周囲に風が吹き抜けた。
するとジェットのエンジンが火を噴き、通常のストライカーでは不可能な超加速を始める。
さらに彼女の固有魔法「風」によって、体の周囲に風を纏うことで空気抵抗を減らし、よりその速度を上げることができるのだ。
「つきました!」
「……」
2人とも声が出なかった。
通常なら数十分かかる距離を自分たちはたった数分で移動していたのだ。
「これがジェットの加速……すごいですね」
「ユースティアナさん、あれ!」
クロエの声に振り返ると確かに人型ネウロイの姿があっった、腕部にもアルカ・ネウロイを表すVの文字が刻まれている。
おそらくあれが、零治が感知したアルカ・ネウロイであろう。
Vということはコードネームはハイエロファント(教皇)であることを理解する。
「援護お願いします!」
ユースティアナが接近し銃を構える。
ハイエロファントもこちらに気づいたのか、声にならない奇声をあげた。
「——っ!」
攻撃を開始する。
放たれた銃弾がハイエロファントの腕に命中し、放たれたビームをユースティアナはシールドで防御する。
クロエとソフィアもそれぞれ攻撃を仕掛けるハイエロファントに攻撃が命中し、さらに大きな奇声を上げた。
「よし、このまま!」
「待ってユースティアナさん」
攻撃を仕掛けようとする自分を制止したのはクロエであった。
空中で停滞するとアルカ・ネウロイがまばゆい光を上げる。
「これって」
「あの時と同じ……形状変化?」
見覚えのあるアルカ・ネウロイの反応。
そうハングドマンの戦闘時に見せた人型から大型の航空機への形態変化である。
ハイエロファントの姿は航空機のような形状に変化していた。
「狙い撃ちます」
スコープを覗きハイエロファントを捉える。
しかし、大型に変化したことでビーム攻撃が激しくなる。
シールドで防御しているものの次々に放たれるビームが彼女を襲う。
ついにクロエのシールドをビーム攻撃が破り、大きく後退する。
ハイエロファントはそれでも標的を変えることはなく、彼女へ攻撃を続ける。
「クロエさん!」
ユースティアナもクロエを守るために加速する。
しかし、すでにハイエロファントからビームは放たれようとしている。
間に合わないことはその一瞬でわかった。
「だめ……!」
攻撃が放たれる。
クロエも思わず目をつむってしまう。
しかし、体に痛みや衝撃もない。
再び瞼を開くとそこにはソフィアの姿があった。
シールドを展開して攻撃を防いでいたのだ。
「大丈夫ですか!?」
「ラーヴァさん、ありがとう」
「ローゼンクロイツさん攻撃を!」
「はい!ティア!」
「わかってるわよ!」
人格が入れ替わり、ティアは固有魔法である「魔力放出」を使用する。
体が青白く発光し、加速していく。
「はぁぁ!」
銃口から弾丸が次々に放たれ、ハイエロファントの装甲を抉っていく。
こちらの猛攻によって激しかったビーム攻撃が止まる。
「よし、このまま!」
その瞬間を逃すことなく、ソフィアもフリーガーハマーのトリガーを引いた。
放たれたミサイルが次々に命中。
誘爆し、ネウロイの持つ赤いコアが露呈する。
「……」
立て直したクロエが再びスコープを覗き引き金を引いた。
放たれた銃弾はコアを貫通し、一瞬の発光とともにネウロイは光の粒子となって消滅する。
「よし!アルカ・ネウロイ撃破!」
「ラーヴァさんが守ってくれたからです!」
「仲間なんですから、当然です」
クロエが感謝の言葉を投げるが、ソフィアが首を横に振る。
「さっきはラーヴァさんがいなかったら……本当に危なかったです」
「そうだよ!ラーヴァさんがクロエさんを守ってくれたから3人とも無事でいられるんだよ、ありがとう!」
「そんな感謝されると照れますね……」
3人とも空で笑い合う。
「アルカ・ネウロイの反応消滅を確認した。3人とも戻ってくれ」
「了解しました。戻りましょう!」
「はい」
「うん」
再び出撃地点に戻るとすでにランカスターは格納庫内に移動していた。
一緒にストライカーユニットも並べられている。
室内には、何かの話をしているのか零治やナナリーの姿が見てとれた。
「出撃ご苦労さま。けがはないか?」
「はい。今回も無事生還しました!」
ユースティアナが敬礼して返答する。続くように2人も問題ないことを伝える。
「次の指示は追って通達するから宿舎で待機していてくれ」
「了解!」
「了解です!」
「了解しました!」
3人を見送ると再び顔をナナリーのほうへ向き直る。
「あの子がローゼンクロイツさんね。Growなしでもあなたのストライカーユニットを扱えるっていう」
ユースティアナの背中を見つめてそう口にした。
肯定するにように頷く。
「まあ、これからもアルカ・ネウロイの対応はあなたたちに任せるからよろしくね」
「はい」
「了解です」
話を終えて、零治たちも格納庫を後にするのだった。
すでに日が傾き、空は赤く染まっている。
宿舎の部屋でウィッチたちは待機していた。
「……はぁ」
「どうかしましたか?ユースティアナさん」
「べ、ベアトさん!いえ、何でもないです!」
不意に声を掛けられ、体をびくつかせる。
視線の先にはベアトリスの姿があった。
いつもと同様に頭部には使い魔の鷹の翼、腰には尾が確認できた。
前から少し気になっていたことだった。
彼女は出撃以外の待機や日常生活でも今のように使い魔と融合している。
いくら警戒しているといってもこんなことがあるのだろうか。
「……あの、ベアトさんは——」
そう口にした時、部屋の扉が開かれる。
「全員そろっているな。とりあえず警戒態勢は解除だ。明日の早朝までは自由行動で構わない」
「すまんがベアト、少し付き合ってくれるか?」
扉を開けたのは零治と直人であった。
「は、はい!ごめんなさい、話はあとで聞きますね」
「いえ……」
3人が再び、部屋を後にするとユースティアナたちだけが残っていた。
「自由行動みたいだし、食事でも行きましょうか?」
「そうだね。ラーヴァさんも行こ」
「うん」
そうしてユースティアナたちも部屋を後にするのだった。
ちょこっと設定紹介
ウィッチ隊
・ソフィア・レオニード・ラーヴァ少尉(オリジナル)
性別 : 女性
年齢 : 15歳
身長 : 150cm
体重 : 42kg
生年月日 : 7月19日
魔法力 : 中
使い魔 : シベリアンハスキー(シルビア)
固有魔法 : 風