ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
アサルトウィッチーズの完結編『LASTDANCE』第3話となります。
では、本編をどうぞ。
人型ネウロイとの交戦を得て、ユースティアナたちの乗るランカスターはブリタニアに帰投する。
「戻ってきた……」
吹き抜ける風を全身に感じていたユースティアナが小さくつぶやく。
「うーん……なんか数か月間離れただけなのに懐かしく感じるなー」
「そうですか?」
「みんなと別れた後、私たちは3つも部隊を転々としたからな」
「えー。そんなにですか?」
その説明に少し驚きの表情を浮かべる。
「あ、ユースティアナさん!」
聞き覚えのある声と共に衝撃が体を襲う。
「く、クロエさん?どうして?」
「うん。ちょうどブリタニアの近くで戦闘になって私も一時的にここにいるんです」
「わーお。なんて偶然」
「確かにな」
アビゲイルとヨハンも2人の様子を静かに見つめる。
「積もる話は後よ。あっちも来たみたいね」
ナナリーはそう口にして視線を海の方へと向ける。
すると見覚えのある空母がブリタニアに入港した。
「ん?あれは、加賀……なのか?」
「僕たちが前にウォーロックやウィザードと戦った時のやつだよね?」
2人共首を傾げる。
彼女たちだけではない。
ユースティアナやクロエも同じ様子であった。
「どうして?」
「ユースティアナさん、あれ!」
「……ソフィアさん?それにフラガラックさんも」
加賀の甲板にいた2人の存在に気づいた。
彼女だけでなく、クロエたちも同様であった。
「ただいま戻りました」
ヴィレッタが敬礼して報告する。
「うん。それで零治は?」
「まだ艦内に」
「今戻った」
「お待たせしました」
ナナリーの質問に返答するように零治とウルスラが降りてきた。
「ん?」
ふと、何かに気づいたように零治がユースティアナに視線を向ける。
「どうかしましたか?」
「ナナリー、直人は?」
「医務室にいるわ。ベアトのほうを見てるからね」
「わかった。ユース、一緒に来てくれるか?」
「へ?は、はい」
零治に腕を掴まれ、基地内の医務室へと歩き出した。
医務室に到着し、扉を開ける。
室内にはベアトと直人の姿があった。
「零治、ユースも戻ったのか」
「うん。それで、ベアトの怪我は大丈夫なのか?」
「はい。軽微なもので無理さえしなければ問題ないそうです」
ベアトは言葉通り、立ち上がり笑みを浮かべた。
「そうか。直人、俺とユースのメディカルチェックを頼む」
「珍しいな。オマエから受けたいなんて」
「いいから頼む」
「……わかった」
返答するといつものようにメディカルチェックを行う。
30分ほど過ぎ、確認を終えた直人はその結果に訝し気な表情を浮かべていた。
「直人さん?」
「どういうことだ、これ。ユースの体内からコアの反応が消えている」
「へ?何かの間違いじゃないですか?」
信じられないのかベアトが声を上げる。
「……」
ユースティアナはそんな様子をただただ見つめていた。
オラクルあるはずの自分の体内にコアが存在しない。
それは、つまりオラクルではなくなったということだ。
「それだけじゃない。零治、お前の体内にあったコアも1つなくなっているぞ。ただ、お前の方はまだ紅の楔が体に残ったままだ」
「そうか」
零治は眉一つ動かさずに頷く。
「どうしてコアが?」
「多分、あのネウロイです」
そう口にしたのはユースティアナであった。
「ハーゲンさんが私たちが交戦したネウロイは私の体内からコアを奪ったんじゃないかって言っていたんです」
「俺も同意見だ、俺のほうも交戦時にコアを取られたからな。それにユースと会った時いつもみたいなコアの反応を感じなかった」
「……」
その言葉を肯定するように頷く。
彼の言う通りだ。これまではお互いにコアを感じられたはずなのに、今はコアの反応を感じることができなかったのだ。
「で、でもこれでユースさんは普通の人間に戻ることができたってことですよね?」
「そうなるな」
「よかったですね」
「はい。……でも、零治さんのコアもどうにかしないとです」
そんな時、医務室内の電話が甲高い音を立てる。
「こちらアサルトウィッチーズの鈴木直人です」
直人が電話に出ると聞き覚えのある声が響く。
「直人。そっちに零治が行っているでしょ?検査が終わったら隊長室に来るように伝えて」
「了解です」
受話器を置いて視線を戻す。
「ロアノークさんが検査終わったなら隊長室来いだとよ」
「すぐに行くつもりだったけどな。行こう」
「「はい!」」
4人は医務室を後のする。
隊長室の扉を開くとすでにナナリーやアサルトウィッチーズの顔ぶれがそろっていた。
「ベアト、体は大丈夫?」
「はい。これくらいなら出撃にも問題ないですから」
「そう」
顔を確認して問題ないと判断したのか彼女は再び視線をこちらに戻す。
「それで零治たちの検査結果は?」
「ちょっと待てナナリー。なんでマロニーがここにいる?」
零治は室内にいたマロニーを睨む。
「彼には情報提供者として来てもらったの」
「情報提供?」
零治は首を傾げる。
「直人、結果を教えて」
「……結論から言えば、ユースのコアは体内から消えている。そして零治のほうは2つあった内の1つが消えていた」
「ってことは、やはり奴らとの戦闘でコアを奪われたってことか」
「はい。そうみたいです」
ヨハンの言葉を肯定するように頷く。
「でも、琴村さんのほうはまだコアが残ってるってこと?」
続いてアビゲイルが質問する。
「そうみたいだ」
「えー、じゃあどうするの?」
「どうすると言われても、今はあのネウロイをどうにかしなきゃならないからな。それと気になるのは俺やユースがあのネウロイの接近を感知できたってことだ」
「それのどこが変なんですか?」
「DSであるユースティアナさんたちが感知できるコアということはアルカ・ネウロイの可能性があるということですね」
クロエの質問にソフィアが返答していた。
納得したのか彼女は再び視線をこちらに向ける。
アルカ・ネウロイはタロットカードの22種類を元にしているDSがネウロイ化した特殊なネウロイである。
そして、DSとアルカ・ネウロイはお互いのコアを感知できる存在なのだ。
「だけどアルカ・ネウロイは全部私たちが討伐したから他にはいないはずじゃ」
「そのはずだ。だから奴らが一体何なのか……」
「それについては私が話そう」
「なに?」
マロニーが進言したことで零治が顔を上げる。
そんな時だった。
隊長室の扉が開け放たれる。
「私が来たー!」
「おう。全員そろってんじゃん」
「あ、姉貴?」
「グラハムさん?」
そこに立っていたのは鈴木直葉とユリウス・グラハムであった。
「まったく誰も出迎えてくれないし、みんな集まってどうしたんだい?」
「いや、なんで姉貴がブリタニアにいるんだよ?扶桑に帰ったんじゃ?」
「君が年末でも帰ってこないから、顔を見るためにわざわざ来たのだよ」
直葉の様子に直人がため息をついた。
「琴村、みんな集まってるけどどうしたんだ?もしかして特務隊再結成したのか?」
「そうじゃない。色々あって今はみんなブリタニアにいたんだ」
「そうだったのか」
彼も納得したのか頷く。
「マロニー、話を続けて」
「先に言っておくが、私も確証があるわけではない。だが、あれがDSやアルカ・ネウロイと似た存在であるのなら、あれは紅の四絵札(アルカナ・フォース)と呼ばれていた存在かもしれない」
「アルカナ・フォース?」
聞き覚えのない名前に思わず復唱する。
だが、アルカナという名前を冠しているということはDSやアルカ・ネウロイと関係があるのだろうか。
「コアの研究はDSが最初ではないのだ。君たちDSよりも前に実験段階で4人の人間にコアを移植したアーキタイプが存在するという話を零央から聞いたことがある。と言っても、やはりネウロイ化したため処分されたらしいが」
「俺たちの他にDSのような研究がされていたってことか?!ナナリーは知っていたのか?」
「いいえ。私はそんな話聞いたことはないわ。マロニー、その話本当なの?」
「昔、零央から聞いたというだけだ」
その言葉に零治は頭を抱える。
「まだ、戦いは終わっていないってことかよ……」
「零治さん……」
そんな様子をユースティアナはただただ見つめていた。
「で、でも私たちにはWRがあります。あれならきっと大丈夫ですよね?」
「そ、それが……」
ヴィレッタが言いづらそうに視線を泳がせる。
「え!それ本当なんですか?」
説明を受けてクロエが声を上げていた。
「はい。コアをあのネウロイに奪われてしまって、今はWRも使用できない状態なんです」
「そんなー」
「つまり通常のストライカーで、そのアルカナ・フォースと戦闘しなきゃならないわけか……」
状況を整理していたヨハンもため息をついていた。
「零治。どうする?今回は他の部隊に任せても――」
「駄目だ!……これは俺がやらなくちゃならないんだ。俺が」
「そう、わかったわ」
ナナリーの言葉で、アサルトウィッチーズの面々は解散する。
日が沈み始め空が赤く染まり始めた頃、海岸沿いにユースティアナの姿はあった。
体内の魔力が限界を迎えたことで固有魔法の使用を止める。
「はぁはぁ……やっぱり短くなってる」
体内にあった魔力をほぼ使い果たしたことで肩で息をする。
自分の固有魔法である「魔力放出」はあまり燃費のいい魔法ではない。
それでも体内のコアの力を魔力に変換できるようになっていた自分はそれなりの持続時間を持っていた。
だが、今は約5分が限界だった。
「どうしよ……」
思わずため息をついて、肩を落とす。
「ローゼンクロイツ、どうしたの?」
「ここにいるってことは訓練か?」
声のほうを振り返るとヨハン、アビゲイルが立っていた。
「はい」
「あまり無理するなよ」
「あのネウロイとの戦闘でコアも取られちゃったんだし」
「そうなんですけど、それよりも私の固有魔法のことで悩んでで……」
「「固有魔法?」」
2人は首を傾げていた。
「実は……」
現状を打ち明ける。
「そういうことか」
こちらの説明を聞いて、ヨハンは納得したように頷く。
「私、どうしたら……」
「そうなると、ローゼンクロイツに必要なのは『技術』なのかもね」
アビゲイルがそう口にする。
「技術、ですか?」
「うん。たとえば固有魔法の使い方とか、ヨハンみたく剣術とかね」
「アビーの言う通りだな。私たちもそういう『技術』面を伸ばして今があるわけだしな」
「あの!ウィリアスさん、ハーゲンさん、私にその技術を教えてくれませんか!?」
「「……」」
お互いに顔を見合わせ再び視線をこちらに向けた。
「それは構わないんだが、数日の訓練でどうにかなるものでもないからな、正直あのアルカナ・フォースとかいうネウロイとの再戦までにどうにかなるかはわからないぞ」
「でもさ、付け焼刃でもやるしかないんじゃない?ヨハンいつも言ってるじゃん。じゃあまずは僕が固有魔法の使い方を教えるよ」
「お、お願いします」
ユースティアナは深々と頭を下げていた。
「ローゼンクロイツは固有魔法使うときにいつも全力で使用してるんじゃないかな?」
「はい。ウィリアスさんもそうじゃないんですか?」
「僕も全力で使用するときもあるんだけど、あえて力を抑えて使用することもあるんだ」
「それって意味があるんですか?」
首を傾げる。
彼女の言う通り、普段の戦闘では魔力放出を全力で使用している。
自分の他のウィッチもそうであると思っていたからだ。
「そう思っちゃうよね。簡単に言えば、力をうまくコントロールして強弱をつけるってことだよ」
「強弱……」
「さっき持続時間が短くなったって言っていただろ?だから強弱をつけて飛行中の持続時間の延長と的確なタイミングでの最高出力を発揮できるようにするってことだな」
「そゆこと!細かい技術を言っても身に着けられないから、これが一番早いと思ってね」
説明を聞いて深く頷く。
確かに、全力での持続時間は5分だが、出力を抑えて攻撃や防御のようなタイミングでのみ最高出力を出すことができれば、多少は持続時間を延長することができるかもしれない。
「や、やってみます!」
「よし!じゃあやってみよう!」
3人は再び訓練を開始するのであった。
ブリタニア基地に停泊していた加賀の艦内で零治とウルスラは新型ストライカーの組み立てを進めていた。
「零治さん。さっきはああ言ってましたが、あのネウロイをどうやって見つけるんですか?」
「前にもユースを散策するってことがありましたから、その時と同様にエリザベートのナイトウィッチとしての力があればなんとか見つけ出せるはずです」
「……どちらにしてもWRが使用できない以上はこれの完成を急がないとですね」
彼女の言う通りだ。
これまではWRというストライカーによってなんとか少数でネウロイを討伐してきたが、そのWRも魔導エンジンに使用していたコアを失ったことで使用不可になってしまっている。
「お、いたいた」
「グラハムか」
格納庫にユリウスとヴィレッタが現れる。
「まあ、俺も元アサルトウィッチーズのメンバーなわけだしな。手伝うぜ」
「助かるよ。フラガラックも悪いな来てもらって」
「いえいえ。私には戦闘よりもこちらが得意ですから」
4人で組み立てを続けいると、
「にしてもWRはコアはなくったとはいえ、他の部品は無傷なんだろ?なら魔導エンジンを普通のやつに変えちまえばいいんじゃないのか?」
「それをやるなら、通常のストライカーと変わらないだろ」
「……それもそうか」
ユリウスは新型ストライカーの設計図を見直して、ため息をつく。
「琴村さん、ブラッキーは一緒じゃないんですね」
気づいたように彼女が口にした。
零治も周囲を見回すが、確かにいつも自分の近くにいた黒狐「ブラッキー」の姿はない。
「もしかしたらユースのところにいるのかもしれないな」
「ブラッキーって直葉少佐の使い魔だよな。あいつ、まだお前の所にいるのか」
「うん。なつかれたのかわからんが、ずっと一緒に居たな」
「ほほう」
ユリウスだけでなくヴィレッタも少し興味深いと言わんばかりの表情を浮かべているのだった。
ブリタニア基地にアサルトウィッチーズのメンバーが到着して3日が過ぎた。
しかし、未だにユースティアナたちはアルカナ・フォースを見つけ出すことができてはいない。
「エリザベート。今日も頼む」
「はい」
早朝から哨戒任務に出ていた零治、彼を抱えるクロエ、付き添いのソフィアはナイトウィッチとDSの感知能力でアルカナ・フォース探しを行っていた。
感知範囲を広げてネウロイを探知している中、
「……っ!」
零治が何かを感じ取ったように目を見開く。
一瞬だが、コアの反応の他にネウロイの巣のような積乱雲が見えた。
「見つけた……」
「本当ですか?」
「方向は……ガリアの方か?」
「ガリア?それなら早く倒さないと!」
ガリア共和国出身のクロエは焦るように飛行速度を上げる。
「く、クロエさん。落ち着いて!ガリアがネウロイの攻撃を受けているって連絡はないみたいですから」
「でも……」
彼女が心配する気持ちもわからなくはない。
ガリアは一度ネウロイに占領されてた。
現在は501統合戦闘航空団(ストライクウィッチーズ)の戦果によって解放に成功した国なのだ。
「エリザベート。もう少しガリアに近づいてみよう」
「琴村さん!いいんですか?」
「大丈夫だ。3人で戦闘しようってわけじゃない」
ソフィアを何とか説得し、3人がガリアに向けて飛行していく。
そしてコアの接近と共に零治の視線に先ほど感知した積乱雲が現れる。
「あれって積乱雲?」
「違う。あれはネウロイの巣だ。あの中からアルカナ・フォースの、コアの反応を感じる」
「ということはあそこに……」
クロエとソフィアもただただその巣を見つめていた。
ブリタニア基地へと帰投した零治はウィッチたちを集める。
「零治さん!アルカナ・フォースの巣を見つけたって本当ですか?」
ユースティアナが格納庫に入室すると、零治やナナリーがこちらへと振り返っていた。
後に続いてヨハンやアビゲイルも到着する。
「ああ。全員そろったから説明するぞ。まずガリア海域から少し離れた空にアルカナ・フォースの巣を見つけた」
「ということはそこにあのネウロイがいるということですね」
ヴィレッタの言葉に零治は頷く。
「じゃあ、すぐにでも行きましょう!はやくあのネウロイを――」
「いいや、作戦決行は明日だ」
「どうしてですか?今の状況なら早く動いた方が……」
零治の言葉にヨハンが質問をする。
「今、新型のストライカーを作成していて、今日中には完成するので明日まで待ってもらうように私が言ったんです」
そう口にしたのはウルスラであった。
彼女の説明の通り、新型のストライカーユニットを制作しているという話は聞いていた。
「それにやつらもアルカ・ネウロイと同じような存在なんだ。できる限りの準備は必要だ」
「急いで行って返り討ちにあっても意味ないしね」
「みんな。すまないがもう一度だけ俺と一緒に戦ってほしい」
零治が深々と頭を下げる。
「零治さん。みんな一緒に戦うためにここにいるんです。だから、顔を上げてください」
「ベアト」
「必ずあのネウロイを倒して、みんなでここに帰ってきましょう!」
「ユース。ありがとう」
「はい!そして、零治さんのコアもなんとか取り除かなきゃ……」
ユースティアナはそう口にすると零治の顔を見つめているのだった。
ちょこっと設定紹介
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