ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第7話になります。
ガリアに到着して一夜明けた朝。
ベアトリスは宿舎の部屋で目を覚ました。
室内では彼女の他にも同じ部隊のウィッチたちがまだ眠っているのか小さな寝息が聞こえる。
「ウィンディ……」
小さな声で使い魔である鷹の名前を呼ぶ。
しかし、反応はない。
いつもなら使い魔であるウィンディが肩や腕に乗ってくるが、今日はくる気配がない。
「……?ウィンディ?」
再び名を口にする。
だが、静寂だけが室内に残っていた。
「ベアト、さん?どうかしましたか?」
こちらの声で起きてしまったのか隣で眠っていたユースティアナは眠い目をこすり、体を起こす。
「あ、ごめんなさい。起こしちゃった?」
「いえ、早寝早起きなので……」
ユースティアナはベアトを見つめて、言葉を切った。
これまで見ていた姿と異なり、使い魔の特徴がないその姿に思わず見とれていたのだ。
「そっか。ユースティアナさん悪いんだけど、直人さんたちを呼んできてもらえる?」
「鈴木さんをですか?わかりました」
ベアトのお願いを快く引き受ける。
ブリタニアの軍服に着替えて部屋を後にする。
一方、軍の格納庫内では零治がストライカーユニットと銃の整備を進めていた。
「よし、これでエリザベートとラーヴァのストライカーユニットは終わりと、残りはユースティアナの……ん?」
最後のストライカーユニットとなるユースティアナのストライカーユニットの元へと向かう。
隣にあったベアトのストライカーユニットの固定装置には鷹が止まっていることに気づいた。
右の目元に小さな傷があり、その紅い眼と目があう。
「ベアトの使い魔か。なんでこんなところに?」
数年以上一緒にいるのもあって、それがベアトの使い魔である鷹「ウィンディ」であることは、すぐにわかったのだ。
なぜここにいるのかはわからないが、整備が終わったら連れて行くべきだろう。
そう思いたつと、再びストライカーユニットの整備を続ける。
こちらが整備を続ける中でもウィンディはこちらを見つめていた。
「よし」
十数分後、整備を終えて、道具を片付ける。
相変わらず、固定装置にウィンディは止まったままだ。
「ウィンディ。ベアトのところに戻るぞ」
こちらが腕を伸ばすとウィンディは鳴くこともなく腕に飛び乗る。
そのまま零治も格納庫を後にするのだった。
ユースティアナは事前に聞いていた部屋の前に立つ。
ほかの部屋と変わらない扉をノックし、名前を呼ぶ。
「鈴木さーん。起きてますかー?」
「おうローゼンクロイツか。どうした?こんな朝早くに?」
すでに軍服に身を包んだ直人から現れる。
「おはようございます。ベアトさんが鈴木さんを呼んできてほしい言われたので」
「ベアトが?……何か、変わった点はあったか?」
「変わった点ですか?えっと」
その質問に対して考え込むように顎に手を当てる。
変わった点……最近は同じ部隊で毎日のように顔を合わせていたが変わった点なんてあっただろうか。
普段とそう変わらなかったようにも見えた。
そこでふと思い出したように口を開く。
「あ、いつも使い魔の翼が頭にありましたけど、さっきはなかったと思います。寝起きだったのでそれでかもしれませんが」
「……そういうことか。わかった、ちょっと待ってろ」
数分後、直人はカバンを手に再び部屋を出る。
「ベアトさん、調子悪いんでしょうか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが……」
その質問に歯切れの悪い返答をする。
部屋に到着し扉を開くとウィッチたちはすでに起きていた。
「鈴木さん?おはようございます」
「おはよう。ベアト、ウィンディが見つからないんだって?」
「直人さん。そう、みたいなんです」
直人の質問にベアトは返答する。
ほかのウィッチはすでに着替えを終えていたが、ベアトはまだ寝間着姿であった。
「そうか……俺にはウィッチの使い魔は見えないし、戻ってくるのを待つしかないか。零治はもう少ししないと戻ってこないからな」
「あの、鈴木さん。何かあったんですか?」
「いや、問題ない。いつまでもこの格好でいるわけにもいかないし着替えさせるか」
「え?」
その言葉に思わずそんな言葉が出る。
直人は彼女の服に手を伸ばす。
「ちょ、ちょっと鈴木さん!」
「何しているんですか!?」
「何って、着替えさせるんだろうが」
「うわー鈴木さんのエッチー!」
「は?」
ウィッチたちの罵倒が響く。
その声は廊下まで響き渡っており、整備から戻った零治は首を傾げる。
「おい、朝から何騒いでるんだ?」
部屋の扉が開け放たれる。
視線がこちらに向けられた。ウィッチたちの他に直人の姿が室内に確認できた。
「琴村さん!?」
「琴村さん、鈴木さんは女の敵です!」
「違うっての!零治、俺を弁護しろ!」
「どういう状況だよ……」
そんな光景に思わずそんな言葉をつぶやいた。
1時間後、各自の説明を聞き終え、ため息をついた。
「状況は大体わかった。ベアト、ほら」
その言葉をともに肩に乗っていた鷹に移動を促す。
先ほどと同様に鳴くこともなく、鷹のウィンディはベアトの肩へと移った。
「ウィンディ、よかった……」
その言葉と共に彼女が光に包まれる。
頭部には翼、腰には尾が形成されていた、同時に閉じられていた瞼を開ける。
「大丈夫か?」
「はい、問題なく見えてます」
お互いに頷く。
どうやら問題ないようだ。
「あの、琴村さん」
「どうした?」
「使い魔見えているんですか?」
そんな様子を見ていたユースティアナが質問する。
使い魔はウィッチでなければ会話をすることどころか、視認することすらできない。
彼が使い魔を視認することなどできはずがないのだ。
しかし、彼の行動からまるで視認できているようにも見えた。
「ああ。実は俺にも見えているんだ」
「そうなんですか!?」
「これも特異体質の1つでな。みんなの使い魔も見えていたよ」
「すごい体質ですね」
「琴村さん一体何者?」
「別に。使い魔が見えたり、アルカ・ネウロイを感知できるってだけだ」
彼女たちからの質問を遮るように説明をする。
「今日は各自ガリアを見て回ってくるといい。今のところアルカ・ネウロイの反応もないようだしな」
「いいんですか?」
こちらの言葉にユースティアナが聞き返す。
「せっかくガリアに来たんだしな。ただ、アルカ・ネウロイの出現が確認でき次第、招集はかけるからインカムは持って行ってほしい」
「了解です!」
「やったーガリア観光だー!」
「ベアトさんも行きましょう!」
「うん!」
朝食の後、各自は宿舎を出てガリアの街へと繰り出していく。
「俺たちはどうする?」
「んー基地の紅茶とコーヒーの在庫が少なかったし、ここで買ってくか」
「だな」
零治たちもその場を後にする。
ユースティアナたちはガリアの街を進んでいた。
「数年前に解放されたとは聞いていましたが、復興もだいぶ進んでいるんですね」
「そうですね。501統合戦闘航空団の方々には感謝してもしきれません」
目を輝かせるこちらを見て、クロエがつぶやく。
「でも、今はその501統合戦闘航空団も解散しているんですよね?」
「そうらしいですね。2度もネウロイの巣を破壊したなんですごい功績です」
「私たちもいずれそれくらいの活躍をしたいものだ」
「えー、僕は楽に過ごせるほうがいいなー」
各ウィッチたちも501統合戦闘航空団の活躍について、語り合う。
501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」。
ネウロイの巣を破壊し、国を救った彼女たちの活躍は英雄譚のように各国でも語られている。
たしか、ガリアやブリタニア出身のウィッチもいたと聞いているが、今はどこで何をしているのだろうか。
「ベアトさん」
こちらが名前を呼ぶと「はい」と口にして振り返る。
頭や腰から生えた使い魔の特徴に一瞬、目がいくが顔を見つめた。
「気になってたんですが、どうして常に使い魔と融合しているんですか?」
「それ私も気になってました」
「僕も僕も!」
質問に便乗するようにソフィアやアビゲイルが声を上げる。
「えっと……」
言いづらそうに言葉を濁すベアトに、助け船を出すようにヨハンが口を開く。
「言いたくないなら無理にいうことはないんじゃないか?ローゼンクロイツたちも無理に聞くことないだろう?」
「ごめんなさい、聞いちゃまずかったですか?」
「いえ、やっぱり気になっちゃいますよね……実は私、目が見えないんですよ」
「へ?」
ベアトから告げられた言葉に思わず声を上げてしまう。
これまでそんな感じは全くしなかったからだ。
「目が見えないって……」
「あ、でも使い魔と融合しているこの状態なら固有魔法のおかげで普通に見えるんです。だから日常的にこうしていないと色々不便なので」
言葉を続けるように説明する。
ふと、今朝のことを思い出す。
確かに使い魔のいないときの彼女の目はずっと閉じられていた。
それが、使い魔と融合したときにはじめて開かれていたのだ。
「昔色々あってね。直人さんには退役を進められたけど、魔法力は弱ってなかったから軍に残ったの」
「……」
何も言えなかった。
他のウィッチたちも同様だ。全員が視線を逸らしてしまっている。
「えっと、そうだあそこのお店で休憩しませんか?」
「そ、そうですね!行きましょう!」
その状況を払拭するようにベアトが声を上げた。
続くようにユースティアナが賛成する。
同時刻、零治たちもガリアの店内でコーヒーや紅茶を眺めていた。
「おい、零治。このアッサムとかダージリンってどう違うんだ?」
「知らん。コーヒーしか飲まない俺に聞いてわかるわけないだろ」
紅茶の品種がこんなにあるとは予想外だった。
コーヒーもいくつか品種があるが、自分たちはあまり気にすることはないからだ。
「俺だって紅茶飲まねーよ。ベアトは連れてくればよかったな」
紅茶のコーナーを見つめていた直人が後悔を吐き出す。
自分たちは普段はコーヒーを飲むことはあっても、紅茶を口にすることはない。
紅茶はベアトやユースティアナたちしか口にしない上、趣向品にはお互い不介入だ。
結果的に彼女たちが普段口にしている紅茶など知る由もなかった。
「あまりベアトを振り回すのも悪いだろ」
「そういったってよー」
「もし。お二方店内ではお静かに、お願いしますわ」
「あ、すみません」
後方からかけられた言葉に振り帰り謝罪する。
「まったく」
「なんだこの女?」
「よせ、直人」
「何か文句でもありまして?」
「ぺ、ペリーヌさん……」
注意した女性とは別にもう1人の女性が姿を見せる。
ガリアとブリタニア軍の制服を身に着けているということは軍に所属しているということだろう。
「申し訳ございませんでした。友人への紅茶を選んでいたのですが、私たちはあまり詳しくなくてよかったら教えていただけないでしょうか?」
「そうですわね。紅茶も品種が色々ありますから、飲み方や好みでも変わりますわ」
「うーん」
少し考え込む。
普段ベアトが飲んでいた紅茶はブリタニアでよく好まれると昔聞いたことがある。
それに彼女はよくビスケット等の菓子と一緒に飲むことも多かった印象だ。
「ブリタニアで好まれていて、菓子類と一緒に飲まれる紅茶だったと思います」
「ブリタニアでですか……リネットさんはブリタニア出身ですから詳しいのではなくて?」
「なら、セイロンですね。他にもアールグレイなんかも好まれますね」
「ほう、詳しいですね」
説明を聞いた直人が興味深そうに茶葉を見つめる。
「ありがとうございます。あのお2人は軍人なのですか?その制服からガリアとブリタニアの所属のウィッチとお見受けしますが」
「はい。リネット・ビショップ曹長です」
「ペリーヌ・クロステルマン中尉ですわ」
2人は自己紹介するように名前を口にする。
「見覚えあると思ったらこの2人有名なスーパーエースじゃねーかよ」
「ガリアいるって話は聞いてたけど、まさかこんなところで本人に会えるとはな」
目の前にいるウィッチの名を聞いて驚いた。
この2人は501統合戦闘航空団のメンバーだ。
そんなスーパーエースが自分たちの前にいるのだから驚きもするというものだ。
「お二人も軍に所属している方ですよね?その制服は扶桑のものですし」
「はい、琴村零治っていいます」
「鈴木直人です。ウィッチであるお二人に比べれば俺たちはしがないストライカー整備兵と衛生兵ですね」
直人は思っていないであろう、皮肉そうな言葉を口にする。
「そんなことありませんわ。ストライカーユニットの整備は私たちウィッチにとっては命を預ける相棒を整備していただくのですから重要な役目ですわ」
「それに衛生兵だって大事な役割です。治療魔法を使用できるウィッチは少ないですから、医療知識のある方は軍では特に求められると思います」
「そう言ってもらえると俺たちのような者でも救われます」
現役スーパーエースのそんな言葉は自分たちのような非戦闘員にはとても心地のいいものだった。
必要なものの買い物を終えて、店を出る。
「俺たちはこれで」
「はい。さようなら」
お互いに別れ、帰路につく。
「琴村さん……」
「ペリーヌさん?どうかしましたか?」
「え、いえ。琴村さんの名前どこかで聞き覚えがあると思ったのですけど」
「言われてみれば」
2人とも考え込むように首を傾げる。
「あ、魔導ダイナモの設計者が琴村って人だってミーナさんが言っていたと思います」
「魔導ダイナモの……もしかして彼が?いや、まさかきっと同姓同名の他人ですわよね」
「どうでしょうか。でも、ストライカーの整備兵って言ってましたしきっと別人ですよ」
「そうですわよね。私たちも帰りましょうリネットさん」
一度振り返り零治たちの背中を見つめたあと、再び2人は歩き出すのだった。
ちょこっと設定紹介
隊長兼ストライカーユニット整備兵、新規兵器開発担当
・琴村 零治 中尉(オリジナル)
性別 : 男性
年齢 : 19歳
身長 : 167cm
体重 : 60kg
生年月日 : 2月18日
魔法力 : -(一般人のためなし)
使い魔 : -(一般人のためなし)
特異体質 : アルカ・ネウロイ感知、使い魔の視認
主な開発兵器 : 新型ストライカーユニット「WR」6機
魔導ダイナモ(設計のみ)