ストライクウィッチーズ オルタナティブ アサルトウィッチーズ 作:UNIMITES
第9話になります。
ベルギカ王国のサントロン基地。
執務室では電話のコール音が鳴り響いていた。
「はい。こちらサントロン基地です」
「ガリアのペリーヌ・クロステルマンです」
「ペリーヌさん?ミーナです。珍しいですね、そちらから連絡してくるなんて」
珍しい電話の相手にミーナは少々身構える。
「はい。少し確認したいことがありまして……」
「確認したいこと?なにかしら?」
「琴村、零治さんという方についてです」
「え?琴村さん?」
彼女の口にした名前が予想外だったため思わず聞き返してしまう。
もちろん、その名に聞き覚えはある。
琴村零治。先の作戦にて、魔導ダイナモの設計を担当していた技術者だからだ。
「どうして彼のことを?」
「先日、ガリアで彼に会う機会がありました。その際に、彼の所属する部隊が使用するストライカーユニットにコアが使用されている可能性があるという報告を受けました」
「なんですって!?」
思わず声を上げてしまう。
「どうした?ミーナ!」
その声に反応して1人のウィッチが執務室に入室する。
続くように2人のウィッチも入室した。
元501統合戦闘航空団所属、ゲルトルート・バルクホルン、エーリカ・ハルトマン。
そして現在、このサントロン基地に派遣されていたウルスラ・ハルトマンである。
「それで、今彼の部隊はどこに?」
「今はブリタニアの基地にいるかと」
「そう。報告ありがとう。このことは他の方に報告してますか?」
「いえ、内容が内容でしたので」
「わかりました。こちらから探りは入れてみます」
電話を終えて、受話器を置いた。
「おい。ミーナ、なにがあった?」
「トュルーデ、エーリカにウルスラさんも。今、ペリーヌさんから連絡があったの」
「ペリーヌ?珍しいね。あっちから連絡してくるなんて」
エーリカが首を傾げる。
「実はね……」
ミーナは真剣な表情で先ほどの情報を彼女たちに伝える。
「ストライカーユニットにコアが使用されている!?」
一番に声を上げたのはバルクホルンであった。
「そんなことって可能なわけ?どうなのウルスラ?」
「以前、琴村博士を主任として研究はされていました。ですが、完全な制御が不可能だったこともあって、ネウロイのコアを使用した研究は結果的に皆さんがよく知るウォーロックや魔導ダイナモの研究を最後に完全に凍結されたはずです」
ウィッチでありながら兵器研究にも携わっているウルスラはコアの研究についての情報を告げる。
「琴村博士?その琴村零治がウォーロックを作ったってのか?」
「それは違うわ、トュルーデ。ウォーロックを開発したのは琴村零央さん、零治さんの父よ」
「えー。それじゃあ親子そろってコアの研究に携わってたわけ?」
「そう、ですね……」
ウルスラはそう口にして、考え込むように顎に手を当てる。
確かに琴村親子はネウロイのコアを使用した兵器開発に携わっていた。
だが、彼が携わっていたのは魔導ダイナモの設計からのはず。
「どうかしたのウルスラさん」
「いえ、実は数年前まで零治さんは私と同じチームで開発に携わっていたんですが、魔導ダイナモの設計後に連絡が取れたくなっていたんです。もしかして、その頃からコアを使用した兵器の開発を独自に行っていたのかと思いまして」
「そう。……ってウルスラさん、琴村零治さんと知り合いなんですか?」
ウルスラの言葉にミーナが思わず質問を返す。
「はい。2年とちょっとくらいのなので短い間でしたが、ジェットストライカーの設計も彼と行いました」
「ジェットの開発にも携わってたのか。結構すごい研究者だったのかもな」
感心するように頷くバルクホルンを横目にエーリカが口を開いた。
「ならさ、ウルスラがブリタニアに行って零治って人に色々聞き出してくればいいんじゃない?」
「そうだな。私たちでは彼の顔もわからないし、ウルスラのほうが情報も聞き出しやすいかもしれんな」
「ウルスラさん。お願いできるかしら」
「了解です。では準備をして明日ブリタニアに向かいます」
ウルスラが敬礼すると「お願いします」とミーナが口にするのだった。
零治たちがブリタニアの基地に戻り、一週間の時が過ぎていた。
各国の偵察チームからの連絡はなく、本日もウィッチたちによって近海の哨戒任務が行われている。
「また、アルカネウロイが出現しない日が続いているな」
哨戒任務を終えて軍の格納庫に戻るヨハンとアビゲイルを見つめ、そう口にした。
「そうだな」
「あまり焦ってしまっても仕方ありませんよ」
そう口にしてベアトがマグカップをそれぞれの机に置く。
室内に広がるコーヒーの香りから、彼女がコーヒーを淹れてくれたことを理解する。
「サンキュー、ベアト」
「はい。零治さん、今日もアルカ・ネウロイの気配は感じませんか?」
「ああ。ブリタニアはすでに4度の出現を確認しているからな、案外ブリタニア周辺にはもう残っていないのかもな」
そう口にしてコーヒーを飲む。
アルカ・ネウロイは全部で22種類存在する。
その内4種をブリタニアで、2種類をガリアで確認し、撃墜したのだ。
「ですが、油断はできません」
「そうだぞ。零治」
「わかってるよ」
2人から視線を逸らし、再び外に視線を向けた。
そんな時、電話のコール音が響き渡る。
「はい。特務統合強襲航空団の琴村です」
「琴村さん、ユースティアナです。お客様が来ているのですが」
電話の相手はユースティアナであった。
「客?俺に?」
「はい。ウルスラ・ハルトマンさんという方です」
「なに!?」
ユースティアナの口にした名前に思わず声を上げてしまう。
直人やベアトが視線をこちらに向ける。
「……わかった。通してくれて構わない」
「了解しました」
電話を切り、一度ため息をついた。
なぜ、彼女がこのブリタニア基地にきているのかもわからかったからだ。
数分後、執務室に彼女の姿があった。
白衣を身に纏い、幼さを残す顔立ちと軍人とは思えない華奢な体つきをした少女、ウルスラ・ハルトマンである。
「お久しぶりですね。零治さん」
彼女は笑みを浮かべ、こちらの名前を口にする。
「名前呼び……なんですね」
「どうかしたか?ローゼンクロイツ?」
「い、いえ。私訓練に戻ります」
ユースティアナはそのまま執務室を後にする。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
ベアトがコーヒーのカップを置く。
ウルスラはコーヒーを飲み、一息つくと再びこちらに視線を向ける。
「なんで、俺がここにいることが分かったんですか?」
自分から話を切り出す。
「クロステルマン中尉から零治さんのこと聞いたんです。ブリタニアいるということも」
「そうですか」
ガリアでの行動は多少目立つ部分もあった。
それがやはりまずかったようだ。
「少し、安心しました」
「え?」
「零治さん。急に開発部からいなくなってしまったので、連絡も取れなかったし心配してたんです」
「今でも開発部には所属してますよ」
彼女の顔を見つめ、返答する。
自分と同じように兵器開発部に所属する彼女とは一緒に開発に携わったことはある。
ジェットストライカーの設計を最後に彼女とは別の開発部に移ったのだが。
「ここからが本題なんです。ここの部隊で運用されているストライカーユニットについてお聞きしたいんです」
ウルスラの言葉にベアトと直人の表情が固まる。
「聞きたいって、ストライカーは通常のものを」
「コアが使用されている可能性があるとしてもですか?」
彼女がこちらの返答を遮るように言葉を投げる。
「……どこで、そのことを聞いたんですか?」
「これもクロステルマン中尉から聞きました。戦闘中にストライカーの内部にコアを確認したと」
「ハルトマンさん、それは——」
直人が話に割り込もうとするが、ベアトが静止する。
「見間違いという可能性は?」
「ありえますね。なので、ストライカーユニットを分解、解析させてください。万が一という可能性がありますから」
「……そう言うと思いました」
「琴村さん!ただいま戻りました!」
執務室の扉が開け放たれる。
「おい、アビーちゃんとノックをしてから入室を……」
アビゲイルに続いてヨハンが入室する。
「え、ハルトマンさん!?」
「ハルトマン?あの501の?」
聞き覚えのある名前にアビゲイルは首を傾げる。
「ちがう。この人はウルスラ・ハルトマンさんエーリカ・ハルトマンさんの妹さんだ!でも、なんでここに?」
「えっと、それは」
「ウルスラさん、話は一対一でしましょう。ついてきてきてください」
「え、は、はい。すみません、失礼します」
そう言うと零治は執務室を出ていく。ウルスラもそのあとを追う。
「琴村さん。なんかあったんですか?」
「別に、いつも通りだ」
直人はそう口にして部屋を後にする。
格納庫に到着すると2人の視線は奥に並べられたストライカーユニットに向けられていた。
「これが、零治さんが作ったストライカーユニットですか?」
「はい」
「琴村さん?それにさっきのハルトマンさんも……?」
格納庫に入っていく2人を発見したユースティアナは身を隠してその様子見つめる。
「先ほどの話の続きです。このストライカーユニットにネウロイのコアが使用されているいう話についてです」
「え?」
ウルスラの口にした言葉に、ユースティアナは驚きを隠せなかった。
ストライカーユニットにコアが使用されている。確かに彼女はそう口にしたからだ。
「……ウルスラさんのいう通りこのストライカーユニットにはコアが使用されています」
「随分あっさり答えてくださいましたね。でも、どうして?コアを使用した兵器開発は凍結されていたはずです。それに開発用のコアだってすべて失われたって聞いてます」
彼女のいう通り、コアを使用した兵器開発は無人機動兵器「ウォーロック」、大和に搭載された大型コアコントロールエンジン「魔導ダイナモ」の運用結果から開発が打ち切りとなり、残っていたコアもすべて廃棄された。
というのが、表向きの情報だ。
しかし、その実態は異なっている。
「表向きは確かにウルスラさんの知っている通りです……でも、実態は違います。魔導ダイナモと同時進行でコアの研究、開発は俺たちが続けていました」
「どうして……これはSin(罪)の遺産のはずです、こんな研究がもしも知られれば」
「問題になるでしょう。ですが、ここでやめるわけにはいきません、俺たちにしかできないことがある以上は」
そう、アルカ・ネウロイをすべて倒すまでは戦い続けなければならない。
自分たちにしかこれはできないのだから。
「零治さんたちにしかできないことってなんなんですか?」
「話せません……今の俺たちは特務で動いているんです。ウルスラさん、今は俺を信じて何も聞かないでください」
特務である以上自分たちの目的を別部隊に他言することはできない。
「……わかりました。ですが、あのストライカーユニットを解析させてください。もちろん情報は他言しません」
「構いません、信じますよ。こちらも信じてもらうのだから」
ウルスラの言葉に零治が返答すると、ストライカーユニットの整備、解析を始めるのだった。
ユースティアナは格納庫を出ると自室へと戻っていた。
「あのストライカーユニットにコアが使用されているなんて……」
ティアが言っていたように彼が何かを隠しているとは思っていた。
だが、自分たちの使用していたストライカーユニットそのものが普通ではなかったなんて。
「琴村さん、どうして……」
このことをベアトやクロエに話すべきなのかもしれない。
しかし、彼がどうして特殊なストライカーユニットをこの部隊で運用しているのかも気になっていた。
「確かに私もストライカーユニットそのものにコアが使用されているなんて思ってもなかったけどね。どうするの?」
「私は琴村さんを信じていたい、これまで一緒に戦ってきたから。でも、どうすればいいのかわからないよ」
「……」
ユースティアナの言葉にティアは何も言うことはなかった。
「もしかしたら、これことも零治さんは知った上で何も言わないんじゃ」
視線を右腕に向ける。
自分の腕にはⅩⅦの文字が刻まれている。
それはアルカ・ネウロイの体に刻まれているものと酷似しているのだ。
以前、問い詰めたが、このことについて彼はなにもわからないと言っていた。
だが、本当は何か知っているのではないか、そんな疑心を持たずにはいられなかった。
「私たちは本当にこの部隊で戦い続けるべきなのかな……」
「ユース……」
不安に満ちた表情で空を見つめるのだった。
ちょこっと設定紹介
・無人機動兵器ウォーロック
琴村零央が設計、開発したコアコントロールエンジン搭載した無人機動兵器。
自己飛行、攻撃だけでなく周囲のコアをコントロールすることでネウロイを操作することも可能。
また、変形機構をによって高速移動に特化した「巡航形態」と戦闘に特化した「強襲形態」を取ることが可能になっている。
無人機動兵器でありビームを攻撃としているため、兵士の練度や火器の弾薬も必要としないメリットを持つ。
全3機開発されたが、いずれも破壊または行方不明となった。
零号機は501統合戦闘航空団(ストライクウィッチーズ)と交戦後、コア含めて破壊されている。
1号機は魔導ダイナモ開発に流用されたが、暴走によって零号機同様にストライクウィッチーズと交戦後、コア含めて破壊されている。
2号機は現在行方不明。
※ウォーロック、魔導ダイナモについては作者の自己解釈等が含まれているため、ストライクウィッチーズ本編とは多少異なっている可能性があります。