紅蓮の魔弾銃士   作:赤い変態

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どうも、お久しぶりです。
漸く執筆を出来るくらいに落ち着いたは良いものの、亀更新になりそうです。
それに、色々と残念な感じになってるかもしれませんので、要注意です(汗


プロローグ

「…あぁ~、疲れたぁ……」

 

軽く肩を揉み解しながら土蔵の中を見回す。

そこかしこに積み上げられた染みが目立つ本や巻物に、棚の上に置かれたある家紋が刻まれた小箱。他にも、つい最近まで使っていたと思われる家財道具などが山の様に乱雑に積まれている。

見慣れたその景色…いや、今の自分の状況を考えれば正直見るのも嫌な景色、というのが正しい表現か。

眉根を寄せ嘆息する。

土蔵の中はカビ臭く、これでもかという程埃が舞っている。加えて今の季節は夏の為、熱気も相まって恐ろしい事となっている。

 

「司ぁ~、終わったか~?」

 

その時、土蔵の外から俺が今このような事をしている原因の人物の声が聞こえてきた。

眉間に寄っている皺を更に増やし、とりあえず目当てのモノを抱えて土蔵の外へ出る。

外へと出ると直射日光が肌を焼いていくのを感じ、更に不快指数が上がっていく。

 

「おう、どうだ司。見つかったか?」

 

そこへ、すぐ傍の木陰に座りアイス食べながら涼んでいた先程の声の主が立ち上がり、こちらに寄ってきた。

白く染まった髪に甚平を着た老人。老齢の割には未だに筋骨隆々な体を保っているその姿は、毎度見る度に暑苦しく感じる。

この人こそ、先程まで俺があるモノを探す為に土蔵の中でいた原因。

俺にとって現在唯一の肉親であり、本家『高天原家』から別れ独自に発展し、主に科学魔法の研究を行ってきた家系『天津家』の当主、天津隆三である。

その爺さんが傍に寄ってくると俺は先程土蔵から取ってきたモノ―――金の装飾が施された小箱―――を爺さんに見せた。

 

「お、それそれ! 3年前に何処に仕舞ったか分からなくなってた、次元転移用魔導具が入っている大事な箱だったが、漸く見つかったか!」

「よくもまぁそんなモン、土蔵の奥底にそのまま放り込んであったな…。こちとら、家財道具や古い本の山に埋もれてたから、探すのに疲れたぞ…。

 というか、今度からはちゃんと管理しといてくれよ?」

 

もう二度とあんなとこに潜るのは嫌だかんな。なんて考えてると爺さんが「分かった分かった。ま、ついて来い」と言いながら、小箱を受け取って母屋の方へ歩き出した。

その後を付いて行き隣に並ぶと、俺は土蔵の中で漁り始めた時から抱いていた疑問をぶつける。

 

「なぁ爺さん、なんだって急にそれが必要になるって言い出したんだよ。次元転移用魔導具なんて大掛かりなモンを」

 

それは今朝、起きて顔を洗おうと洗面所に向かった時の事。

急に爺さんが後ろから現れ、真顔で「ちと探してほしいものがある」なんて言い出した。

それが、俺が土蔵の中を探索する羽目になった事の始まりだ。

…だからといって、何でこんな暑い日に土蔵に潜らせるかね全く……。

 

「お前には今まで様々な技術や知識を、そして『証』の製作方法も伝授した。故にもう旅立たせるべきと思ってな、それでコイツを引っ張りだす事にした」

 

母屋の縁側まで来ると爺さんはそう答え、縁側に腰を下ろした。

その言葉に対し俺が「そうか」とだけ答えると、爺さんは懐に手を入れ、銀の龍の顔が装飾として施されてある手の平サイズの黒い箱を取り出し俺へと投げ渡す。

 

「…これは?」

 

すかさずキャッチし、訝しむ様に投げた本人の顔を見る。

爺さんは不敵な笑みを浮かべ、手元の魔導具が入った箱を開けながら答えた。

 

「なぁに、今日から活動する事になる孫への祝いの品が入った箱だ。

 無くすなよ? 当主の『証』を入れてるのだからな」

「祝いの品……ってか、当主の『証』だと!?」

 

『証』、その言葉に反応し箱を開けて中を確かめると、箱と同様に銀色の龍の装飾が施された赤い珠が入っていた。

間違いない…、色は違うがこれは爺さんが持っていたモノと同じものが……、

 

「『古龍の珠』……」

 

天津家の歴代当主にのみに製作法の伝授を許される魔力発生機関を内蔵する宝珠であり、当主の証、『古龍の珠』がそこにあった。

 

「儂が拵えてきた4つの『証』の一つだ。個体名称は『烈龍』、属性もお前と同じ炎だから相性は問題無しの筈だ」

「おいおい、これを渡すって事ぁ……爺さん、アンタ」

「既にそれの製作法は当主になる前に伝授してしまっているからな、後になってしまったが『証』であるそれを渡す事でお前に当主の座を託そうかと思っての。

 言っておくが、元はといえばお前の学習能力が早いのが悪いのだからな? 当主としての必要条件をその年でクリアしてしまったのだから」

 

10代前半でこんな事をやってのけたのは本家の那美ちゃん以来だぞ…。なんて呟きながら箱から転移用魔導具を取り出した爺さんはそれを俺の足元に置き、起動させる。

直後に俺の足元に白い魔方陣が広がっていき、輝き始めた。

起動直後の状態から見て、後は時空を超える為の条件が満たされれば転移は実行されるだろう。

 

「…いや、まあ確かに掟通りといかずに『証』渡される前に伝授されちゃったがさぁ……」

「諦めろ。もう製作方法を伝授しちゃったし『証』も渡したんだから。本家の方にも5時間前に当主交代しますって報告しちゃったしな」

「……退路は無しってか」

「まあ活動する事には変わりないのだし、そこまで問題では無かろうが。当主という肩書を持つ事になるだけで特にやる事は変わらんだろう」

「かなり重い肩書だがな……はぁ」

 

全く問題無し、故に前向きに逝けとばかりに満面の笑みを絶やさない爺さんに対し、俺はもはや溜息をつくしかなかった。

本当、こういう所は他の分家当主たちと同じで前向き過ぎて困る。

もっとも、本家である高天原家の現当主よりはまだマシなのは救いだろう……。

 

ふと足下の魔方陣に目を向けると光は更に強くなり、やがて回転し始めてきた。

恐らく転移の前兆だ。この様子だと一応転移先が確定し、転移の為の条件も満たしたようだ。

爺さんも魔方陣に目を向け、軽く頷きながら指を鳴らした。

すると俺の胸元に小さな魔方陣が展開され、金色の龍の意匠が入った黒いアタッシュケースが現れ、俺はそれを受け止めた。

今度は何だ、と爺さんの方へ視線を送ると居住まいを正し、少しだけ真面目な表情で此方を見て口を開いた。

 

「お前も知っている、証であり魔導具でもある『古龍の珠』を正しく使う為の道具をその中に入れてある。

 他にも、お前がこれから先必要とするかもしれんモノも一通りな。

 儂からの最期の贈り物だ、正しく使えよ……『新しい当主』天津司。お前はもう一人でやれる」

 

そして最期の辺りで小さく笑みを浮かべる。

それに対し少しだけ苦笑してしまう。まったく、こういう時に限って一人前扱いしやがる……。

徐々に光が強くなり、俺の体を包んでいく中……俺はその言葉に応える為、真っ直ぐその目を見て言葉を紡いだ。

 

「…分かった、有り難く使わせて貰うよ。『前当主』隆三爺さん……行ってくるぜ、じゃあな」

 

ふわりと右手を振り上げ、サムズアップする。

直後に、視界は白一色に染め上げられ、俺は自分が世界を越えるのを感じた。

 

 

 

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