紅蓮の魔弾銃士   作:赤い変態

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以前、活動報告で近い内に出来るとか言ってすいませんでした。
結局納得のモノが出来るまで年をまたいでしまい、申し訳ございません。




Ignition

違法な研究してる割には、贅沢すぎるくらいに設備が整ってやがるな……警備はザルだが。

探索を開始して十数分後、俺が辿り着いたのは無数のケーブルとモニター類、そして用途不明の大型機材が大量に配置された大部屋だった。

とりわけ目につくのは、部屋の中央に鎮座する大型の生体ポッド。その中には薄い黄緑色の溶液とともに、写真で見たのとはまた別の少女がいた。

だが、

 

『……生体反応無し、か』

「まあ、こんな状態で生きてたら驚くがな」

 

「くそったれ」と小さく呟き、溶液の中で浮かぶ少女の体を改めて見る。

両腕は肉が存在せず、機械の骨が代わりに在り、背にはポッド上部から伸びる大量のコードが繋がっていた。また胸の左側には穴が開いており、そこには心臓や肺の他に機械部品の様な鈍い輝きが覗いていた。まるで作り掛けのアンドロイド……いや、サイボーグか?    

大方、研究途中の調整やらで死んでしまったとかだろう。

少女の骸に対し短く合掌した後、部屋の一角に数枚の資料が置かれたデスクがあるのを見つけ、そちらに足を向ける。

一旦デスクの上にアタッシュケースを置いてから、資料を手に取りその内容に目を通す。

…が、文字が文字なので理解不能。写真やグラフなども加えられてはいるものの、最初の部屋で確認したものと大差無かった。

少なくともこれ以上この部屋で得られるモノは無いな、こりゃ。

 

「……まぁ、だからといってまた別の部屋探すのも効率が悪いしなぁ……」

 

さぁてどうしたものかと腕を組んで、傍にあった椅子に腰掛ける。

この部屋に至るまで、幾つかの部屋を既に見て回ってきた。が、結果はこの部屋と同様収穫無し。正直、このまま他の場所を虱潰しに探索なんぞしても無駄だ。それに、今のところ何とか躱してきたトラップにこの先も掛からないで済むか、そして同様に出くわさずに済んでいる警備部隊の魔導師どもにも見つからないで済むかという保障も無い。

だからといって、このままこの部屋で立ち往生というのも流石に面倒だ。

せめて自前のハックツールが今この場にあったなら、そこらの機器から情報を抜き取り言語翻訳するなりなんなりして、此処の研究目的を知ることも出来ただろうに……。

 

「くそぅ、爺さんの野郎……送り出すならこっちの支度が出来てから送り出せっての……! したら今頃ここで手詰まりにならずに済むっつーのに……っ」

 

進展無し、収穫無し、さっそく手詰まりを感じる状況に苛ついてしまい、ついつい此処に居ない相手にまで八つ当たりの言葉を吐いてしまった。

しかし悪態をついたところで事態はなんら進展しない。盛大に溜息を吐いて一旦自身を落ち着かせ、別の打開策を考える。

 

「……魔力放出してソナーみたいな方法で探すか? いや、居場所教えるようなもんか…没。研究員を適当にひっ捕まえて色々と訊き出す―――駄目だな、魔法無しで大人を無効化出来るほど力ある訳でもねぇし、仮に拘束魔法使っても魔力反応を察知されたら詰み確定か」

 

魔法使用禁止という縛りだと、現状これが限界。ゲームで例えるなら何たるマゾゲー状態か。まぁ縛り無しの強硬策を行うとしても、警備部隊の魔導師が何人いるのか、そして平均Bランクという実力がどの程度なのか分からない以上、油断出来ない

一応、爺さんやそれ以外の人物達に鍛えられてるから、腕には多少の自信はある。が、いくら質が良かろうが量を圧倒出来るとは限らない。

中々に骨が折れるな、これは……。

 

『しかし、それは私を抜きにした場合だろう? マスター司』

 

と、考えてた事に対して腰に引っ掛けていた烈龍が指摘を入れてきた。

どうやら無意識に考えが口から漏れていたらしい。

「どうしてそう思った?」と問いながら手に取って眼前まで持ってくる。

その問いに対し烈龍はコア、本体である『古龍の珠』だった場所を点滅させながら言葉を紡いだ。

 

『『鍵』抜きで考えていた時点で、私抜きで考えているというのは明白だ。まさか、武器である私の事を忘れていたとは言わないだろうな?』

「いや、忘れていた訳じゃないが……」

『では考えに入れてなかった理由を教えて貰いたい』

「お前、魔導具にしては意外と面倒くさい性格してるなぁオイ。……まあ理由についてだが、お前を使うとそれだけで結構な量の魔力放出が行われるからだよ」

『……そういうことか』

 

俺の言葉に納得したのか、烈龍は眩しい程に溢れ出していたその光量を落としていく。

 

『古龍の珠』は本来、天津家当主の証であると同時に膨大な魔力を発生させる機関を内蔵した、いわば手の平サイズの魔導炉でもある。

生成される魔力量には個体差があるが、生成時の瞬間的な量は相当なものだ。

これは作成方法を伝授された際に爺さんから言われたが、俺の体内で瞬間的に生成もしくは貯蔵出来る魔力量を10とすると、『古龍の珠』の場合その量は70から100に相当するらしい。また、その規格外な性能を制御する為に人格や器となるユニットを用意、そして負荷軽減の為に幾つかの機能を加えられてある。その機能のうちの一つが魔法発動時の魔力放出だ。

無論、負荷軽減の為なので放出される量は膨大だ。

そんなのを此処でやってみろ、全身に生肉貼り付けワニが数十頭ほど泳いでいる池にダイブするようなものだ。「俺はここだ」と叫んでるのと何ら変わりない。

 

さてどうしたものか……。他に何か案は無いものかと考えながら、部屋のあちこちに視線を巡らせる。

壁には大型の機材が一面に、床や天井には太くておっきなケーブルがツタの様に張り巡らされてる。そして部屋の中央には少女の骸が入った生体ポッドが……ちょっと待て。

あの少女が死んでると最初に判断したのは誰だった?

烈龍だ。

生きている反応が拾える、ははは。

オイオイ、俺よぉ。どうしてこっちの方法を思いつかなかったのよ?

イラつきで思考が凝り固まっていやがったか? いや違う、思考停止だな、この場合。

まったく、どうしてこの方法をすぐ思いつかなかったのやら……あまりのアホらしさに爆笑してしまいそうだ。

 

『どうした、笑いを堪えて』

「いやなに、ちょっと自分がまだまだ未熟だなぁーと。それより烈龍、お前生体反応があるかどうかさっき確認出来てたが、あれって範囲とか制限付いてるのか?」

『あぁ一応。範囲は……そうだな、せいぜい半径30mが―――あぁ、そうかそういう事か。

 どうやら私も起動してからそんなに時間が経ってないせいか、多少寝ぼけてたようだ』

 

呆れたように烈龍もコアを何度も明滅させる。

本当、なんですぐ思いつかなかったのだろうか、こんな簡単な事を。

生体反応がわかるなら、それ使って人が一番集まっている所が探れただろうに。

しかも察知可能な範囲は判型30mって、上下それぞれ二階構造分は探れるじゃないか。

椅子から立ち上がり、右手で構えた烈龍に再度問いかける。

 

「そんじゃまぁ、烈龍さんよ。さっそく調べてくれるか?」

『任せろ』

 

力強く答え、烈龍は溢れんばかりに紅蓮の光を発した。

地味に少量の魔力も一緒に漏れてるようにも感じられるが、この際気にしない。

そして光が収まり、小さく何度か明滅した後烈龍は『うむ』と呟いた。

 

『どうやら私達は運が良いようだ』

「と言うと?」

『この部屋の真下、幾つかの生体反応がある。そのうち小さい反応が二つ……恐らく子供だろうな』

 

よっしゃビンゴ! 空いてる手で勢いよくガッツポーズを取りながら、烈龍に次を促す。

 

「で、他の反応はどのくらいある?」

『五、いや待て。今、更に六人ほど増えた。魔力漏れは極力控えた心算だが、やはり感づかれてしまったようだな』

「警備隊の魔導師か。まあ六人程度ならまだ、対処出来るな」

 

流石にあと三人ほどいたら流石に困っていたところだが、六人ならまだ逃げ道確保するぐらいの余裕は出来そうだな。

しかし、真下と来たか。となると、階段なりエレベータなり下の階への移動手段を見つけないといけな……いや待て。もっと良い方法を思いついた。

その方法を烈龍に話してみたところ、『なら、後五歩ほど前に』と返してきた。どうやらこいつも乗り気のようだ。

デスク上に置いてたアタッシュケースを左手に取り、言われた通り五歩前に進んだ所で止まる。そして烈龍を足元の床に向けて構える。

 

「じゃ、タイミングは任せようか」

『心得た。……9、8、7』

 

カウントダウンが進む間に腰のホルダーから、弾丸の意匠が掘られた銀色のキーを引き抜き、烈龍のグリップ部分にある鍵穴に宛がい、

 

『……4、3、2……今だ!』

 

その合図と共に、鍵を押し込み一気に回すと同時にトリガーとなるワードを叫ぶ。

 

「ショットキー、発動!」

『ドラゴンショット』

 

烈龍から手を通し全身で膨大な魔力の流れを感じると同時に、銃口から紅蓮の光を纏った魔力弾がマシンガンのように放たれ足元の床を破壊していく。

破壊の衝撃と魔力弾そのものの威力が体を突き抜けていくのを感じる中、俺の眼は魔力弾が足下を破壊していくたびにそこを中心として罅が広がっていくのを捉えていた。

そして、最後の一発を打ち切ると同時に床は轟音を立てながら大穴を開け階下へと崩れていく。俺は一瞬の浮遊感の中、巻き込まれまいと崩れ始める床の上を駆け抜け、咄嗟に穴の縁を掴み瓦礫と化した床や機材が砂煙を上げながら落ちていく様を見届けた。

 

俺が烈龍に提案した考え、それは床を壊してそのまま階下の魔導師連中を瓦礫で潰し最短で目標達成させるというものだった。

まあこんな古典的な方法が通じるとは思えないが、最小の力で相手の戦力を削りつつ最短経路で目的地まで行くにはこれくらいしか思いつかないのだ。

 

やがて、落下が完全に収まったのを確認した後、程良い感じに積もった瓦礫の山に飛び降りた俺は烈龍を構え周囲を警戒する。

そして瓦礫や機材の落下で巻き起こった砂煙が止むと、俺は軽く舌打ちした。

 

「やっぱそう簡単には巻き込まれてくれないよな、崩れる前にあんだけでかい音と魔力を出せば……」

 

砂煙が止んだ後に視界に映り込んだのは、厳つい顔をした杖持ちの連中が八人、白衣姿が三人と、計十一人の男達の姿だった。そして彼らの背後をよく見ると二基の生体ポッドがあり、その中には写真で見た少女たちが溶液の中を浮かんでいた。

参ったな、最悪のポジションだ。加えて、手前の男達の恰好から考えて魔導師は六人じゃ無く八人ときた。

やれやれ、これは予想以上に骨が折れそうだなぁ……物理的に。二本くらいは覚悟しておくか。

瓦礫の山を下りながら、八人の睨みつけてくる目に動じることなく、

 

「貴様ァ、管理局の奴か!」

 

金属質の杖の先端を突きつけてくる先頭の男に向け、

 

「管理局とやらがどういうのか知らんが、なに、ちょっと迷い込んだだけで怪しいもんじゃない」

 

と返した。

瞬間、両手両足に二色の光輪が複数浮かび上がり、指先どころか全身の身動きすら取れなくなった。この世界の捕縛系魔法か……しかし、可視化されてあるとは。これでは壊せと言ってる様な物じゃないか?

 

『悠長に喋ってどうする。喋る前に動けば捕縛される前に一人は潰せていたはずだ』

 

烈龍からありがたーいお言葉が送られるが、連中の足元に多色の魔方陣が浮かび上がるのを見てそれどころでは無くなった。

これ、確実に落としに来てるわ。

俺は意識を集中させ、自身の中に火を起こすイメージを作りながら時間稼ぎに言葉を続ける。

 

「おいおい、焦んなよ。せめて人の名前ぐらい聞いてくれても良いんじゃないのか?」

『この状況になっても煽り立てるとは……大した度胸だよ』

 

うるさい。口には出さないが胸の内で烈龍に対してそう言ってやったが……さて、色好い返事頼むぜぇ厳つい顔の兄さん方。その間に俺も準備をさせて貰うが。

 

僅かな沈黙が流れた後、先頭の男が杖を降ろしたと思うとすぐ傍にいた奴と視線を交わし頷き合い、俺に向き直った。

 

「名前ぐらい聞いてやる、さっさと答えろ小僧」

 

釣れた!

そして同時に俺の中で火が起こすイメージが完成し、全身に魔力が滾るのを感じながらスイッチが入ったのを確認した。

後はもう、タイミングだけだ。

俺はにやけそうになる顔を何とか誤魔化しながら、ゆっくりと口を開いた

 

「天津司……只の通りすがりだ、バーカ!」

 

そう言い切ると同時に身体を縛っていたリングは一瞬にして燃え上がり、そのまま体を横に倒すように移動させ、自由となった指先に力を入れトリガーを連続して引いた。

烈龍の銃口から放たれた魔力弾は全部で六発、そのうち四つは先頭の男に全弾当たりその身を紅蓮の炎に包んでいく。

残りの二発は後方に居た白衣の男二人に、それぞれ一発づつ命中して魔導師の男程の勢いでは無いがその身をゆっくりと炎に蝕まれていく。

残った魔導師たちは今何が起きた事に対して思考が追い付いてないのか、三人の絶叫が止まるまで呆けた顔をしていた。

しかし炎に包まれた三人が倒れ、炎が消えた瞬間には顔色を変えつつも既に杖を構え直していた。

 

「クソッたれ、よくも!」

「せめて命だけはと考えてたが、我慢ならん!」

 

その言葉に対し俺は歯を剥いて笑うと、烈龍を持っている右手の甲を連中に向け、軽く手招きをした。

この際実力なんぞ知った事か、不意打ち上等だ。

 

「来な、そこに転がってる野郎同様、せいぜい死なない程度にこんがり焼き上げてやるよ」

 

己の中の火を更に成長させながら、俺は口角を吊り上げた。

 

 




次の話を投稿する前に一度、主人公及び烈龍の設定を投稿するつもりです。
此方は早めにできるとは思いますが……(汗


そしてもう一度。
投稿遅れてしまい、申し訳ございませんでした。



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