Nameless Daily   作:日々樹

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キングとスカイの同棲生活、毎朝のやりとりのお話。

だんだんとわかってきた。
私が抱く、この感情の正体が。

話し方等々、解釈違いにはご注意ください。
おやつ感覚でご堪能あれ。



モーニングルーティン

 これはもう数年前に学園を卒業して、今となってはレースからも退いたセイウンスカイとキングヘイローの、そう、たった二人だけの女の子たちのお話。

 

*  *  *

 

 目覚めは大抵、設定してあるアラームが鳴りだすよりも少し前。ほんの五分か十分か。たったそのくらい早い時間に瞼が上がり、遅れて流れだす規則的なベルの音をループもさせない内に止める。そうしてようやく、私――――キングヘイローの朝が始まる。

 時間は同じで、いつも通りの午前五時。けれど小さく踊るカーテンの隙間から部屋に落ちてくる朝は活気と熱気に溢れ返っている。一年でも下半期を迎えれば、まだ寝ぼけているようだった曙色の空をしていた春先とは勝手が違う。本来陽があまり差してこないはずの寝室が、もう既に明るい。

 陽射しの白は寝起きの瞳によく染みた。無意識で寝汗でもかいていたのか、ネグリジェがぺったりと肌に張り付いていて眠る前より重たく感じる。

 隣で横になっている同棲相手はやはりと言うのか。一見するとスヤスヤと寝入っているようだけど、取り換えたばかりのブランケットは明後日の方へ追いやって、寝巻き代わりのシャツも寝相のせいで半分ほど捲れ上がっている。真っ白なお腹が堂々と晒されていてだらしがない。

 

「そろそろエアコンか扇風機を回しながらでないと寝苦しい季節かしら?」

 

 ため息交じりにブランケットをお腹の上に戻しつつ、そんなことを呟いた。

 そう。気付けばもう七月になっていた。つい先日年明けの挨拶を交わしたばかりと思っていたのに、気付いてみればそれももう半分が過ぎてしまったらしい。

 あっという間。今年は特にそう感じる。理由なんて、考えるまでもなく。あの時あの瞬間から、私の日常と呼べる毎日の形が大きく変わったのだから。

 

「――――ああ。こうなってから一年が経つのも、そう遠くないのね」

 

 こうなってから。学生時代から続く、良くも悪くも腐れ縁と呼ぶに相応しいセイウンスカイと寝食を共にするようになってから。一年。

 やはり過ぎてみれば短かったような。けれど出来事を振り返ってみれば途方もなく長かったような。

 

 ハロウィンにはサプライズでお菓子を用意した。

 傘を借りて肩を並べて、降る雨の中を帰った。

 泊まった温泉旅館からは雪の降る朝焼けを眺めた。

 風邪を引いた時は迷惑をかけてしまった。

 そして。互いが生まれた日を、お互いに祝福し合った。

 

 他にも取り留めもなく掛け替えのない思い出も、たくさん。たくさん。高価でも、貴重でも、稀有でもない。どこの誰にでもあるような、それでも、例えば子供たちが持つ宝箱の中身のような。ありふれたような出来事が。

 そんな生活が、じきに一年。

 

「貴方はどうだった?」

 

 現状へ誘った張本人へ尋ねてみても、起きているのと同じくらい眺めたことのある寝顔から返事はない。いつ見ても無防備で、抜けていて、レースで見せていた鋭さなんて微塵も感じさせない、穏やかな顔。証拠に……もう、涎が。本当に、だらしがないんだから。

 

「私は、楽しんでるわよ。たぶん、貴方が思っている以上にね」

 

 少なくとも、こんな寝顔を眺められるのは、今の生活ゆえの特権だと思うから。いつかこの言葉をこうして新しい生活をくれた彼女に送らなければいけないなと、胸の内で独り言ちりながら、垂れた涎はそのままに、私は朝の支度のためにリビングへと足を運んだ。

 別に涎くらい拭ってあげてもよかったのだけど、ちょっとしたイタズラ心という魔が差したことにして、今日のところは触れないでおく。

 そんな寝室とは違い、誰もいないはずの部屋には南の窓辺から侵入した斜めの光が、住人を差し置いて我が物顔で羽を伸ばしていた。なにもせず、ただ立っているだけでも汗が滲み出てくるのがわかる。エアコンにそれの立ち退きを頼みつつ、ついでにテレビと照明の電源も入れた。

 朝一番の整備も終えて、満を持して立つのはキッチン。けれど料理よりも前に、なにをするにもまず給湯ポットに水を入れ、スイッチだけは押しておく。ある意味ではこれが一番重要なことだから。

 

(さて、今日はなにを作ろうかしら)

 

 大雑把にいくつかプランを思い浮かべながら冷蔵庫を開く。調味料系を除けば、あるのはなけなしの野菜や肉と卵、昨晩スカイの作ってくれたおかずの余り、あとは各々が好きに買い置いてあるドリンクやスイーツの類ばかり。作り置きの白米も、こんな時に限って切らして一つも残ってはいなかった。

 

(…………仕方ないわね)

 

 学生時代と比較して料理の腕は確かに向上こそしたけれど、流石にまだ余った食材を使いアドリブで一品拵えられるほどの技術はない。惜しみつつ、そして今日の帰り道にスーパーへ寄ろうと心に決めつつ、できるだけ簡単にできるレシピを頭の中に思い浮かべる。

 冷蔵庫から卵と牛乳を、それとカロリーレスのシュガーを用意する。あとは運よく半斤ほど残ったままの食パンも。

 パンはひと口大の大きさにカットしておいて、それ以外の材料はボウルに入れてよく混ぜ、卵液を作る。終えたらそこにパンを浸して、じっくりと味を染みこませていく。あとはフライパンに乗せて、卵液を吸い込んだパンを焼いていくだけ。数分も経たず軽い焦げと卵の甘い香りが立ってきて。それを何度か繰り返したらフレンチトーストの出来上がり。

 付け合わせに余りもののおかずと、ちょうど湧いたお湯を使って紅茶を淹れておくことも忘れない。

 

(今日は、アッサムにでもしましょうか)

 

 ポットに入れた茶葉が注がれた湯を孕み、色味や香りをじんわりと滲ませる様子を眺める。

 そして、ふと思う。

 そういえば、元々料理は日毎に当番制で、担当になった方が朝も夜も用意していたな、と。今ではこうして朝を私が、夜はスカイが支度をするようになったけれど。それぞれの生活の兼ね合いや料理の得手不得手、あとは寝起きの良し悪しだったり。日々過ごす生活の波の中でより安定する形へと私たちの在り方はその姿を徐々に変えていった。

 違う二つの存在が混ざり合って、やがて一つに溶けあっていく様子は、ちょうど目の前で淹れたアッサムの赤が広がる様子と似ているのかもしれない。

 などと食卓事情の一年弱をざっくりと振り返っている内に、充分なほど、赤く染まった紅茶が出来上がる。これを先にカップに注いでおいてから、最後にまだ寝ているであろうスカイを起こしに行くまでが私の毎朝の仕事。

 冷房の効いた部屋に慣れてしまったせいか、それとも昇った陽がより差し込むようになったせいか。今度は起きたばかりは平気だった寝室の温度に暑さを覚える。しかしスカイはこんな中でも変わらずに規則正しい呼吸を繰り返して眠ったまま。その代わり、かけ直したブランケットは放り出されて、またシャツの隙間からは真っ白なお腹が覗く。垂れた涎は、なくなっていた。

 

(――まったく。この子ったら)

 

 室温に寝苦しさを感じているようなら、やはりなにかしらの手は打たないといけない。かといって冷やし過ぎて風邪の原因にでもなってしまっては本末転倒だろうから、その部分にも気を配らないといけない。

 まあそれは出勤の合間にでもゆっくり考えるとして、今はとにかくいつまでも船をこぎ続けている彼女を起こさなくてはいけない。

 

「起きなさいスカイさん。朝よ」

「……ん……ぅん……」

 

 ベッドの端に腰掛けると、体重分沈んで少し斜めになったマットレスを滑るように、スカイの頭がコロンとこちらを向いた。遅れて、寝ぐせで跳ねた若草色の髪もついてくる。

 朝が苦手というだけで、別にアラームを使えば一人で起きることだってできるのだから、本人に任せて私は放っておけばいい。きっと、そちらの方が正しいのだろう。私たちはもう、いい大人なのだから。なのにいつまでも学生気分で、当時昼寝に耽る彼女を起こしていたのと同じように、今でもこうしてお節介を焼いてしまうのは、どうして?

 

「スカイさん」

「……もう食べられないよう、キング」

「そんな定番な寝言言ってないで、早く起きなさい」

「――――あれ? 気付いてました?」

 

 狸寝入りを言い当てると、なんの悪びれもせず、彼女が片目だけを開く。

 こうしたじゃれ合いが、本当にそのまま、学園にいたあの頃と変わらない。仕事まで時間に余裕があるわけでもないのに、用意したトーストが冷めてしまうかもしれないのに。この時間が無くなってしまえとは、どうしても思えない。

 

「気付くわよ、そのくらい。寝たフリをして待ってるくらいなら、自分から起きて来ればいいのに」

「いやだって、セイちゃん一秒でも長くお布団の中で横になっていたいですし。キングが起こしに来てくれるならいいかなーって」

「そう言うなら起こさないわよ、明日から」

「それはヤだな~」

 

 不安がっているのは言葉の字面だけで、語気も表情も振る舞いも、なに一つ心配などしていないのは火を見るよりも明らかで。明日もどうせ起こしに来てくれると確信されていて、悔しいけれど、きっと私は明日も彼女を甲斐甲斐しく起こすのだろう。

 一抹の不服さに膨れる私を余所に、目の前の身勝手な眠り姫は欠伸をしながら身体を伸ばす。その姿はなんとなく、寝起きのネコを思い出させた。眠り姫というよりも、眠りネコ?

 瞼の裏から絞り出された透明な雫が瞳を潤して、虹彩の煌めきが増す。下手をすれば、吸い込まれてしまいそう。空の青よりも蒼い瞳の碧に。何度も見ているはずなのに。目を閉じてでも、ハッキリとその色を思い浮かべることができるほどなのに。どれだけ眺めても飽きが来ることはなくて、むしろ見つめるたび、毎度違った光の屈折を教えてくれる。器用な瞳。

 

「――――キング?」

 

 ハッと、あちこち漂っていた意識が引き戻される。それどころか、彼女の瞳にかかっている前髪を無意識に撫でてまでいて。気付いた頃には本当に、部屋が暑い。ツーッと一滴、汗が頬を伝うのがわかった。

 

「髪、伸びたわね」

「え? 髪?」

 

 突然変えられた話題になんの疑いを持つこともなく、彼女は自分の襟足をくるくると弄ぶ。一見癖毛のように見えるうねった髪はその実、指に絡まることはなくて、指を離せばスルスルと元の形へと解けていく。撫でた前髪も同じ。ふんわりと広がっているのに、通した指のどの一本にすら引っかかることもなく、すり抜けていく様子はまるで本物の浮き雲のような。

 

「――言われてみれば、キングと暮らすようになってから行ってないかも、ヘアサロン」

「伸ばすの?」

「ん~、伸びるといろいろ面倒だし、ボチボチ切りに行こうかな」

 

 言って今度は、貴方が私の髪に触れてくる。

 

「むしろどう? 一緒に行って、キングもサッパリしません?」

「貴方の言うように手入れが面倒ではあるけど、私はこの長さが気に入ってるから」

「そっか。誘ってみたけど私も今の方が好き、というか見慣れてる」

 

 優しく毛先を弄ばれる感覚が続く。ネコが紐にじゃれつくように、放っておいたらいつまでこうしていそうだったから、おもむろに私はベッドから腰を上げる。

 

「――――ほら。朝ごはん、もうできてるから」

「は~い」

 

 顔を洗ってから来るように促して、部屋を出ようとしたところで――――

 

「おはよう。スカイさん」

 

 自分の役目を思い出した。

 

「うん、おはよ。キング」

 

 ボサボサの頭で、シャツは肩から落ち、ベットに胡坐をかいたまま、欠伸が一緒に漏れる。そんな、考え得るだらしなさを全部乗せたような目覚めの挨拶に、クスリと、頬が緩んだ。

 リビングへ戻ると、あらかじめ淹れてあったアッサムからもうすっかり湯気は取れていた。かといって冷めきったわけでもなく、ポッドを触ればほんのりと人肌くらいには温かい。念のため、注がれた分を一口だけ飲む。うん。これなら彼女も飲めるだろう。

 寝坊助が顔を洗ったりしている間に、こちらは逆に冷えないようにしておいたフレンチトーストを皿に盛りつける。サイドには昨晩スカイが用意して少し残ったリーフサラダを添えておけば栄養価的にも問題はない。

 

「お、一口フレンチだ」

 

 洗顔を終えてきたスカイは食卓を見るなりそう言った。寝ぐせも落ち着いて、すっかりいつもの髪型になっている。

 

「お砂糖やハチミツは好きにかけて」

「はいはい、いつも通りね。

 ――じゃ、いただきます」

「いただきます」

 

 席に着き食事の挨拶を交わしたのなら、あとは早い。食事を取り軽く談笑を交わしながら、お互い、点いたテレビからそれぞれの必要とする情報に注意を払う。

 私は電車の運行情報を見て、変な事故など起きていないか確認して、スカイはざっくりと天気予報を追って、どのくらい洗濯ができそうかを計算する。その後は、人気のグルメや観光スポットの特集に適当な相槌を打つ。「こんなお店が人気なのね」、だとか。「次休みが一緒になる日にでも行ってみる?」、だとか。

 徐々にトーストがその数を減らしていく一方で、用意するだけ用意された砂糖やハチミツは使われることはなく、ただただ空になっていく食卓を見守っている。「いらない」と言われないから、毎度こうして食卓の上に用意だけはしておくけれど。

 単純に味の好み以外で、使われない理由もなんとなくわかる。

 

「キングの作るフレンチトーストさ、食べやすいよね」

 

 残りも数えるくらいとなったトーストの向こう側から、スカイがこちらではなく、テレビの方を見つめながら言った。

 

「そう? あまり特別なことはしてないけど」

「だって一口サイズじゃん? フォーク使えば手汚れないし」

 

 試しに一つフォークで刺して、口に含んでみせてくる。低カロリーを意識した薄味のフレンチトーストは何度も何度も咀嚼され、しみ込んだ卵液が絞り出されるかのように。そして堪能されたあとは、呆気なく嚥下された。

 

「ね? 簡単」

「それは――」

「「先に切っておいた方が食べる時に楽だから」」

「でしょ?」

 

 言おうとしたことを見事、一言一句違わず被せられる。

 目の前の彼女が得意げにニッと笑う。

 

「近頃のキング、だいぶ私に似てきたよね? 随分手抜きさんになってきた」

 

 その言葉は、おそらく言った本人の意図よりも深い所まで、私の内側へと落ちてきた。雫が底まで落ちていき、触れる水面に波紋を作る。広がって広がって。身に染みる。「ああ、似てきてるのか」と。

 変わっているとは思っていた。自分ではない誰かと過ごす生活の中で、多からず影響を受け、あるいは学んでいるのだろうと。料理の分担が日毎から朝晩へと適応していったように、今の件にしたってそう。トーストをあらかじめ一口サイズに切っておくようになったのは、スカイが作る一品料理が大抵一口大に整えられているのを多く目にしていたから。食べやすかろうと真似をして、どれだけ経つか。

 それが『似てきている』と。

 ならこちらにも思い当たる節がいくつかないわけでもない。

 

「あら、そうかしら? 私からすれば、スカイさんの方だって似てきている所があると思うけど?」

「え? 例えば?」

 

 自分には関係ないと言いたげなキョトンとした表情。人の変化には気付くのにその身の自覚もないのだろうか。

 なんにせよ、うん。変えた原因がもしも自分にあるとするならば、少なからず気分がよかった。

 

「貴方の方こそ、同棲を始めた頃はフォークを使ってパンを食べることなんてしてなかったじゃない。忘れた?」

 

 まるで昨日の出来事のような去年の出来事。私が作ったもっと拙いトーストを、彼女は手掴みで食べていた。カット用のナイフやフォークを用意していても、それに一切目もくれることもなく。最初こそ、一度指摘したことはあるものの、「洗えば大丈夫だから」と受け流された。以後それについて注意したことはない。少しお行儀は悪いけれど、それが彼女を「セイウンスカイ」たらしめる要素の一つであることに変わりないと思っていたから。

 しかしだからといって、食卓からカトラリーを下げることもしなかった。スカイの所作と同じく、それらを使って食事に臨むことも、私自身が私である要素の一つであったから。

 そして気づけば以前より、私は少しものぐさに、彼女は少し上品になっていたというのが今回の話。いつから今のようになったのかはわからない。けれど、以前は確かにそうだったのだ。二人分のフォークが使われるようになった一方で、使われることのなくなったナイフがなによりもその証拠だろう。

 

「あー、そうだっけ?」

「朝の洗い物は貴方の担当なんだからわかるでしょ?」

「そうなんだよねぇ。だから簡単に済ませられる方法はないかな~って。――ってことで、食洗器なんて買いませんか?」

「買わないわよ。…………めんどくさがり」

「にゃはは」

 

 違和感を隠そうともしない話題の転換と昔からの特徴的な笑い癖。それを聞き終わる頃、ちょうど最後のトーストがプレートから消えた。残った紅茶も、あと一杯分もない。僅かに残ったカップにその残りを全部注ぎこんで、これで終いとばかりに呷る。

 食卓から料理が姿を消したとなれば、テレビに表示される時間は出勤のための支度を始めなくてはいけない頃合い。

 

「ごちそうさま」

「うん。ごちそうさま。片付けはやっておくから、早く準備行っちゃいな」

「ありがとうスカイさん。お願いするわ。貴方は今日も――――」

「うん。在宅」

「サボるのもほどほどにね」

「お給料分はちゃんと働いてますよ~だ」

 

 小言を背に貰いながら、再度私たちの寝室へ。カジュアルスーツを着て、お化粧もして。

 鏡に映る女性を見て、不意に、もしかしたら自覚できていないだけで、他にもスカイと「似てきた」部分があるのかもしれない、と思った。映る輪郭は紛れもなくキングヘイローではあるけれど、その内側はどうだろう。いいや、内側なんて混ざり合って然るべきものだとは思うのだけど、そうだとして、彼女はいったいどのくらいいるのだろう。

 紅茶の茶葉がお湯に滲み出ていくように、二人の色が混ざり合い新しい私と貴方になっていく。けれどそこには茶葉のように、どうあっても溶け切らない部分も少なからずあるのだろう。

 染まり染められて。少なくともまだその関係が終わる景色は見えてこない。今後どのくらいそんな時間が続くのか、あるいは永遠に終わらないのか。

 どちらにせよ――――

 

「いってらっしゃい」

「ええ。いってくるわ」

 

 彼女を起こし、朝食を振る舞って、こうして見送られる。そして、お互いが少しずつ混ざり合っていく毎日を、私は、好いているのだと思う。

 




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