緊急会議~学園を婚活会場と呼ばせないためにはどうしたら良いか~   作:大大魔王

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2話目は1時間後に投稿されます




『トレセン学園は婚活会場!?増加するウマ娘とトレーナーの結婚』

 

このような不名誉な見出しの記事がでたのはつい先日の事だった。といっても確かなデータに則った記事ではないし記者の主観が入った所謂、ゴシップに類するものだ。

だからと言って全く気にするなという話にはならない。

トレセン学園は数ある学園の中でも名門中の名門。これから大事な我が子を預けようとする保護者父兄の不安を煽るような要素は一片たりとも残してはならないのだ。

あと、ぶっちゃけ多くなってることも事実だ。

 

 

「えーそれでは第1回婚活会場と呼ばせないための会議を始めようと思います。司会進行は僭越ながらシンボリルドルフのトレーナーである私が務めさせていただきます」

 

集められたのは優駿たちを指導、監督する未婚の若い男性トレーナーばかり。彼らは重苦しい雰囲気で(早く帰りたい)なんて思いながらも教え子たちのため会議に臨んだのだ。

司会のルドルフトレーナー(以下、トレーナー部分はTと略称)は全員が揃っていることを確認すると頷く。

 

「婚活会場などという不名誉な名称で世間から呼ばせないために今できる改善案または問題点がありましたら挙手そして誰の担当か明言したのち発言をお願いします」

 

シンと静まり返る会議室。

そう何が原因で自分に飛び火するか分からない以上、迂闊に発言することはできないのだ。先発ともなると猶更である。

ただ、このままでは会議は終わらない。誰か手を挙げろよと無責任な視線が飛び交う中である1人の男が口火を切った。

 

「はい」

「どうぞ。さきほども申し上げましたが誰の担当か発言してからお願いします」

「マヤノTです。1つ問題を上げさせていただきたい」

 

マヤノトップガンTに思わず心の中で拍手を皆が送る。この中でもナイスガイ、出来る男、あのマヤノを魅了した男と揶揄される男はやはり違った。「やっぱりモテる男は違うと思いましたね」と会議後、発言を残したのはカレンTだ。

 

「ルドルフさんの担当が司会をされてるからってわけではないんですけど同じ生徒会のエアグルーヴTさんが担当を……その部屋に上げていて尚且つ合鍵も渡しているという情報があるのですが」

「え?俺!?」

 

その瞬間、方々から非難の言葉が上がる。いくらTとはいえ生徒を管理する立場である生徒会メンバーから問題が発生したのだ当然であろう。

というのは建前でここで1人を生贄にして逃げ切り体制に入りたいというのがほとんどのメンバーの見解であった。

 

「エアグルーヴT今のは本当ですか?」

「うっ……」

 

いくつもの視線に晒されるエアグルーヴT。ここでウソをついて乗り切る手段もあるにはあるが後々それで非難されるのは彼と彼の担当だ。自分だけならともかく担当にまで被害を及ぶ行為をするわけがなかった。

 

「た、確かに部屋に上げてはいます。でも、それは掃除という彼女の精神面をケアする行為のためであって決して如何わしい目的では」

 

「それでも合鍵渡すか?」「なんか毎朝、起こしにきてるとかって話も」「姐さん女房タイプだよな彼女」「……羨ましい」

様々な意見が飛び交う。エアグルーヴTは針の筵状態。

助け舟を出すかと思われたルドルフTも(助けてくれルナ)と放心状態。誰もがこのまま逃げ切れると思った。が

 

「そんなこと言ったらアンタだって問題があることは聞いてるぞマヤノT!」

 

彼はあの女帝のTなのだ。ただ黙って倒れる男ではない。そして、彼の矛先はもちろん告発者であるマヤノTに向かう。

 

「君だって担当と色々やってるじゃないか!あんな年端も行かない子に『大人の時間』とやらを一緒に過ごしていると聞いたぞ」

「それはちがっ!マヤが大人大人って口癖みたいに言ってるだけで」

 

内心全員が大人の時間というものが可愛らしいものだと知ってはいたがマヤノTがロリコン疑惑もあったことも手伝って助ける者はいなかった。「やっぱりモテる男はダメだと思いましたね」と会議後、発言を残したのはカレンTだ。

まぁこの調子で会議が終わってくれれば全員が願ってはいたが悲しいかな願いが中々叶わないのが世の中の常だ。

 

「お前らだって関係ないフリしてるけどなぁ!全員、知ってるんだからな!」

 

さすがは『女帝』のT。誰一人として許さない追い込み体勢だ。

ヤバいと思ったTたちは関わるまいと一斉に視線を他所に飛ばすが1人逃げ遅れたものがいた。サイレンススズカTだ。

「担当は大逃げウマ娘なのに……」誰かがそう哀れんだ。

 

「スズカT!お前は単身の出張のときも担当を連れてるみたいじゃないか」

「いや!それはスズカが自主練で走り込みしてたら偶然、出張先に来てただけで!」

 

本気でその偶然を信じるのかと誰もが戦慄する。確かに彼女は朝、誰よりも早く夜、誰よりも遅くまで走っているほど走ることが大好きなウマ娘として有名だ。

ただ、どれだけ走るのが好きなウマ娘だとしても毎回、偶然で出張先に来ることがあるのだろうか、いやない。

本当の問題はウマ娘ではなくお前の方だろ……。誰もが思った。

 

「じゃ、じゃあ俺だって言わせてもらうけどな!おい、スぺT!」

 

名指しされたのはスペシャルウィークT。

まぁ誰もがスズカTが名指しするのはヤツだろうなと思っていたし本人も覚悟をしていた。

 

「お前、担当と一緒に北海道行ったらしいな!」

「そうだけど、それはご両親に日本一になったって一緒に報告するためであって今回みたいな問題行為には当たらないんじゃないのか?」

 

(((確かに)))

全員が思った。いや客観的に見たとき教え子と2人きりで遠い北海道にご両親へ挨拶するという絵面はアウトに違いないが、この会議の異様な空気が全員の眼を曇らせていた。

それもそのはず彼は日本総大将の異名を持つウマ娘と駆け抜けて来た男だ。説得力が違う。

余裕の表情でいるのも問題行動など1つも犯してないという自信故であった。

 

「北海道で他になんかあっただろ!いやきっとあったはずだ!」

 

これはさすがに苦しいスズカT。もはや何かあってくれと願いを込めて追及しているだけ。余裕がない。

その瞬間を見逃さず差し切ろうとするスぺT。

 

「他にもあったけど故郷の人たちに挨拶したぐらいだけどな。スぺが私の大切な人ですなんて言うもんだから照れちゃったよ」

 

全員が「ん?」と思った。

この男はその余裕の表情で一体、何を言ってるんだ、と。その紹介のやり方だと誤解を生まないか、と。

 

「それで来週、ウチの両親にスぺと一緒に会いに行くんだけどさ。大切なトレーナーさんのご両親に挨拶しておきたいですからって言ってくれんだよ。トレーナー冥利に尽きるよな!」

 

ああ、外堀埋められてるわ。

全員が察した。

気付いてないのは本人だけという何とも哀れな状況だったが誰も教えようといる者はいなかった。いや、助けられないのだ。自分を守ることで精一杯だから。

ただ、ヒートアップしていた空気はスぺTという犠牲者のお陰でいくらか冷めた。エアグルーヴTもいつの間にか追及の手を止め大人しく座っている。

 

「すまん、一ついいか?」

 

手を挙げたのはキタサンブラックTだ。

ルドルフTが発言をどうぞ、と促す。

 

「担当のご両親に会うのってアウトなのか?セーフなのか?」

 

この言葉に何人かがビクッと反応する。

このキタTの質問はかなり際どいものだったに違いない。というのも両親に会うというイベント自体は決しておかしなものではないからだ。

両親は娘の人生をTに託しているようなものだからTがどんな人物であるのか知りたくなるのは当然である。Tと話すことで不安が取り除けるというのなら今後のプランも含めて説明するということが彼らの仕事だということは間違いない。

問題は会う理由がそれだなのかという話だ。

さきほどのスぺTのような明らかに外堀を埋めにかかってきている工作や純粋なお付き合いの報告は勿論アウトだ。

 

「そういえばドイツに長い間行ってた奴がいたような」

 

誰かが呟いた。

~ようなとか言っているが本人は明らかに分かっていて言っている。要は自分が犠牲になりたくないからと生贄を差し出したのだ。

ここにいるTの中でドイツに所縁があるウマ娘を担当している者など1人しかいない。エイシンフラッシュTだ。

逃げ道などないとフラッシュTは自発的に立つ。

 

「どうもフラッシュTですが1つ言いたいことがあります」

 

フラッシュTと担当の仲の良さは学園の中でも有名な話だ。どこへ行っても一緒だしなんなら担当に管理されているという話だ。

そもそも2週間以上もドイツに行って彼女と両親ぐるみのお付き合いをしてた時点で言い逃れは出来んだろと誰もが思うことだ。

だが、彼には妙な覇気があった。自信に溢れ負けることなんて絶対にないといわんばかりの気迫があったのだ。

ここから逆転できる神の一手があるとでも言うのか。だとするなら是非とも参考にしたいというのが全員の考えであった。

 

「彼女とは結婚を前提とした真面目なお付き合いをしており、ご両親からも許可を頂いています!」

 

ダメだこりゃ。

頭が可笑しくなったと言われても否定できないいかれた発言に頭を抱える者が多数だ。そもそも会議の趣旨を真っ向から否定するような発言にコイツはもうダメだと思わざるを得なかった。

 

「そうですか。では」

 

ルドルフTが指を鳴らすと唐突に芦毛の背の高いウマ娘が人一人ならすっぽりと入ってしまいそうなズタ袋を持って現れた。そして、ウマ娘特有の瞬発力で一瞬でフラッシュTに近づく。

 

「な、なんだ君は!ちょ、え?やめッ」

 

ズタ袋に入れられたと思うと室外へと運ばれて行った。残るのは静寂と彼が落としたペンだけだった。

 

「言い忘れてましたが行き過ぎた者はたづなさんの説教部屋へと連行されますので」

 

駿川たづな。学園長秘書にしてお目付け役も兼ねている彼女に勝てる者などルドルフTも含めて誰もいなかった。

その彼女が直々に説教をするというのだ。良くて(精神的に)半殺し、悪くて精神崩壊もありえる強烈な仕置きを想像して全員が震えた。

だが、悪いことばかりではないフラッシュTよりも前に挙げられた者たちは逆説的に許されたということだ。つまりお付き合いまたは結婚の報告をするといったアホみたいな行動さえ避ければ説教部屋はないということ。そして、もう1点。会議の時間は無限ではないということだ。

時間的に槍玉に挙げられるのは1人がいいところ。

ここにきてT同士に初めて連帯感というモノが生まれた。一応、大丈夫だと思っていても何の地雷を踏んで説教部屋に連行されるかは分からない。それは誰もが避けたいところ。

つまり絶対に大丈夫な誰かを生贄に捧げ時間を無駄に消費させれば良いのだ。

この中でどれだけ必死に叩いても埃1つ出て来ないことが分かっている男が1人いる。

 

「はい、ブルボンTです。発言よろしいでしょうか」

「どうぞ」

「スマートファルコンTがファン1号として頻繁に活動しているという情報を聞いたことがあるのですが」

 

よくやった!と誰もが思った。

ファルコンT。スマートファルコンを担当すると共にウマドルである彼女のファン1号として活動する男。

Tもファンもやっているのなら何か1つぐらい出て来ても不思議ではないが、この男にはそれが1つもなかった。

男なら心が多少揺れるシチュエーションがあってもTとしてファンとして一定の距離を保ち続ける男の中の男。

一説によると大樹のウロにそういった感情を落としてしまったからの行動らしいが真偽は不明だ。

コイツなら大丈夫。誰もが痛いを思いをしない。幸せな選択肢というものを誰もが確信した。

 

「すみません。ファルコンTです。ファン活動もありますが、それ以外でも犯してしまった罪が俺にはあります。懲罰覚悟で本日は告白させて頂きます」

「「「は?」」」

 

全員がㇵモった。

いや、お前マジかと。

知られてないだけで何かしらやってたのかよと。

見損なったぞファルコンTと。

誰もが思った。司会のルドルフTも思った。だが、告白するというのなら止める理由もない。彼は発言を促す。

 

「先日のことなんですが彼女と出掛けた時の事なんですが……」

 

なぜか間を開ける彼に誰かが唾を飲み込んだ。

一体、どんな爆弾発言が飛び出すのかと戦々恐々だ。

 

「倒れそうになった彼女を支えるためとはいえ、その、抱き締めてしまいまして……」

「……で?」

 

ルドルフTが訪ねる。

それだけじゃないだろ?と。わざわざ、こんなこと言うんだからもっとあるんだろう。

 

「でって、抱き締めたんですよ!事故とはいえ!担当を!導く者としてはあり得ない行動だと思いますが。あれ以来、ファルコンも顔を真っ赤にしてまともに目を合わせてくれないし」

 

お前……もう帰れよ……。誰かが言った。

これまでの話の流れを本当に聞いていたかも分からないクソみたいな発言に誰もが殺意を沸かせた。というのもファルコンがTに向けてそうのような感情を持ってることが学園の関係者なら誰もが薄々気が付いていることだ。

気付いてないのは、このクソボケぐらいなもので。

正直、個人間のことだし変に介入して関係を拗らせてもいけないからとノータッチが暗黙の了解であったのだが……。これは……。

 

「このクソボケがぁ!」

 

ついに机を叩いて誰かが叫んだ。

誰だ?誰が言ったんだ?

誰もが辺りを見渡すが誰もそんなことをやった形跡はない。それもそのはずだ。怒声を上げたのは前に座っているルドルフTなのだから。

 

「それぐらいで何だって言うんだ!ええ?別に嫌がってないし無理矢理やたってわけでもないんだろうが!」

「た、確かにそうですけど!彼女を導く存在である俺がこんなことを……」

「それで!!いいんだよ!!お前はよォ!!」

 

全員がうんうんと頷く。

忘れてはいけないのは彼らはトレセン学園のTたち。つまりウマ娘たちへの愛情が深い者たちと言っても差し支えない者たちなのだ。

彼らは常日頃から担当はもちろんのこと担当以外のウマ娘たちにも楽しく健やかに学園生活を送って欲しいと望んでいる。

Tが病的に鈍いせいでウマ娘を泣かせるようなことがあるのなら担当Tをぶん殴ってでも矯正するのが彼らなのだ。

ただ、感情的になっていては話がまとまらない。ルドルフTは一回大きく深呼吸するといつもの調子へと戻った。

 

「とりあえずファルコンT。あなたはこれから、この会議に出席しなくて結構です。説教部屋には違う意味で送りたいですが免除しましょう。その代わり」

「……その代わり?」

「1週間以内に担当を連れてどこか。……うん、最近できた若者向けのレストランに行きなさい。あそこならリーズナブルですし担当も喜ぶでしょう」

 

ルドルフTに続くように他のTたちがあそこが良いここが良いと場所を提案し、ある者は水族館のぺチケットをある者はサトノグループが運営するレジャー施設の招待券を渡す。

気が付けばファルコンTには向こう1か月分のデート知識と物資が用意されていた。

 

「そ、それじゃあ今度誘ってみます」

「「「今すぐ誘いに行け!!!」」」

 

今度と舐めたことを未だに言うので蹴りだされるようにファルコンTは退出させられた。そして、後に残ったのは達成感と充実感。

これからどうなるかは神のみぞ知るといったところだが少なくとも今は淡い想いを持つウマ娘とTを救ったのだ。

少し前はあんな汚く悲惨な会議という名の戦いを行ってたとは思えない程、清々しく暖かな雰囲気に包まれている。

 

「それでは時間も来ましたので会議を終了したいと思います」

 

そして、通告される終了のお知らせ。

やり切った。この一言に尽きる。

心に傷を負ったもの。外堀が埋められてるのに教えてもらえなかった者。説教部屋に連行された者。犠牲は少ないが終わったのだ。

 

「次回は来週の同じ時間に開催します。解散」

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