Emigre   作:Flyer

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3人は一つのチームだった。チーフ、グッドフェローズ、モラル。彼らはヘイダルに所属しており、直轄の2区にある研究所を5区に派生させようと交渉する任務を持っていた。チーフ、モラルは交渉係。グッドフェローズはまた別の目的をもって行動する。元々、彼らの目的は交渉だけではないのだ。

 

「爆発跡地に人が住んでる?」

 

グッドフェローズは資料を見て頭を掻いた。

応接室。彼らはここから別行動し、それぞれ5区に行くことになっている。

 

「そうだ。小高い場所に何かがあるかもしれないと上はそう言っている。組織か、ただの物好き達のアジトか、もしくはもっと巨大な何かかは検討がついていなかったが、先日、根拠が出てきたんだ」

 

モラルはチーフを見る。まだ入職して5ヶ月程度であり、目にはまだ不安が残っていた。

 

「パイプラインが発覚した。更に爆発跡地に侵入する人間を追い払う何者かが居ると証言もあった。5区の格好でもなく、整理でもない。で、あれば誰なのか」

「それで、新しい組織だと言いたいんですか?」

 

チーフは頷いた。グッドフェローズは推測を立てる。5区の郊外、爆発跡地近郊は地価が安いだろうし5区が届きにくい。そこに研究所を建てることで隠密行動が可能となる。更に2区の研究者にはそこに興味を持っていたりするし、多分、ノイズが生じてから6区の不自然災害の次の大規模災害であったから関連があると推測しているのだろう。

 

「フェローさんは我々の言葉を受け取って、現地で活動してもらう...5区って私も一応知ってはいますけど、こういう職についていなければ馴染みも薄い気もします」

「そうだな。5区の収入源は特別認可による使用料だ。それに加えて生活費の押収や他区からの"押し付け費"とか。故に、産業などで5区を聞くことはないだろう。他からは監獄とも評される悪辣な都市だ」

 

そんな場所がこの世にあるのかどうかモラルはしばし疑った。グッドフェローズはそれを察して気まずく頷いた。

 

「...まぁ、別に私はいいけどさ。モラルはどうして連れて行くの?まだ組織に入って若いしさ」

 

宥めるように彼女は言った。チーフはため息をついて言う。

 

「俺だってそうはしたくなかったが、上の言葉を引用すれば『新人としてでなく1人の同志として扱え。我々は皆仲間でありそこに分け隔てはあってはならない』だそうだ。言いたい事を要約すれば、3人一緒にいかなければ首切りって事だ」

 

再度彼女はモラルの顔を見たが行きたいのか行きたくないんだかよくわからない顔をしている。

 

「チーフ達は交渉終わったらどうするの?1回戻る?」

「そうなるな。道中の3区で一度泊まって後にフェローと合流する。フェローは5区のラインの...名前は確かクラシックだったはずだ。コンタクトを取って泊まらせてもらえ」

 

フェローはチーフから渡された地図を見た。跡地に近いから路面電車を経由する他ないと判断した。フェローは疑り深くこう言った。

 

「そのクラシックって人は?」

「5区から我々へ情報を3月毎に送付してくる優秀なセンダーだ。5区の宿泊施設よりか全然マシな家に住んでいるが、もし出会えなかったら...まぁ、そうなるな」

 

フェローは立ち上がり伸びをした。チーフも話の締めに入る。モラルだけがこの空気に置いていかれていた。

 

「まぁ慣れることだ。モラル、上は同志とみろと言っているが、俺は新人と見ているだけでお前を同志でないと思ったことはない。5区でも毅然な態度で望んでほしい」

 

チーフは携帯に着信を見つけ、かけ直すために席を立った。グッドフェローズは困惑したままの研究員にお菓子を渡した。

 

「チーフは怖い?」

 

彼女は小声で言った。モラルはチーフの後ろ姿を追いながら答える。

 

「怖いと感じたことは正直殆どありません。確かに様相や言葉に気迫がありますけど、一つの事に打ち込む真摯な人だと思います」

 

彼女は「ふ〜ん」と答えた。同感したのだろうか、お菓子をもう一つ渡す。

 

「ま、頑張りなよ。どうせ一番大変なのは私だし、楽しんできな」

 

フェローはあくびを1つして携帯機を確認する。

 

チーフは電話元を確認する。「金枝」と書かれている。

 

「随分、あなた方は順調なようですね」

「...何故貴方が私にお言葉を?」

 

彼の出す言葉は若干震えている。異端者として描かれた彼らにいわゆる正しい教えを稱する彼ら側から伝えられることなどないはずだった。

 

「我々は貴方達に期待しているのですよ。それは我々でなく、魔王様も同様です。貴方達は重要な任務を背負って5区へと行くのです。ただの出張でなく、これからの我々の歩む道を照らす灯火となり得ます。同志として、我らヘイダルの構成員は一刻も早く真相へ辿り着く必要がありますから」

 

チーフは重々しく頷いた。背後を振り返って、2人がいる事を確認する。こんな深い闇に連れてこられても懸命に今を生きている。

 

「...わかっています。しかし我々を近くする貴方達は我々に対しどのような色彩で見ているか貴方達は理解できていません。我々の行う行動は全てヘイダルのため、病める同志の為と理解していただく必要があります」

「既にわかっておりますよ。貴方だってヘイダルの深度3ならば、同じ狂気に当てられた者を救う共通理念は理解しているでしょう」

 

チーフはもう一度通話相手を見た。「金枝」と書かれている。

 

「誰だって松明の無い道を歩くことは拒まれます。果敢に挑む者も少ないでしょう。あなた方は先駆けとなり、我々に道を示すのです。これは他の者にも頼めません」

「姫にもですか」

 

彼は前を向いて言った。電気のついていない廊下が続いている。相手は暫く黙っていたが、やがて答えた。

 

「貴方は面白い方ですね。彼女はあくまで隠滅のためであって改善の希望ではありません。居ない方が円滑に物事が進むのでは無いですか」

 

チーフは通話を切った。これ以上生産性がないと判断したからだ。回れ右してチームへと帰る。

 

「計画を一部変更しよう」

 

彼らのリーダーは言う。

 

「徹底的にやる。俺は真相に辿り着く必要がある」

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