浦原喜助の兄に転生して夜一の許嫁にされた俺の話   作:ちーむ

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微シリアス注 母上と隊長の話

 

死神が遺影に向かって悲しむだなんて変な話だ

とは思う__

 

死神は死という概念に近すぎて

死というものを軽く考えている節がある

とはいえ____悲しいには違いない。

 

「母上……」

 

ギュッと袴を握りしめる喜助。

目の前には母の遺影

 

気配を感じ振り向くと襖から顔を出す夜一さんと目が会い

喜助の頭を撫でると外に出た。

 

「維助は大丈夫なのか」

 

「それは夜一さんの方でしょうに」

 

母上だけじゃない

死んだのは

夜一さんの父親。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

そして俺の父上も右腕を切断し

その他の重症の怪我で意識不明と重体だ。

 

四楓院家の集まっていた3人は

使用人に紛れた刺客に毒を盛られ耐性のない母は死に

耐性があれど万全の状態じゃなくなった夕寝隊長もやられた。

という事が現場検証と遺体から発見された毒物によってわかった。

 

「夕四郎君は大丈夫でしたか」

 

「あぁ、ちょうど稽古に出ていてな。不在だったようじゃ」

 

弟君は大丈夫だったらしい。

それにしても

 

「万全の状態でないにしろ父上に怪我をさせ隊長を殺すとは、相当の手練」

 

相手が何者かも分からない霊圧の残滓(ざんし)は綺麗に消され

目撃者も全員殺されている。

唯一の生き残りの父上も意識不明、起きるかも分からない状態。

 

「則祐殿は四番隊、それに護衛もつけておる」

 

「ありがとうございます。ですが、恐らく狙われたのは浦原家ではなく」

 

「あぁ……儂の家じゃろうな。復讐か、天賜兵装番を探しに来たか……」

 

「夜一さんも気をつけてください、あなたも狙われているかもしれない。

しばらくは1人行動せず必ず護衛をつけること、食事も毒味役をつけてください」

 

「じゃが儂は……」

 

「いいですか、負け無いとか、死なないとかそういう事を言ってるんじゃないんだ。いつ何があるか分からない。貴方が死んだら貴族のバランスも隊もどうなるかは分かるでしょう?

 

砕蜂」

 

直属の部下になった砕蜂を呼ぶと

 

「ハッ!」

っと膝を着いた砕蜂が現れた

 

「お前を夜一さんの護衛役に任命する。同性なのもあり、より傍で護れるだろう。何かあったら戦闘ではなく夜一さんを連れて逃げる事。

情報を取りに行こうだなんて思うな、命最優先。」

 

「はっ!拝命しました」

 

「はぁ……仕方ないのう、頼んだぞ砕蜂」っと夜一さんが言うと

 

「はい!」っとお傍で護れることに喜んでいるのだろうか、

緊張と喜びが伝わってきた。

 

かと言え、他の仕事もある中で人数を裂き続けるのは痛手だ。

いつ来るか分からない刺し客に怯え続けるのも。夕四郎君の所にも、

宝具の所にも精鋭の護衛が着いている。

 

早々に何者かをつきとめないと行けない。

 

それに喜助も精神状態が悪く

夜一さんも強がってはいるが……。

 

 

__________

 

「さて、どうしたものか」

 

四楓院家で調査に来たもののやはり微量の霊子も残されていない。

残ってるのは血痕と、零したであろう料理のシミが畳や壁に跳ねているぐらいか。

 

一応毒は検出され、喜助が解毒薬を作っているが

同じ毒を使うとは限らない。

 

_______

そしてすぐに四楓院夕寝さんの隊長らによる弔いと

貴族との弔いが行われた。

 

何百年も二番隊と四楓院家を支えた夕寝さん。

沢山の人に見送られていった

 

「夜一さん」

 

「……」

 

葬式が終わってもまだ残る炎の煙を見上げてる夜一さん

 

実の父親が死んだ事。

そして彼を越すと努力してた彼女は

越す前に死んでしまったいう事にやるせない気持ちでいっぱいであろう。

 

彼女の頭を撫でると、バッと振り向いた夜一さんは

俺の裾を掴んで肩に頭をうずめた

 

背中に手を回しポンポンと優しく叩くと、俺の装束が濡れていくのを感じる。

「うっ……ぐぅ……っ……」

悔しいのだろう悲しいのだろう、奥歯を噛み締める音が聞こえる。

 

いつも男勝りで無鉄砲で自由人の彼女も、

こうして見れば父を思い涙を流す1人の女の子。

 

「よしよし」っと撫でると、

子供扱いするでない……っとか細い声が聞こえた。

 

目元の赤い喜助と目が合い、ちょいちょいと手で招く。

 

「ほら、お前も泣けるうちに泣いておけ」

もう片方の腕で喜助を寄せると俺の背中に手を回しでうぅっと鳴き始めた。

 

大好きな母上と懐いて尊敬してた幼き頃からの

夕寝隊長の2人をいっぺんに亡くした喜助も悲しいだろう。

 

両腕でそれぞれの背中をしばらく撫でつづけた。

 

 

_________

 

あれから1週間、父上は命を取りとめたが起きる様子はなく。

また進展もないままだ。

 

過去の経歴や逃した脱走者を洗い出してみるも、

これといった物は見当たらない。

 

砕蜂から聞いた話でも怪しいヤツも見えないという。

 

ため息を吐きながら1人で居酒屋の個室で頭の中で情報を整理してると

 

「浦原様。浦原様のお知り合いという方が御来店なされています」

という女将の声が。

 

「知り合い……?いいぞ入れて」

しばらくすると、個室の扉が開く

 

「惣右介……??」

 

やってきたのは惣右介で俺の前の席に座った

 

「難航しているようだね」

 

「まぁね。ってか俺が調査してるって知ってるんだ」

 

「……僕だとは思わなかったのかい?」

 

「…………?」

いきなり突拍子もなくそういう惣右介に俺は首を傾げる

 

「僕が君の母親と、四楓院夕寝を殺したとは思わなかったのかい」

「いや、思わなかったけど?」

 

そう即答した瞬間に惣右介は目を見開く

 

「なぜ?」

 

「なぜ……って、理由がない。宝具盗むのにわざわざ夕寝隊長を殺しに行く理由も無いし、毒なんて使わなくても何とかなるだろお前なら。

四楓院に復讐する理由も多分無いと思うし、あったとして動くならもっと慎重にすると思う。」

 

「……君は僕を信用しているのかい」

 

「そうだね。惣右介が軽率な行動をしない人物だと思ってるよ。」

 

するとため息を吐いた惣右介。

 

「相変わらず君はよく分からないね。

……僕は四楓院家を襲った軍勢を知っている」

 

「本当か!」

大きくなった声を咄嗟に口を押えて、こらえ、

もう一度聞き直すと、コクンっと頷いた

 

「なんで知ってるかは聞かないでおくよ。軍勢って?」

 

惣右介が話した内容は。

四楓院家に奉公していた一族が悪事を働き追放され。

その一族が軍勢となって勢力を上げ四楓院家に

 

「復讐した……ってわけか。七々扇(ななおうぎ)家ね。聞いたことないわ……調べてみるか」

 

「まぁ君の場合聞いても興味なくて覚えてないんだろうけど」

 

「よく知ってんじゃん惣右介。それで、なんで俺に教えてくれたの?」

 

「…………恩を売っても損は無いからね」

 

っと猫かぶりの笑顔で笑う。

 

「そっかそっかぁ!友達を助けたかったのか!ありがとうな惣右介!」

 

「聞いていたかい???」

 

「ありがとう!この恩は絶対返すよ!」

 

俺は名前を忘れないうちに二番隊に帰還した。

 

 

__________

 

「喜助!手伝え!図書館いくぞ!」

 

「えぇ、ちょ!待ってください!!」

 

エプロン姿で薬品いじってる喜助を担いで、瞬歩で図書館に向かった

 

 

 

 

 

「七々扇……うーんボクも聞いたことないっスね」

 

連れてきたのはいいものの怒られたので

草履と紅姫ちゃんを持ってってあげた。

 

喜助と手分けして図書館の除隊追放履歴やら歴史やらを漁る

 

4時間ほどたっただろうか、

本に埋もれた喜助があっ!!と声を上げた

 

「ありましたよん〜兄サン」

 

「おっ、どれどれ」

 

そこには四楓院家の家系図と分家、

奉公している家の詳細が書かれていた……

 

「っておいこら、これ機密重要書斎じゃねーか、お前地下入ったろ」

 

「そりゃ、そっちの方が手早いじゃないっスか」

 

「おまえ……バレたら除隊じゃすまねーぞ……」

 

尸魂界中の全ての歴史や事象が記録された地下の書斎所。

入れる人は片手で数えれる程度。

それでも安易に入ることの出来ない場所なはずなのに。

 

「お前まさかだと思うけど俺の結界の機械使って入っただろ」

 

「……」

フィッと視線を逸らす喜助の顎を掴む

 

「あいたた!顎!顎潰れる!!グェ」

 

俺の結界機器とは色々あるのだが、空間凍結もそのひとつで、

きっと喜助が使ったのは、俺が隠密で使ってる使用者の事象を消すという装置。

まぁ難しい話を全て飛ばして簡単に説明すると。

装置を起動して侵入して部屋に入ってAさんを殺したとして。

装置を切断すると、その殺した事象も侵入した事象も無くなり

()()()()()()という事と記憶だけが残る優れもの。

 

つまり喜助が起動して侵入して本を持ち出して。

機械を切れば、侵入した事象も本を持ち出した事象も無くなるという訳だ。

膨大な霊圧が必要になるし、時間制限もある。

多分普通の死神が使ったら1分で霊力空になると思う。

 

それに理に干渉するものなのでバレたらやばいと思う。

 

とりあえず喜助の霊圧が空っぽになる前に全て書き写して

機械を止めるとポンッと本が手元から消える。

本が元に戻ったのだ。

 

「我ながら俺すげー」

 

「そこは尊敬してるっス」

 

「そこはってなんだよ殴るぞ」

 

「イタイっ!!殴ってから言わないでくださいよ」

頭を小突くと大袈裟に痛がる喜助。

これだけふざけれるなら精神状態も.もう大丈夫だろう。

 

________

 

「はぁ……なるほど流魂街の80区画に追放されてたのか。そこでまだ生き延びてるって相当だよな……」

 

流魂街は東西南北更に1〜80区画に別れていて、数字が大きくなるほど治安が悪い。

79.80なんて死体ゴロゴロ、流血沙汰が絶えなく死神も安易に近寄らない。

 

そこに移住して生き延びてるってことはまぁ、察し

相当強い毒プラス戦闘力で

夕寝隊長がやられたのも頷けるかもしれない。

 

「よし、夜一さんに報告しに行くか」

 

 

_________

 

 

「七々扇家……か」

夜一さんも知らないらしく頭を捻らせていた。

 

「それにしてもその一族が犯人だとどうしてわかったんじゃ?」

 

「そりゃ聞き込みですよ聞き込み、最近入った四楓院家の使用人を屋敷におらず生き延びていた使用人や夕四郎君に聞いて、

死体になっていなくて生存者の中にもいなく行方不明になった人から

……洗い出した!って訳です」

 

「お主途中説明めんどくさくなったじゃろ、変わらぬの……

まぁよい、それがわかったのなら部隊編成をし向かわせよう」

 

惣右介から聞いたことは言わなかった。

言ってもお互いいことないし。

それっぽい事言っといたわ

 

二番隊隊長ではなく隠密機動総司令官として夜一さんは部隊編成を行い。

七々扇家が居るとされる場所にまずは確認のために

5人の編成部隊が送られて行った

 

 

 

 

けれど__

 

「帰ってこないね」

 

「…………これはやられたッスね多分」

 

3日経っても帰ってこず、また連絡も来ていない。

1人も生き延びずに殺れたのなら。

まぁ七々扇家で間違いないのかもしれない。

 

「夜一さん俺に行かせてください。さっさと終わらせてきます」

 

「……そうじゃの。相当の手練油断はするでないぞ。喜助、お主も行け」

 

「はい。夜一サン」

 

「じゃ、砕蜂。留守は頼んだ」

 

「ハッ!必ずや御守りいたします」

 

砕蜂の頭を撫でると少し顔を赤くする。

 

「なんじゃ、儂は撫でてくれぬのか?」

っとちょいちょいとその裾を引っ張ってくる夜一さん。

 

「なんだよ、撫でて欲しかったのか?」

って言ってる間に俺の左腕を自分の頭の上に乗せてスリスリする。

猫みたいだ。

 

「わ、私めも、もっと撫でてください!」

っと負けずに俺の手にすり寄る砕蜂。

 

2人とも可愛いなぁー

 

「喜助も撫でてやろうか」

 

「嫌っス」

冷たい


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