浦原喜助の兄に転生して夜一の許嫁にされた俺の話   作:ちーむ

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まずい状況の話

 

 

80区画なんて

瀞霊廷自体端から端まで歩いたら10日ぐらいかかるつーのに、

80区画は瞬歩でも相当時間かかる。

喜助と俺、部下を3人ほど連れて向かってるからかさらに遅い。

 

そしてようやく追放されたとされる場所まできた。

 

「確かに強い霊圧をかんじるな」

 

50メートルほど離れた高台から5つの連なったオンボロの家を望遠鏡で覗き喜助に望遠鏡を渡す。

けれどこれぐらいの霊圧なら三席ぐらいだよなぁ。

 

「こちらの事はもうバレてるようッスね。この霊圧も威嚇でしょう」

 

「さて…」

俺らはまだしも部下達は不意打ち暗殺はお手の物でも、

正面からの戦闘はまだ不慣れだろう。

 

俺一人行くにしても何人いるかも分からないし。

奥の手やら何やら残ってるかも…

それに部隊の生き残りがいるかもしれない。

 

うーん…

よし!難しい作戦とかは俺には無理だ!(諦め)

 

「とりあえず俺が連中を外におびき出す。

部下の指揮権は喜助に譲渡するから、

タイミングを見て前来たであろう部隊の捜索を優先に。

それが終わったらとりあえず援護してくれ。あとは喜助の判断に任せる」

 

「分かりました。お気をつけて」

 

 

俺は瞬歩でオンボロの前に立つ。

 

「また来やがったのか。」

 

ドスンドスンっと、オンボロが崩れるのではと言うほどの足音を鳴らして出てきた、大男。

こいつボスじゃないな。身体付きだけいいタイプの雑魚。

テンプレか??

 

とりあえず

 

「俺の可愛い部下の場所は?」

 

「あ……?」

 

一瞬のことで見えなかったのだろう。

自分の右腕をみた大男は、顔を真っ青にすると、悲鳴をあげた

 

斬られた事にも気づかない早業。

右腕がゴロンっと地面に転がり、男も痛みで右腕を押えながら地面に這い蹲る。

雑魚の下っ端って言ったところか。

 

それから悲鳴に呼びおせられてか、10人ほどの男や女が出てくる。

どれもこれもボロボロだが、霊圧も戦闘慣れもしているように感じる。

まぁ80区画だからかもしれないけど

 

「へへ、男にしちゃ可愛い顔してんじゃねーか」

 

「やだぁーかっこいい。」

なんて、余裕そうな声。

 

俺は刀を構えた。

 

 

 

_________

 

 

「なんだ、どいつもこいつも、雑魚、チンピラ。

強いと思われるやつもそうでも無いし。

本当にこいつらにやられたんか隊長…」

 

そんなわけないよな。

っと、気絶した七々扇家の奴らを蹴る

文字通り瞬殺で終わったわけだが。

 

「大変ッス!!兄サン!」

 

「?」

慌てたような喜助が駆け寄ってきた。

 

話を聞いた瞬間。俺は瀞霊廷に向かう

 

 

__________

「…嘘だろ。間に合うか…?」

 

”「生き残った隊士が見つかったんスけど…

 

頭領とその他の幹部が()()()()向かった…と!!」”

 

と、喜助から伝えられた。

入れ違いになるとは思わなかった。

おかしいとは思ったが…

間に合うか?いや、間に合わせる。

 

 

────休み無しでようやくたどり着く。

あちこちで霊圧の衝突を感じられる。

全く、どうやって瀞霊廷に侵入したんやら。

 

とりあえずは夜一さんの安全の確保。

すぐに二番隊隊舎にむかった

 

___________

 

砕蜂side

 

維助様が向かってしばらくして

 

「侵入者!緊急招集!___!」

っと侵入者を知らせる鐘が鳴り響く

 

「夜一様!屋敷の奥へ__!」

と、護衛のひとりが襖を閉めようとすると

 

「そうはさせねぇよ」

と、聞いた事のない男の声が響く。

目の前で襖の前に立っていた護衛が血飛沫を散らし地面に倒れる。

 

いつから…?いつから居た?

こんなに…重くのしかかるような霊圧をしていたのに。

声がするまで気配を、霊圧を感じられなかった…

 

まさか一瞬で入ってきたとでも言うのだろうか。

大太刀を背負った長身の男はニヤリと笑った

 

 

「褐色肌が四楓院夜一?あってるよね。」

 

「夜一様お下がりください」

 

維助様から命じられたのは戦闘ではなく逃走。

私の命を掛けて夜一様をここから逃がさなくては。

だが出口も塞がれ、行き止まりに逃げ失せるのは危険である。

 

「夜一様、隙を見て外へお逃げ下さい!」

 

「じゃが砕蜂!お主らを置いては…!」

 

「我らの命は夜一様と天秤にかけるものでは無いのです!夜一様!!」

 

だが、夜一様は逃げようとはせず。足を下げて戦闘の構えをとる

 

「夜一様!!」

 

「砕蜂。儂はお主らを見捨てて逃げるほど落ちぶれてはおらぬ。

自分の身ぐらい自分で守るわ!」

 

その背中は大きく、立派で、一寸の迷いも恐怖も感じなかった。

あぁ、私はこの人のようになれるのだろうか。

 

男も隙を見せない。

あっという間に部屋には私と夜一様だけが残ってしまう。

「似てるね、あの褐色の男も同じように右腕を切り落とした男を守っていた」

 

っと、男が口にした。

 

褐色の男__?もしかして…っと前軍団長閣下を殺したのは。

維助様の母君らを襲ったのは___。

 

その瞬間。隣から物凄い殺気を感じた

 

「お主が…お主がやったのか?」

 

「え?あの男?父親でしょー、殺したよ、馬鹿だよねぇ」」

 

「夜一様。冷静になってくださいませ夜一様!」

そう隣の夜一様に声をかけるも

彼女は冷静さを失いかけて、握りしめた手から血が滴り落ちる。

 

それをわかっているのか、男も夜一様を煽る

 

次の瞬間、クナイが男から飛んでくるが、それを弾こうとするも

 

「ぐっ…!!」

頬にクナイが掠る

 

「砕蜂!!」

 

「そら!がら空きだぜ!」

気を取られた夜一様も腕にクナイを食らう

 

「こんなもので!なっ…」

ガクッと足から力が抜け膝を着く

何故?足が痺れるように…!感覚が抜け、唇も痺れて行く

 

「毒か…っ!」

と、夜一様が腕を抑える。

 

「せいかーい!隠密機動ってめんどくさいよね。毒にならされてるの?

普通少し掠っただけで泡吹いて倒れるのに。

じゃ、このまま時間かけると面倒な奴ら来るだろうし…終わらせるね」

 

クナイを構えた男が夜一様にむけて大きく腕を振り上げる

 

 

 

「維助…様…」

 

ごめんなさい。夜一様を守れず。

逆に守られ…私は…。私は…

拝命された任務もこなすことが出来ないのか…

あんなに、よろしく頼むと、維助様に言われたのに…!

 

 

 

 

 

 

 

「夜一様ぁああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅くなっちゃった」

 

 

 

 

静かに_だが確かに耳に届く低い声。

 

__あぁ、この背中は。

この心強い声を私はきっと一生忘れないだろう

 

 

「維助…様」

 

 

____________

 

男が夜一さんに向けてクナイを振り上げていた。

 

その手を切り落とそうとするが。

咄嗟に手首を返しクナイで刀を受け止められた。

クソ、狭い部屋のせいで勢いが出なかった。

 

「あんた強いでしょ?分かるよ。でも残念もう毒が回ってそのうち死ぬよそいつら」

 

「…」

 

ちらりと後ろをみると腕を押えた夜一さんと、意識が残ってるものの、床に倒れてる砕蜂。

 

「夜一さん動けるか。」

 

「…っ…なんとかの」

 

俺は男のクナイを弾き腹に蹴りを食らわして距離を取らせる

 

「これを、ちょうど二本ある。解毒剤だ、喜助の話なら多分効く!砕蜂を連れて危なくない場所に下がってくれ。

下がりすぎはダメだまだ仲間がいると思うから」

 

俺は注射器を二本夜一さんに投げる。

 

「…っ、わかった維助、気をつけるんじゃぞ」

 

「誰にいってんのさ。大丈夫」

 

 

 

 

「あいたた、そんな細身なのにどっからそんな力出てるの」

 

受身を取ったらしい。そうダメージはあまり入っていないようだ。

男は背中の大太刀を取りだした。

 

「こんな狭い中で大太刀を振るうって?」

 

「関係ないね、全部切っちゃえばいい」

その瞬間に横に大きく刀を振るう男。

ガガガガ!っと音を立て柱も屋根も崩れてしまう。

 

咄嗟に夜一さんと砕蜂を横に担ぎ外に出る。

 

なんつー無茶苦茶な…!!

それに…

「誰が直すと思ってんだ!!俺だぞ俺!!」

 

夜一さんと砕蜂を壁に寄りかからせる。

解毒剤はきいているようで、顔色は良くなっている。

 

「そぉら!!」

大きく開けた場所に来たからか、容赦なく大太刀を振るってくる。

抜刀をしようとするが、俺の間合い寸前のところで刀が離れた

 

「なんか嫌な予感。」と、男が呟くように言った

 

こいつ、勘がいいのか?第六感ってやつなのだろうか。

刀を引っ込めて次はクナイを投げてくる。

 

全て弾いて寄るも距離を取られてしまう。

あまり離れると夜一さん達を守れない。

 

一定距離から攻撃してくるのがウザったい…!!!

 

少しだけ離れてしまった瞬間に。

石燕(せきえん!)

っと男が名前らしきものを呼んだ

 

__瞬間。どこからともなく。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「嘘だろ?」

すぐに瞬歩で夜一さんと砕蜂の前で矢を全て弾こうとするも、

なにせん量が多い。

 

 

1本も逃さず弾く。

 

けれど

「そら!!!矢に気を取られすぎだ!!」

急接近してきた男の大太刀が俺を捉え___

 

 

()()()()俺の胴体は真っ二つになっているはずだった。

 

「俺の…大太刀を片腕で…!!」 男の驚いた声が聞こえる

俺は左手で大太刀の刃を受け止めた。

だが、少し手先が斬れてしまった

__っと言っても紙で切った程度の浅さ。

 

喜助でも傷をつけられなかった俺の霊圧硬度を突き抜けてくるということはそれなりに強い。隊長格はあるだろうな。

 

と、安心していた所だが。

「なつ…」

少し掠っただけなはずなのに、

まるで蕁麻疹(じんましん)のように、ブツブツとした物が腕に出来て熱を帯びて行く。

 

「はは、俺の刀の毒は超強力!

普通はそれだけでも死ぬんだけど

…なんで立ってられるの?おかしいなぁ…」

 

すぐに足を振り上げ踵を落とすもヒョイッと避けられてしまう。

 

毒を抜こうと、自分の刀で腕を切りつけ血を流し毒を外に排出しようとするが、蕁麻疹は止まらなく顔にまで蕁麻疹が走ってるのがわかる。

 

「はは…もうすぐ死ぬよ。残念残念…楽しかったのになぁ。

もう毒で動けないでしょ?」

っと1歩1歩寄ってくる男

 

「維助…!逃げろ!逃げるんじゃ…!」

 

そんな声が後ろから聞こえてくる。

 

「逃げる…?俺が…?はっ馬鹿いっちゃいけない

俺が逃げるのはめんどくさい講義だけだ!!ばーか!!」

 

 

 

 

 

抜刀術__

 

 

 

 

 

 

「なん…で?」と、掠れた声が聞こえる。

 

第六感だなんて、そんな嫌な予感を感じさせ無いほど早く__

間合いに入った瞬間に予備動作すら見せないほどに早く刀を抜いた。

 

俺の刀は確実に男に一太刀を浴びせ

次に足を切り落とす。

 

次の瞬間には血飛沫が宙に舞って男は地面に倒れた。

何が起きたか分からないというような顔で男は俺を見上げる

 

「なんでだよ…!俺の毒は…!特別性なんだ…!

クナイに着いた毒は薄めたやつで…俺の刃の毒は原液…!!

本来なら!本来なら!死ぬんだぞ!!」

 

俺は男の前でしゃがむ

きっとクナイに薄めたやつを仕込んだのは、クナイが傷むからだろうな。

 

「知ってるか?俺の弟天才で毒の解毒薬作るぐらいすげーんだわ。

でも解毒薬完成できたかどうかってどうやって分かると思う?

 

 

__それは実験に成功してから。

もう原液は喜助が検出された成分から分析し作り上げて。

その毒を俺で試し解毒剤の実験をしたんだわ。

 

わかんない?つまり俺にはその耐性ができてるわけ。

実の兄を実験台にするって、イカれてるだろ?

 

お前は、母を夕寝隊長を部下を殺し父上を傷つけた。

そして大切な人達も___

 

毒よりも死ぬよりも辛い思いをこれから味わうんだ。

今のうちに空を拝んどくんだな」

 

 

抜刀術名前つけようかな__

 

 

___________

 

「兄サン無事っスか」

 

あの後すぐに喜助が部下を引連れて戻ってきた

 

 

「すぐに四番隊を、夜一さんと砕蜂。そしてやられた部下を運んでやれ」

手を上げるとすぐに部下が皆を連れて四番隊に向かったのが見える。

流石優秀だな。

 

「矢を放ったのはそいつか」

 

喜助が倒れた男の隣に弓を背負って気絶してる男を放り投げた。

雑だなおい。

 

「他の連中も、他の隊の人達に倒されてるのを確認したっス。」

 

「そうか、ならよかった」

 

よかった、それは良かったけれども___

「気が晴れないものだな。」

母を殺した、父を傷つけた。優しくしてくれた夕寝隊長を殺した。

そんなやつを倒したのに。

 

気は晴れない___

 

「帰ってなんか。来ないのにな」

 

「兄サン」

 

「喜助がやりたかったか?この男」

っというも、静かに首を左右に振って続けた。

 

「兄サンならこういうでしょう?気は晴れないって」

 

「そうだな…気は晴れないよ」

 

 

 

復讐というより仇討ちは終えた。

 

 

 

母上、夕寝隊長。どうか安らかに__。

 

 

__________

 

まさか紙で切った程度で毒が回るなんて。

これが他の人だと思うとゾッとする。

ちなみに俺の毒はトイレ行ったら流れてった。

 

 

夜一さんも砕蜂も家系上毒にはならされて免疫があったから身体が持った,

毒抜きも終えて後遺症も残らなかった。安心安心

 

そして七々扇家は捕まり追放も危険ということで地下深い牢に入れられる事に。

解決した__のだが

 

「申し訳ございません。維助様…夜一様をお守りするという役を承っていたのに…っ」

 

砕蜂はあれからずっと俺と夜一さんに謝り続けている。

土下座して、グッと握りしめた手は爪がくい込み血が滲んでいる。

 

「大丈夫だって、砕蜂。お前は俺が来るまでちゃんと夜一さん優先で頑張ってくれただろ?夜一さんだけだったら無謀にあの男に突撃してたかもしれない。」

 

「うっ、流石に一人では突っ込まないぞ維助!じゃがまぁ砕蜂。お主はよくやってくれたとは思うぞ」

なんて、ツンデレか夜一さん。

 

「ほら、そんな握りしめたら痛いだろ。」

 

土下座してる砕蜂を起き上がらせて手を開かせる

あーあー、手に爪の跡がくっきり

 

袴に付けてるポシェットから包帯を取りだしてその手に巻く

 

「こ、このぐらい自分でできます!」

 

「いーからいーから、よくやったよ砕蜂。ありがとうな」

 

「はいっ…」

そっと頭を撫でると顔を赤くした砕蜂がニヘラっと笑った。

 

可愛いなぁ

 

_________

 

 

 

「むっ…」

っと維助と砕蜂を見て口を尖らせる夜一に

横に控えていた喜助が維助の方を指さす

 

「夜一サン混ざってきたらどうッスか、そんなブスくれてないで」

 

「ブスくれてなどおらん!別に心臓が痛くなったりなどせぬ…!

 

 

 

あー…!ダメじゃダメじゃ!維助!!儂も撫でるんじゃ!」

 

「えっ、ちょその勢いできたらグエッ」

 

耐えきれなくなった夜一が維助に飛びついて

維助がひっくり返る光景をみて喜助は、はぁっとため息を吐いた。

 

「まぁ、いつも通りで何より…って感じッスね」


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