浦原喜助の兄に転生して夜一の許嫁にされた俺の話   作:ちーむ

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調査と脱走者の話

 

 

「こんな顔のやつ、いませんでした?」

「いやぁ?知らないねぇ」

 

俺はいま流魂街にいる。

 

脱走者の調査だ、刑事のような感じで入隊時に撮った脱走者の写真を持って目撃者を探している。

霊圧の高いやつってのはそれを隠すのが上手い。

そいつらの霊圧を知ってたら話は別かもしれんが、俺は知らん。

 

伝令神機の霊力は記録してあるけどそっからは追えない。

まぁ指紋認証から人探しするようなもんって考えてくれればいい、まぁ第三者に使われないようにするための機能だしな霊力記録は。

 

 

というわけで喜助の部下と俺の部下総動員であっちこっち探していると

そこでブーブーっと懐の伝令神機が揺れた。

 

浦原喜助と表示されていて電話に出る。

「あ、もしもーし、喜助?どうそっちは」

 

''『西にはいないようッスねぇ〜兄サンは?』''

 

それと同時に俺の前に現れた部下の顔を見ると、部下は首を横に振った。

 

「うん、北もダメだ。」

流魂街はバカ広い。ドローンも部下もフル活用で捜索してるけど──

 

そこで、ピピピっと音が鳴った。

「あ、阿近から電話だ。喜助一緒に繋げるけどいい?」

''『大丈夫ッスよ』''

 

ちなみに阿近は俺の部屋でドローンのモニター監視と1部を操作してもらってる。

ボタンを押して阿近の電話に出ると自動的にグループ通話に切り替わる。

 

''『あ、維助さん。見つかりましたよ』''

 

「あーやっぱだめか…ん?見つかった!?」

 

''『うるさっ』''っと阿近がそこでビデオ通話に切替える

 

''『近寄るとバレるので今上空から拡大してます。』''

外カメで映し出されたモニターには確かに脱走者の1人がフラフラと流魂街を歩いる姿が映し出されていた。

 

「よくやった阿近!!そのまま追跡してほしい、拠点を見つけたい」

 

''『でも、ここから先は森なので、見失うかも…』''

 

「行けるところまででいい、任せたぞ」

 

''『はい』''

そこで阿近の通話が切れる。

 

「喜助、一旦戻ろう、ちょっとドローン改造するから手を貸してくれ」

 

''『分かりました、部下も引き上げさせますね』''

 

まさかこんなに早く見つけられるとは…。

 

────────

 

部屋に戻ると阿近がちゃんと録画していてくれて、森に入ってから見失うまでの動画が撮られていた。

 

「恐らく森のどこかに拠点があるのかと…森の周りを無人機に監視させてたんですけど出てくる様子はありませんでした。」

 

「さすが阿近ー!よくやった」

 

わしゃわしゃと撫でると、髪ボサボサになる!っと手を押しのけられた。

全く可愛いなー!

 

「前々からの問題点。遅延はどうにかなったんでしたっけ?」

っと、戻させたドローンの一つを喜助が分解する。

おいこら勝手に分解すんな

 

「あぁ、もう遅延は大丈夫だけど、やっぱ音がなぁ…ほんの少し聞こえるんだよなぁ…」

 

「…維助さん。小型化ってできるんですよね?」

 

「ん?あぁ、小型化は俺の専売特許!耐久性とかちょっとの性能不足を全然気にしないならマイクロまで行ける…はず。やったことないけど」

 

マイクロ…?っと首を傾げる阿近。後で教えるよ

 

「小さくできて、音が出るなら…もう堂々と音出しちゃっていいんじゃないですか」

 

「…???」

 

「なるほど」

喜助は理解したらしい。ちょっとまって俺が理解できない…

 

「音を隠さず出すんスよ。」

音を隠さない…かくさな…い

 

「…あっ」

そこで俺らの思考はようやく一致した

 

 

────────────

 

モニターに映るの例の脱走者。

同じ場所を通って毎日水を汲みに行ってるらしい。

 

堂々とその背中にひっつく無人機 。

 

''「ん?なんだよ.()()()()うるせぇなぁ、そろそろ湯浴みしないとやべぇか…?」''

 

っと、性質の悪いマイクから拾った声がモニターから響く。

 

「大成功ッスねぇー!無人機を()()に改造!」

 

「いやぁ〜小型化最高!」

 

「ここのネジ…なるほどこうやって出来てるのか」

阿近が超倍率虫眼鏡で()()()()()()()の予備を観察している。

 

そう、音を消せないなら音が出るハエにしちゃえば?ってことで戻ってきたドローンを早速ハエ型に改造したのだ。

 

ハエの目はカメラで倍率は20倍まで、マイクもついてるけど音質が悪い。まぁこれは仕方ない。

 

耐久性は全然なくガチのハエを退治する並に脆いけど、これはもう便利すぎて__なんで今まで音を消すことしか考えなかったのだろうと、自分の頭の硬さに泣きそうになるわ。

 

 

「ここっスね」

 

ようやくついたのは木々に隠されるようにして建っているボロ屋

 

「維助さん、霊力充電もう切れそうです。」

 

「わかった、じゃぁ位置を記録して戻そう」

 

ドローンを動かすにあたって___まぁいわゆる充電が切れてしまうので戻すことに

もうちょっと見たかったけど、致し方(いたしかた)ない

 

そこで喜助と作戦会議

 

「脱走者全員の確認と、行動パターンを確認して逃さずにとらえましょう。」

「そうだな」

 

ハエ型のバッテリーを性能アップしながら話を聞く

 

「あの...斬魄刀の能力がどうとかって...そんなにやばい能力なんですか?」

「うーん・・・まぁ厄介だよな」

 

本当は見せちゃダメなんだけど、阿近に斬魄刀の能力が記された書類を渡す

 

言霊(ことだま)??」

 

「そう、鬼道でも使われる言霊…言葉に宿った霊力が力をなす。

こいつの斬魄刀はいわゆる使用者の言霊の強制発動、斬魄刀に言霊を乗せて放つって言ったらわかりやすいかな…制限はあるみたいだけど、厄介。止まれって言ったら動けなくなるみたいな、直接相手を傷つける言霊は使えないみたいだけど、鬼道の威力増幅なんかはできるみたい。」

 

「…どうしてこんな強い人が隊から脱走するんでしょう」

っと、しばらく書類を見ていた阿近が疑問の声を上げる。

俺はその頭を優しく撫でた

 

「集団行動が苦手とか、隊に合わないものを感じた…とか想像と違ったなんてよくある事さ。集団行動系は6回生で学ぶから大丈夫なはずなんだけど、まぁそれは本人にしかわからないものがあるんだろうよ…

相談所とか作ればいいとか思ったけど__人員裂く暇ないか...

まぁ阿近、もし死神になって困ったことがあれば俺に何でも相談しな、権力と職権乱用してやるよ」

 

「…それ最後の方言わなかったらかっこよかったです」

 

どれだけできた人間…じゃないや、できた死神でも恨みや憎しみ嫌がらせなんかよくある事だ、

それが嫌になって逃げた奴らをこの数十年でどれだけ捕まえたことか、

できてもできなくても、憧れが荷になってつぶされたり、恨まれ憎まれたり、難儀なものだ。

 

_____________

 

「え?喜助が?」

 

しばらくしたある日俺と喜助と夜一さんが隊首室で雑談してると砕蜂が分厚い文書を俺に手渡す。

同じものを夜一さんに渡したようだった。

 

 

目を通すと事細かに喜助の行動の悪いところが書き綴ってあり__

 

「このようなものに隊長など無理です!維助様と違い任務をサボリ、維助様を困らせる!経費乱用から__」

と、説明し始める、それを本人の前でやるのすごいな。

 

「おお、細かいッスね」

 

「お前他人事かよ、お前の事だぞお前の」

他人事のように書類を覗く喜助に思わずつっこむ

 

「いやぁ全部本当のことなんで」

 

「相変わらずじゃの」

なんて呆れた様子の夜一さん

 

「維助様はお身体を壊すほどに働き者なのにどうして弟君はこうなんですか!!二番隊の顔にまでじゃなく維助様の顔にまで泥を…!」

 

「まぁ言い変えれば体の自己管理できないって事だけど、ってか昔は俺の方がサボリ魔だったんだぜ?」

というと有り得ない!という顔をする砕蜂

 

「あり得ません!そんな弟君を守るために…」

 

「いやいやほんとほんと」

 

「そうッスよー兄サンは興味ある事をやってるだけッス、あとは任された仕事を責任もってやり遂げる。」

 

「喜助が俺に似てきちゃったんだよ...ごめんな砕蜂こんなへなちょこ弟だけどやる時はやるから…多分」

っと喜助の頭をガシガシなでる

 

「最後に下げるのなんなんスか??」

うざそうに俺の腕を抑える喜助。いやぁ昔が懐かしいよ

 

──なんて思い出に浸ってたら

 

「失礼します。」

っと俺の部下が報告に来てくれた。

 

「お、もう固めたか?」

「はい」

部下に指示しておいた、例の脱走者を捕まえる手配が整ったらしい。

 

「さて、行きますか」

 

「明日は隊首試験じゃ、それまでに戻るんじゃぞ」

 

「ええ、もちろん、ギリギリの時間まで長引いたら最悪喜助を戻らせますよ、行くぞ喜助」

 

「はいっス」

 

──────────

「どう?」

「目標も気づいて警戒してきてます」

「まぁ逃げれないから潜伏するしかないよねぇ…」

部下の報告を聞く。

 

半径50メートルには捕縛用の機械を部下に設置させ、また部下も周りを囲っている。

どうあがいても逃げれないだろう

 

「じゃぁ作戦通りに俺と喜助が...って」

知った霊圧を感じて振り向く

 

「砕蜂…着いてきたのか」

「よ、夜一様が気になるなら行けば()いと…」

 

まったく、夜一さんは何を考えてるんだか…まぁ喜助の活躍を見させて喜助は意外と出来るやつだぜみたいな事を見させたいのかもしれないけど…

いや夜一さんはそんな深く考えてないな、多分面白がってるだけだあの人。

 

「まぁいいや、砕蜂見学ならここから動くなよ?」

 

「はい、承知しました。浦原3席、維助様の足を引っ張らないよう。」

 

「はは、わかってますって〜」

なんで喜助そんなに砕蜂に邪険にされてるんだ??

何したんだ喜助──。

 

「さ、行きますかね、喜助の2番隊最後の仕事のお手伝い」

 

俺らはボロ屋の前に立つ。

 

「さぁ出て来い!もう逃げられないことはわかってるだろ!神妙に縄につけ!さすれば怪我はさせないぞ」

 

なんて言ってみたものの──ガンッ!!と扉が開いたかと思うと。

 

「破道の七十三 双連蒼火墜(そうれんそうかつい)!」

威力増大の詠唱破棄した──いや、これは事前に詠唱したな?

 

俺はそれを斬り軌道を変えた。

交渉決裂__か

 

全部で5人、全て脱走者で元席官の奴がゾロゾロと出てきた。

 

 

───(さけ)べ──言之袮(ことのね)

 

          静止せよ

 

 

「うっ…」

これが言霊か、ビックリするぐらい指一本動けなくなる…が!

 

「なっ、一瞬で!」

1秒ぐらいかかるけど一瞬の霊圧解放で跳ね返せるな…!

 

喜助も少し時間かかったけど跳ね返せたらしい…けどその1秒がちょっと厄介だな…。

 

そう、厄介。

斬魄刀で抜刀しようとした瞬間また───

 

───静止せよ!

 

っと頭に直接響くような感覚に襲われ、脳の信号に反して身体が停止する。

その瞬間に別のやつが俺に斬り掛かる─が

 

「なっ…」

驚いた様子の脱走者の声──。

「驚いた?そんなやわな剣じゃ──俺の霊圧硬度は抜けれない」

首に刀が触れているが俺は薄皮ひとつ斬れてない。

 

動揺は隙!刀を掴んで引っ張り、膝で顎を蹴りあげ、その頭をつかみ

 

ガッ!

霊圧で硬化させたカチカチの頭突きを食らわせると白目を向いた

うわ、自分でやっときながら痛そう。

 

俺が二人倒したところで喜助の方を向くと喜助の周りにも2人が地面に倒れていた。

 

残ったのは言霊の斬魄刀を持った男。

「さ、もうお仲間は使えない。どうする?」

 

「っ…!なんでだよ!見逃してくれよ!!俺はただ…自由に…っ」

っと柄をギチギチと硬く握りしめる音が響く。

 

「ならなんで死神になったんだよ。自由が少し制限されるのは仕方ないだろ?仕事なんだし、みんな自由奔放にやってたら崩壊する」

 

「こんな地獄だなんて!思ってもみなかったんだ!!新人が席官になれば先輩から恨まれ指さされ笑われる。上からは期待の目…!!分からない訳ないだろう?あんたらも席官ならわかるはずだ!!」

 

「まぁ…そりゃ俺にだってあるさ、イケメンだし昇進早かったし?

元々上司だったやつの上に立つと気まずいよなぁ、でもそんなん関係ない。なんで俺が人の目を気にしてウジウジしないといけねぇんだって感じ」

 

そこで、はっとしてこっちを見る男

 

「俺は全て実力で捩じ伏せてきた、下がどうこう言ってるのは所詮戯言、妬みだよ、俺はこう言うね、悔しいなら抜かしてみろよって。

お前は人の目を気にしすぎた、優秀だが心が弱かった。

───後退じゃなく前進を選ぶべきだった。」

 

「そう強く生きられたら…!俺には無理なんだよ!!」

錯乱した男が喜助の方に目を向けて喜助の方に斬り掛かる

喜助なら倒せると思ったのだろうか。

─────おれは鞘に刀を収めた。

 

───静止せよ!

 

喜助の首筋に刀が──だが喜助がそれを紅姫で防いだ

「なっ、まだ数秒も経ってないのに…!」

 

相殺させてもらいましたァ。何度も食らってればその霊子構成も攻撃も読めるってもんス。食らう前に逆の霊圧をぶつけて相殺したんス」

 

「っ…!!」

絶句する男

 

「期待される重み──わかるッスよ。

兄サンは天才的な技術者で剣の天才で強くて、それと同じぐらいにボクにも期待の目が向けられる。

 

弟なんだから___なんて何度言われたことか、一度は嫌になって兄とは違う鬼道衆の道にも行こうとした。

けれど、そんな重みに耐えながらも兄サンの隣に立てるようになってボクはボク自身が誇らしい。期待されるって、想われてる証拠なんス、ボクは『どうせお前には無理だよな』なんて期待されなくなる方が怖いッスね

期待されるために頑張るって案外悪いことじゃないって最近思えるようになったんス」

 

ガクッと男が膝をついた。

言葉で言えば簡単に聞こえるかもしれないが、実際に俺らが体験し実際に思ってる事だ。それがこの男には響いたのだろう。

 

喜助の2番隊の最後任務が終わったのだ────。

 

 

 

 


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