隊首試験当日、夜一さんと喜助が出てもう数時間。
おれは執務室で部屋でウロウロしてしまう。
落ち着かない…喜助なら大丈夫だと分かってるけど…。
すると襖が開いて夜一さんが顔を出した
夜一さんは俺と目が合うとグッと親指を立てた
「よ、良かったァァ…」
俺は畳に寝そべるほどに安堵した。
それを見下ろしてため息を吐く夜一さん
「弟バカは相変わらずじゃの維助。喜助が落ちるわけなかろうに」
「それでも心配だったんです〜。でもよかった」
「のう、維助」
畳にねそべる俺のそばで座った夜一さんが、ちょいっと袖を引っ張った
「ん?」
「維助…は本当は隊長になりたかったんじゃないのか?上に上にと…上を目指しておっただろう?もし儂が足枷になっているのな…」
そこで夜一さんの言葉が止まる。
おれが夜一さん手を握ってその言葉を制止させたからだ
「夜一さん、俺は院生の時からあんたの下につくって決めてたんだよ。夜一さんを一人にさせたら誰も止めれる奴いないだろ?当主になるのを見守るって決めて、夜一さんがつくる二番隊と隠密を見守るってのももう決めてたこと、それとも俺はもう用無し?」
って意地悪すると、ブンブンと横に首を振る
「正直…儂の元から離れていくのはみんな…悲しいし寂しい。あんなに幼き頃から一緒にいた維助と喜助が…いつの間にか儂を超える程の力を持ち、どんどんと前に進む…儂は置いてかれそうで…っ」
「大丈夫、夜一さんの傍から離れたって夜一さんを大切に思う気持ちは俺も喜助も一緒さ、俺だって喜助が離れてくと思うと寂しい、そりゃ喜助が生まれたときからずっと一緒なわけだしな。でも、大丈夫。俺はそばに居るよ」
「
「あぁ…
院生の頃、京楽隊長に8番隊に誘われて、即答した答え。
俺は夜一さんを支えて生きていく。
彼女は1人にしたらダメだから、彼女は貴族の中でも上位5本指で数えれる知らない人はいない貴族当主で、本来なら俺もここでこうべを垂れなきゃ行けない身だ。
でも夜一さんはそんな一線を嫌う、貴族だからと姫だからともてはやされているのが気に入らないんだ。
強がりな彼女を
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「おめでとう喜助。」
「なんか、違和感ありますねぇ」
隊長羽織りに腕を通して照れる喜助。
正式に隊長になる式典の日を迎えたのだ
「はい、これ俺からの昇進祝い」
少し古びた箱に入った扇子と綺麗な箱に入った下駄を手渡す
「この家紋___」
喜助が扇子を取り出して彫ってある家紋を見て目を見開く
「そう、母上の形見で俺が継いだやつだ。喜助は俺らから離れてくからなせめて母上に見守っててもらおうかと、大切にしろよ。
それは母上からの昇進祝いで、この下駄は俺から、隠密だから苦手な草履無理やり履いてただろ?もう昇進したからいいかなと」
「大切に…大切にします」
ギュッと大切そうに握って笑う喜助。うん、本当にあっという間に成長して…
「兄ちゃん嬉しい…っ!!」
喜助に思いっきり飛びかかるように泣きながら抱きつくと全力で押し返される。
「なんで泣くんスか!?ちょ、羽織り汚れる!あぁぁー!」
っと叫び声と夜一さんの愉快そうな笑い声が響いた___。
──────────
「ったく、夜一さんが取りに行った方が早いだろうに、面倒くさがったなあの人」
一番隊隊舎についたら夜一さんがいきなり喜助の昇進についての大切な書類を忘れたというもんだから取りに戻ったのだ。
まったく…
「すみませーん、二番隊副隊長、浦原維助です〜開けて欲しいんスけど〜」
っと、でっっかい門の前で叫ぶ。
ギギギギっと音を立て開いたかと思うと───
「うるさいわボケ!」
「ガブッ」
小さな足の裏が俺の顔面にめり込んだ
「顔が痛いっ!!なにすんだひよりちゃん!!このイケメンフェイス
「あん!うっさいわボケ!グエッ」
「うっさいのはお前やひより!」
ぷらーんっとひよ里ちゃんが持ち上がったかと思うとひよ里ちゃんの首根っこを掴んで持ち上げた平子隊長とその横に控えた惣右介
「おーす、惣右介おはよ」
「おはよう」
「おいこら、維助!助けてやった俺に挨拶は!?」
「おはよーございます平子隊長!相変わらず派手な髪で」
「アンタに言われたかないわ」
お前瞳までギラギラやんけって言われたけど知らぬ。
「維助君、君のところの隊長は?一緒じゃないのかい?」
っと首を傾げる惣右介
「さぁ、先に行ったと思うけど…俺はパシられただけだし」
来たかどうか確認する札が表になってるから来てはいるんだろうな、まったくフラフラしやがって…。
「相変わらず十一番隊は自由やな」
っと裏返しになった札をみてため息を吐く平子隊長。
「十一番隊ってだれだっけ」
「豚や豚、なんであないなやつ隊長になったんやろな」
っと俺の疑問に答える、いや答えてないな、結局誰だよ
「おやぁ〜人の悪口は感心しないよ、平子君」
「おー京楽さん、おはようさん、珍しく早いやん」
っと後ろから京楽隊長と浮竹隊長が来た、あの人体調すこぶる悪いって言ってたけど今日は顔色いいみたいだ、良かった良かった
「あたしがケツひっぱたいて起こしたんや…ってなんやねん」
京楽隊長の影に隠れてて見えなかったが、姿が見えた瞬間、すこぶる美人のおっぱい美人の手を握って
「貴方がリサちゃん!?可愛いなぁ!どう今度俺とデートゴブァ!なにすんだよひよ里ちゃん!」
「うっさいわ!アンタウチには何も言わへんよなぁ!胸か!胸なんか!!」
いきなり後頭部に蹴りが飛んできて前のめりになるがリサちゃんがヒョイッと避けたせいで俺の顔面は地面にたたきつけられた。
「んやねん、この助平は」
っと俺を指さすリサちゃん。
「ほら、この前十番隊さんとこの
「浦原…!あぁ、伝令神機作った頭イカれとるやつか」
「リサちゃんいいすぎ」
っと京楽隊長のツッコミがはいる。
身体壊したのとか色々あって結局今回が初めてのご対面だ。
いやぁー美人!
「ははは、維助君はいつも楽しそうだなぁ、伝令神機のおかげで部下が色々な場所の写真撮って見せてくれるんだよ、君には感謝してる」
っと浮竹隊長が優しく笑う。
「お役に立ててるなら良かったです」
─────────
部屋までの長い廊下でゆっくりと歩く俺ら
「今日隊長になるん十二番隊やっけ?」
「ふん、うちは認めへんぞ」 ってブスくれるひよりちゃん
「ってか維助やないんやな?なんか浦原がどうのこうのって聞いたからてっきり維助かと思ったわ」
っと平子隊長が振り向いた。
「あれ?会ったこと無かったでしたっけ?ほら初めてお会いした時ぐらいに言ったじゃないですか
「ってことは…弟が隊長かいな!」
「弟くんには何度か会ってるけど、彼も凄いよ、面白くなりそうだねぇどうも」
っと笑う京楽隊長。
「あんたら兄弟どうなっとん…」
なんでそこで呆れるんだ…??
──────────
もう部屋にいた夜一さんが俺を見るなり開口一番。
「遅いぞ維助!」
「おいこら、夜一さんが取ってこいって言ったんじゃん」
はい、っと渡すと書類を受け取る夜一さん。
「維助はー!どっかの八番隊のリサに鼻の下伸ばしてたら遅くなったんやでー!」
っと反対側の平子隊長から野次が飛んでくる
「ばっ!ばっかお前!」
ってかもう名前言ってんじゃん!
それにそんなこと言ったら…
「ほう…?他のおなごに鼻の下を…」
「アイタタタ!耳!耳引きちぎれる!」
引っ張られた耳をようやく離されると
平子隊長が面白そうにゲラゲラ笑っていた。
───後で覚えとけよ。
「んで喜助は?まだ来てないんですか?」
「ん?儂は朝から見とらんが」
「俺も見てないですよ朝から…」
どっかでのんびりしてんのかあいつ…一緒に連れてくれば良かったかな。
「ありゃ、遅れちゃいました〜」
噂をすればなんとやら、呑気な声が聞こえた。
「遅いわ喜助!どこで道草くってたんだよ」
喜助があはは、と言いながら頬をかいていた
「いやぁ〜ちよっとのんびりしちゃって」
「やっぱりな」
「んや、ヘラヘラした笑い方維助ににとんなぁ…ほんまに兄弟だったんか」
なんて平子隊長の呟きが聞こえる、疑ってたの…??
─────────
「これより、新任の儀を執り行う。」
元の隊長が異動したことや、推薦により浦原喜助が隊長になったことが説明された
「…よって、ここに元二番隊第三席浦原喜助を十二番隊新隊長と任ずるものとする」
解散になってバラバラと隊長副隊長が帰っていく。
暗い顔をしているひよ里ちゃんに近寄る。
「俺の弟をよろしくね」
「…認めへん」
そうブスッと口を尖らせているひよ里ちゃん
「うーん…頼りないところあるかもだけど大丈夫、そのうち打ち解けるよ」
「そんなん決めるのはウチや」
そう言ってスタスタと帰って行った。
さて、俺は残りの喜助の荷物を整理するかね…。
──────────
「そうそう、そこの配線はこの防水の袋被せて縛っといてほしい。」
「はい。」
隊舎に戻り院が休みの阿近にも手伝わせて喜助の部屋を整理する。
ある程度持ってったとはいえ、でかい器具は持っていけてないので、そのうち運ぶための準備を2人でしてる。
「喜助も…独り立ちかぁ…」
「なんですか、急に」
っとジト目で俺の顔を見る阿近。
「いや、喜助が産まれた時から見ててずっと一緒だったからさ、あっという間に成人して…院も卒業して、色々あったなぁ…ずっと二番隊で一緒に成長してって…寂しくなるなぁ」
「死ぬわけじゃないんだから会いに行けばいいでしょうに」
「そうだなぁ…阿近も…あ、そうだ、」
阿近に聞きたいことがあったんだった。
「なぁ阿近」
「なんですか?」
荷物を置いた阿近が俺と向き合う。
「喜助から聞いたんだけど、喜助は技術開発局っていう新しい機関を作るんだ、
曳舟隊長から
まぁそれはいいとして、俺の作った伝令神機の緊急報告の受け取り側になる情報機関プラス他にもいろいろな研究とかする機関を作るんだよ。」
「…それで俺がそこに?」
「話が早くて助かる。そう、お前はまだ死神じゃないけど、俺と喜助の権力で死神見習いとして雇えるようになった、特別だけどな?お前は俺の技術と喜助の技術どっちも近くで見てきて受け継いでる。喜助も技術者が一人でもいれば頼りになるだろうよ、どう?」
「……行きます」
「分かった、お前は俺の子供みたいなもんだ、もし何か困った事があったらなんでも言ってくれ。お前の力になる」
寝床は俺の場所だが、通いとして喜助の隊に見習いとして働く事になった阿近。
断界の研究とか虚の研究とかしたいって言ってたし、俺はそう言うのは向いてないから、阿近にとって技術開発局ってのはいい経験になる事だろう。
「見ず知らずの俺を助けて拾ってくれて育ててくれて…死神にしたら少しの時間かもしれないけど…俺は感謝してる。絶対に維助さんの霊圧上昇の原因を突き止めて…絶対に最高の霊圧制御装置をつくる。」
っと意気込む阿近。やる気があって実によろしい!
その日の夜、何故か喜助が部屋に来た
「おいこら、もうお前は12番隊だろ?そう他の隊にひょいひょい入っちゃダメだろ…」
そんな呆れた俺の声を無視して歩き出した喜助。着いてこいと言うことだろう。
阿近は寝てるけど一応聞かれたら困る話なのかと、おれは無言で歩き出す喜助について行く。
やってきたのは勉強部屋。
光を放つ特殊な生物が天井にいるので外とは違い明るい
「兄サン。維助兄サンはこの先どうするんですか」
「この先って?そりゃ喜助の局を手伝うよ、浦原神機の社長としてな、仕様書を貰って作るエンジニアみたいな…」
「分かってるでしょ?そういう話じゃない事を、兄サンは院生の頃から夜一サンを抜かさないように卍解を隠し実力も抑えて、定期的にやらかして問題児のフリして…。そして
「…」
振り向いた喜助は真剣な目をしていた。
「人の色恋にどうこう口出すのは不躾ですけど、兄サン。砕蜂サンと夜一サン。そろそろ真剣に向き合う時じゃないんスか?」
「俺は結婚する気はない、それは直接本人らにも言ったこともある。甘味処行った時とかにな。砕蜂とはそもそも席官になるまでの見合い話の延長線だし、その時に結婚はしないとも言った。夜一さんと俺は当主同士だから、籍を入れるのにも色々問題あって難しいものだし。」
「いいんスか。」
「あぁ、俺は人を幸せにするのに向いていないから、夜一さんの部下で砕蜂の上司。」
もう悪い事にも足を踏み入れた。
惣右介がなにか未来でしでかすって知ってたのに手を貸した。
────けれど彼女らは巻き込みたくない。
わがままで機械ばっかで友人も愛しい人も選べない俺には幸せにするとかそういうんは向いてない。
「そうッスか、兄サンがそこまで言うなら。卍解はいつまで隠し続けるんすか?夜一さんを抜かさないようにって言ってましたけどもう彼女は当主だ」
「なんだよ今日は質問攻めだな?」
「京楽隊長や平子隊長は気づいてますよきっと夜一サンもね」
「あぁ、
隊長になるために必要なうちの1つの条件それは
夜一さんは俺か喜助を推挙しようとしてた。
俺は夜一さんに
なのに俺を推挙しようと候補に入れていた___。
知ってたんだなぁ…いつからだろうか、流石に能力までは知らないだろうが、
「でも俺はこれからも多分命の危険がない限り始解もしないし卍解もしないと思う…多分な?剣術と白打を極めし死神──かっこいいだろ?」
「ふっ…兄サンらしいッスね」
俺は好きな事をしてロマンで生きる。
いいとこ取りのずるい俺