浦原喜助の兄に転生して夜一の許嫁にされた俺の話   作:ちーむ

36 / 77
魂魄消失事件の話

しばらくしたある日。

 

 

夜中__

 

 

 

''『ビービービービー』''

 

「うるっっっさ!」

 

机の上に置いといた伝令神機がいきなり大きな音を出した

 

''『緊急招集!緊急招集!』''

俺はすぐに支度を整え夜一さんの部屋に向かう

 

'『各隊長は一番隊に集合願います』'

 

''『九番隊に異常事態!』''

 

走りながらも伝令神機は鳴り続ける。異常事態?一体何が…

 

「夜一さん!」

「維助、支度…はできとるな、()くぞ」

 

夜一さんの羽織を渡し、一番隊隊舎へ到着し俺は門の外で待機する

続々と隊長らが隊首室へ入っていく、急ぎだから副隊長も来ている隊と来ていない隊が多い。

 

「って、リサちゃん?」

「しー、静かにしいやバレるやろ」

 

リサちゃんがコソコソと隊舎の中に入ろうとする

 

「おいおい。怒られるぞ?」

「うっさいわ、バレるゆーとるやろ、黙ってついてき」

何故か口を塞がれ俺は無理やり連れていかれる、なんで俺まで…

 

隊首室の外の庭で耳を澄ます

 

「前線の九番隊の待機陣営からの報告によれば、野営中六車拳西、久南白両名の霊圧が消失!原因は不明」

 

っと、総隊長殿の声がきこえる。

 

「九番隊の待機陣営…?」

 

「またあの魂魄消失が起きたんや、やから9番隊が偵察に行ってん」

俺の疑問にリサちゃんがそう答える。

「へぇ〜」

 

じゃぁ魂魄消失事件、あれか…霊圧が消失したってのは…惣右介が

「ボクに行かせてください!ボクの副官が現地に向かってるんス!」

 

っと喜助の声。

こんなに慌てる喜助は久しぶりだな。

 

それにひよ里ちゃんが…?

 

「…」

「んや、暗い顔して、辛気臭いで」

 

「いや…」

なにか、すごい嫌な予感がする…惣右介。一体___

 

「おぉ〜いリサちゃん」

 

っと京楽隊長の声。

「なんや!」

 

ガシッと格子を掴んだリサちゃんが隊首室に顔を出す

 

「隊首会のぞきみしちゃダメって言ったでしょ」

 

「しょうがないやろ、隠されると見たくなるもんや」

いつもやってんのか…

 

「話は?」

「きぃとった」

 

「頼める?」

「当たり前」

 

スタッと、地面に降りたリサちゃん。

「リサちゃん。」

 

「んや」

「お気をつけて」

 

「はっ、さっさと片してきたるわ」

 

猛スピードで塀を乗り上げて見えなくなったリサちゃん。

今日は…嫌な月だ。

 

_____________

 

西方郛外区(せいほうぶがいく)第六区

 

隊長格副隊長格が血濡れで倒れる。

半分の仮面を纏った平子が藍染を睨みつける

 

──終わりにしましょう        

   平子隊長

 

「貴方達は…いい実験材料だった…」

 

月に反射した斬魄刀が振り下ろされる

 

「くっ…クッソオォオオオ!!!

 

──だが

 

キィンっと火花を散らしその刀を弾く__

「…ほぅ、これは面白いお客様だ。浦原喜助

黒い外套を纏った浦原喜助と、鬼道衆の握菱 鉄裁。

 

「き、喜助…なんで来たんや…」

 

「なんスか?その気色悪い仮面は」

っとおどけて言った喜助に

 

「言うやんけ…」っと、笑みを浮かべた平子。

 

喜助は藍染に向き直る

「藍染副隊長…一体何を?」

 

「ご覧の通り、偶然にも戦闘で負傷した、魂魄消失事件の始末特務部隊の方々を発見し、救助を試みていただけのこと」

 

「嘘っスね、負傷した?ちがう、これは虚化だ

 

「なるほど…やっぱり君は思った通りの男だ。」

っと、ニヤリとわらった藍染

鳥肌が立つような霊圧が地を這い喜助の背筋に走る

 

()()()には大変()()()()()()()よ」

そう言った藍染に目を見開く

 

「…兄サンに、維助兄サンに何をしたんスか」

酷く低い声が喜助から放たれる

 

「何をしたか…ね、心外だな…僕が少し頼んで…何がとは()()()()が手伝ってもらったのさ、彼のおかげで僕は__」

 

藍染の目の前で火花が散る

東仙が斬りかかった喜助の刀を止めたのだ。

 

「兄サンに漬け込んだんスね…!貴方のことを本気で…本気で友人だと…」

「君は実の弟なのに知らないのかい?彼の心の内にある野心すらも?彼は僕が何かをやると()()()()()()協力してくれたのさ」

 

「…そんな、そんなはずは」

「本当に?」

 

そう動揺した喜助に聞き返す。

「本当に彼は良心のみで機械を作っていたと思っているのかい?本当に?」

 

たしかに、思い返せば兄は自分の欲のままに(ことわり)を歪める機械を作ったり、それこそバレたら極刑になるほどの機械も作っていた。

自分の欲に忠実で作りたいものは作る、戸惑いもない。

──例えそれで誰かが死のうとも。

 

「心当たりがあるようだね。」

 

東仙が喜助の刀を弾いて距離を取らせる

 

「ここまで来てくれて良かった、退くよ」

 

「まっ…!」

 

「お避け下され!浦原殿!」

鉄斎が鬼道の構えをする

 

──破道の八十八飛竜撃賊震天雷炮──

 

───破道の八十一 断空───

 

鬼道の衝突により土煙が舞う

「なっ…詠唱破棄した断空で…」

 

忽然と姿を消した3人、兄よりも、藍染よりも、今は_みんなを

 

────────────

 

 

「京楽隊長…?」

何故か俺のところ来た京楽隊長。

 

「……いや、思い込みがすぎたかなと」

そう言って笠を下げる

 

なんだ???

 

「リサちゃん大丈夫でしょうか」

 

「大丈夫…彼女は強いからね。明け方には戻ってくるさ」

 

明け方…ね。

 

─────────

 

明け方近く、京楽隊長と長話をしてた俺は隊舎に戻る

 

「浦原副隊長」

 

「どうした」

慌てた様子の部下が膝をついて現れた。

 

「ご報告します!十二番隊隊長浦原喜助と、大鬼道長握菱鉄斎が、虚化禁忌事象研究の容疑で現在四十六室に__」

 

「……夜一さんは?」

 

「それが、隊長のお姿はどこにも…」

 

惣右介…っ…お前___。

約束の穴をついたな、手を出さないって約束。

自分自ら手は出さない。ただ容疑がかかっちゃいました…僕は関係ないってシラを切るに決まってる。ちゃんと言っておけばよかった…

 

首を突っ込むな…ね、そっちが約束の穴をつくならおれもつくさ。

 

「俺は夜一さんを探してくる。隊舎は頼んだ」

 

「はっ!」

 

俺は__。

 

 

────────────

 

「賊だ!逃げたぞ!探せ!!」

 

四十六室に向かったが、やっぱり夜一さんが喜助らを逃がしたらしい。

大騒ぎになってる。

ふぅ…さて、隠れる場所と言えば___。

 

 

 

 

 

「やっぱここだよな」

 

「…兄サン」

 

───俺らが死神になって、作った勉強部屋

何故か警戒している様子の喜助。

…惣右介まさか変なこと言ったのか?

 

脇には八人が虚のようになりかけていた。これが部下の言ってた虚化…ね。

 

「…喜助。夜一さんは?」

 

「…ボクは止めたんスけど、兄サンを呼びに」

 

「…入れ違いか」

入れ違いになったらしい。夜一さんの姿は見えなかったがちょうどいい。

 

「お前らは現世に行くんだろう、ほれ」

ひょいっと懐から出したものを投げると受け取った喜助。

 

「これ…」

 

「俺専用の伝令神機。分かるだろ?12番隊に情報が流れない試作品。電波霊子も俺にしか分からない。もってけ」

 

「…ありがとうございます。兄サン。兄サンは()()()()ッスか?」

 

「…俺はお前ら側だよ、ただ…ただ友人の頼みは断れなくてね。何の頼みだったかは()()()()()

俺は苦笑いをうかべる。

 

「…そうっスか」

やっぱり惣右介と接触したらしい。警戒してた理由はやっぱりそれか。

 

「喜助」

俺は喜助に近寄って__

 

イッタ!!なんスか!?」

 

ザクっと喜助の指を軽く斬って()()()()()()()()

 

「鉄斎さんも捕まったって聞いたけどそういえば」

 

「上で結界貼ってもらってます」

 

「…そうか、俺は違う入口から来たから会わなかったのか、益々都合がいい」

 

「それ、血判契約*1ッスよね…一体何を?」

 

「契約内容を話さない契約書。取引も話せない、取引した相手の正体、つまり誰と契約しかたも話さなくさせる契約…それを使った理由。お前に大切な頼みがある。」

 

「……その言い方だと、現世には行かないんスか?夜一さんも現世に行くんスよ?彼女は四十六室に侵入した、いずれバレる。」

 

「……俺は何もしてないからな、()()()()()()()

 

「まだそんなこと言ってるんスか!兄サン!貴方がここに残ったら…きっと藍染副隊長に…」

 

「いや、多分大丈夫さ。俺はまだ使い道があるから今回捨てられなかった…って感じかね。まぁ俺は現世よりこっちで色々やりたいからさ。だから…夜一さんを頼むよ。俺からのお願いだ、夜一さんには俺と連絡取れることは言わないで欲しい。俺は影から応援しとく」

 

「…兄サン。」

眉を下げる喜助。

「…頼むよ」

 

「……分かりました」

 

──俺は喜助を優しく抱きしめる。

「大きくなったな、喜助。」

「っ…」

ギリッと奥歯を噛み締める音が聞こえる

 

「大丈夫、喜助ならやれる。責任重大だけど…やれるさ、大丈夫。お兄ちゃんが保証するから…色々現世で不安もあるだろう。俺が助けてやる、しばらく…きっと会えないだろうけど。」

 

「兄サン…兄サン…本当に…本当に行かないんスか…」

 

「ふは、俺がどっか行ったら惣右介を止めるヤツどこにいるよ、それに…夕寝さんと夜一さんが守り継いできた隊を、そこら辺のやつにやれるかよ」

 

俺は優しく喜助の背中を撫でる。

猫背でなで肩で、いつか俺の身長を抜かすって言って抜かせなかった喜助。

 

──あぁ、本当に大きくなったな_喜助

 

俺はそっと離すと、喜助はゴシッと裾で顔を拭った

 

 

 

 

 

「維助!ここにおったか!維助!!」

 

 

タイミングのいい事に夜一さんが駆けつけた

 

「夜一さん」

 

「維助、話は聞いておるか?今から…維助?」

俺は夜一さんに近寄る

「俺は実は惣右介に頼まれてたんだ」

「お主…藍染と組んでおったのか?まさかそんなはず」

 

「そんなはずあるさ、俺はずっとずっと昔からあいつの友人で仲間さ」

 

「っ__!」

絶望したように顔が青ざめていく。

 

「ずっと夜一さんを騙してたのさ、悪いね」

 

「維助……嘘じゃろ?」

 

「…本当だよ」

 

「なら…なんで…そんな顔をしておる。」

あぁ、俺は今どんな顔をしてるのだろうか。

 

夜一さんが俺の裾を掴む。まるで行くなとでも言うように

 

「儂は…信じておる。お主の事じゃ…儂に嫌われようとしておるんじゃろ…」

 

「…」

 

「お主の嘘ぐらい。わかるわ、マヌケめ…どのぐらい一緒におると思っている。なぁ…維助。ここに残るんじゃろ」

「夜一さんにはかなわないな…うん、ここに残るよ」

 

喜助の血判契約、無駄になるかな…?いや、連絡取れることは内緒にしておいて欲しいし、まぁいいか。

 

「…夜一さん。」

 

「なんじゃ維助。」

 

「俺の事は忘れて幸せになって欲しい」

 

「……」

途端にポロポロと目から涙を流す夜一さん

 

「…いやじゃ…お主も。お主も一緒に」

 

「分かってるだろ?俺は行けない。俺が撒いてしまったかもしれない種だ、自分の後始末ぐらいしなきゃ」

 

「……いやじゃ、いやじゃ…」

いやいやと、子供のように俺に縋り付く。

 

「な、いい子だから。夜一さん。」

 

「うっ…う…っ」

 

「さよなら…夜一さん」

 

「っっ…!!」

 

嫌だと顔を上げた夜一さんの唇に口付けをする。

口を離すと顔を赤くする

 

俺は夜一さんを優しく抱きしめた。

 

あぁ、優しい匂いだ__

猫のように自由気ままで気分屋で__団子屋で笑う夜一さんを思い出す。

 

猫型になって俺の書類に墨を飛ばして俺に怒られてしょんぼりしてたっけ。

砕蜂と張り合って楽しそうにしてたな、白哉坊ちゃんに絡んで追いかけ回されて。

 

あぁ…楽しかったな、幸せだった…立派になった弟と可愛い婚約者に囲まれて__

 

 

──俺は幸せだったよ。

 

 

 

 

──さようなら        

   俺の大切な…愛しい人

 

 

「い…すけ…」

ふらりと倒れる夜一を抱き上げる。

 

「喜助、夜一さんを頼む。夜一さん専用の睡眠薬だ。3日は起きない」

 

「…兄サン。」

何か言いたげな喜助に笑いかけ口を開く

 

 

 

 

 

───愛してるよ   

 

          俺らの大切な人達

 

 

 

*1
お互いの正体、及び取引内容を”絶対”口外しない契約


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。